リチウムイオン二次電池

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リチウムイオン二次電池
重量エネルギー密度 100-250 Wh/kg[1]
体積エネルギー密度 250-360 Wh/L[1]
出力荷重比 ~250-~340 W/kg[1]
充電/放電効率 80-90%[2]
エネルギーコスト 1.5 Wh/US$[3]
自己放電率 8% - 21 ℃
15% - 40 ℃
31% - 60 ℃
(月あたり)[4]
サイクル
耐久性

~1200サイクル

[5]
電圧 3.6 / 3.7 V
封口前の円筒形リチウムイオン電池 (18650)
東芝Dynabookのリチウムイオンポリマー二次電池パック
リサイクルマーク(リサイクル法による)

リチウムイオン二次電池(リチウムイオンにじでんち、lithium-ion rechargeable battery)とは、非水電解質二次電池の一種で、電解質中のリチウムイオン電気伝導を担う二次電池である。現在では、正極にリチウム金属酸化物を用い、負極にグラファイトなどの炭素材を用いるものが主流となっている。単にリチウムイオン電池リチウムイオンバッテリーLi-ion電池LIBLiBともいう。

なお、似た名前の電池には以下のようなものがある。

識別色は青(シアン)。

歴史[編集]

NASAの大型リチウムイオンポリマー二次電池
ファルタマイクロバッテリー社製リチウムイオンバッテリー。
アルトルスハイム()オートビジョン自動車博物館

背景[編集]

1980年代、携帯電話ノートパソコンなどの携帯機器の開発により、高容量で小型軽量な二次電池(充電可能な電池)のニーズが高まったが、従来のニッケル水素電池などでは限界があり新型二次電池が切望されていた。

1960年代、既にリチウムを電池に適用するアイデアはあった。 1970年代、エクソンのM Stanley Whittingham(Binghamton大学)が金属リチウム二次電池を紹介した[6]。Whittinghamは硫化チタンを正極に金属リチウムを負極に使用した。

1980年ジョン・グッドイナフ (J.B.Goodenough) と水島公一らがリチウムと酸化コバルトの化合物であるコバルト酸リチウム (LiCoO2) などのリチウム遷移金属酸化物正極を提案した[7][8]。これがリチウムイオン二次電池の正極の起源である。

1980年代には金属リチウムを負極活物質に用いた金属リチウム二次電池が製品化されたが、金属リチウムの化学活性がきわめて高いため、可逆性や反応性に問題があった。NTTのショルダー型携帯電話などで発火事故が相次ぎ[9]、実用化されたとは言いがたく広く用いられることはなかった。

このため金属リチウムを代替する材料の探索が進められることとなる。1981年に、三洋電機から黒鉛炭素質を負極材料とする二次電池の特許が出願された[10][11][12]。一方、1982年ラシド・ヤザミ(Rachid Yazami)らは固体電解質を用いて、黒鉛にリチウムイオンを電気化学的に吸蔵放出させることを実証した[13][14]

しかし、負極に黒鉛を用いると、当時の一般的な電解液(プロピレンカーボネート)の分解反応が起こり充電することができないという問題があった[15]

リチウムイオン二次電池の創出と実現[編集]

1983年吉野彰らは、2000年ノーベル化学賞を受賞した白川英樹博士が発見した電気を通すプラスチックポリアセチレンに注目し、1981年に有機溶媒を用いた二次電池の負極に適していることを見いだした。また、正極には1980年ジョン・グッドイナフ (J.B.Goodenough) らが発見したコバルト酸リチウム (LiCoO2) などのリチウム遷移金属酸化物を用いて、リチウムイオン二次電池の原型を創出した[16][17]

しかし、ポリアセチレンは真比重が低く電池容量が高くならないことと、電極材料として不安定である問題があった。

そこで、1985年、吉野彰らは炭素材料を負極とし、リチウムを含有するLiCoO2を正極とする新しい二次電池であるリチウムイオン二次電池(LIB)の基本概念を確立した[18][12][19]

