ロケット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

ロケット: Rocket)は、自らの質量の一部を後方に射出し、その反作用で進む力(推力)を得る装置(ロケットエンジン)、もしくはその推力を利用して移動する装置である。外気から酸化剤を取り込む物(ジェットエンジン)は除く。

原理上、真空中でも推力を得ることができるため、主に宇宙空間での移動手段として使われている。また、ミサイルの動力として軍事的に利用される場合も多い。

狭義にはロケットエンジン自体をいうが、ロケットエンジンを搭載して人工衛星などのペイロードを宇宙へ打ち上げるローンチ・ヴィークル(Launch Vehicle, 打ち上げ機)全体をロケットということも多い。

なお、推力を得るために射出される質量(推進剤プロペラント)が何か、それらを動かすエネルギーは何から得るかにより、ロケットは様々な方式に分類されるが、ここでは最も一般的に使われている化学ロケット化学燃料ロケット)を中心に述べる。

ロケットの語源は、1379年にイタリアの芸術家兼技術者であるムラトーリ(Muratori)が西欧で始めて火薬推進式のロケットを作り、それを『ロッケッタ(Rocchetta)』と名づけたことによる。

概論[編集]

ロケットの方式で良く知られているものとしては、その使用するエネルギー源から分類して、化学ロケット、電気ロケット原子力ロケットがある。

化学ロケットは、燃料の燃焼化学反応)によって生じる熱エネルギーを利用し、燃料自体を推進剤として噴射するもので、効率は最も悪いが利用しやすい。また、短時間に大きな推力を発生させることができる。実用化されたロケットのほとんどは化学ロケットである。

電気ロケットは、イオン推進など、推進剤を電気的に加速して噴射するものである。人工衛星宇宙探査機などのスラスターとして実用化されている。大きい推力を得ることは難しいが、長期間の使用に向く。

原子力ロケットは、推進剤を原子炉で加熱して噴射するもの、ロケットの後方で核爆弾を爆発させて推進力を得るもの(パルス推進)など複数の種類があるが、安全性の問題はもちろん、核兵器の宇宙空間への持ちこみを禁じた宇宙条約や宇宙空間での核爆発を禁止する部分的核実験禁止条約の制限により実用化されていない。オリオン計画ダイダロス計画といった構想が知られる。

なお、ロケットが推進する原理を「噴射したガスがロケットの後方の空気を押すから」と考える人もいる。かつてニューヨーク・タイムズが、この誤解に基づき真空中でロケットは飛べないと主張して、ロケット工学開拓者の一人であるロバート・ゴダードを批判する記事を掲載したという逸話がある。実際にはロケットは真空中でも推進可能であり、明らかな誤解である。これは作用・反作用の法則において、ロケットを質点A、空気を質点Bとみなした事による。こういう解釈だと、ロケット推進の作用を空気が受け止め、その反作用で推進力が生まれるので、真空ではロケットは推進不可能という結論になる。実際にはロケットの推進を作用・反作用の法則で説明する場合は、ロケットを質点A、ロケットの噴射するガスを質点Bとみなすべきなのである。つまりロケットとロケットの噴射ガスを同一の質点Aだとみなした事による誤解である。あるいはロケット自体とロケットの噴射ガスに運動量保存の法則をあてはめれば、真空中でもロケットが推進できる事は容易に納得できるはずである。こうしたロケットの原理を示す式が、ツィオルコフスキーの公式である。

化学ロケットでは、その最大の貨物は自らを宇宙空間まで運ぶ推進剤である。これは地球から長距離を航行しようとする際に大変な非効率をもたらすが、宇宙空間に中継地点を設けることである程度緩和されるのではないかと考えられている。アポロ計画の月着陸船が月から帰還するときに必要としたロケットが、地球から打ち上げられた際のサターンロケットに比べて驚くほど小さかったことからわかるように、重力が小さい場所から発進すればそれほど多くのエネルギーは必要としないのである。衛星軌道上に基地(宇宙ステーション)を設け、そこまで分割運搬した部品を組み立てて大きなロケットを建造し、そこから出発させるという方法などが考案されている。

