H-IIAロケット
| H-IIA | |
|---|---|
H-IIA19号機の打ち上げ
|
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| 基本データ | |
| 運用国 | |
| 開発者 | NASDA →JAXA 三菱重工 |
| 運用機関 | NASDA(1 - 5号機) JAXA(6、8、10 - 12号機) RSC(7、9号機) 三菱重工(13号機以降) |
| 使用期間 | 2001年 - 現役 |
| 射場 | 種子島宇宙センター内吉信射点 |
| 打ち上げ数 | 22回(成功21回) |
| 開発費用 | 1,532億円[1] |
| 打ち上げ費用 | 85 - 120億円 |
| 原型 | H-IIロケット |
| 発展型 | H-IIBロケット |
| 公式ページ | JAXA - H-IIAロケット |
| 物理的特徴 | |
| 段数 | 2段 |
| ブースター | 2基/4基 |
| 総質量 | 289 t / 445 t(4基) |
| 全長 | 53 m |
| 直径 | 4 m |
| 軌道投入能力 | |
| 低軌道 | 10,000 kg /15,000 kg(4基) 300 km / 30.4度 |
| 太陽同期軌道 | 3,600 kg(夏)/4,400 kg(夏以外) 800 km / 98.6度 |
| 静止移行軌道 | 4,000 kg/6,000 kg(4基) 250 km x 36,226 km / 28.5度 |
H-IIA ロケット(エイチツーエー ロケット)は、宇宙開発事業団(NASDA)と後継法人の宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工が開発し、三菱重工が製造および打ち上げを行う、人工衛星打ち上げ用液体燃料ロケットである。JAXA内での表記は「H-IIAロケット」で、発音は「エイチツーエーロケット」であるが、新聞やテレビなどの報道では、「H2Aロケット」または「H-2Aロケット」と表記され、「エイチにエーロケット」と発音される場合が多い[2]。
目次 |
概要 [編集]
H-IIAロケットは、急激な円高により失われた日本のロケットの国際競争力を回復させるため、先代のH-IIロケットを全体にわたって再設計し、海外の安価な製品の利用や構造の簡素化などにより、打ち上げ費用の削減と信頼性の向上を目的に開発された。また、開発中に起きたH-IIロケット5号機と8号機の相次ぐ失敗や、H-IIAロケット6号機の失敗による信頼性の低下を回復するため、運用開始後にも改良が行われた。
1996年に開発が開始され[3]、開発費(H-IIからの改良開発費)は約1,532億円であった[1]。H-IIAと同じくH-IIが技術的基盤となるH-IIBの開発費の約270億円と合わせた開発費は1,802億円であり、同じく前任者から改良開発されたデルタ IVの開発費2,750億円、アトラス Vの開発費2,420億円と比較してみても安価に開発されているといえる[1]。
打ち上げ費用は構成によって異なるが約85億円 - 120億円であり、H-IIロケットの140億円 - 190億円に比べると大幅に低減されている。 静止トランスファ軌道への打ち上げ能力は3.8 - 5.8 tであり、H-IIロケットと同等 - 約1.5倍の能力である。
2001年夏に試験機1号機が打ち上げられて以来、22回中21回の打ち上げに成功している。打ち上げ成功率は95.5%。なお、日本が打ち上げた衛星打ち上げロケットをH-IIAも含めて累計すると、92回中80回の打ち上げに成功している。累計成功率は86.95%(ペイロードの成否を勘案しないロケット側の成功率、2013年1月27日時点)[4]。
特徴 [編集]
コア機体は、液体水素と液体酸素を推進剤とする1段目・2段目を組み合わせた、2段式ロケットとなっている。打ち上げ時に十分な推力を得るために左右2基の固体ロケットブースタ(SRB-A)を有し、搭載する衛星・探査機等の質量に応じてさらにSRB-Aや固体補助ロケット(SSB)を追加して柔軟に対応する事ができる。複数の衛星を同時に打ち上げて、個別の軌道に投入する事もできる。
基本的には H-II の設計コンセプトを踏襲するが、全体にわたり調達・組立・打上げ費用を下げるための見直しが行われている。また、部品技術の国産化にこだわらず、有利であれば輸入品も用いた。これは H-II で国産化にこだわったことから後退しているように見えるが、技術を習得したからこそ有利に購入できるという面もあり、自主技術を持つこと自体は依然有意義であるとされる。また、部品点数・作業工程の低減は信頼性の向上にも貢献する。これらの費用改善を行った結果、H-IIロケットで最高約190億円であった打ち上げ費用を、世界市場の相場である100億円未満まで下げることができた。
H-IIからの主な変更点を以下に記す。
- 第1段エンジンLE-7Aの液体燃料配管系の簡素化による部品点数・溶接箇所など作業工程削減。
- 第1段推進剤タンクドーム(両端の半球形状の部分)を、H-IIでの溶接組立から、輸入品の一体成型品に変更。
- 第2段エンジンLE-5Bも推進力の向上とともに部品点数・作業工程の低減。H-IIロケット5号機の事故で問題となったろう付けの施工箇所なども大幅削減されている。
- 第2段推進剤タンクを一体型から独立型に変更。一体型だと隔壁を通して保存温度の異なる液体水素と液体酸素が接するため温度管理が複雑になっていた。また第2段推進剤タンクはデルタIIIロケットの第2段や、デルタIVロケットの4 m型第2段と共通で、いずれも液体水素タンクを三菱重工業が、液体酸素タンクをボーイングが製造している。
