電力

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電力(でんりょく、: electric power)とは、

概説[編集]

専門用語では、「電力」とは単位時間電流がする仕事(量)のことである。単位はWワット)であり[1]、電圧Vの電源から電流Iが流れているとき、電力はV・Iという式で表せる[1]。つまり電力は、電圧電流である[6](物理学概念の分類体系で言うと、仕事率 (power) に分類されるわけである)[注 1]

一般用語(非物理学用語、非専門家用語)では、「電力」が、電気の形で伝えられるエネルギーを指していることも多い。なお専門用語ではこのエネルギーに関しては「電力量」と呼び分けて区別している。 また、一般用語では、「電力」が電磁相互作用によるを指すこともある。

屋根にソーラーパネルを設置して自家発電している家
家庭で用いられることのある小さな風力発電機

一般的に言うと、電力は電池発電機で作られている。電力は個人が小規模に作ることも可能である。たとえばソーラーパネルや小さな風力発電機小さな水力発電機などを用いて、家庭で消費する電力をまかなったり、家庭で消費する以上につくり余剰分を販売することもできる。

電力を商品として(供給販売することで収益売上)や利益を得ている会社を電力会社と言う[注 2](世界的に見ると電力会社には様々な規模のものがあり、大手もあれば小規模のものもある。日本では小規模のものとしてPPS特定規模電気事業者)という位置づけのものが登場した。)。最初の電力会社、トーマス・エジソンの会社が設立したPearl Street Station直流方式で送電し一時期はそれが標準となっていたが、ニコラ・テスラやジョージ・ウェスティングハウスは交流送電を推し、両陣営間で激しい対立が起き、結果として交流送電方式が普及し(そのいきさつや理由については「電流戦争」の記事で詳説)、現代の電力会社は一般的には電力を三相交流で供給しており、電圧としては高圧電力・低圧電力の両方を販売している。電力会社の業界を電力業界という。

1990 年代から、欧米を中心として、世界中の多くの国や地域において、電力の自由化が積極的に進められている[7]

欧州の各国の電力事業は、各国それぞれの歴史を持っている[8]。かつてはひとつの国にひとつの電力事業業者、という形が一般的であったが[8]、1999年に欧州電力市場では《市場の自由化》が導入され、各国でいくつもの電力事業業者が活動するようになった[8]。欧州のなかでも、いちはやく自由化された電力市場を整備したのは英国であった[8]

英国ではかつて英国電力公社が英国全体に電力を供給しており、発電も送電も全て行っていた[8]。1990年にその英国電力公社が民営化され、その時に、同時に発電事業と送電事業の分離が行われ、消費者に電力を供給する配電事業にはいくつもの電力供給事業者が参加できるようになった[8]。消費者は、(ちょうど、携帯電話の通信サービスを比較して決められるように)電力の価格などを比較して、自分が利用する電力供給事業者を選択できるようになった[8](なお送電に関しては、英国ではもともとひとつの電気事業者が全国の電力供給を管理していたため、結果として、高圧送電系統はナショナルグリッドという送電系統管理事業者が運用する方式を採用した[8]。)。このようにして英国では、発電・送電・配電が完全に分離された[8]

現在、欧州各国で行われている電力事業の形態というのは、上記の英国の形態と似たものになっている[8]。つまり、発電と送電の分離されており、送電に関しては送電系統管理事業者が行っている[8]。そして欧州の各国はそれぞれ隣接する国々と高圧電線で結ばれ、日々、電力の輸出・輸入が行われている[8]

グリーン電力とは、風力発電太陽光発電バイオマス発電小規模水力発電 等々、温室効果ガスの排出が少なくて環境への負荷が小さい自然エネルギー再生可能エネルギーによって発電された電力のことである[9]

2000年代に入り、欧州で風力発電の導入がかなり進みはじめてから、発電出力の変動に伴う供給の不安定化の問題への対応策が打たれるようになっており、EUレベルでスマートグリッド化が検討されるようになった[8]

日本では第二次世界大戦前に、電力の供給を独占する体制(電力独占体制)が形成された[10]。日本においても、1995年の電気事業法の改正により、電力自由化に向けての様々な動きが始まった[7]。1995年に制度化されたのはIPP(Independent Power Producer 卸供給事業者)で、IPPが発電した電力を既存の10電力会社が買い取るという仕組みで、IPPが需要家に直接販売するわけではない。だから、電力料金に直接影響を与えるものではなかった[11]