また、ロケットを使わない静止軌道までの運搬方法として軌道エレベータなどが実際に検討されている。

新型のロケットを開発する場合、成否はロケットエンジンの開発にかかっていると言っても過言ではなく、計画遅延の原因はエンジン開発の難航が占める割合が大きい。

1960年代 - 80年代にかけて、米国はスペースシャトルのエンジン以外、新型の液体燃料ロケットエンジンの開発には消極的であり、欧州等に比べて出遅れた。その結果、1990年代からロシアが開発した液体燃料ロケットエンジンを導入してライセンス生産している。

推進剤による化学ロケットの分類[編集]

化学ロケットは燃料酸化剤を搭載しており、これらを燃焼させて高温・高圧のガスにして噴射する。燃料と酸化剤をあわせて推進剤という。この推進剤の形態から、ロケットは固体燃料ロケット、液体燃料ロケット、ハイブリッドロケットに大きく分類される。

固体燃料ロケット[編集]

固体燃料ロケットの模式図

固体燃料ロケットとは、常温で固体燃料酸化剤(の混合物)を用いるロケットで、古くは火薬、最近の例では合成ゴムと酸化剤を混合成型したものなどが使われている。

固体燃料は常温では飛散しないため管理(保管)が楽、構造が簡単な割に安価で大推力が得られる、体積が(液体燃料に比べ)小さいなどの利点を持つ。 反面、単位重量の推進剤で単位推力を発生させ続けられる秒数を示す比推力が悪いため効率が悪く、推力の制御が難しいこと、またいったん点火したら、燃料をすべて消費するまで燃焼を停止させるのはほとんど不可能であることなどの欠点を持つ。

こうした特性から、常に発射可能な状態で保管しておかなければならない軍事用途、大推力を求められる宇宙ロケットの一段目や補助ブースターに広く使用されている。

液体燃料ロケット[編集]

液体燃料ロケットの模式図

液体燃料ロケットは、液体の燃料と酸化剤を用いるロケットである。固体燃料ロケットとは違い、推力の制御が容易であること、いったん燃焼を停止させたものを再度点火するのが可能であることなどの長所を持つが、その反面、燃料を送り出すための高圧ポンプや複雑な配管システムが必要とされるなど、構造が複雑になり、その分高価になるという欠点も持つ。

初期には常温保存が可能なヒドラジン(燃料)と四酸化二窒素(酸化剤)、ケロシン(燃料)と液体酸素(酸化剤・極低温)、などが用いられたが、最近はより高い比推力が得られる液体水素(燃料)と液体酸素(酸化剤)の組み合わせが、各国の基幹ロケットの主流となっている(アメリカのスペースシャトル、ヨーロッパのアリアン5、日本のH-IIAなど)。

このロケットの場合、酸素と水素を化合させるだけなので、排気ガスは有毒物質を一切含まない水蒸気だが、実際には、液体水素・液体酸素エンジンだけでは離床時の推力が不十分なので、固体燃料の補助ロケットを使用する。この固体燃料補助ロケットの排気にはオゾン層や環境に悪影響を及ぼすハロゲン化合物が含まれる。ロケット自体の開発も困難を極める。

また、人工衛星の軌道制御や姿勢制御のための小型ロケットには、過酸化水素ヒドラジンを触媒で分解させて噴射する、構造が簡単な一液式ロケットも用いられる。

なお、一般に燃焼室の冷却には燃料自体が使用される。上記の液体酸素・液体水素のエンジンでは、燃焼室の温度は三千度にも達するが、これだけの高温に耐えられる素材は現在のところない。その対策として、燃焼室の壁やノズルの中部には細いパイプや溝が何百本も張りめぐらされており、推進剤をその中を循環させることにより蒸発潜熱により熱を奪うというシステム(再生冷却)になっている。

ハイブリッドロケット[編集]

ハイブリッドロケットは、化学ロケットの一種で、燃料と酸化剤がそれぞれ異なる相をもったロケットである。一般的には、固体の燃料と液体の酸化剤が用いられる。固体燃料ロケットの特徴である構造の簡易性と液体燃料ロケットの特徴である推力調整を可能とするが、同時に固体燃料ロケットと液体燃料ロケットの両方の欠点も併せ持つ。このため長らく実用化を見なかったが、スペースシップワンではハイブリッド・ロケットエンジンが採用された。