吉野彰が次の点に着目したことによりLIBが誕生した。

  1. 正極にLiCoO2を用いると、
    • 正極自体がリチウムを含有するため、負極に金属リチウムを用いる必要がないので安全であること
    • 4V級の高い電位を持ち、そのため高容量が得られること
  2. 負極に炭素材料を用いると、
    • 炭素材料がリチウムを吸蔵するため、金属リチウムは本質的に電池中に存在しないので安全であること
    • リチウムの吸蔵量が多く高容量が得られること

また、特定の結晶構造を持つ炭素材料を見いだし[18][12]、実用的な炭素負極を実現した。

加えて、アルミ箔を正極集電体に用いる技術[20]、安全性を確保するための機能性セパレータ[21]などの本質的な電池の構成要素に関する技術を確立し、さらに安全素子技術[22]、保護回路・充放電技術、電極構造・電池構造等の技術を開発し、安全でかつ、電圧が金属リチウム二次電池に近い電池の実用化を成功させ、現在のLIBの構成をほぼ完成させた。

1986年、LIBのプロトタイプが試験生産され、米国DOT(運輸省、Department of Transportation)の「金属リチウム電池とは異なる」との認定を受け、プレマーケティングが開始された[23]

これらの開発により、現在のリチウムイオン二次電池の構成がほぼ完成され、1991年に吉野の勤務する旭化成ソニーなどにより実用化された。次いで1994年に、三洋電機から黒鉛炭素質を負極材料とするリチウムイオン電池が実用化された。

1998年頃より、電解質にゲル状のポリマーを使うリチウムイオンポリマー電池が市場に登場する。最初はポリマー電池開発メーカー・ベルコアの特許を購入して多くの会社が研究に参入したが、一社としてベルコアタイプのポリマーを実用化した会社は無いと思われる。

リチウムイオンポリマー電池は、外装に、従来のアルミニウムの缶ではなく、レトルト食品に使用されるアルミラミネートフィルムが使われていることが特徴で、三洋電機を始めとする各社から発表発売されている。万が一の事故時の反応が穏やかであるため、最近はハイブリッド自動車用バッテリーとしても利用されている。(市販車の例: ヒュンダイ・アバンテLPiハイブリッド)。自動車用リチウムイオン電池はリチウムエナジージャパンが三菱自動車のi-MiEV用に量産を開始している。電池メーカーの他に、トヨタ日産自動車ホンダなど自動車メーカーでも研究されている。

リチウムイオン電池はかつては日本メーカーのシェアが高く、9割以上を占めた時代もあった。三洋電機、三洋GSソフトエナジー、ソニー、パナソニック エナジー社日立マクセルNECトーキンなどが主なメーカーとして知られている。一方、韓国サムスンSDILG化学)、中国 (BYD)、台湾などで生産量が増えてきている[24]。朝日新聞によると世界市場シェアについては三洋電機を含めてパナソニック26%、韓国サムスン20%、韓国LG14%、ソニー11%、中国BYD6%、その他23%となっている。2013年の統計では、サムスンがトップ、国別でも韓国が一位であるが、需要が電子機器から自動車に移ってきており、現在の投資状況からすると、将来的には日本メーカーが逆転する勢いにある。

社会への貢献・影響[編集]

現在、リチウムイオン二次電池(LIB)は携帯電話ノートパソコンデジタルカメラビデオ、携帯用音楽プレイヤーを始め幅広い電子・電気機器に搭載され、2010年にはLIB市場は1兆円規模に成長した[25]。小型で軽量なLIBを搭載することで携帯用IT機器の利便性は大いに増大し、迅速で正確な情報伝達とそれにともなう安全性の向上・生産性の向上・生活の質的改善などに多大な貢献をしている。

また、LIBは、エコカーと呼ばれる自動車 (EVHEV・P-HEV) などの交通機関の動力源として実用化が進んでおり、電力の平準化やスマートグリッドのための蓄電装置としても精力的に研究がなされている。