- 固体ロケットブースタを4分割構造から一体型に変更したうえ、ストラットを追加して推力を第1段の最下部に伝達する構造に変更し、第1段の簡素化も図った。
- 1/2段の段間部をアルミ合金から炭素繊維複合材に変更し軽量化
- 搭載電子機器の小型・軽量化と配線のデータバス化による配線数の削減
- アンビリカル(地上設備とロケットを接続する管や配線)を、H-IIでは射座点検塔(射点脇の構造物)(PST)と接続していたが、H-IIAでは移動発射台(ML)と接続するように変更した。
- 人工衛星の取り付けを、H-IIでは射点で行っていたが、H-IIAでは大型ロケット組立棟(VAB)で行うこととした。
- 前述のアンビリカルおよび衛星搭載場所の変更により、H-IIAは大型ロケット組立棟(VAB)でアンビリカル接続と衛星搭載の双方を終えて、打ち上げ半日前に大型ロケット組立棟(VAB)から射点へ移動すれば良いことになった。また、H-IIは衛星を外さなければ大型ロケット組立棟(VAB)に戻ることができなかったが、H-IIAは打ち上げが中止されても短時間で大型ロケット組立棟(VAB)に戻ることが可能になった。
- 同様に、射点設備が大幅に簡素化された。H-II用に建設された第一射点には、アンビリカル接続や衛星取付を行い、観音開き式にロケット全体を格納することもできる射座点検塔(PST)と呼ばれる構造物が建設されたが、H-IIA用に増設された第二射点は、気象観測用の簡素な塔を設置するだけで済んだ。第一射点の射座点検塔(PST)はH-IIAでは使用しないため、観音開き式の部分を撤去した上で、打ち上げ時の機体監視用カメラの設置や、打ち上げ号機の掲示などに使用されていたが、老朽化が進んだため2010年11月から2011年3月にかけて解体された[5]。
構成と諸元 [編集]
主要諸元一覧 [編集]
| 段数(Stage) | 第1段 | 固体ロケットブースタ (1本あたり) |
固体補助ロケット (1本あたり) |
第2段 | 衛星フェアリング (4S型) |
|---|---|---|---|---|---|
| 全長 | 37.2 m | 15.2 m | 14.9 m | 9.2 m | 12.0 m |
| 外径 | 4.0 m | 2.5 m | 1.0 m | 4.0 m | 4.07 m |
| 質量 | 114 t | 76.6 t(長秒時) 75.5 t(高圧) |
15.5 t | 20.0 t | 1.4 t (衛星アダプタ、 分離部含む) |
| 使用エンジン | LE-7A | SRB-A3 | キャスターIVA-XL | LE-5B | - |
| 推進薬重量 | 101.1 t | 66.0 t(長秒時) 64.9 t(高圧) |
13.1 t | 16.9 t | - |
| 推進薬 | 液体酸素 液体水素 (LOX/LH2) |
ポリブタジエン系 コンポジット固体推進薬 |
ポリブタジエン系 コンポジット固体推進薬 |
液体酸素 液体水素 (LOX/LH2) |
- |
| 推力 | 1,098 kN(112 tf) (長ノズル) 1,074 kN(109.5 tf) (短ノズル) (真空中) |
2,262.5 kN(231 tf) (最大推力) |
745 kN(76 tf) (最大推力) |
137 kN(14 tf) (真空中) |
- |
| 比推力 | 440 sec (長ノズル) 429 sec (短ノズル) (真空中) |
283.6 sec | 282 sec | 448 sec (真空中) |
- |
| 有効燃焼時間 | 390 sec | 116 sec(長秒時) 98 sec(高圧) |
60 sec | 530 sec | - |
| 姿勢制御方式 | エンジンジンバル 補助エンジン |
ノズルジンバル | 無し | エンジンジンバル ガスジェット装置 |
- |
| 主要搭載 電子装置 |
・誘導制御計算機 ・横加速度計測装置 ・レートジャイロ パッケージ ・制御電子パッケージ ・データ収集装置 ・テレメータ送信機 |
・電動アクチュエータ コントローラ ・駆動用電源分配器 |
- | ・誘導制御計算機 ・慣性センサユニット ・電動アクチュエータ コントローラ ・データ収集装置 ・テレメータ送信機 ・レーダトランスポンダ2台 ・指令破壊受信機2台 |
- |
- 第1段機体 LE-7Aエンジン
LE-7AエンジンはH-IIAロケットの第1段エンジンで、推進薬に液体水素と液体酸素を用いた、国産の大型液体燃料エンジンである。H-IIロケットの第1段エンジンとして開発されたLE-7エンジンを元に、性能を維持しつつ費用縮減が図られている。
リフトオフの約5秒前に点火され、第2段との切り離しまでの約390秒間燃焼する。リフトオフ前に点火する理由は、エンジンに何らかの異常があった際に、燃焼を停止して打ち上げの中止を行えるためである。SRB-AやSSB等の固体燃料を用いたロケットの場合は、一度点火すると燃焼の停止が出来ない。
開発当初、下部ノズルスカートを装着した長ノズル構成では、エンジン起動時に過大な横方向推力が発生する問題があり、短ノズルのみを使用して回避していた。そのため、静止トランスファ軌道(GTO)投入能力に換算して約400 kgの性能低下が起きていた。8号機、9号機および11号機以降では、新たに開発された完全再生冷却型の長ノズルが使用され、本来の性能が発揮できるようになっている。また、液体水素ターボポンプ、液体酸素用ターボポンプには、使用開始後にも改良が加えられている。(LE-7Aエンジンも参照)
9号機以降では、SRB-Aを4基使用した打ち上げ時の推力に耐えられるように、機体構造の強化が行われている[6]。また、15号機(202型)の1段コア機体構造にはSRB-A・4本装着用(202/204共用)を使用し、2本装着専用に比べ質量が約600 kg大きくなっている[7]。