消費電力[編集]

消費される電力(電力量)、消費された電力(電力量)を消費電力と言う。

家庭での電力の消費量[編集]

家庭での電力の消費の量やその内訳というのは、国、地域、季節、日々の気温ごとにかなり異なっている。

参考までに、日本の家庭の一世帯あたりの電気消費量は、平成21年度(2009年4月~2010年3月、冷夏暖冬であった期間)の通年では4,618 kWh/世帯であった。内訳としては、大きいものから電気冷蔵庫14.2%、照明器具13.4%、テレビ8.9%、エアコン7.4%と試算された[12][13]。 なお、同じ日本の家庭の消費電力の内訳でも、夏で最大需要が発生する日の日中(14時ころ)の消費電力の内訳は、資源エネルギー庁推計によると、エアコン53%、冷蔵庫23%、テレビ5%、照明5%だとのことである[14]

国ごとの大まかな統計資料は「消費電力」の記事に掲載している。

節電[編集]

電力を節約すること、電力の使用量を減らすことを節電と言う。

物理学における電力[編集]

電力
electric power
量記号 P
次元

L 2

M T −3
種類 スカラー
SI単位 ワット (W)
CGS単位 エルグ毎秒 (erg/s)
FPS単位 フィート重量ポンド毎秒 (ft·lbf/s)
MKS重力単位 重量キログラムメートル毎秒 (kgf·m/s)
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物理学において電力 (electric power) とは、単位時間電流がする仕事の量のことである。単位はワット (W)。直流電流では、電圧電流との積で表される。

なお、ある時間における電力の積算総和は「電力量 (electric energy)」 と呼び、電力とは区別している。

直流の電力[編集]

任意の負荷に供給されている電圧をE、電流をIとすると、以下のように表現できる。

  • P = EI

交流の電力[編集]

交流の場合、負荷によっては電圧と電流間で位相差が発生する場合があるので、直流電力のように電圧と電流の単純積で求めることができない。

はじめに、インピーダンスをZ、抵抗成分をR、リアクタンス成分をX、アドミタンスをY、コンダクタンス成分をG、サセプタンス成分をB、加える電圧複素ベクトル表示をV、電圧複素ベクトルの絶対値をVa、電流複素ベクトル表示をI、電流複素ベクトルの絶対値をIa、電流と電圧の位相差をθと定義して、以下の解説に移る。

なお整流回路などの非直線性を含む回路においては説明が複雑になるので、ここでは直線性回路の場合に限ることにする(非直線性回路については後述)。

複素電力[編集]

後述の有効電力を実値、無効電力を虚値に取った複素数値。Pを有効電力、P_rを無効電力とすると

  • P_c=P+jP_rと表記できる。
  • P_c=V\bar{I} (=\overline{\bar{V}I})と定義すれば、P_cの絶対値が皮相電力を、実部が有効電力を、虚部が無効電力を表す。この定義では、Im(P_c) > 0のとき、遅れ負荷を表す。

皮相電力[編集]

電圧の実効値と電流の実効値との積で、その意味は名のごとく表向き(見かけ)の電力。単位はボルトアンペア (VA) で量記号はS。

また、有効電力の2乗と無効電力の2乗とを足し合わせた値の平方根でも表現することができる。

  • S = |V||I| = \sqrt{P^2 + Q^2}

インピーダンスを利用して表すと

  • S = {|V|^2\over|Z|} = {V_a^2\over\sqrt{R^2 + X^2}}

アドミタンスを利用して表すと

  • S = |V|^2|Y| = V_a^2 \sqrt{G^2 + B^2}

有効電力[編集]

負荷で実際に消費される電力であり、単位はワット (W) で量記号はP。電力料金請求の対象量。

皮相電力と位相差のコサイン (cosθ) の積で求められ、特にcosθを力率と呼んでいる。位相差がゼロの状態、すなわちcosθが1の場合が理想的な状態であり、負荷の力率が1に近いほど「力率が良い」といい、逆にゼロに近いほど「力率が悪い」という。