構造[編集]

代表的な構成では、負極炭素正極コバルト酸リチウムなどのリチウム遷移金属酸化物、電解質炭酸エチレン炭酸ジエチルなどの有機溶媒 + ヘキサフルオロリン酸リチウム (LiPF6) といったリチウム塩を使う。しかし一般には、負極、正極、電解質それぞれの材料は、リチウムイオンを移動し、かつ電荷の授受により充放電可能であればよいので、非常に多くの構成をとりうる。

リチウム塩には LiPF6 の他、LiBF4 などのフッ素系錯塩、LiN(SO2Rf)2・LiC(SO2Rf)3 (ただしRf = CF3,C2F5)、などの塩も用いられる。

また、通常、電解液に高い導電率と安全性を与えるため、炭酸エチレン炭酸プロピレンなどの環状炭酸エステル系高誘電率・高沸点溶媒に、低粘性率溶媒である炭酸ジメチル炭酸エチルメチル炭酸ジエチル等の低級鎖状炭酸エステルを用い、一部に低級脂肪酸エステルを用いる場合もある。

リチウムイオン電池内の電気化学反応は正極、負極、電解質によって構成される。正極と負極はどちらも材料内にリチウムイオンがもぐり込むことが出来る。リチウムが正極や負極内部に移動する事をインサーションあるいはインターカレーションと呼び、逆にリチウムが出て行く事をエクストラクションまたはデインターカレーションと呼ぶ。電池内では充電時にリチウムは正極から出て負極に入る。放電時には逆にリチウムは負極から出て正極に入る。

作動時に外部の回路へ電子が流れる。化学式での単位はモルで記述できるように係数xを使用する[26]

正極での反応は

\mathrm{LiCoO_2} \leftrightarrows \mathrm{Li}_{1-x}\mathrm{CoO_2} + x\mathrm{Li^+} + x\mathrm{e^-}

負極での半分の反応は

x\mathrm{Li^+} + x\mathrm{e^-} + 6\mathrm{C} \leftrightarrows \mathrm{Li}_x\mathrm{C}_6

全体的な反応は限界がある。過放電によりリチウムコバルト酸化物が過飽和して酸化リチウムの生成に至る[27]。以下の反応が認められる。

\mathrm{Li^+} + \mathrm{LiCoO_2} \rightarrow \mathrm{Li_2O} + \mathrm{CoO}

5.2 V以上に過充電することによってコバルト (IV) 酸化物が生成することがX線解析で確認される[28]

 \mathrm{LiCoO_2} \rightarrow \mathrm{Li^+} + \mathrm{CoO_2}

リチウムイオン電池内においてリチウムイオンは負極や正極へ運ばれて金属やLixCoO2内のコバルトは充電によってCo3+からCo4+へ酸化され放電によってCo4+からCo3+へ還元される。

なお、当電池を含む二次電池一般では充電中に正極でアノード反応(酸化反応)が進むが、放電中(作動中)を基準と考え、正極をカソード (Cathode)、負極をアノード (Anode) と固定して呼ぶことが多い。

正極材料[編集]

リチウムイオン二次電池のコストは正極材料に使われる希少元素のコバルトがその7割を占めているが、近年、大幅な低コストを目指して正極材料にマンガンニッケルリン酸鉄などを使うものが開発されつつある。(ニッケルは希少元素だがコバルトより安い、マンガンは商業的にレアメタルとされているが厳密には希少元素ではない。)[29][30][31]

正極材料 平均電圧 重量毎の容量 重量毎のエネルギー
LiCoO2 3.7 V 140 mA·h/g 0.518 kW·h/kg
LiMn2O4 4.0 V 100 mA·h/g 0.400 kW·h/kg
LiNiO2 3.5 V 180 mA·h/g 0.630 kW·h/kg
LiFePO4 3.3 V 150 mA·h/g 0.495 kW·h/kg
Li2FePO4F 3.6 V 115 mA·h/g 0.414 kW·h/kg
LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2 3.6 V 160 mA·h/g 0.576 kW·h/kg
Li(LiaNixMnyCoz)O2 4.2 V 220 mA·h/g 0.920 kW·h/kg