- 第2段機体 LE-5Bエンジン・LE-5B-2エンジン
LE-5BエンジンはH-IIAロケットの第2段エンジンで、第1段と同様に液体水素と液体酸素を推進薬とした国産の液体燃料エンジンである。H-Iロケットの第2段エンジンとして開発されたLE-5エンジンを元に、H-IIロケット第2段用のLE-5Aエンジン、そしてこのLE-5Bエンジンと、徐々に性能向上が図られてきている。先代のLE-5Aエンジンと比べると、大幅な費用縮減も図られている。
燃焼圧の変動を抑えた改良型LE-5BエンジンであるLE-5B-2の開発が進められ、14号機から使用されている。(LE-5Bエンジンも参照)
再々着火が可能で、第2段のバッテリーを50分から5時間に長寿命化する改良が2013年に完了すれば、衛星を静止トランスファ軌道(GTO)の遠地点近傍に投入できるようになったり、複数の衛星を個別の軌道に投入したりすることが可能となる[8]。実際の運用で再々着火が使用された事はないが、第2段単体での再々着火試験は試験機2号機で主衛星分離後(打ち上げ後1時間40分)に行われた。
14号機では長時間運用に向けて、軌道上における第2段ロケット推進系の技術データを取得する飛行実験を行うため、燃料の蒸発を防ぐために第2段の表面が白色になっている。
H-IIAロケットはHOPE-Xの打上げ形態案(H2A1024)のように、第2段を使用せずに第1段ロケットだけを使用することも可能である。
- 固体ロケットブースタ SRB-A・SRB-A改良型・SRB-A3
SRB-AはIHIエアロスペースが製造する固体ロケットブースタ。H-IIロケット用のSRBでは高張力鋼4分割構造をボルト接合していたが、これを炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の一体成型に変更し、大幅な費用縮減が図られている。
H-IIAロケットにおいては、第1段の両脇にSRB-Aを2基装着する構成を基本とし、衛星質量に応じて4基構成をとることも出来る。カウントダウンX-0と同時に点火され、H-IIAロケットを離床させるためのもっとも大きな推力を発生する。約100 - 120秒間燃焼した後に2基ずつ分離される。11号機では、初めてSRB-A改良型の4基構成での打ち上げが行われた。
6号機ではSRB-Aのノズル部分の破損が打ち上げ失敗の原因となったため、7号機からは信頼性向上のために最大推力を落として燃焼時間を延長した長秒時型のSRB-A改良型を使用していた。そのため静止トランスファ軌道(GTO)投入能力に換算して約300 kgの性能低下が起きていた。15号機からは本来の能力を回復したSRB-A3が使用されている。(下記の技術的課題も参照)
SRB-A3は高圧燃焼型と長秒時燃焼型のモータ2種類を運用しており、2本1組で使用する場合には必要な打上げ能力に応じて2種のモータのどちらかを選択し、4本1組で使用する場合にはロケット機体の加速度制限等により長秒時燃焼モータを適用する[9]。
- 固体補助ロケット(SSB) キャスターIVA-XL
アメリカにある世界最大の固体燃料ロケットメーカー、ATKランチ・システムズ・グループのキャスターIVA-XLを元に、H-IIAロケットに取り付けるためのモータケースの改造や、信頼性向上のためにノズルスロート部の材料変更などを行ったものである。H-IIAロケットでは、搭載する衛星の質量にあわせて、SSB無し、2基、あるいは4基構成を取ることができる。特にLE-7Aの長ノズルの開発が遅れていた初期の打ち上げやSRB-A改良型を使用していた時には、その推力不足を補う目的でも活用されていた。その後、2007年度にH-IIAロケットの打ち上げ業務が移管された三菱重工は、H-IIAのラインアップ整理のため、移管後に新規に受注した機体からはSSBの使用を廃止している[10]。
SSBは、リフトオフと同時ではなく、約10秒後に空中で点火される。これは、射点を燃焼ガスから守るための措置である。SSB4基構成の場合は、リフトオフ後の約10秒で最初の2基が点火され、最初の2基の燃焼終了後に、残りの2基が点火される。最初の2基は、燃焼終了後すぐには分離せずに、空気が十分に薄くなる高度に達した後に、SRB-Aとともに分離される。損失が大きいこの手順を取る理由は、機体に掛かる動圧の低減と、空気抵抗による分離シーケンスでのリスクを最小限に抑えるためである。なお、質量約4.65 tのそれまでに打ち上げた衛星の中で最も重いひまわり7号を打ち上げた9号機、およびその後の12号機[要出典]では、長秒型SRB-Aとの組み合わせでの打ち上げ能力を最大限確保するために、4基のSSBを同時に燃焼させる手順に変更され、リフトオフ約10秒後に最初の2基が、20秒後に次の2基が点火され、4基が同時に燃焼する。
- 液体ロケットブースタ LRB
初期の構想では、さらに打ち上げ能力を増強するため、上記のSRB-Aを2基を使用した標準型に、LRBを1基、あるいは2基を装着する増強型の構想があった。この構想はH-IIBロケットの開発に置き換えられた。(詳細は下記のラインナップの変遷を参照のこと)
LRBは第1段機体を基本とし、LE-7A 型ロケットエンジンを2基クラスタ化して搭載し、ブースタとして使用するもので、燃料タンクや搭載機器、エンジンなど多くを第1段と共通化する予定であった[11]。技術試験衛星VIII型(きく8号)や宇宙ステーション補給機(HTV、こうのとり)、HOPE(ホープ)はLRBを使用して打ち上げる予定であった。
- 衛星フェアリング
