スピーカー
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スピーカー(Speaker)は電気信号を物理振動に変えて、音楽や音声などの音を生み出す機械である。ラウドスピーカー(Loudspeaker)とも呼ばれる。
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[編集] 概説
電気によって音を出す機器には、スピーカー以外にチャイムやブザーやベルなどがあるが、これらは警告音などの大きな音を発生させることを目的としており、決まった振動数の音や固定されたメロディを発生させるのが普通である。それに対してスピーカーは、声や楽器音などの自然音をマイクロホンなどで電気信号に変換し、それを再び元の音波として再生することを目的としている。したがって、入力された電気信号の波形を忠実に音の波形へ変換する必要性から、生成される音に歪みや雑音などがなるべく加わらないように設計される。
スピーカーは、肉声や音楽をその場で大音響にして遠くまで伝える「拡声器」(メガホン)、携帯電話やラジオ・テレビ受信機、そして、音楽などをより原音に忠実な音で再生するための高級オーディオ機器に到るまで様々な音響製品に組み込まれ、それぞれの目的に応じた多くの形式がある。
[編集] スピーカーユニット
スピーカーの音の出る部分をスピーカーユニットと呼ぶ。これらは単体で使われることはまず無く、エンクロージャーに取り付けられたり、テレビや電話などの部品として内蔵されたりする。
理想的には、ひとつのスピーカーユニットで人間の可聴域(およそ20~20kHz)全体の音域を余すことなく再生できれば良いが、現実には製作が難しい。しかし、特定範囲の周波数だけなら特性の優れたスピーカーが設計可能なため、音程の各帯域に応じたスピーカーユニットが販売されている。
- フルレンジ - 全帯域用(50Hz~15kHz)
- サブウーファー - 超低音用(約100Hz以下)※スーパーウーファーとも言う
- ウーファー - 低音用(20Hz~5kHz)
- ミッドバス - 中低音用
- スコーカー - 中音用(500Hz~5kHz)※ミッドレンジとも言う
- ツイーター - 高音用(5kHz~24kHz)
- スーパーツイーター - 超高音用(25kHz~100kHz)
フルレンジのユニットのみを使用したものをフルレンジスピーカーと呼ぶ。音域は広くないものの、ボーカルなどの中音域の音質に優れているとされる。構造が単純なため、自作スピーカーの入門用によく作られる。後でツイーターやスーパーウーファーを追加することもできる。
複数帯域のユニットを持つスピーカーをマルチウェイスピーカーと呼ぶ。市販品で多いのは2つの帯域のユニットを持つ2ウェイスピーカー(ウーファー+ツイーター)と、3つの帯域のユニットを持つ3ウェイスピーカー(ウーファー+スコーカー+ツイーター)である。4ウェイ、5ウェイのスピーカーも存在する。
マルチウェイスピーカーにおいては、各ユニットの音域が重複しないように音域を制限する電気回路が必要となる。これをクロスオーバー・ネットワーク(または単にネットワーク)と呼び、コンデンサー、コイル、抵抗などを組み合わせたフィルター回路で構成される。ネットワークの設計が正しく行われないと、信号の位相を狂わせたり歪みを増加させる原因となる。このため、測定や試聴をくり返して最適な回路を組み上げてゆくのが普通である。
各ユニットの音程の境界にあたる周波数をクロスオーバー周波数という。2ウェイであれば1つの、3ウェイであれば2つのクロスオーバー周波数が存在する。ネットワークの設計において最も重要なのは、クロスオーバー周波数を適切に設定することである。帯域(ユニット)を増やせば増やすほど再生できる音域は広がるが、反面クロスオーバー周波数が増えることでネットワークの設計が難しくなる。
