電柱

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
様々な電柱(カナダオタワ

電柱(でんちゅう)とは地上に架設された電線ケーブル類を支持する、状の工作物である。

概要[編集]

電柱には電力会社送電配電を目的に設置する電力柱(でんりょくちゅう)、通信会社通信用ケーブルを支持することを目的に設置する電信柱(でんしんばしら)、共用の共用柱(きょうようちゅう。「共架」とも言う)などがある。

今日では電線電話線の支持用としての印象が強いが、初期には電気通信用の電線の支持用に日本全国に普及したことから電信柱と呼ばれることも多い。東海地方では電信棒という呼び名も存在する。

最近では電線類地中化により、市街地中心部分では撤去作業が進んでいる。

電線ケーブルの端末となる電柱には電柱が電線ケーブル張力で倒れないように、支線(地面へ斜めにワイヤ固定)又は支柱(斜めに柱を入れて支える)あるいは支線柱(近くの土地に柱を立てて、互いをワイヤで繋いで支える)が設置されている。

歴史[編集]

北原[1]によれば、日本に初めて建てられたのは電信柱であり、電信の供用が始まったのは1869年の東京・横浜間である。この時代は電信から電話への技術的移行期であり、まず電信専用のものとして幹線のネットワークが1870年代に形成され、1889年には電話の一般への供用も開始されるようになった。電力会社が登場したのは1883年の東京電燈が最初であり、この当時は電信柱、電話柱、電気柱はそれぞれ「一定ノ法規ナク、専ラ慣例ニ依リ適宜ニ必要ノ土地及営造物ヲ使用シ、敢テ故障ナク円滑迅速ニ処理」されていたらしく正確な設置状況が分かる統計は部分的にしか判明していない。 この時代の電信電話は真空管の発明以前でもあり、多重通信の技術はほとんど存在せず、1回線につき1本の通信線が必要であった。 そのため1本の電信電話柱に数十本の架線がなされていた。

電柱の設置について、当初は権利関係が曖昧であり1880年代に設置が拒否される事例が急増した。1890年に制定された電信線電話線建設条例によって、電信と電話の道路占用に法的保護が与えられ、逓信省は道路へ自由に電柱を建設することがでるようになった。しかし、これは道路行政を管掌する内務省の道路監督権限の侵害となり、また道路交通の障害となる電柱も多かったため、内務省は1919年に成立した道路法で電信電話の道路占用に関する優遇措置を撤廃し、1936年および42年の内務逓信両省協定によって電信線電話線建設条例の問題点が全面的に解消された。

アメリカでは1844年にメリーランド州ボルチモアとワシントンDC間の40マイルについて電信回線が敷設された。これはサミュエル・モールスによりなされ、アメリカ合衆国議会が3万ドルをモールスに与えることで実施された。このケーブルは当初鉛により被覆されたものを7マイル分だけ地中に敷設してみたものの通信不良であり、鉛被覆を除いて電柱架設することで成功した。このさいワシントンニュースペーパー紙に1844年2月7日、700本の栗製の柱の買い付け公告が掲載された。これらの一部はクレオソートによる防腐加工がほどこされ、80年後にもまだ供用されていた[2]

目的[編集]

電柱の目的として、次のようなものがある。

電力供給用の設備[編集]

電力供給を行う電柱には、以下のような機器が取り付けられる。

形状[編集]

  • 分類
    • 木柱(廃止)
    • コンクリート柱(コン柱)
    • 鋼管柱(パンザーマスト、鋼板を丸めて作るため鋼板柱とも)
    • 複合柱(コンクリートの台柱に鋼板を組み立てたもの)
    • 鋼板組立柱(筒状に丸めてある2m程の鋼板を組み立てたもの)

電柱は従来製のものが多く、富山県では電柱材用のスギ品種である「ボカスギ」の栽培が盛んに行われていた。昭和初期ごろから耐久性や耐火性に優れたコンクリート製の電柱が製造されはじめ現在ではこれが主流となっている。

コンクリート柱はコン柱(コンちゅう)と略称される。現存する最古のコンクリート製の電柱は、函館市末広町にある1923年10月に函館水電(現在の北海道電力)によって建てられた四角錐形のものである。この他にも鋼管柱や鋼板組立柱などがある[3]