川崎重工が開発・製造するフェアリングで、打ち上げ時の振動や大気圏を抜けるまでの空気抵抗、空力加熱から衛星を保護するためのカバーである。ロケットの先端部分に取り付けられている。大気圏を通過した後の高度約150 km付近で、ロケットの重量を出来るだけ軽くするために(2段式は上部のみ)分離される。海面に落下し浮かんでいるフェアリングは回収船で海上回収される。回収されたものの一部は、フェアリングを活用した商品開発をする企業等に無償で提供された事もある[12]。
ロケット本体と同じ直径4mの4S型のほか、大型衛星用で直径5mの5S型や、2個の衛星を同時に軌道投入できる4/4D-LS型、4/4D-LC型、5/4D型、以上合計5種類のフェアリングから選択する事が可能である[13]。増強型の構想ではHTV用に5S-H型フェアリングの使用も考慮されていたが、H-IIBロケットの開発が決定したためH-IIAロケットでは用いられない。
フェアリングの種類によって打上能力も違ってくる。H2A204型では4S型と4/4D-LC型で850 kg(GTO)の差がある[14]。
- 衛星分離部
衛星とロケットとを結合するために使用され、衛星側とはクランプバンドまたは分離ナットで結合され、一方ロケット側にはボルトナットで固定される。衛星の大きさや放出機構に合わせて、十数種類の中から選択される。クランプバンド解放時の衝撃が他のロケットより大きかったため、基幹ロケット高度化に合わせて解放時方式を変更し衝撃を低減する。
- サブペイロード
打ち上げ能力に余裕がある場合は、サブペイロードとして1辺50 - 70 cmの小型衛星を最大4個まで搭載可能である。さらに、1辺10 - 30 cmの超小型衛星に関しては50 - 70 cmの衛星1機分の空間に3 - 4機搭載可能である。これを利用して、15号機では主衛星のいぶきの他に1辺50 - 70 cmの衛星3機と15 - 30 cmの衛星4機の合計8基を同時に打ち上げている。
- JPOD
20 cm以下の公募衛星に対して標準化した分離機構を提供するため、17号機では初めてJ-POD (JAXA Picosatellite Orbital Deployer)と呼ばれる箱型の装置が小型衛星のスペースに搭載された。10 cm級の衛星であれば田の字型に並んだ4つの発射孔を持つJ-PODが使われ、20 cm級の衛星であれば1機のみ搭載できるJ-PODが使われる[15]。17号機では前者のタイプが使われ、公募衛星のうち3機が1つのJ-PODから放出された。なおJ-POD自体は20 kg程度の重量を占め、役目を終えると切り離される。
- アビオニクス
21号機までは、RX616リアルタイムOSと32ビットMPUのV70を採用したNECが開発した誘導制御計算機を搭載していたが、部品の枯渇に対応するため新たにほぼ全てのアビオニクスが新規に開発された。新たなアビオニクスのうち、JAXA情報・計算工学センターが開発した新型のTOPPERS/HRPリアルタイムOSと、NECが開発したV70より10倍高性能の64ビットMPUのHR5000を採用した新型誘導制御計算機、新型慣性センサユニットなどは、H-IIBの3号機で初めて適用されH-IIAでは他のアビオニクスも加えて22号機から適用される。新型誘導制御計算機は高速・小型・軽量・モジュール化が図られており、新型MPUボードはイプシロンロケットも含んだ今後のJAXAロケットの共通基盤となる[16]。
打上げ能力 [編集]
打上げ能力はSRB-Aや固体補助ロケット(SSB)・液体ロケットブースタ(LRB)の数により変化する。ただし第1段エンジン(LE-7A)のノズルの長短や、SRB-Aの高圧型、長秒時型の違いによっても能力が変化するため、同じ形式でも時期によって打上げ能力が違う。
計画時のLRBを使用したH2A212型・H2A222型は開発が中止されている。また、打ち上げ関連業務が三菱重工に移管されてからは、SSBを用いるH2A2022型とH2A2024型は受注していない。2010年7月現在、H2A202型・H2A204型が運用中である[17]。
| 型式名※4 | H2A202型 (運用中) |
H2A2022型 (廃止予定) |
H2A2024型 (廃止予定) |
H2A204型 (運用中) |
H2A212型 (開発中止) |
H2A222型 (開発せず) |
H-IIBロケット (参考) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ロケット質量 | 289 t | 321 t | 351 t | 445 t | 410 t | 520 t | 551 t |
| 第1段 | LE-7A | LE-7A | LE-7A 2基 | ||||
| 第2段 | LE-5B | LE-5B | LE-5B | ||||
| LRB | N/A | 1基 LE-7A 2基 |
2基 LE-7A 4基 |
N/A | |||
| SRB | 2基 | 4基 | 2基 | 4基 | |||
| SSB | 0 | 2 | 4 | N/A | N/A | N/A | |
| 地球重力脱出 月・惑星探査等 |
2,500 kg | - | - | - | - | - | - |
| スーパーシンクロナス トランスファ軌道[18] 遠地点高度80,000km 近地点高度500 km 軌道傾斜角約20度 |
2,500 kg | - | - | 4,400 kg | - | - | - |
| 標準静止トランスファ軌道 (GTO)※1[19] 遠地点高度36,226 km 近地点高度250 km 軌道傾斜角28.5度 |
4,000 kg (3,800 kg)※3 |
4,500 kg (4,200 kg)※3 |
5,000 kg (4,700 kg)※3 |
6,000 kg (5,800 kg)※3 |
7,500 kg | 9,500 kg | 8,000 kg |
| ロングコースト 静止トランスファ軌道※1[20] 近地点高度2,700 km 軌道傾斜角20度 |