マルチウェイスピーカーでは各ユニットの取付位置がどうしてもずれるため、フルレンジと比較して楽器や声の位置がぼやけるという意見がある。これを解決するため、ウーファーの中心部にツイーターを組み込むことで、外見上フルレンジのように見える2ウェイユニットがタンノイ社により開発された。これは同軸型(コアキシャル)2ウェイと呼ばれ、同社の高級スピーカーに採用されている。また、ツイーターの上下にウーファーを配置して擬似的な同軸型としたスピーカーシステムも販売されている。
なお、大きなコーン型振動板の中央に小さいコーン型振動板を取り付けることで、広い帯域の再生を狙った「ダブルコーン型」もある。あくまで廉価品であり、自作用ユニットやカーオーディオ用に多い。タンノイ社の同軸型ユニットとは技術的に全く異なる。
[編集] ダイナミック型スピーカーユニット
一般的な音響機器に組み込まれているスピーカーユニットのほとんどがこの方式を採用している。1924年にチェスターW.ライスとエドワードW.ケロッグによって発明されてから現在に到るまでその基本構造が変わっていないのは、この方式がシンプルでかつ極めて優れているからに他ならない。
ダイナミック型のスピーカーユニットにはドーナツ型の永久磁石が用いられる。このドーナツの穴にあたる円筒形の空間に、同じ円筒形をした「ボイスコイル」が挿入されている。ボイスコイルはコイルの一種であり、円筒形の紙やプラスチックに導線を巻きつけたものである。この導線に音声信号が流れるとフレミング左手の法則により、ボイスコイルが前後方向に振動する。ボイスコイルには振動板が直結しており、この振動板も一緒に前後に振動することで、音声信号に等しい波形の音が空気中に放射される。これはリニアモーターの原理そのものであり、ダイナミック型スピーカーはリニアモーターの一種であるといってもよい。
上記の各パーツは、スピーカーユニット全体を支える骨組(フレーム)に固定される。永久磁石はフレームに強固に固定されるが、ボイスコイルと振動板は振動する必要があるため、ボイスコイルはダンパーを介して、振動板はその外周を取り巻くように張られた「エッジ」と呼ばれる柔軟な支持材を介して、それぞれフレームに固定される。ダンパーとエッジは振動板をフレームに固定するサスペンション(懸架装置)であるが、前後方向の動きは妨げない。また、ダンパーは振動板の固有振動を抑える役割もしている。スピーカーユニットは最終的にフレームによってエンクロージャーや搭載機器に取り付けられる。
磁気回路に使われる永久磁石には耐久性と高い磁束密度を持つことが求められる。コストパフォーマンスに優れたフェライト磁石がよく使われるが、小型スピーカーには磁力の強いサマリウムコバルト磁石やネオジム磁石なども使われる。なお、以前はアルニコ磁石も高級品を中心に使われていたが、高価なため現在ではほとんど見られなくなった。
[編集] ダイナミック型スピーカーの振動板の構造
理想的なスピーカーに求められる性能としては、原音に忠実で歪みがないこと、点音源であること、全ての方向に同一の音圧、同一の音質で音を放射すること等が挙げられる。これらを実現するため、振動板の形状や大きさ、取り付け方法が工夫されている。
振動板の形状としては、低音用にはコーン型(円錐形)、高音用にはコーン型やドーム型(半球形)が主流である。1980年代に平面型が流行したが、現在はほとんど使われていない。音を各方向に均等に放射するため、正面から見て真円形のものが殆んどである。
[編集] ダイナミック型スピーカーの振動板の材質
振動板には、分割振動や共鳴による固有振動が少ないこと、変換効率が良いことが求められる。このため、機械的な強度が大きく(=高ヤング率)、内部損失が大きく、かつ軽量な素材が使われる。また、経年劣化が少ないことも重要である。これら全てを高い次元で満たす材料を求めるのは容易でない。このため、ユニットの担当する音域に合わせて素材を変えるのが一般的になっている。
- 紙 - 時代を問わず最も多く利用されている。適度な内部損失があり、比較的丈夫で軽量なため、廉価なものから超高級スピーカーまで幅広く使われている。全ての音域に使用できるが、高音用にはあまり使われない。パルプに種々の材料を混漉することで特性を改善した紙も多く使われる。
