医用画像処理

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医用画像処理(いようがぞうしょり、: Medical imaging)は、臨床(病気診断および検査)や医学(解剖学的研究)のために人体(およびその部分)の画像を生成する技法およびプロセスを指す。人間に限らない「生体画像処理」の一部であり、放射線医学内視鏡検査、サーモグラフィー、医用写真撮影、顕微鏡検査などとも密接に関連する。本来、画像を生成するよう設計されていなかった測定手法や記録手法(脳波脳磁図)も一種の地図のように表せるデータを生成することから、医用画像処理の一形態と見ることもできる。

画像診断学(放射線診断学)において扱う医用画像には、単純X線画像、CT、MRI、超音波断層画像(US)、血管造影(血管撮影)などがある。画像を(時には撮影も行い)医学的に解釈する医師を放射線診断医あるいは画像診断医と呼び、医師の専門分野のひとつである。診療放射線技師は診断用医用画像の撮影を行う。

撮影された画像に対し必要に応じた画像処理を施すことは、医用画像処理の一分野であるが、画像診断医あるいは診療放射線技師のいずれもが行うことがある(MRIあるいはUSについては臨床検査技師が行うこともある)。画像診断医と診療放射線技師を、あるいは画像診断学と医用画像処理を混同した記述をしばしば見るが誤りである。

科学的研究としては、その観点に応じて医用生体工学医用物理学医学などの一分野に位置づけられる。撮影機器や画像生成機器の研究開発は医用生体工学医用物理学情報工学の領域である。そういった機器の利用や画像の解釈は、放射線診断学や撮影部位に対応した医学の下位分野(脳科学循環器学精神医学心理学など)の領域である。医用画像処理のために開発された様々な技術は、他の科学産業にも応用されている。

医用画像処理は、人体に傷をつけずに人体内部の画像を生成する技法であると見なされることが多い。そういった意味では、医用画像処理は数学逆問題の解法と見ることも出来る。つまり、原因(生体組織の特性)が効果(観測された信号)から推定されるのである。超音波検査の場合、超音波を発することで組織内のエコーから内部構造を知ることができる。X線の場合、骨や脂肪などでX線の吸収率が異なることを利用して画像を得る。

主な画像処理技術[編集]

蛍光透視法[編集]

蛍光透視法(Fluoroscopy)はX線写真と同様な手法で人体の内部構造の画像をリアルタイムで得られるが、定常的なX線の入力を必要とする。内臓を視覚化するため、造影剤としてバリウム、ヨウ素、空気などが使われる。蛍光透視法は、画像誘導式の手術でも使われる。

核磁気共鳴画像法 (MRI)[編集]

核磁気共鳴画像(MRI)は、強力な磁石を使って人体中の水分子にある水素原子核(1つの陽子)を分極/励磁させ、発生する信号を空間的に符号化することで人体の画像を得る。MRI は2種類の電磁場を使用する。第一は非常に強力な静磁場(数テスラ単位)であり、水素原子核を分極させる。第二はそれよりもやや弱い傾斜磁場であり、空間の符号化のために時間と共に変化する(1KHzオーダーの変化)。そして、水素原子核に極めて強い高周波(要するに電波である)を当てて、放出される高周波を受信し画像化する。CT と同様、MRIは人体をスライスにしたような二次元の画像を生成するため、断層撮影技術の一種でもある。最近では、複数の二次元画像を合成したり、はじめから三次元データを収集することにより、三次元のイメージを生成することが可能である。CT とは異なり、MRIは放射線を使わないため、健康への危険性が少ないとされている。例えば、X線やCTと異なり、強い磁場による人体への影響は特に知られていないため、撮影回数に制限がないとされている。組織が高周波によって過熱する危険性が指摘されてはいるが、体内あるいは皮膚表面に金属が存在しない限り実際上問題となることはない。ペースメーカーなどの金属が体内にあると検査を受けられない。これはペースメーカー内のICが電磁波によって破壊されたり、誤作動したりといった事例が報告されているためであり、過熱が原因ではない。これらの危険性は検査手順や機器の設計によって制御される性質のものではなく、静磁場強度に依存するものである。CT と MRI はそれぞれ組織の異なる特性を検知するため、画像も全く異なったものとなる。CT では、X線の組織における吸収の程度のみが画像の濃淡を決定する要素であり、組織コントラストは一般にあまりよくない。MRI は水素を含む組織しか見られないため、カルシウムでできている骨は写らないが、軟部組織コントラストは一般にCTよりよい。このため、脳の内部や関節の診断に適している。