2,900 kg (改良後) 1,700 kg (現行) |
- | - | 4,600 kg (改良後) 2,300 kg (現行) |
- | - | - |
| 太陽同期軌道(SSO) 高度800 km 軌道傾斜角98.6度 |
3,600 kg (夏季) 4,400 kg (冬季) |
- | - | - | - | - | - |
| 低軌道(LEO) 高度300 km 軌道傾斜角30.4度 |
10,000 kg | - | - | 15,000 kg | 17,000 kg | 20,000 kg | 19,000 kg |
| HTV軌道※2 遠地点高度300 km 近地点高度200 km 軌道傾斜角51.7度 |
- | - | - | 12,000 kg | 15,000 kg | - | 16,500 kg |
※1:静止衛星打ち上げの際は、GTOからGSO(静止軌道)へ軌道遷移は衛星側に搭載するアポジエンジンの動力で行う。
標準静止トランスファ軌道:静止化増速量1,830 m/s、ロングコースト静止トランスファ軌道:静止化増速量1,500 m/s
※2:HTV軌道とは、宇宙ステーション補給機(HTV)が自力で国際宇宙ステーション軌道へ移行する前に投入される、低高度の楕円軌道。
※3:7号機から13号機までは、燃焼パターンを調整し安定性を高めたSRB-A改良型を装着したため、GTOへの投入能力がおよそ200 - 300 kg少なくなっている。15号機からはSRB-A3が適用され打ち上げ能力を選択できる。
※4:H2Aabcd形式 a=段数(ほぼ2固定) b=LRB数(現在は0固定) c=SRB数 d=SSB数(0は省略)
ラインナップの変遷 [編集]
H-IIAロケットには、当初の計画では現在とは若干異なる4つのラインナップ(H2A202型/H2A2022型/H2A2024型/H2A212型)と、将来発展型としてH2A222型が存在した。標準型のH2A202/2022/2024は人工衛星打ち上げ用として、増強型のH2A212型はHTV打ち上げ用に使用される予定であった。しかし、このうちH2A212型は開発途中で中止され、将来発展型とされていたH2A222型においては机上計画のみに終わった。
H2A212型の開発中止の理由は、世界でも稀な回転対称にならない非対称型ロケットであり、その制御に困難が予想されるためであった。
H2A222型においては、メインエンジンのLE-7Aを5基も使用する大規模なクラスタロケットであり、各エンジンの出力などの精密な制御が困難であるということ、高価で実績のないLE-7Aエンジンを多数使用する事になり、製造費用と信頼性確保において難があったため、実際の開発が行われる事はなかった。
これらの問題点に加え、最も大きかったのはH-IIロケットの相次ぐ失敗に伴う、開発資源の「選択と集中」であった。安価で信頼性向上を目指したH-IIAロケットの早期立ち上げのため、製造済みであったH-IIロケット7号機の打ち上げは中止され、H-IIAロケットの標準型である20xx型の開発のみに注力した。
5.8 tの衛星ETS-VIII(きく8号)は当初、静止トランスファ軌道に7.5 tの打ち上げ能力を持つH2A212型を前提として開発が進められていた、そのままでは打ち上げられるロケットが無いため、SRB-Aを4本配し静止トランスファ軌道6 t級の能力を持つH2A204型が新たに開発された。
HTV打ち上げ用には、費用と技術的な課題を出来るだけ抑えるため、H2A212型に代わってH-IIA+ロケットの構想が提案された。[21] 1段目機体の直径を4 mから5 m級に拡張してメインエンジンのLE-7Aを2台配し、その周りにSRB-Aを4基装着されている。H2A212型と比べ、静止トランスファ軌道投入能力が7.5 tから8 tへ、HTV打ち上げ能力が15 tから16 tへと向上するとされる。これにより、HTVによる国際宇宙ステーション(ISS)への物資輸送回数を減らして打ち上げ費用を削減する事ができるとされる。この構想は、H-IIBロケットへと名前を変えて、2005年秋に開発フェーズへと移行した。
H-IIAロケットは2007年度から民間企業である三菱重工へ移管された。三菱重工では生産ラインを整理するため、SSBを使用するH2A2022型・H2A2024型の廃止を表明している。これにより、2007年度以降に受注されたH-IIAロケットのラインアップはH2A202型とH2A204型の2つに集約されている[22]。
打ち上げ実績 [編集]
全て種子島宇宙センター大崎射場吉信第1射点(LP-1)から打上げ。
衛星打ち上げ実績 [編集]
| No. | 画像 | 打上げ日時 (日本時間) |
成否 | 積荷 | 衛星概要 | 軌道 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 試験機 1号機 |
2001年8月29日 16時00分 |
成功 | GTO | ARTEMISとDASHを搭載予定だったが、開発が遅れたため性能確認用のペイロード搭載[23] | |||
| レーザ測距装置 | |||||||
| 試験機 2号機 |
2002年2月4日 11時45分 |
成功 | 民生部品・コンポーネント実証衛星 | GTO | つばさの民生部品放射線被曝特性試験のため、ヴァン・アレン帯を通過するGTO(軌道傾斜角約 28.5 度)に投入 DASHはロケット側が分離コマンドを発行したが、衛星の製作ミスで分離機構が不動作、下部フェアリングからの分離に失敗 |
||
| 高速再突入実験機 | |||||||
| 3号機 | 2002年9月10日 17時20分 |
成功 | データ中継技術衛星 | GTO →GSO |
|||