木製電柱には十分な防腐剤処理がされていることに着目して使用済みの木製電柱を回収し、ガーデニングオブジェ用として販売している業者がある。

電柱には昇り降りをするための足場となるボルトが一定間隔で設けられている。電柱を伝って高層階に侵入する泥棒も少なくないと言われている。

コンクリート柱は骨組みに鉄筋を使用した中空構造であり、型枠に鉄骨をセットしコンクリートを注入することで製作する。そのさい型枠ごと一分間に140回転ほど回転させ遠心力をかけることで中空構造を形成する(遠心形成)。10分ほど遠心力をかけると水分とコンクリート成分が分離し中空部分にのみ水分があつまり、これを抜くことで形成され、乾燥させたのち型枠から外し完成となる。コンクリート柱は約1.2トンの横曲げ強度(設置時におよそ風速60メートル程度の風圧に相当)に破壊されないよう設計されている。

力学[編集]

電柱の強度や設置距離、様態についてはいくつかの数学理論や多くの材料工学による研究が提供されているが経験学によるところも多く、さまざまな災害事象において充分な強度を保持しつつ経済性を維持することはなかなか困難な課題である。電力柱の場合、トランスだけでも100kgを優に超え、300kg-600kgになることもあり、また電線そのものの自重、強風による風圧や振動により増幅された破壊圧などが電柱にダメージを与える。また立地点の地盤の強弱や、架線先の建物が震災などにより倒壊するさいに引きずられ倒伏することなどがある。

材料力学の観点では以下の公式が知られている。電線の単位長さ重量をw(N/m)、電柱間距離をB(m)、最低点の張力をT(N)、中央のたるみをH(m)としたとき、

H={w\times B^2\over 8\times T}

このさいの電線の長さをS(m)とすれば S=B+{8\times H^2\over 3\times B}

日本国内の電柱での送配電電圧[編集]

数値は標準的なもの。

  • 送電区間
    • 22,000-66,000V(山間部の需要が少ない送電鉄塔の必要としない地域)
  • 配電区間
    • 3,000-6,600V(三相高圧配電線)
    • 100-200V-(400V)(低圧配電線)

一部の平野部・山間部・港湾部では22-66kV送電線が6.6kV高圧配電線の上に架けられている電柱を見ることができる。低圧配電線は東京電力は三相三線式と単相三線式を併用。(栃木支店管内のみ三相四線式)中性線は共用している。北海道電力や東北電力などでは灯動共用三相四線式を採用している。

  • 低圧線(低圧配電線)は、電灯と動力の2種類によって分類される。
    • 電灯・・・一般の家庭・街灯など(単相単線式100v,単相三線式100/200v,単相単線式200v)・・・柱上変圧器1台
    • 動力・・・小規模工場・三相モーターを用いる場所など(三相三線式200v,三相四線式415/240v)・・・柱上変圧器2台(V結線)または、3台(Δ-Y結線など)
    • 灯動共用三相四線式(異容量三相四線式)・・・変圧器2台のうち、大型の方を電灯・動力共用にし、小型の方を動力のみにする方法。低圧線は単相三線式と三相三線式を組み合わせて4線となる。

参照・・・第三種電気主任技術者試験参考書など

設置[編集]

電柱1本あたりの価格は8メートルのコンクリート製電柱の場合、約22,000(参考)である。通常は競争入札方式による調達のため価格はその時によって変わる。

電柱の下部には製の足場が取り付けられており、全長の6分の1ほどを地中に埋設することで設置する。電柱の設置間隔は一般的に約30メートルともいわれるが、あくまで目安である。地形などにより、あるいは設置後に移動することがあり必ずしも一定していない。

電柱の所有権は敷設者である電力会社、通信会社などにある。所有者はプレートなどで標示されており同じ電柱に複数の事業者の管理番号表示がある場合、東京電力の例では最も地面に近いところに標示のある事業者が所有者である。逆に、管理番号表示で共架またはと記載のある事業者は自社の所有物でない電柱である。また、柱上変圧器が設置されている電柱は電力会社の所有物であることが多い。