このため現在宇宙ロケットの分野では、効率が良い液体燃料ロケットが主流であり、固体燃料ロケットはブースターなどの補助推力として用いられる。一方、定期的に打ち上げる高高度気象観測ロケットや、発射準備時間が短いミサイル等では固体燃料ロケットが主流である。

形態によるロケットの分類[編集]

以下に、燃料ではなく形態によるロケットの分類を示す。これらの方式の効率を計算するときは全てツィオルコフスキーの公式に基づく。

単段式ロケット[編集]

最初期のロケットの姿であり、ペイロードを必要な速度・高度まで1基の打ち上げロケット(段)で運んでしまうロケットのこと。下記の多段式ロケットの対になる方式である。

単段式ロケットは、多段式ロケットに必要な切り離し装置などがないため構造が簡単で、製作技術や制御技術があまり高くなくても作れる。またロケットが小型であれば多段式にするより単段式ロケットの方が効率も良い。しかし大型ロケットの場合、時間が経って不必要になった空の燃料タンクやエンジンもずっと輸送することになり、効率が劣る。

V2ロケットなどの短距離弾道ミサイルや気象観測用ロケット、模型ロケットなど小型のロケットであれば、多段式にすると機構の複雑さから重量が増えてかえって非効率的になってしまうため、単段式ロケットが使われることも多い。

単段式ロケットの将来像として、単段式宇宙往還機も研究されている。

多段式ロケット[編集]

デルタ IV ヘビーは、1段、2段を使用する多段式ロケットであり、1段にコモン・ブースター・コア3基を使用するモジュラーロケットでもある。中央の1本は1段目として使用され、両側の2本は補助ロケットとして使用される。

ロケットが十分な速度を得るためには、移動体本体の質量は全体に比してできるだけ小さいことが望ましい。このため、空になった推進剤タンクやそれを燃焼させるエンジンを収容する部分は必要ない質量として切り離すという仕組みがコンスタンチン・ツィオルコフスキーにより考案され、現在も使われている。これを多段ロケットという。特に、化学ロケットは技術的な制約により、多段式でなければ衛星軌道に達する(つまり、第一宇宙速度を得る)ことは困難である。

この理屈で言うと、理論上は、非常に小さく区切られた燃料タンクと小型のロケットエンジンを、使い終わったら片っ端から切り離していくのが一番効率的になるのだが、実際には小型化にも限度があるし、あまり段数が多いと制御が難しくなり、切り離し装置の重量や容量も増えるため、構造効率が低くなり総重量全体に占める推進剤の割合が下がり、技術面で現実的ではない。[1]

現在主流のロケット(打ち上げ機)は、殆どが2 - 3段式の構成である。

なお、例えばペイロードを持たない3段式ロケットの場合、1段目は1段目自身と2段目、3段目のロケットも運ぶ必要があり、2段目は2段目自身と3段目を、3段目は3段目自身のみ運べば良い。

無重力空間のみで動くロケットの場合、各々の段の比推力は目的に応じて推進剤を選択することにより自由に決められるために1段目や2段目が非力で3段目のみ強力なエンジンを積むといったことも問題なくできるが、地球など天体の引力圏内にあるロケットの場合は、下のロケットが非力(具体的に言うと、上に載っているペイロードおよび全てのロケットの重量と自分自身の重量の和未満)だと飛び上がることができない。 そのために、後述するクラスター方式などと併せ、下の段ほど強力にして、上の段に行くに従い出力も小さくなっていく。

また、離床時に大きな推力が必要なので、下段には推力が高いが比推力の低い推進剤を、上段には推力は低いが比推力の高い推進剤を用いる。

モジュラーロケット[編集]

モジュラーロケットとは、打ち上げ用途に応じて構成する部材を交換できる多段式ロケットの形式である。規格化されたモジュールを組み合わせる事により製造費用、輸送費用、打ち上げ準備の支援費用を最小に抑えることができる。代表的なモジュラーロケットにはアトラス Vデルタ IVファルコン9アンガラ・ロケットがある。アトラス Vの第1段モジュールはコモン・コア・ブースター、デルタ IVの第1段モジュールはコモン・ブースター・コアと呼ばれている。