| 次世代型無人宇宙実験システム | LEO | 財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構から委託 | |||||
| 4号機 | 2002年12月14日 10時31分 |
成功 | 環境観測技術衛星II型 | SSO | |||
| 小型電磁圏・プラズマ圏観測衛星 | オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)から委託 日本初の海外製人工衛星打ち上げ |
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| 鯨生態観測衛星 | 千葉工業大学から委託 | ||||||
| 小型実証衛星 | NASDA技術研究本部の開発した小型衛星 | ||||||
| 5号機 | 2003年3月28日 10時27分 |
成功 | 非公開 (SSO) |
安全保障上の理由で詳しい軌道要素は公開されないが、NSSDC IDから、高度約490kmの太陽同期準回帰軌道(SSO)、軌道傾斜角は約97.3°、日本付近を通過する時刻は10:30 - 11:00と判明 | |||
| 6号機 | 2003年11月29日 13時33分 |
失敗 | 非公開 (SSO) |
MTSAT-1Rを搭載する予定だったが、衛星製作の遅延で延期され、代替で情報収集衛星2号を搭載 SRB-A1本が燃焼後分離されず予定速度が得られなかった為、衛星軌道投入が不可能と判断、空中で指令破壊 |
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| 7号機 | 2005年2月26日 18時25分 |
成功 | 運輸多目的衛星新1号 | GTO →GSO |
RSC打ち上げサービスによる打ち上げ | ||
| 8号機 | 2006年1月24日 10時33分 |
成功 | 陸域観測技術衛星 | SSO | |||
| 9号機 | 2006年2月18日 15時27分 |
成功 | 運輸多目的衛星新2号 | GTO →GSO |
RSC打ち上げサービスによる打ち上げ 1か月間に2回の大型ロケット打ち上げに成功したのは日本の宇宙開発史上初 |
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| 10号機 | 2006年9月11日 13時35分 |
成功 | 非公開 (SSO) |
6号機で打ち上げに失敗したIGS-2Bの代替機 | |||
| 11号機 | 2006年12月18日 15時32分 |
成功 | 技術試験衛星 | GTO →GSO |
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| 12号機 | 2007年2月24日 13時41分 |
成功 | 非公開 (SSO) |
高度490km付近を周回している[24]と報道された | |||
| 13号機 | 2007年9月14日 10時31分1秒 |
成功 | 月周回衛星 | 月遷移 →月周回 |
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| 14号機 | 2008年2月23日 17時55分 |
成功 | 超高速インターネット衛星 | GTO →GSO |
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| 15号機 | 2009年1月23日 12時54分 |
成功 | 温室効果ガス観測技術衛星 | SSO | 日本で衛星8基の同時打ち上げは過去最多 | ||
| オーロラ撮像・アウトリーチ衛星 | ソラン株式会社委託 | ||||||
| テザー宇宙ロボット技術実験衛星 | 香川大学委託 | ||||||
| マイクロスラスタ3軸姿勢制御実証衛星 | 東京都立産業技術高等専門学校委託 | ||||||
| 地球観測衛星 | 東京大学委託 | ||||||
| 雷観測衛星 | 東大阪宇宙開発協同組合委託 | ||||||
| スプライト観測衛星 | 東北大学委託 | ||||||
| コンポーネント技術実証衛星 | |||||||
| 16号機 | 2009年11月28日 10時21分[25] |
成功 | 非公開 (SSO) |
分解能を60 cm級に高め耐用年数5年を経過した光学1号機を代替する | |||
| 17号機 | 2010年5月21日 6時58分22秒 |
成功 | 金星探査機 | 惑星間 | 大型液体燃料ロケットでの惑星間軌道打ち上げと、惑星間軌道でのあいのり打ち上げは日本初 第2段ごと地球重力圏を脱出している しんえんは大学宇宙工学コンソーシアム委託で世界初の大学開発の深宇宙衛星 |
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| 小型ソーラー電力セイル実証機 | |||||||
| LEO | 早稲田大学委託 | ||||||
| 鹿児島大学委託 | |||||||
| 創価大学委託 | |||||||
| 18号機 | 2010年9月11日 20時17分 |
成功 | 準天頂衛星 | GTO →QZO |
軌道傾斜角31.9度のGTOは、GSOに移るGTOに比べ傾斜がやや高い[26] 準天頂衛星システムの初号機、GPSの精度向上が目的 |
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| 19号機 | 2011年9月23日 13時36分[27] |
成功 | 非公開 (SSO) |
分解能は3号機と同じだがポインティング性能が向上し、設計寿命を経過した光学2号機を代替する | |||
| 20号機 | 2011年12月12日 10時21分 |