  • P = S \cos\theta = \sqrt{S^2 - Q^2}

抵抗を用いて表すと、

  • P = {|V|^2 \over R} = {V_a^2 \over R}
  • P = |I|^2 R = I_a^2 R

コンダクタンスを用いて表すと、

  • P = |V|^2 G = V_a^2 G
  • P={|I|^2 \over G} = {I_a^2 \over G}

無効電力[編集]

負荷と電源とで往復するだけで消費されない電力であり、単位はバール (var) で量記号はQ。

皮相電力と位相差のサイン (sinθ) の積で求められる。誘導負荷(インダクタンスに由来)、容量負荷(静電容量に由来)から生じ、誘導負荷に由来する無効電力を「遅れ無効電力」、容量負荷に由来する無効電力を「進み無効電力」と呼んでいる。遅れ無効電力と進み無効電力のベクトルは互いに打ち消しあう位置関係をとっており、これら両者の無効電力が互いに等しい状態(すなわち、無効電力がゼロ)が、最も理想的な状態といえる。

  • Q = S \sin\theta = \sqrt{S^2 - P^2}

リアクタンスを用いて表すと(x>0は誘導性で、電圧に対して電流が遅れ)

  • Q = {|V|^2\over X} = {V_a^2\over X}
  • Q = |I|^2 X = I_a^2 X

サセプタンスを用いて表すと(B>0は容量性で、電圧に対して電流が進み)

  • Q = -|V|^2 B = -V_a^2 B
  • Q = -{|I|^2\over B} = -{I_a^2\over B}

無効電力の符号は、電力関係では次の意味で使うことが多い。

電圧を基準として、電流が遅れている場合、無効電力を正とする。誘導性負荷(インダクタンス)は無効電力を消費し、容量性負荷(静電容量)は無効電力を発生する。

非直線性回路の場合[編集]

上記は直線性回路とみなせる場合であるが、ダイオードなどの非直線性素子が入った回路においては説明が複雑となる。基本は瞬時電圧と瞬時電流から瞬時電力を求め、それを平均することによりまず有効電力Pを求める。

また、電圧Vの実効値と電流Iの実効値の積から、皮相電力Sが求められる。

  • S = |V||I|

さらに、皮相電力と有効電力、無効電力Qの関係式

  • S = \sqrt{P^2 + Q^2}

を変形すると、皮相電力と有効電力から無効電力が求められる。

  • Q = \sqrt{S^2 - P^2}

非直線性回路では、電圧が正弦波であっても電流に高調波成分を含むことになり、従来力率改善に用いられた同期調相機や電力用コンデンサでは十分な改善効果が得られないだけでなく、電力用コンデンサなどに障害を与える場合がある。特に、コンピュータなどに内蔵されるAC-DCコンバータや、省エネルギーのためのインバータ制御機器が問題になる[15]。このため、高調波成分を減少させ、力率を改善するための規制が行われることも多い。

固有電力[編集]

起電力Eとその内部抵抗rと外部抵抗Rにおいての電源より供給できる最大電力。または消費電力が最大になるときの最大電力。

電気工学では最大電力供給条件という。分野によってはマッチングとも。記号はPまたはPmax、単位はワット (W)。

rは内部抵抗、Rは外部抵抗として説明する。

直流電力の公式

  • P=VI=RI^2

これを1とする。

起電力

  • E=rI+RI

ゆえに

  • I=E/(r+R)

となる。これを2とする。

1へ2を代入

\begin{alignat}{2}
P&=R\left(\frac{E}{r+R}\right)^2 \\
   &=\frac{E^2}{r}\frac{1}{r/R+R/r+2} \\
  \end{alignat}

相加平均と相乗平均の関係を分母に用いるとP=E^2/4rという公式が導き出される。

物理学の関連項目[編集]