負極材料[編集]

ソニーが1990年ごろよりリチウムイオン二次電池の商業生産を開始した当初、負極材料にはグラファイトではなく、グラファイト結晶構造が発達しにくい高分子を焼成して得られるハードカーボンが用いられた。

グラファイトとハードカーボンの放電特性は、グラファイトが放電初期から放電末期までほぼなだらかな平坦に近い電圧での放電をし、放電末期に急激に電圧を降下させるのに対し、ハードカーボンの場合は放電終了電圧まで均一に電圧が降下していくという異なる特徴を持つ。

このためハードカーボンでは電圧を測定することにより電池の容量を直接・正確に知ることができるが、電池電圧が安定しない欠点を持つ。これに対し、グラファイトでは電圧変化が少ないため電池電圧から電池の容量を知ることは難しいが、放電末期まで比較的安定して高い電圧を保つ事が可能となる。

ハードカーボンを使うものは1000回を越すサイクル特性を持つなど優れた点があるものの、そのままでは均一な電圧が得られないため、低電圧領域ではDC-DCコンバーターなどで昇圧する必要がある。そのため周辺回路が高価となってしまい、現在ではハードカーボン系の電池は一部のプロ用の機器だけに用いられているのみとなっている。

また、グラファイト、ハードカーボンに代わる次世代の材料として、スズ、ケイ素材料が実用化され始めている。スズやケイ素はリチウムとの合金化反応により、グラファイトの数倍から数十倍の容量を示すことが知られていたが、体積変化が激しく寿命を延ばすことが困難であった。現在は、炭素材料などとの複合化により容量と寿命の両立を行っている。

東芝は、負極材料に炭素系材料ではなく酸化物系材料としてチタン酸リチウム (LTO) を採用したリチウムイオン二次電池「SCiB」を開発しており、これは安全性が高く、低温特性に優れ、約6,000回以上の充放電サイクルが可能であるとされる[32]

負極材料 平均電圧 重量毎の容量 重量毎のエネルギー
黒鉛 (LiC6) 0.1 - 0.2 V 372 mA·h/g 0.0372 - 0.0744 kW·h/kg
ハードカーボン (LiC6) ? V ? mA·h/g ? kW·h/kg
チタネイト (Li4Ti5O12) 1 - 2 V 160 mA·h/g 0.16 - 0.32 kW·h/kg
Si (Li4.4Si)[33] 0.5 - 1 V 4212 mA·h/g 2.106 - 4.212 kW·h/kg
Ge (Li4.4Ge)[34] 0.7 - 1.2 V 1624 mA·h/g 1.137 - 1.949 kW·h/kg

電解質[編集]

水溶液系電解質はリチウムによって電気分解することから使えず、非水溶液系電解質が使用される。リチウムイオン電池内の液状の電解質はLiPF6,LiBF4或いはLiClO4のようなリチウム塩とエチレンカーボネートのような溶媒によって構成される。液体の電解質は正極と負極の間に満たされ充放電によってリチウムイオンが移動する。一般的に室温 (20℃) での電解質の導電性は 10 mS/cm (1 S/m) で 40℃ではおよそ30 - 40%で0℃付近ではさらに下がる[35]

しかし有機溶媒は正極で分解、変質しやすい。適切な有機溶媒を電解質に用いているにもかかわらず本質的に溶媒は分解し、相間固体電解質(SEI)と呼ばれる固体の層に変化する[36]。これはリチウムイオンの導電性を妨げる。相間は充電後の電解質の分解を防止する。一例としてエチレンカーボネートはリチウムより0.7 V高電圧で分解し高密度で相間は安定である。