クラスターロケット[編集]

レール上を発射台に向かうソユーズTMA-3打ち上げ用のソユーズFG。クラスター化された5基のエンジンの計20個のノズルが見える。1段と2段を使用する多段式ロケットでもある。

クラスターロケットとは、多数のロケットエンジンを束ねて構成されるロケットのこと。多段式ロケットと共にツィオルコフスキーにより考え出された方式。

エンジン1基あたりの出力は高いほど望ましいのだが、新しい大型のエンジンを開発するには燃焼室の振動、耐久性、エンジン自体の質量増加、エンジンを作るのに必要なコストなどの問題を解決するため、莫大な時間と費用がかかる。 クラスター方式は手持ちの信頼性の高いエンジンを流用して推力を増やせる堅実な方法であり、ソ連がアメリカに先んじてスプートニクボストークを打ち上げるのを可能とした。 しかしエンジンの数が増えると制御が困難になり、N1ロケット(一段目は30基のエンジン)、ソ連の有人月旅行計画の失敗へとつながった。

旧ソ連のR-7(現在も直系の子孫であるソユーズロケットが使われている)が代表的なもので、一段目は5基のエンジン(ノズルは20個)を持つ。他のクラスターロケットには同じく旧ソ連製のプロトン(一段目に6基)やエネルギア、アメリカのサターンIおよびIB(1段目に8基)、ファルコン9(1段目に9基)日本のH-IIBロケット(1段目に2基)などがある。

また、この方法を発展したロケットとして1970年代にドイツでOTRAGが検討されたが技術的、射場の選定に関する政治的理由により中止された。

再使用型打ち上げシステム[編集]

再使用型宇宙往還機単段式宇宙輸送機スペースプレーンの開発が各国で進行中である。スペースシャトルブラン等一部が成功した。

ロケットの歴史[編集]

前近代[編集]

ロケットの歴史は古く、西暦1000年頃(?)には中国で、今のロケット花火の形態が発明され武器として利用されていた。1232年モンゴルとの戦いで使用されたという記録がある。その後、モンゴル人の手に渡り各地で実戦に投入された。14世紀半ばには中国の焦玉により多段式ロケットが作られた。

1792年にはインドマイソール王国の王子であるティープー・スルタンによって対英国、東インド会社とのマイソール戦争で鉄製のロケットが成功裏に使用された。英国は興味を持ち、19世紀までに開発した。開発の中心人物はウィリアム・コングリーヴであった。1814年の米国におけるボルティモアの戦いでは英国艦エレバス(HMS Erebus)からフォートマクヘンリーにむけてロケットが発射され、観戦していた弁護士フランシス・スコット・キーによってアメリカの国歌星条旗に歌われるに至った。同様に1815年ワーテルローの戦いでも使用された。(→コングリーヴ・ロケット

初期のロケットは回転せず、推力偏向がないので、命中精度が低かった。初期のコングリーヴのロケットでは長い棒をつけた。(現代のロケット花火に似ている)大型のコングリーヴのロケットは重量14.5kg、棒の長さは4.5mだった。

徐々に改良が加えられたが、ライフリングや鋼鉄製砲身等の大砲の改良により射程距離、精度が高まってくると、誘導装置のないロケットの使用は信号弾等、限定的なものになっていった。後年、カチューシャバズーカMLRSなどの形で復活する。

日本でも、鎌倉時代に元が攻めて来た(元寇)時に元軍により使用されたという。戦国時代には狼煙として使われ、江戸時代に入ると各地で伝承されてきた。埼玉県秩父市椋神社で毎年10月に行われるロケット祭り龍勢祭り)や静岡県藤枝市岡部町朝比奈、同静岡市清水区草薙滋賀県米原市等、各地で古くから龍勢(流星)の打ち上げが行われてきた。現在でも打ち上げられる龍勢は木材を竹タガで締め、内部に黒色火薬をつき固めた端面燃焼ロケットである。この龍勢祭りの起源は明確な記録がなく明かではないが、鉄砲伝来後の戦国時代以降の狼煙が、その後の平和な時代になって龍勢(流星)となって農村の神事・娯楽に転化したという説が有力である。

