ダイダロス計画

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

ダイダロス計画 (Project Daedalus) は、英国惑星間協会 (BIS) が1973年から1978年にかけて行った恒星間を航行する原子力推進宇宙船の研究における航宙計画である。アラン・ボンド率いる多数の科学者エンジニアが参加した。名前はギリシア神話ダイダロスにちなんでいる。

概略[編集]

ダイダロスロケットの模式図

目的地は、太陽系から約5.9光年の地点にある、へびつかい座バーナード星(当時惑星が発見されたとの報告があった。後に誤りと判明)を想定した。

この航宙に使用する恒星間宇宙船ダイダロス号は地球軌道に(訳注: 「地球の衛星軌道」ではない)建設され、全長は195.3m(メートル)、54,000t(トン)の初期質量を持つ。そのうち燃料が50,000tで、実質的なペイロードは450tである。2段式の宇宙船として考えられていた。第1段は2.05年間動作し、宇宙船を光速の7.1%まで加速した後、放棄される。第2段は1.76年間で宇宙船を光速の12%まで加速して停止、その後は46年間の慣性飛行を行う。

このスペックは化学ロケットの能力を超えており、またオリオン計画で研究されたような、普通の核爆弾を爆発させるタイプの原子力ロケットの能力さえも超えていた。そこで、ダイダロスでは、電子ビームによる重水素/ヘリウム3レーザー核融合を使い、間断なく爆発を連続させる推進法が考えられた。1秒間に250個の燃料ペレットを核融合爆発させ、そこから生じたプラズマ磁場によるノズルにより制御される。

(原子力ロケットの詳細は原子力推進の記事を参照)

ダイダロスの第1段では、毎秒250回、2.5GJ(ギガジュール)の電子ビームを数g(グラム)の燃料に打ち込んで核融合を起こさせるが、このときの出力は100億kw(キロワット)= 136億PS(馬力)にも達する。サターンV第1段F-1ロケットエンジン5基の総出力を馬力に換算すると、約1億6千万馬力であり、それが現在までのところ人類が開発したものの中では最も高出力のエンジンであることと比較しても、性能がうかがえる。

他方、第2段は、電子ビームのエネルギー、燃料の質量、核融合による出力ともに、第1段よりほぼ1桁小さい。しかしプラズマの排出速度はほぼ等しい(約1万km/秒)。理想的な核融合燃料(重水素とヘリウム3の混合物)を使った場合、宇宙船の最適噴射速度は光速の8.94%(秒速2万6820km)である。しかしダイダロス計画では推進剤の噴射速度は最適値まで上げられず光速の約3%(約1万km/秒)と計算されている。核融合推進の中でも、重水素とヘリウム3の組み合わせを燃料とする方式が、もっともエネルギー効率が高い。核融合反応によって生み出されるエネルギーのほとんどすべて(93~100%)が推進力として有効な荷電粒子(プラズマ)に変わるためだ。平均推力は第1段が7.54MN(メガニュートン)、第2段が663KN(キロニュートン)である。

また、これらの推進システムは、第1段の質量が944t、核融合を起こす反応室の半径は50mであり、第2段の質量は220t、反応室の半径は20mである。核融合で発生したプラズマを押し返して宇宙空間に排出・噴射させるための磁場は、4組の超電導コイルによって発生させる。

その他の核融合パルス推進の研究[編集]

恒星間宇宙探査ではなく、未来の太陽系内輸送機関として考案されたものとして、ローレンス・リバモア国立研究所でロデリック・ハイド(ロードリック・ハイデ)、J・ナッコールズらが1971年から研究を続けていたレーザー・パルス核融合ロケットがある。

1983年にハイドがまとめた設計案によれば、この宇宙船の自重は486t(トン)、パルス周期は毎秒100発で最大推力は3MN(メガニュートン)となっている。太陽系のそれぞれの惑星が地球にもっとも接近している時に最大加速で飛行すれば、火星までは9日、木星までなら約40日、冥王星へも約154日で人員を送り届けることができるという。1500t(トン)の貨物を積んだ場合でも、その2倍強の時間しかかからない。

関連したフィクション[編集]

参考資料[編集]

  • 『最新宇宙飛行論 はるかなる未来文明への飛翔系』(発行:学習研究社・1991年11月1日発行)
  • 『最新宇宙技術論 「地球閉鎖系」から「宇宙開放系」へ-宇宙進出100年計画-』(発行:学習研究社・1989年7月1日発行)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]