成功 | 非公開 (SSO) |
分解能を約1mに向上させ、電源不具合対策も実施した[28] | |||
| 21号機 | 2012年5月18日 1時39分 |
成功 | 第一期水循環変動観測衛星 | SSO | 第二段高度化の「長秒時慣性航行機能の獲得」のための先行的実験として、第二段を白色に塗り従前との液体水素の蒸発の違いを調べる しずくはA-train計画の一環 アリラン3号の打ち上げはKARIから受注した日本初の海外衛星の有償打ち上げ 鳳龍弐号は九州工業大学委託 |
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| 多目的実用衛星(地球観測衛星) | |||||||
| コンポーネント技術実証衛星 | |||||||
| 小型実証衛星 | |||||||
| 22号機 | 2013年1月27日 13時40分[29] |
成功 | 非公開 (SSO) |
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ロケット打ち上げ費用実績 [編集]
金額には、ロケット製造費用の他に、輸送・点検・保安費用等の打ち上げに関わる費用全般が含まれている。ただし、搭載する人工衛星・探査機等の費用は含まない。
| 機体 | モデル | フェアリング | 衛星質量 | 軌道 | 打上費用 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | H2A202 | 4S | 3.3 t(VEP-2) 90 kg(LRE) |
GTO | 96億円 | |
| 2 | H2A2024 | 4/4D-LC | 480 kg(つばさ) 90 + 33 kg(サブペイロード) |
GTO | 106億円 | SRB-A点検費用4億円を含む |
| 3 | H2A2024 | 4/4D-LC | 2.8 t(こだま) 1.7 t(USERS宇宙機) |
GTO LEO |
102億円 | |
| 4 | H2A202 | 5S | 3.68 t(みどり2) 58 + 50 + 53 kg(サブペイロード) |
SSO | 93億円 | |
| 5 | H2A2024 | 4/4D-LC | 約2 t[30](情報収集衛星光学1号機) 非公開(情報収集衛星レーダ1号機) |
非公開 (SSO) |
98億円 | |
| 6 | H2A2024 | 4/4D-LC | 非公開(情報収集衛星光学2号機) 非公開(情報収集衛星レーダ2号機) |
非公開 (SSO) |
108億円 | 63日間の打ち上げ延期費用10億を含む 打ち上げ失敗 |
| 7 | H2A2022 | 5S | 3.3 t(ひまわり6号) | GTO | 120億円 | 6号機失敗を受けての機体改修費用を含む |
| 8 | H2A2022 | 5S | 4.0 t(だいち) | SSO | 101億円 | |
| 9 | H2A2024 | 5S | 4.65 t(ひまわり7号) | GTO | 104億円 | |
| 10 | H2A202 | 4S | 非公開(情報収集衛星光学2号機) | 非公開 (SSO) |
96億円 | |
| 11 | H2A204 | 5S | 5.8 t(きく8号) | GTO | 119億円 | |
| 12 | H2A2024 | 4/4D-LC | 非公開(情報収集衛星レーダ2号機) 非公開(情報収集衛星光学3号機実証衛星) |
非公開 (SSO) |
112億円 | 9日間の打ち上げ延期費用約4.4億円を含む |
| 13 | H2A2022 | 4S | 3.02 t(かぐや) | 月遷移軌道 | 110億円 | 質量は子衛星2基を含む |
| 14 | H2A2024 | 4S | 4.85 t(きずな) | GTO | 109億円 | |
| 15 | H2A202 | 4S | 1.75 t(いぶき) 100 + 50 + 45 + 20 + 8 + 7 + 3 kg(サブペイロード) |
SSO | 85億円 | 2日間の延期費用は含まれていない |
| 16 | H2A202 | 4S | 非公開(情報収集衛星光学3号機) | 非公開 (SSO) |
94億円 | 光学3号機の研究開発費用は総額約487億円 |
| 17 | H2A202 | 4S | 500 kg(あかつき) 315 kg (IKAROS) 15 kg(サブペイロード) 2 + 1.5 + 1 kg(他サブペイロード) |
惑星間軌道 惑星間軌道 惑星間軌道 LEO |
98億円 | あかつきの開発費用は146億円 |
| 18 | H2A202 | 4S | 4.1 t(みちびき) | GTO | 不明 | 地上設備・打ち上げ費用等が約335億円、衛星開発費が約400億円 |
| 19 | H2A202 | 4S | 予定1.2 t[30](情報収集衛星光学4号機) | 非公開 (SSO) |
104億円 | 光学4号機の開発費用は約347億円 |
| 20 | H2A202 | 4S | 非公開(情報収集衛星レーダ3号機) | 非公開 (SSO) |
103億円 | レーダ3号機の開発費用は398億円[28] |
| 21 | H2A202 | 4/4D-LC | 2.0 t(しずく) 1.0 t(アリラン3号) 50 + 6.4 kg(サブペイロード) |
SSO | 商業打ち上げのため非公開 | アリラン3号の打ち上げロケット選定時に193億ウォン(約13億円)を提示[31] |
| 22 | H2A202 | 4/4D-LC | 非公開(情報収集衛星レーダ4号機) 非公開(情報収集衛星光学5号機実証衛星) |
非公開 (SSO) |
109億円[32] |
(推定含む)
打ち上げ予定 [編集]