ツィオルコフスキー以後[編集]

近代のロケット、すなわち宇宙に行けるロケットが研究・開発されたのは、19世紀後半から20世紀である。

コンスタンチン・ツィオルコフスキー18571935年)はロケットで宇宙に行けることを計算で確認し、液体ロケットを考案した。このため彼は「宇宙旅行の父」と呼ばれている。ロバート・ハッチンス・ゴダード1882年1945年)は、1926年に世界初の液体ロケットを打ち上げた。このため「近代ロケットの父」と呼ばれている。世界初の液体ロケットエンジンはツィオルコフスキーのOR-2からセルゲイ・コロリョフ1907年-1966年)が中心となったソ連のGIRD-09の開発とされている。実用的な液体ロケットは、ウェルナー・フォン・ブラウン1912年-1977年)が中心となってナチス・ドイツで開発した、V2ロケットがはじめとされている。

第二次世界大戦後[編集]

発射台から離れるアポロ11号を乗せたサターンV 型ロケット1969年7月16日

ナチス・ドイツの崩壊前後、V2の開発に関わった人材の多くがアメリカに亡命した(ペーパークリップ作戦)。またこの混乱期にソ連もV2の技術を接収していた。冷戦に入り、1958年にソ連がスプートニクロケットによって世界初の人工衛星を打ち上げたことでスプートニク・ショックが起き、宇宙開発競争が始まる。1961年にはソ連がボストークロケットによりユーリイ・ガガーリンが搭乗したボストークの打ち上げを成功させ、世界初の有人宇宙飛行を成し遂げた。一方、1969年にはアメリカがサターンV 型ロケットによりアポロ11号を打ち上げて世界で初めて人類をに到達させた。

宇宙開発競争初期のロケットは、アメリカのレッドストーンやソビエトのR-7のように弾道ミサイルから弾頭を外し、代わりに人工衛星や宇宙船を取り付けたものであり、ロケットの打ち上げ技術はミサイル技術と等価であり、威嚇も含めた軍事的価値も高いために、抜きつ抜かれつの開発競争であった。

1960年代から1970年代までに日本欧州中国も人工衛星の打ち上げに成功し、世界の宇宙開発のプレイヤーはソ連(後のロシア)とアメリカと合わせて5極体制となった。日欧が先進的な宇宙探査機や人工衛星を打ち上げて宇宙科学分野で実績を積み上げていった一方、中国は1990年代以降に有人宇宙開発と宇宙の軍事利用に邁進し、2003年長征2号Fにより神舟5号の打ち上げに成功し、ソ連とアメリカに次いで世界で3番目となる有人宇宙飛行に成功した。

冷戦以後はアメリカとロシアの宇宙船は宇宙空間でドッキングを行ったり、協力して国際宇宙ステーションの建設にあたるなど宇宙開発惑星衛星探索への利用が進んだ。また、軍事情報における利用価値が認知され、現在に至るまで国家機密に属する非常に重要な技術として取り扱われている。特に偵察衛星の打ち上げは諜報活動において革新的な出来事であり、これまで諜報員偵察機を送り込んで危険を覚悟で行ってきた諜報活動のリスクを大幅に削減する成果をあげた。

また、GPS衛星の打ち上げ後は比較的正確な位置測定の手段としてカーナビゲーションシステムなどに応用され、宇宙ロケット関連技術は現代人の生活を支えるために欠かせない。

国家ないし国家連合による政策としての宇宙開発が財政面で苦しい局面に立たされている反面、民間によるロケット開発も盛んである。例えばスペースXファルコン9ドラゴン宇宙船を打ち上げて2012年から国際宇宙ステーションへの商業補給サービスを開始しており、ヴァージン・ギャラクティックスペースシップツーの弾道飛行による民間宇宙旅行を計画している。