- 高分子 - ポリエステル、アラミド、ポリプロピレン、炭素繊維など。繊維状にして編んだり、ハニカム構造にして利用することが多い。低音~中音用に使われる。
- 金属 - アルミニウム、チタン、ホウ素(ボロン)、ベリリウム、マグネシウムなど。薄く軽量化でき、質量を抑えてヤング率がい反面、内部損失が小さいので固有振動が発生しやすい。このため、主に高音用のスピーカーに利用される。高音用であれば、固有振動を可聴外に追い出すことができるからである。これらの金属にダイヤモンド薄膜をコーティングしたものもある。
- その他 - ダイヤモンドそのものを振動板としたもの、薄くスライスした木板を振動板をしたものなどがある。
[編集] エンクロージャー
スピーカーの振動板が振動するとき、その前面と裏面から出た音は逆の位相になっている。このため、もし振動板の裏面から出た音が前面に回り込むと、音を打ち消し合ってしまう。音が回り込む回折効果は低音になるほど大きいので、低音を再生するためには振動板の裏面からでる音を遮断する必要がある。このため、エンクロージャーと呼ばれる箱にスピーカーユニットを取り付けるのが一般的となっている。スピーカーユニットをエンクロージャーに組み込んだものはスピーカーシステム(または単にスピーカー)と呼ばれ、家庭用に販売されているスピーカーのほとんどはこのタイプである。
エンクロージャーは、スピーカーユニットの振動による反作用および音圧によって振動を起こす。また、内部で音が反射して定常波(固有振動)が発生する。これらは音質を劣化させる原因となるため、補強材や隔壁で強度を確保し、吸音材で定常波を吸収する。一般に、エンクロージャーの設計によってスピーカーシステム全体の音の響きが決定づけられ、それが製品の個性となって現れる。固有の振動を持たないことが要求されるため、通常は木材(MDF、パーティクルボード、合板)が使われる。
エンクロージャーには数多くの方式があるが、現在主流となっているのは「密閉型」と「バスレフ型(位相反転型)」である。
- 密閉型 - 箱の作り方を気密式にして内部を密封し、振動板背面から発せられる音の影響を完全に遮蔽する。癖の少ない素直な音質が特徴である。反面、エンクロージャーが小さいと振動板の動きが制限され、低音の少ない詰まった音になりやすい。内部を空気バネとして積極的に利用し、ヌケの良い音を狙った製品もある。
- バスレフ型 - 箱の前面や底面に筒状の貫通穴(ポート)を設け、その中で振動板裏面から発せられる低音を共振させる。振動板の両面から発生した低音が加算されるため、豊かな低音が得られる。反面、それよりさらに低い低音はほとんど出なくなる。また、設計が悪いと音に癖が付いたり、貫通穴のところで風切り音が出たりする。
- バックロードホーン型 - 箱の内部に音の道(ホーン)が折りたたまれており、箱の前面にホーンの出口がある。振動板の裏面から出た音はその長いホーンを通るうちに低音が増強され、放射される。小さなスピーカーユニットで豊かな低音が得られる反面、設計や製作に手間がかかる。自作スピーカーや、海外メーカーの超高級品に使われている。
なお、上記の各タイプのバリエーションとして、振動板の前にラッパ状の曲面(ホーン)を取り付けた「フロントロードホーン型」がある。指向性をコントロールでき能率に優れている反面、大型になりやすい。コンサート用の大音響スピーカーや、超高級オーディオ用に利用される。
[編集] 音質の指標
オーディオ用のスピーカーは「周波数特性」「歪率」「過渡特性」「指向特性」などを改善するために様々な工夫がなされており、音質の良し悪しの指標として使われる。
- 周波数特性 - 人間が可聴域の音程を全域再生でき、かつどの周波数でも均一な音圧が得られることが求められる。
- 歪率 - スピーカーに入力された音声信号の波形に相似する音声波が出力され、余分な音が加わらないことが求められる。