MRI は1980年代から使われ始めた。そのため、強力な磁場の長期的な影響はまだ判っていない。

シンチグラフィ[編集]

シンチグラフィでは、病気と関連した生物学的活動領域を検出するためにガンマ線カメラの画像を使用する。短命な核種(I-123、Tc-99mなど)を患者に投与する。このような核種自体をそのまま投与することにはあまり意味がないことが多く、これら核種に、生体の各組織に親和性のある物質を結合させることにより、種々の画像を得る。

ポジトロン断層法 (PET)[編集]

ポジトロン断層法シンチグラフィと同様に、18F などの短命な核種を腫瘍に吸収されやすいグルコースなどの物質に似た物質に組み込んで投与する。PET装置はCT装置と組み合わせて使われることが最近多くなりつつある。これにより、PET で検出された腫瘍について、CT で得られる解剖学的構造で位置を確定することができる。

X線投影[編集]

X線は、肺の病理学的変化を検出するだけでなく、骨折の範囲を診断する場合にも使われる。バリウムのような造影剤を使うと、胃や腸の構造を視覚化することができ、潰瘍やある種の大腸癌の診断が可能である。

断層撮影[編集]

断層撮影(Tomography)とは、人体の断面の画像を得る手法である。以下のような手法がある:

リニア断層撮影
最も基本的な断層撮影法。X線発生装置は人体上を A 地点から B地点まで移動し、同時に受像部が B地点から A地点まで移動する。このときの焦点に診断したい部位が来るよう配置する。このとき、焦点面の上下はぼやけてほとんど写らなくなる。現在ではCTに置換され、ほとんど使われない。
Poly断層撮影
複雑な断層撮影法。装置を円形・楕円形・8の字など様々に動かす。これも現在では CT に置換され、ほとんど使われない。
狭角断層撮影
リニア断層撮影から派生した手法であり、限定された弧を描くような動きをする。現在でも経静脈的尿路造影(IVU)の際の腎臓の視覚化に使われることがある。
オルソパントモグラフィ(OPT)
あごのX線画像をあたかも骨を切り開いたかのように平面に撮影することができ、歯学分野でよく使われる。
コンピュータ断層撮影(CT)
X線を使って、人体の360度方向からのデータを得、そのデータをコンピューター処理することにより断層像を得るものである。最近はらせん状に人体をスキャンするもの(らせんCTあるいはヘリカルCT)が主流となっている。単純なX線写真よりも被曝量が多いが、得られる情報ははるかに多い。

超音波[編集]

1.5 から 15.0 MHz超音波を使い、組織からの反射によって二次元画像を取得するもので、リアルタイムに観察することが可能である。腹部臓器、心臓、胎児、脚の静脈などの画像を得るのに使われる。CT や MRI に比較して解剖学的な情報量は少ないといった記載をしばしばみるが誤りであり、リアルタイムに観察できるという点は非常に大きな利点である。また、磁場や放射線よりも超音波は安全であると考えられている。また、運用も比較的安価で、扱いやすい。ドップラー効果を利用して血流速度等を測定することも出来る。

生物学的画像技術[編集]

電子顕微鏡[編集]

電子顕微鏡は、電子線をあてることで非常に微細な構造を高解像度で視覚化する。組織病理学細胞小器官を調べるのに使われる。単に高解像度の像を得る他、免疫組織化学的な手法と合わせて特定物質の局在を探るなどの用途もある(免疫電子顕微鏡法)。近年では共焦点レーザー顕微鏡や蛍光色素の発達に伴い利用は減少しているが、一部の診断では必須とされている。

三次元画像の生成[編集]

CTスキャン結果を3Dアニメーションにしたもの

最近では CT や MRI や超音波の画像を三次元画像に変換するソフトウェアが登場している。CT や MRI は本来二次元の画像をフィルムに映し出すものであった。三次元画像を生成するには複数回の撮影を行って、それらをコンピュータを使って統合して三次元モデル化する。三次元超音波画像も同様の手法で生成される。

重要な構造を詳細に視覚化できるため、三次元視覚化手法は各種診断や外科治療にとって重要な情報源となっている。結合双生児の分離手術でも三次元画像が重要な情報源となっている。

その他の(研究中も含む)三次元画像技術には以下のものがある:

これらの一部は未だ研究段階にあり、臨床には使われていない。

検査以外の画像処理[編集]

ニューロイメージングは、ブレイン・マシン・インターフェースのように何らかの障害のある人が外部の機器を制御するという実験に使われている。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]