製造工程[編集]

正極電極は、アルミニウム箔の両面にコバルト酸リチウムなどの活物質溶液を塗布・乾燥した後、プレスして密度を上げ製作する。負極電極は箔に炭素材料などの溶液を塗布・乾燥した後、プレスして密度を上げ製作する。

電極材料は、長い帯状で製造される電極箔に対して横向きの縞状に間欠塗布され、製品となる電池の大きさや形に合わせて裁断される。このうち、電極材料が塗布されていない部分は、電力を入出力するための接続端子(タブ)が溶接される部分になる。正極にはアルミタブ、負極にはニッケルタブが用いられる。

負極と正極の間にはイオンが移動できる多孔質の絶縁フィルムをはさみ、バウムクーヘンの様に正極と負極と絶縁フィルムが幾層にも重なるように巻く。

電池の形状が円筒形の場合、電極は円筒形に巻かれてニッケルメッキされた鉄製の缶に入れられる。負極を缶底に溶接して電解液を注入後、正極を蓋(トップキャップ)に溶接し、プレス機で食品缶詰缶の様に封口する。

角型電池の場合、電極は缶に合わせて扁平形に巻かれ、アルミ外装缶に正極が溶接される。また、角型の場合レーザー溶接で封口する。

電池組み立て完成後、活性化工程で充電することにより電池を活性化させ、充電・放電・室温放置エージング・高温放置エージング等を何度か繰り返し、電池選別のスクリーニングを行い出荷に至る。

円筒型電池のサイズ[編集]

円筒型リチウムイオン二次電池の規格(サイズ)は、直径(mm単位で2桁)+ 長さ(0.1mm単位で3桁)の計5桁の数字で表される。 2013年現在、市場に流通している円筒型電池の規格としては、26650/18650/17670/18500/17500/16340/14500/10440のものが存在している。なお、14500はいわゆる単三型乾電池に10440では単四型乾電池相当するサイズになる。

特長[編集]

利点[編集]

系の電解液を使用するため、水の電気分解電圧を超える高い電圧が得られ、エネルギー密度が高い[37]メモリー効果が小さく、携帯電話ハイブリッドカーなどの継ぎ足し充電をする機器に適している。電解液に水溶液を使用しないため氷点下の環境でも使用できる。

金属リチウム二次電池に対する最大の利点は、充放電の繰り返しに伴い電極にデンドライト状(樹枝状晶)リチウムが析出し、電極を短絡させる現象がほぼ発生しないことにある[37]

自己放電特性(充電エネルギーの保持特性)はニカド電池ニッケル水素電池より格段によい。

欠点[編集]

寿命を迎え、劣化・膨張したNEC携帯電話用リチウムイオン二次電池。左上は新品のもの

常用領域と危険領域が非常に接近していて、安全性確保のために充放電を監視する保護回路が必要である。これは、充電時に電圧が上昇する際に、正極および負極が極めて強い酸化状態・還元状態に置かれ、他の低電圧の電池に比べて材料が不安定化しやすいためである。過度に充電すると正極側では電解液の酸化・結晶構造の破壊により発熱し、負極側では金属リチウムが析出する。電池を急激に劣化させるだけでなく、最悪の場合は破裂・発火する。したがって、充電においては極めて高い精度(数十 mVのレベル)での電圧制御が必要である。

過放電では、正極のコバルトが溶出したり、負極の集電体のが溶出してしまい二次電池として機能しなくなる。この場合も、電池の異常発熱に繋がる。

エネルギー密度が高いために短絡時には急激に過熱する危険性が大きい。さらに、有機溶剤の電解液が揮発し、発火事故を起こす恐れがある。短絡は外力が加わることで電池内部で発生する場合もあり、衝撃に対する保護も必要である。

保存特性(保存状態での性能保持特性)はニッケル水素電池などより劣る。また、満充電状態で保存すると電池の劣化は急激に進行する。このため、他の蓄電池で一般的な充電方法であるトリクル充電はリチウムイオン電池には適していない。