さらに規模は小さくなるが、アマチュアによるロケット打ち上げの試みもある。2004年5月17日には20人ほどのアメリカ人による組織「Civilian Space eXploration Team」(CSXT)によって打ち上げられた[2]「GoFast」が、高度115 kmに到達しアマチュアロケット史上最高高度を記録した。一般人によるロケットとして歴史に名を残した。

現在、各国で次世代の打ち上げの主力となるロケットの開発が進行中である。それらは既存のエンジン等の部材を活用しつつこれまでの技術革新の成果を取り入れつつある。

ローンチ・ヴィークル[編集]

自国が開発したローンチ・ヴィークルによる初の人工衛星の打ち上げ[編集]

このリストは、自国が開発したローンチ・ヴィークル(打ち上げ機)で人工衛星を軌道上に到達させる能力を有したことがある国のリストである。多くの国は人工衛星を設計・製造する能力を有するが、自国が開発した打ち上げ機で人工衛星を打ち上げることができる国は、2012年12月時点で太字で示した9カ国(ロシア、ウクライナ、アメリカ、日本、中国、インド、イスラエル、イラン、北朝鮮)と1機関(欧州宇宙機関(ESA))のみであり、大多数の国々はこれら少数の国と機関に打ち上げ業務を依存することになる。

自国が開発したローンチ・ヴィークルによる初の人工衛星の打ち上げ
順位 ロケット 人工衛星 重量 (kg) 特記事項
1 ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦 1957 スプートニク-PS スプートニク1号 83.6 ソ連崩壊により打ち上げシステムはロシアとウクライナに継承。
2 アメリカ合衆国の旗 アメリカ 1958 ジュノーI エクスプローラー1号 13.7
3 フランスの旗 フランス 1965 ディアマン アステリックス 42 外国(アルジェリアアマギール射場)から初打ち上げ。
打ち上げ時のアンテナ破損により衛星との交信は確立出来なかった。
打ち上げシステムはESAに継承。
4 日本の旗 日本 1970 L-4S おおすみ 23. 8
5 中華人民共和国の旗 中国 1970 長征1号 東方紅1号 173
6 イギリスの旗 イギリス 1971 ブラック・アロー プロスペロ 65.8 外国(オーストラリアウーメラ試験場)から初打ち上げ。
後にELDOを経てESAに参加したが、打ち上げシステムの提供はELDO時代のみ。
独自の打ち上げシステムを構築しながら、それを放棄した[3]唯一の国である。
- ESA logo.svg ESA 1979 アリアン1 CAT-1 1,602 ELDOを発展的解消、仏・独・伊が中心となり10カ国により設立。
打ち上げシステムは主にフランスから継承。
海外領土(フランス領ギアナギアナ宇宙センター)から打ち上げ。
7 インドの旗 インド 1980 SLV ロヒニ 35
8 イスラエルの旗 イスラエル 1988 シャヴィト オフェク1号 155
- ウクライナの旗 ウクライナ 1991 ツィクロン3 ストレラ3(6機, ソ連製) 1,350 ソ連から打ち上げシステムを継承。
独立後の初打ち上げを記載しているが、ソ連時代のロケットを継続使用しているため順位には含めていない。
外国(ロシアのプレセツク宇宙基地)から初打ち上げ。
- ロシアの旗 ロシア 1992 ソユーズ-U コスモス2175号 6,600 ソ連から打ち上げシステムを継承。
ソ連の直接的な継承国家扱いとして順位には含めていない。
9 イランの旗 イラン 2009 サフィール-2 オミード 27 北朝鮮から技術提供を受けた可能性が指摘されている。
10 朝鮮民主主義人民共和国の旗 北朝鮮 2012 銀河3号 光明星3号2号機 100 北朝鮮の主張によれば、初めての軌道投入成功は1998年の白頭山1号による光明星1号の打上げであるが、この時は他国機関は軌道上の衛星を確認していない。
フランスのアステリックスと同様、軌道到達後の運用には失敗[4]
- 大韓民国の旗 韓国 2013 羅老 STSAT-2C 100 ロシアの全面的な技術支援の下で開発・製造されたロケットを使用。第1段はアンガラ・ロケットの第1段を輸出用に仕様変更した純ロシア製の機体で、技術移転を一切伴わないブラックボックスでの提供・運用である。
第2段などは韓国が開発しているが、輸入品と同等能力の国産第1段を保有しておらず自国単独では打ち上げができないため、自国開発の順位には通常含まない。
羅老 はロシアから購入した第1段3機を全て使用したため既に退役しており、自国開発での打ち上げ能力の獲得は2021年に初打ち上げ予定の後継機KSLV-2が成功するまで持ち越しとなる予定。
注釈
  1. 欧州ロケット開発機構(ELDO)はイギリス・フランスなどの打ち上げシステムを継承して、1968年から人工衛星を搭載したヨーロッパ1を、1971年にヨーロッパ2を打ち上げたが全て失敗している。
    この時の教訓はESAアリアンロケットに活かされている。
    なお、イギリス由来の主要技術はESAには継承されずに断絶した。
  2. イラクは1989年に最初の人工衛星の打ち上げに成功したと主張したが、軌道上に衛星は確認されていない。
  3. ブラジルは1997年と1999年、2003年にVLS-1で人工衛星の打ち上げを試みたが失敗した。
    2003年の失敗が死傷者を出す事故となったため計画が大幅に遅延したが、現在では2018年に最初の衛星の打ち上げを目指している。
  4. イタリアが開発を主導したヴェガロケットが2012年に人工衛星の軌道投入に成功したが、欧州宇宙機関の中で開発・運用されているためリストに含めていない。