都市部など密集した地域では電力会社と通信会社が相互に同じ電柱を利用する場合が多く、これに加えて自治体の管理する街路灯も併設してあるケースも多い。

基本的に電柱に電線・通信回線などのケーブルを架設する場合は電柱の所有者の事前許可が必要であり、ケーブルを敷設する事業者は所有者に対し電柱の利用料(共架料)を支払う必要がある。また、地区によっては電力会社と通信会社が交互に電柱を建てることによって利用料を相殺している場合もある。ただし1本の電柱にあまり多くのケーブルを架設してしまうと、電柱の大きさ・強度によってはケーブルの張力や重みによって電柱が折れる・倒れるといった事故につながる可能性がある。そのため、電柱の所有者の判断により架設を拒否する場合もある。

電力と通信で共用されている電柱の場合、基本的には高い位置にあるのが電力線、低い位置にあるものが通信線(電話線、光通信ケーブル、ケーブルテレビの同軸ケーブルなど)である。

公道に敷設されている電柱はその道路管理者から道路占用許可を得て設置している。最近の共同溝は国・自治体の所有で電気・通信事業者等は占有使用権を取得し、占用料金を支払う。占用料金は各自治体などが条例によって設定しており、一例として群馬県沼田市では電柱1本につき一か月あたり133円である。私有地に設置されているものについては原則として私有地の所有者に対して占有料金が支払われる[注 1]

電柱無断利用問題[編集]

USEN創業者の宇野元忠はケーブルを一旦設置してしまえば行政も簡単には撤去できないと電柱の無断使用を組織ぐるみで行い、社会問題化した。この事件は、1970年代の歴代内閣の申し送り事項となった。

また有線ラジオ放送についても契約後の工事を迅速に行うため法令を無視して工事を行い、さらに酷い場合には既設電線を切断して自社のケーブル架設を優先させたりもした。

国会においても、「ハエを追い払って一時そのあたりにハエがいなくなったと思ったら、またハエがたかってくるといった、ゲリラ的と申しますか何と申しますか、まことにどうも言語道断な現状にあります」(1977年4月27日 衆議院逓信委員会)とまで言われている。

このことから、1985年8月20日に有線ラジオ法違反で宇野元忠社長他幹部が逮捕されている。

1994年に同社は関係正常化宣言を行い新規に敷設するケーブルの電柱使用に際し事前に許可を取る方針に転換するが、以後も過去に敷設したケーブルの電柱使用料の支払い等を巡り問題は次期社長・宇野康秀になるまで未解決のままとなった。

その後、康秀が社長に就任してからは非合法状態のままでは電気通信事業者としての認可を得られないなどの問題から本格的に事態の収拾が図られ2000年4月には電力会社・NTT等との間で過去に遡った清算が完了した。

電柱の森[編集]

愛知県名古屋市南区滝春町(名鉄常滑線大同町駅そば)にある中部電力系列の設備会社「トーエネック」の教育センターでは、電力架線作業員の研修用として立てられた、90本もの林立した電柱[注 2]を見ることができる。

電柱の関連画像[編集]

脚注[編集]

[ヘルプ]

注釈[編集]

  1. ^ 山林や田畑などを通過させる場合など。引き込みのさいに契約者(利用者)が自己所有する電柱や壁面、構内設備に架設しているような場合は除く。
  2. ^ 地図 - Google マップ航空写真)を参照のこと。

出典[編集]

  1. ^ 北原聡「近代日本の道路と通信 - 電信電話の道路占用 -」、『關西大學經済論集』第57巻第4号、関西大学、2008年3月、 269-289頁、 NAID 110007150555をもとにこの項目起筆。
  2. ^ James A. Taylor Timber Products Specialist Rural Electrification Administration U.S. Department of Agriculture Washington, D.C. (1978年). “Pole Maintenance-Its Need and Its Effectiveness”. American Wood Preservers' Association. 2011年4月7日閲覧。
  3. ^ 電気設備技術基準・解釈平成22/23年版 P100, 第3章 電線路 第58条

関連項目[編集]