- 過渡特性 - スピーカーに複数の周波数の音が混じって入力された際、位相が正確であること(それらの音に時間的ズレが生じないこと)が求められる。
- 指向性 - スピーカーから、全方向に均等な音圧が放射されることが求められる。
[編集] 歪率について
スピーカーは、グラム単位の質量を有する振動板を動かすという構造上、歪みはどうしても大きくなる。適切に設計されたスピーカーの中には、可聴域(100ヘルツ以上)の歪率が0.5%を切るものも存在するが、それでも他の機器(CDプレーヤー、アンプなど)の歪率が0.01%を切っていることを考えると2桁以上大きな歪率である。
歪みを発生させる非線形部品としてはダンパーやエッジ、そして設計が悪い磁気回路などが挙げられる。これらの非線形効果が顕著になるのは振幅が大きい低音域のときである。また、低音用の振動板は重いため慣性による逆起電力(制動力)を発生させ、これも歪みの原因となる。このためスピーカーの歪みは低音域で発生しやすく、実際に測定してもそのような結果になる。
[編集] 指向性について
オーディオ用スピーカーが広い指向性を理想としているのに対し、指向性を絞って特定の方向に大きな音を伝えたい場面も存在する。たとえば学校教育現場のアナウンス、交通機関の案内放送、街宣車などである。
理論上は指向性を絞るには振動板を大きくすればよいが、直径数m以上ものが必要となり非現実的である。そこで、ホーンと呼ばれる円錐形に広がる管を取り付けたスピーカーが、上記用途の拡声器として使われている。
周波数が高ければ指向性が増すため、超音波を小さな振動部から指向性の強いビーム状で送り出し、音の歪みを利用して可聴音として人間が聞き取れるようにしたパラメトリック・スピーカーというものもある。[1]
[編集] スピーカーの分類
[編集] ユニットの変換方式による分類
- ダイナミック型
- コンデンサ型(静電型)
- リボン型
- イオン型(放電型)
- マグネティック型
- 圧電型
[編集] 振動板の形状による分類
- コーン型
- ドーム型
- 平面型
- ベンディングウェーブ型
- ウォルシュユニット
- マンガーユニット
- ハイルドライバー
- リニアムドライバー
[編集] エンクロージャーによる分類
- 密閉型
- バスレフ型
- ダブルバスレフ型
- ダンプドバスレフ型
- ホーン型
- 共鳴管方式
- TQWT
- IR方式
- 平面バッフル/後面開口型(ダイポール型)
- ASW型(ケルトン方式/チューニングダクト方式)
- トランスミッションライン
- アイソバリック型
- ドローンコーン型
※これらは組み合わせて使用されることも多い。
[編集] 形状・サイズによる分類
[編集] 用途による分類
- 家庭用(オーディオ用)
- PA/SR/拡声用
- 楽器用
- 水中用
- 組み込み用(携帯電話など)
- 軍用(音響兵器他)
- その他 特殊用途
[編集] その他
- スピーカーはエレクトロニクス関係の業界用語では「ラッパ」と呼ばれることがある。なお、1950年代までの古いラジオ関連の技術文献では「高声器」(こうせいき)という標記がされている。
- 実用レベルではないものの、スピーカーをマイクロフォンとして使うこともできる。
- 人間の耳で聴き採りが可能な音の周波数は、年齢等で個人差はあるが単音で測定すると40~18000ヘルツ程度である。しかしスピーカーから音楽等の複合音を再生する場合、可聴外と言われる超低音や超高音の有無が、音の自然さの再現に影響をもたらしていることが実験的に判っている。特に音の倍音成分の再現が重要で、近年では、20000ヘルツを超える音の再生を可能とするスピーカーが一般的になっている。また、音楽記録媒体でも20000ヘルツを超える高音域の再生が可能な「SACD」や「DVD-Audio」が市販されている。
[編集] 出典
- ^ ブルーバックス 「音のなんでも小事典」日本音響学会編 ISBN4-06-257150-1