原子力推進

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原子力推進(げんしりょくすいしん、英語: Nuclear propulsion)とは、原子力動力源とする推進方法のこと。実用化されていないものも含め、原子力船原子力飛行機、各種の原子力ロケット宇宙船などがある。

推進方式の種類[編集]

原子力蒸気機関[編集]

原子力蒸気機関は、熱源として原子炉を使用し、推進手段として蒸気機関を用いる方式。

原子力電気推進[編集]

原子力電気推進 (Nuclear electric propulsion) は、原子炉ないし原子力電池で発電(原子力発電)した電力を使用し、推進手段として電気による推進を用いる方式。1957年に建造されたレーニンおよびその後建造された原子力砕氷船の例がある(これは電動機による推進(電気推進 (船舶)))。プロメテウス計画では電気エネルギーによるロケット(電気推進)が計画・実験された。

熱核ロケット[編集]

熱核ロケット

熱核ロケット (Nuclear thermal rocket) は、核分裂炉又は核融合炉の高熱により直接推進剤(通常は水素)を加熱膨張させ、ノズルから噴出して推進する方式。熱核ジェットともいわれる。宇宙開発競争の最中、米ソ両国により研究が行われたが、実用化にはいたっていない。アメリカではNERVA計画で、サターンロケットの上段で使用するというコンフィギュレーションが検討された。ソ連ではN-1ロケットへの搭載を目指して[要出典]研究され、en:RD-0410の試験がセミパラチンスク核実験場で行われた。

核パルス推進[編集]

核パルス推進 (Nuclear pulse propulsion) は、ロケット後方で核爆発を繰り返し発生させ、その衝撃で推進する方式。オリオン計画ダイダロス計画で研究が行われた。原爆を使用する場合は核分裂パルス推進水爆を使用する場合は核融合パルス推進ともいう。

核融合ロケット[編集]

核融合ロケット (Fusion rocket) は、エネルギー源として核融合を使用する方式の総称。推進手段は電気推進や核パルス推進となる。

バサード・ラムジェット[編集]

バサード・ラムジェット (Bussard ramjet) は、核融合ロケットの燃料として星間物質水素を使用する方式。直径数kmもの巨大な集積装置(ラムスクープ)で水素を集める。

歴史[編集]

"Tory-IIC" 試作機
NRX A-1原子力ロケットエンジン
NERVA原子力ロケットエンジン

これはまず、アメリカ合衆国空軍原子力飛行機という技術が考案されていた。1955年9月から1957年3月まで原子力飛行機NB-36Hによる原子力搭載前飛行実験が47回行なわれたが、1961年には計画そのものが破棄された。1950年代後半から1964年7月までプルート計画として原子力エンジンを搭載した巡航ミサイルの開発が進められていた。ICBMの進歩により必要性がなくなり中止された。

ソ連も原子力飛行機を開発しており、改造Tu-95ターボプロップ戦略爆撃機に小型原子炉『クズネツォフNK-14原子力エンジン』を搭載したTu-119で試験していた。実際に飛行中に原子炉を稼動させ、1965年に初飛行したといわれている。また、一部情報によれば48時間連続して原子炉を稼動させることに成功したとされ、乗員は被曝せず生還できたという。

一時期、ソ連科学誌の記事からの連想か、ミヤシチョフ設計局の試作超音速戦略爆撃機M-50を”ソ連の原子力飛行機”とする誤報が流布し、(噂を利用するためか)1961年7月のツシノ航空ショーで実際には亜音速機だったM-50を公開し、ソ連の航空技術に対する過大評価と脅威を与える事に成功したが、やはり、実戦配備可能な原子力飛行機は開発されなかったとされる。

近年、原子力発電や原子力潜水艦の炉心のような『熱核反応型航空エンジン』ではなく、『核異性体転移』という現象をX線照射で人工的に制御する事で膨大な熱量を得て空気の薄い超高空でも飛行可能で、長期間燃料交換の必要がない『TIHE(Triggered Isomer Heat Exchanger)[1][2] 』と言う概念の原子力推進が研究されている。TIHE反応炉は、一般ジェットエンジンの燃焼室に当たる位置に置かれるモノで、ルテチウムハフニウムタンタルいずれかの核異性体で出来た細いチューブ状に成形された炉剤が鉛製反応炉に蜂の巣のように詰め込まれる。X線照射の調節により、始動・停止・スロットリング(推力調整)の確実な調整が可能である。

例えば、長時間偵察飛行を要求されるRQ-4 Global HawkクラスのUAVに採用した場合、一回の燃料補給(炉剤交換)で数週間から数ヶ月もの滞空時間が得られるが、核異性体製造には加速器などが必要なため莫大なコストが掛かり、微量とはいえ若干の放射能汚染は避けられないため、実用化にはほど遠い段階である。

平和利用としては、NASAで核分裂反応を利用するNERVA(Nuclear Engine for Rocket Vehicle Application)計画でロケット飛翔体応用原子力エンジン(原子力ロケット)という技術が考案されていた。原子力ロケットは燃焼実験(核反応でも燃焼と言う)も行われていた。ソビエトではRD-0410エンジンが試験されていた。2003年にNASAは探査機の用途にプロメテウス計画を始めたが2年後に中止した。

原子力推進の登場する作品[編集]

ほぼすべての作品において、「作中の未来では技術の進歩によって、放射能の問題は解消した」ことが暗黙の前提とされている。

2001年宇宙の旅
映画2001年宇宙の旅」のディスカバリー号は原子炉をエネルギー源としたプラズマ駆動である。アーサー・C・クラークの小説版によると推進剤は出力では液体水素が理想だが沸点が高くタンクからの流出ロスが少ないという理由で液体アンモニアが用いられている。原案段階では下記の「核パルス推進」が採用される予定だったが、核兵器に対する世論が激しさを増していたため、変更されたという(また情景があまりにも滑稽な上、キューブリックの前作「博士の異常な愛情」の通り、彼が水爆を本気で愛するようになったのではないか?という噂を懸念した)。
ディープ・インパクト (映画)
映画「ディープ・インパクト」に登場するアメリカとロシアが共同で開発した大型宇宙船「メサイア」が実験的な原子力推進システムを搭載しているという設定になっている。劇中でも「オライオン計画」に関する台詞が見られる。
マクロスシリーズ
マクロスシリーズに登場する可変戦闘機は熱核反応タービンエンジンを搭載し、大気圏内外での飛行を可能にしている。
ガンダムシリーズ
ガンダムシリーズのうち宇宙世紀に登場するほとんどの宇宙船やMSは核融合炉を動力源としている。またスペースコロニーの移動時や一部の小惑星は核パルスエンジンを搭載している。
プラネテス
木星往還船「フォン・ブラウン号」がタンデム・ミラー型D-3He核融合エンジンを搭載。また火星往復にサーキット・コイル型核融合エンジンが実用化されている。
ARIEL
ARIELに登場する女性型の巨大ロボット兵器ARIELは核融合炉と可変サイクル式スクラムジェットエンジンを組み合わせる事により、垂直離着陸および超音速巡航能力を実現している。

注・出典[編集]

  1. ^ 参考記事:Atomic Wings : A new mini-reactor revives the dream of a nuclear-powered aircraft, page 1
  2. ^ PDF資料:Analysis of the Application of a Triggered Isomer Heat Exchanger as a Replacement for the Combustion Chamber in an Off-the-Shelf Turbojet

関連項目[編集]

外部リンク[編集]