脚注・出典[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 専門用語では、「電力」と「電力量」は時間微分と時間積分の関係にある(近年の専門用語では「power」と「エネルギー」は違うものとされている。電気関係で、エネルギーは、専門用語では「電力量」という概念・用語になる。「電力」とは呼ばれていない。
    ただし、物理学史を丹念に探求するとわかることだが(最近の初学者向けの教科書しか読んだことがなく、歴史的な物理学文献を自力で読んだこともない初学者は知りもしないが)、実はまずヨーロッパの物理学の歴史では「vis ヴィス(ちから)」という概念があって、次にそのvisという用語で、力のことも仕事のことも区別がつかずごちゃまぜに論ぜられてきた歴史は長く、物理学者(自然哲学者)・学者ひとりひとり、言うことが異なっていて、さんざん議論が続いた長い時代があって、その後に古代ギリシャ時代の「エネルゲイア」という用語、"忘れられていた"感もある表現をわざわざ引っ張り出してきて、その用語を持ちだしたことで語彙数を増やして区別することで、段々と概念が整理されるようになってきたという歴史・いきさつがある、つまり元々基本用語の「vis」「force」「ちから」という用語は漠然と広範囲のことを指すために使われてきた歴史のほうがはるかに長い用語である。現代でも《ちから》や《エネルギー》の概念がごちゃごちゃになってしまう傾向があるのは、この言葉の長い歴史を踏まえれば、むしろ自然なことである。「ちから」を作為的にきわめて狭い意味で限定的に使うようになってきたのは、ごく最近の専門家の傾向でしかない。《ちから》という用語・概念はきわめて一般的、日常的な表現で、もともと広範囲のことを漠然と指す言葉だったので、そうした"ゆるやかな"用法まで、(混乱した物理学史も学ばず、最近になって作為的な用法をつくっておいて、自己反省もせず、あたかも自分だけが正義であるかのように)もともとの言葉の用法を責めてしまうことは、勉強不足・教養不足の面があり、いささか問題があるわけである。
  2. ^ 言うまでもないことだが、電力という無形のものも販売することができる。企業が商品として扱うのは、有形物でも無形物でもありうる。そして商法もそう定めている(例えばコンサルティング・ファームなどは、製品は作らず、ノウハウだけを売っている。床屋や美容室が売っているのは、髪を切りととのえる、という無形のサービスである。)。
    なお、会社名商号)に関しては、自社が売り物にしているサービスや製品を会社名(商号)に織り込むことは、世界中で広く行われている。例えば、コンサルティングを売りものにする企業は「○○○○コンサルティング株式会社」などとつけ、自動車を製造(販売)する会社は(かつて)「トヨタ自動車」などと社名をつけたり、碍子を製造・販売する会社が「日本ガイシ」と社名をつけたように、電力を販売する会社が「○○電力」と社名をつけることも多い。だが、そうした社名にしない場合もある。

出典[編集]

  1. ^ a b c 『改定版 物理学事典』「電力」
  2. ^ デジタル大辞泉
  3. ^ 広辞苑第五版
  4. ^ デジタル大辞泉
  5. ^ 広辞苑第五版
  6. ^ 電気学会『電気磁気学 電気学会大学講座』
  7. ^ a b 『電力自由化の経済学』はしがき
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m 『よくわかる最新スマートグリッドの基本と仕組み』6章-1 pp.134-135
  9. ^ 『図解入門ビジネス最新温暖化対策の基本と仕組みがよーくわかる本』p.78
  10. ^ 渡哲郎『戦前期のわが国電力独占体』
  11. ^ 吉松崇「電力会社が原発に固執するのは何故か」(『世界』岩波書店 第824号 2011年12月 292ページ)
  12. ^ 資源エネルギー庁による試算。「平成21年度 民生部門エネルギー消費実態調査」(有効回答数10,040)および「機器の使用に関する補足調査」(1,448件)を用いて日本エネルギー経済研究所が試算した数字である。
  13. ^ 資源エネルギー庁「省エネ 性能カタログ 2013年夏版
  14. ^ 資源エネルギー庁作成の節電に関するパンフレット
  15. ^ 電気設備に高調波が及ぼす影響”. 一般財団法人省エネルギーセンター. 2009年12月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月21日閲覧。

関連文献[編集]

  • 野村宗訓『電力:自由化と競争』同文舘出版、2000
  • 南部鶴彦『電力自由化の制度設計:系統技術と市場メカニズム』東京大学出版会、2003
  • 橘川武郎『日本電力業発展のダイナミズム』名古屋大学出版会、2004
  • 井上雅晴『電力自由化2007年の扉』エネルギーフォーラム、2004
  • 八田達夫、田中誠『電力自由化の経済学』東洋経済新報社、2004
  • 穴山悌三『電力産業の経済学』NTT出版、2005
  • 打川和男、内藤高志『図解入門ビジネス最新温暖化対策の基本と仕組みがよーくわかる本』秀和システム、2008