また高い発熱特性、制御回路と保護回路が必須、1セルあたりの電圧が高いなどの理由から、乾電池の代替用途には不向きであり普及していない。(ニッケル・水素充電池#概要も参照)

安全性と対策[編集]

リチウムイオン二次電池は金属リチウムを用いないため、リチウム二次電池より安全に充放電できるように設計されている。しかし、リチウムイオン二次電池の危険性は、エネルギー密度の高さの裏返しであり本質的な問題でもあるため、電池そのものにも周辺回路にも様々な安全対策が施されている。これらの安全対策は特許公報などにより知ることができる。

こうした対策にもかかわらずノートパソコンや携帯電話において異常過熱や発火などがしばしば報告される。製造工程上の問題が疑われ、大規模な回収に繋がった例もある。具体的な事故例についてはリチウムイオン電池の異常発熱問題を参照のこと。

市販形態[編集]

利用法によっては発火・爆発する危険性があるため、市販時には複数の安全機構を内蔵した「電池パック」として供給され、マンガン電池やアルカリ電池のように電池セル単体の製品は市販されていない。ラジコン等のホビー用途の電源として、電子的な安全回路を持たない物が市販されているが、高価な専用充放電機での使用を前提としており、強固なケースに収められている。

例外的に、電子部品専門店などでは一般向けに電池セルを販売しているが、保護回路や短絡防止策を講じないで使用することは危険を伴う。また、ユーザーが電池パックを分解することは非常に危険である。

日本国内のウェブショップでは日本製と海外製の電子的な安全回路を内蔵した製品と電子的な安全回路を持たない製品が市販されている。主に186 50/17650/14500/10440等が電池セル単体で、1本¥900円位から¥2,000円位で入手が可能である。

構造上の対策[編集]

内部短絡などで温度が上がり、内圧が上昇した場合には電流遮断機能付き安全弁を内蔵することで爆発を予防している。この安全弁は正極の凸部にあり、一定以上の圧力がかかるとガスを外部に放出する。また、円筒形電池のトップカバーには、温度上昇により内部抵抗が増大するPTC素子が内蔵されており、温度上昇が起こった際には電流を電気的に遮断する構造になっている。

その他に、

  • 電池素子の中心にステンレス製のピンを入れて缶の折り曲げに対する強度を高める
  • 電極のタブその物やタブ取り付け部に絶縁テープを貼りタブのエッジからの内部短絡を防止する
  • 電極の巻き始め・巻き終り部全体に絶縁テープを貼りデンドライトの発生を抑制する(デンドライト形成には、リチウム金属だけでなく、アルミ箔などに含まれる不純物の亜鉛などの析出が原因となることもある)
  • 微小セラミック粉を電極やセパレータの一部或いはほぼ全域に塗布し絶縁層の強度を上げる[38]

などの様々な方法を用いてメーカーは安全性の確保に努めている。

保護回路[編集]

充電電圧の過充電制御は充電器だけでなく、電池パックにも制御回路を備えて管理している。また、過放電に対しては電池パック内の制御回路により、過放電状態にいたる前に出力を遮断する。

優位性の喪失[編集]

リチウムイオン二次電池の利点はニッケル水素二次電池に対する圧倒的なエネルギー密度の高さであり、リスクを甘んじるに相応の性能であった。だが、リチウムイオンが2000年代極初期に発生した一連の異常発熱・発火問題に対する対策に追われている間に、高性能化に開発リソースをつぎ込むことが可能であったニッケル水素は、容積比で1/2、重量比で1/3という「直接比較できるレベル」にまで性能差を縮めている。元々ニッカド電池のように強いウィークポイントではなかったメモリ効果も、さらに抑制する技術が開発されている。ニッケル水素二次電池は構造上、極端な小型化が難しいことから、リチウムイオン電池の市場は依然として確保されているものの、その一方で動力用や乾電池一次電池)の互換型充電式電池といった、現在ニッケル水素電池が主流を占める用途について、リチウムイオン電池がこれに取って代わることは、不可能になりつつある。