2011年までの人工衛星打ち上げ実績[編集]

打ち上げ国 打ち上げ回数 成功数 成功率
ロシアの旗 ロシア
ウクライナの旗 ウクライナ
ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦
2,962 2,762 93.2%
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 1,482 1,313 88.6%
ESA logo.svg 欧州宇宙機関 (ESA) 0210 0195 92.9%
多国籍企業 0202 0193 95.5%
中華人民共和国の旗 中国 0164 0149 90.9%
日本の旗 日本 0088 0076 86.4%
インドの旗 インド 0035 0025 71.4%
フランスの旗 フランス 0012 0009 75.0%
イスラエルの旗 イスラエル 0008 0006 66.7%
イランの旗 イラン 0003 0002 66.7%
イギリスの旗 イギリス 0002 0001 50.0%
ブラジルの旗 ブラジル 0002 0000 0.0%
韓国の旗 韓国 0002 0000 0.0%

出典[5]

主なローンチ・ヴィークル[編集]

歴史的なローンチ・ヴィークル[編集]

現代のローンチ・ヴィークル[編集]

大気圏内でのロケット[編集]

ロケット推進の鉄道車両であるOpel-Sander Rak.3
1970年10月23日に1014.513 km/hの世界記録を樹立したブルー・フレーム

ロケットは推進力が強力であり、大気圏内において物体を飛行させるための推進力としても利用される。その最も一般的な適用例は気象観測ロケットで、高層大気の状態を観測するためにしばしば打ち上げられる。気象庁でも定期的に気象観測ロケット (MT-135) を打ち上げていたが、2001年 に運用を終了させた。

他に無重力実験や各種実験、天体観測用の試験装置を搭載したロケットが打ち上げられる場合もある。

ロケット飛行機[編集]

飛行機への適用としては、1928年6月11日にFritz Stamerの操縦によりLippisch Enteが飛行し、1929年9月30日に"ロケットフリッツ"("Rocket Fritz")の異名を持つフリッツ・フォン・オペルの操縦によりOpel RAK.1が飛行に成功、その後、第二次大戦前夜の1939年6月20日にErich Warsitzの操縦により液体燃料ロケットエンジンを搭載したHe 176が飛行に成功して、第二次世界大戦末期に盛んな研究・開発がなされたが、その典型例がナチスドイツの迎撃戦闘機Me163といえる。Me163 は推力1,700kgのヴァルターロケット1基により亜音速飛行を実現した。この戦闘機を参考に日本でも類似した局地戦闘機「秋水」が試作されたが、試験飛行中に墜落して終わった。ソビエトでは1942年にBI-1が飛行した。他にもミグI-270DFS 40DFS 194等があった。