次世代二次電池[編集]

リチウムイオン二次電池の過充電特性の悪さを改良したリチウムイオンポリマー二次電池が開発され、一部では実用化されている。 また、さらなる性能向上への取り組みとして、正極材料としては LiNiO2, LiMn2O4 、負極材料としてはスズやケイ素とリチウムの合金を用いるものなども研究されている。

まだアイデアの域を出ないものの「カルシウムイオン電池」というのも研究されている(一般乗用車に搭載されているカルシウム電極電池、通称「MFバッテリー」とは異なる)。この電池は電池の電圧がリチウムイオン電池よりやや落ちる(理論電圧は満充電で3.5V程度)が、リチウムイオン 1mol を両極間でやりとりするのに対してカルシウムイオン 1mol を両極間でやりとりする場合、2倍の電流密度が得られる(2価のため)という強みがある。電解液には Ca(ClO4)2、Ca2[Fe(CN)6] などを非プロトン極性溶媒に溶解した液を用いる。電極材料としてはCaMn2O4/MoS2系が有望視されている。そのほか、マグネシウムナトリウムを使うアイデアもある。

ナノワイヤーバッテリー[編集]

ナノワイヤーバッテリーはリチウムイオン充電池の一種で2007年にスタンフォード大学のYi Cuiによって発明された。彼のチームの発明は従来の黒鉛の負極を珪素のナノワイヤーによって覆われたステンレスの負極で置き換える構成である。珪素は黒鉛の10倍のリチウムを貯蔵するので負極でのエネルギー密度が遥かに向上するため充電池の体積を減らす事が出来る。表面積が広いので充放電が早くなる。

概要[編集]

従来の炭素系負極を大きく超える容量を持つ事から珪素負極が研究(一部実用化)されているが、リチウムイオンの出入りによって珪素が数倍の体積に膨らむことから亀裂を生じやすく、充放電を繰り返した際の劣化(容量低下)を起こしやすい点が問題である。

さて、材料をナノサイズ化すると一般的に体積変化に対する柔軟性が増す事が知られている。このため現在研究されている珪素系負極はほぼ全て珪素をナノ粒子化し、それを導電性炭素などで繋いだ構造となっている。これに対し、スタンフォード大のCui博士のグループが開発した珪素ナノワイヤー系負極は、非常に長いナノワイヤーを電極として利用する事で電極末端までの電子の流れをスムーズにし、体積変化による劣化はワイヤー径がナノサイズである事で回避、さらにその非常に大きな表面積のためにLiイオンの侵入も容易で高速での充放電を可能とした。彼らの実験結果によれば、既存の炭素系負極に対し初期容量で10倍、その後の充放電でも8倍程度の容量を維持している[39]

なお、彼のグループはその後も様々なナノ材料を用いた電極開発を行っており、2011年にはナノワイヤー状の炭素により覆われた硫黄を作成し、正極材料としての優れた特性を報告している[40]。硫黄正極は現在使われているLiCoO2やLiFePO4といった正極材料の10倍程度の容量(単位重量あたり)を実現可能であり特に韓国系メーカーが中心となって開発を進めているのだが、サイクル特性が悪く充放電により急速に劣化する点が問題となっている。彼らの作成した炭素被覆硫黄ナノワイヤー正極では、炭素により覆われる事で硫黄の溶け出しを防止する事でサイクル特性が向上、約150回の充放電後でも700 mAh/gと非常に大きな容量が維持されている。

ただしこれら十分に制御されたナノ構造を量産段階の電池に応用するにはまだ困難も多く、こういった技術が即座に製品として市場に出回るわけでは無い。

リン酸鉄リチウムイオン電池[編集]

リン酸鉄リチウムイオン電池はリチウムイオン電池の一種である。正極材料にコバルトを使用する形式よりも資源的な制約が少なく、安全域が広く釘差しなどでも発火しにくいなどの特徴をもち、近年シェアを拡大している。代表的なメーカーはA123Systems、Changs Ascending Enterprise Co.,Ltd.(CAEC)、China Sun Group、BYDである。リン酸鉄リチウムイオン電池では従来のリチウムイオン電池とは異なる特徴がある。競合するコバルト酸リチウムイオン電池と比較した場合、放電できる電流が少ないが、燐酸鉄リチウムの一部の元素を置換することによって放電できる電流を改善した事例もある。[41]

リン酸鉄リチウムイオン電池はいくつかの欠点がある

  • 単位体積あたりの蓄電容量がコバルト酸リチウムイオン電池よりも少ない[42]
  • 多くのリン酸鉄リチウムイオン電池は鉛蓄電池やコバルト酸リチウムイオン電池よりも低い放電率である。リン酸鉄リチウムイオン電池はコバルト酸リチウムイオン電池よりも電圧が低くエネルギー密度が低いが、サイクル寿命に優れる。この欠点はコバルト酸リチウムイオン電池やLiMn2O4リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等よりも寿命が長く容量減少が緩やかであることにより相殺できる[43][44]

例: リン酸鉄リチウムイオン電池とコバルト酸リチウムイオン電池の1年後のエネルギー密度は、ほぼ同程度である。

仕様[編集]

  • 電圧 最小放電電圧= 2.8 V. 作動電圧= 3.0 V - 3.3 V. 最大充電電圧= 3.6 V.
  • 単位体積あたりの容量 = 220 Wh/dm³ (790 kJ/dm³)
  • 重量あたりの容量 = >90 Wh/kg[45] (>320 J/g)
  • 100% 放電深度 (DOD) サイクル寿命(いくつかは元の容量の80%まで) = 2,000 - 7,000 [46]
  • 陰極の組成 (重量比)
    • 90% C-LiFePO4, グレード Phos-Dev-12
    • 5% カーボン EBN-10-10 (層状黒鉛)
    • 5% PVDF
  • セルの仕様
  • 試験条件: ** 以下の条件はカソードにコバルトを使用したリチウムイオンのセルからリン酸鉄リチウムへ変更
    • 室温
    • 限界電圧: 2.5 - 4.2 V
    • 充電: C/4 から 4.2 V,の時に電位 4.2 V からI < C/24

リン酸鉄リチウムイオン電池の安全性[編集]

LiFePO4は元々正極材料がLiCoO2やスピネル系マンガンよりも安全である。Fe-P-Oの結合はCo-O間の結合よりも強力である。その為短絡や過熱等でも酸素原子が離脱するのは困難である。この酸化還元エネルギーの安定性はイオンの移動を助ける。(800℃以上の)加熱下において焼け落ちるだけでLiCoO2が同様の条件下において熱暴走する可能性があるのに対して結合の安定性はその危険性を減少させる。

リチウムがLiCoO2電池の正極からでる事でCoO2は非線形な膨張を受け構造の整合性に影響を与える。LiFePO4もリチウムの出入りによって同様に構造に影響があるがLiFePO4電池はLiCoO2電池より安定した構造である。

完全に充電された時はLiFePO4電池は正極にリチウムがないがLiCoO2電池の場合はおよそ50%正極に残る。

2012年、リン酸鉄リチウムイオン電池を採用した電気自動車BYD・e6交通事故を起こし炎上。炎上の原因にリチウムイオン電池が関与した可能性が、BYD幹部より示唆されている[47]

用途[編集]

電動工具電気自動車エアソフトガンラジコン等に使用される。

脚注[編集]

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    • 25 °C...[100% state of charge]...80% after 1 year
    • 40 °C...[100% state of charge]...65% after 1 year
    ..."
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関連項目[編集]

外部リンク[編集]