また、固体燃料式のロケットもプロペラ機の離陸促進用補助ロケットとして各国で多数利用されたが、純然たる推進力として採用した航空機として有名なのが第二次世界大戦において使用された日本海軍の人間爆弾(特攻兵器)「桜花」である。本機はまずグライダーとして母機から切り離された後、攻撃を回避しながら敵艦へ体当たりするため推力800kgの火薬式ロケット3本を順次燃焼させながら最終的に時速800km程度で突入するというものであった。

ドイツでは無線誘導ロケット爆弾Hs 293などが開発され、実戦投入された。

その後、米軍の超音速実験機X-1においてロケットが推進力として使用されて飛行速度1.06マッハを実現した。「桜花」と同じく、航空機から小型航空機を発射するという方法がとられているが、これはロケットエンジンの燃料消費量があまりにも大きく、戦闘機サイズの燃料搭載量では自力で飛行目標を達成できないからであった。燃費が悪いロケットは大気圏内の航空機用推進力としてはあまり用いられなくなり、航空機の推進力は次第にジェットエンジンへと遷移していった。その後、一部の愛好家によって、実用機ではないがXCOR Aerospace社のXCOR EZ-Rocketのようなロケット飛行機が開発、飛行されている。他に地球以外の惑星でも類似の動力による飛行が検討されている。[6][7]

しかし、その後も宇宙ロケットと構造が類似している弾道ミサイルには液体燃料ロケットが採用され、瞬発力と大推力を有する固体燃料ロケットは弾道ミサイルのほか、前述の通り短射程のミサイルや気象観測無重力実験射出座席ゼロ距離発進MLRS無反動砲等にも多用されている。

ロケット自動車[編集]

比較的簡易な構造で急加速、高速が出せるので、1928年5月23日にベルリン郊外のアヴスサーキットでフリッツ・フォン・オペルの運転によりOpel RAK2が時速238kmの世界記録を樹立したり、その後もブルー・フレームBudweiser Rocket等、ロケットエンジンを動力とする自動車が速度記録に挑んでいる。

その他[編集]

またロケットスレッドや1975年に水蒸気ロケットを用いたドイツの磁気浮上式鉄道KOMET(Komponentenmeßtrager)による401.3km/hの記録の樹立や1978年には固体燃料ロケットを搭載したHSST-01による307.8km/hの達成等で使用された。

趣味・教材用のロケット[編集]

モデルロケット[編集]

モデルロケット発射の様子

一般人が趣味として気軽に打ち上げられる本格的なロケットとしてモデルロケットがある。これは燃料に小型のものは黒色火薬、中・大型のものはコンポジット推進薬を使用したもので、コンポジット推進薬はスペースシャトルやH2-Aロケットのブースターに使用される燃料と同じ燃料である。高度は百メートルから数十キロに達するものもある。

教材用ロケット[編集]

また、最近(1990年代ごろから?)では、ペットボトルに水と圧縮空気を充填し、水を圧縮空気の圧力で噴射する事によって推力を得るペットボトルロケットが、科学教材として広く利用されている。また、火薬を使って飛ばすモデルロケットも普及し始め、各地の中学校で「総合教育」として取り入れられている。また、JETEXタイガーロケッティのような模型飛行機向けのロケットエンジンもあった(JETEXは現在も継続中)。

航空法の適用[編集]

日本国内では航空法に基づき、ロケットを打ち上げる空域によっては、打ち上げる事が禁止される場合、または打ち上げる場合に事前に国土交通大臣への届出が必要な場合がある。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 一時期OTRAGというこの種の概念のロケットが試みられたが資金調達、政治的理由等により頓挫した。
  2. ^ アマチュアロケット
  3. ^ JAXA宇宙情報センター イギリス宇宙庁
  4. ^ ワシントン時事「北朝鮮『衛星』機能せず=落下まで数年―米専門家」(2012年12月18日)
  5. ^ 宇宙航空研究開発機構(JAXA)有人宇宙ミッション検討のミエル化チーム 『日本の宇宙探検』 JAXA、2012年3月8日、14-15頁。ISBN 978-4-905427-06-3
  6. ^ 火星飛行機を実現する!
  7. ^ 火星探査航空機翼型の設計探査

外部リンク[編集]