- 2013年(平成25年)度
- 全球降水観測計画主衛星(GPM)3.5 t - 傾斜軌道
以下GPMと同時打ち上げ[33] - 陸域観測技術衛星だいち2号 - Lバンドレーダ[34](ALOS-2)2 t - SSO
以下だいち2号と同時打ち上げ[35]
- 2014年(平成26年)度
- 2015年(平成27年)度
- 2016年(平成28年度)
- 2017年(平成29年度)
技術的課題 [編集]
H-IIAロケットの運用開始後に発生・解決された、主な技術的課題を挙げる。
解決済みのもの [編集]
SRB-Aのノズル形状変更と能力回復
元々SRB-Aにおけるノズルの局所エロージョン(侵食)問題は深刻であり、当初からノズルの外周を補強するなどの対策を取っていたが、とうとう6号機でノズルに穴が開き、ロケット打ち上げ失敗の原因となった。7号機から13号機まではノズル形状をそれまでのコーン型(円錐型)から局所エロージョンの起きにくいベル型(釣鐘型)に変更し、さらに燃焼パターンを変更して燃焼圧を抑える長秒時型のモータを使用する事によって安全を確保していた。この対策で重力損失が大きくなり低下したSRB-A改良型の能力を回復させるためSRB-A3の開発が行われ、2007年10月に認定型モータの燃焼試験を終えた。14号機に適用された高圧型のSRB-A3は、安全性に余裕を持たせるため、7号機 - 13号機と同様に厚肉型のノズルになっている。
15号機からノズル部も含めて本来のSRB-A3が適用されている。これは長秒時型のモータで運用され、H2A204と同様に長秒時型で運用されるH-IIBロケット初号機の打ち上げには間に合ったものの、高圧型のSRB-Aを用いる202型の打ち上げ能力は回復していなかった。その後、高圧型の認定型モータ燃焼試験も2009年11月に終えている。この高圧型SRB-A3の運用はみちびきを打ち上げる18号機から行われており、これにより202型ではGTO約4トンという本来の打ち上げ能力が達成できる見込み[42]。なお、SRB-A3は搭載する衛星・探査機に応じて高圧型・長秒時型を使い分けて運用している。
H-IIA改良型 [編集]
H-IIAは打ち上げ経験を反映して逐次改良が続けられているが、より高機能で低価格な打ち上げロケットを実現させて世界との衛星打ち上げ受注競争に勝ち抜くため、2011年度から打ち上げ能力を向上させる改良計画が始動する。H-IIAロケットの第2段機体を中心とした改良開発を行い、長秒時慣性航行機能の獲得、ペイロード搭載環境の向上、飛行安全システム追尾系の高度化を図る[20]。計画では、バッテリーの寿命を50分から5時間に長時間化させることで第2段エンジン(LE-5B)の再々着火能力を実用レベルでも使用可能にする[8]。これにより太陽同期軌道では異なる高度への2基の衛星の投入が可能になり、衛星1基あたりの打ち上げ費用を3割から4割低減させることができるようになる。また通信衛星などの静止衛星では、静止軌道への直接投入や、今の静止トランスファより近地点が高く、より静止軌道に近い軌道への投入が可能になる。このことで、衛星の軌道変更用燃料の使用を少なくでき、従来より衛星を3年から5年延命させることができるようになる。打ち上げ施設の老朽化対策と枯渇部品対策を合わせて総事業費は161億円で、2013年度の打ち上げから改良されたH-IIAが飛行する予定であったが[43]、2012年11月時点では改良型の飛行は2014年度以降になる予定である[44]。
この改良は打ち上げ能力そのものを向上させるではなく、打ち上げられる軌道の範囲を広げる改良になる。改良型になっても標準静止トランスファ軌道の打ち上げ能力は変わらない。また、第2段機体を共通とするH-IIBに転用すれば同様のメリットが得られるが、それは一般の衛星を打ち上げる時の話でHTVの打上には効果がない。
民間への移管 [編集]
これまでの経緯 [編集]
H-IIAロケットの前身であるH-IIロケットは日本で初めての純国産大型液体燃料ロケットであり、H-IIロケットの登場により、それまで米国との契約によって制約されてきた数々の独自事業を行うことができるようになった。当時すでに民間衛星ロケット打ち上げ企業としてヨーロッパのアリアンスペース社がシェアを伸ばしつつあった。日本でもH-IIロケットの開発により同事業への参入が目指され、ロケットシステム(RSC)が設立された。
ロケットシステム(RSC) [編集]
RSCは衛星打ち上げサービスの受注から打ち上げロケットの製造管理・輸送・射場の安全確保等の打ち上げサービス全般を実施することとして設立された。RSCは試験的にH-IIロケット試験3号機の受注を行うものの、NASDA(当時)によるH-IIロケットの打ち上げが安定したら正式に移管実施される予定であった。1996年にRSCは、衛星メーカーであるヒューズ(現ボーイング)と20機、スペースシステムズ/ロラールと10機の商業衛星打ち上げ仮契約を行ったが、H-IIロケットの打ち上げは8機で終了するため、これらの衛星はH-IIAロケットで打ち上げることになる。こうして、ようやく日本のロケットが商業市場参入を果たしたかに思われた。
しかしH-IIロケット5号機および8号機の連続打ち上げ失敗により、H-IIロケットを即座に廃止し、円高の進展により既に開発中であった低コストなH-IIAに開発資源を集中する事となった。このためRSCへの正式移管はH-IIAロケットの打ち上げが安定するまでさらに見送られた。信頼を失ったRSCは、2000年にはヒューズから契約解除を通告され、ロラールもH-IIAの開発遅れで打ち上げが間に合わなくなった2機を解約した。2003年にはロラールが倒産し、ついにRSCは全ての商業打ち上げ契約を失った。
RSCによるH-IIAロケットの打ち上げは7号機から行われたが、法律上の制約により打ち上げ作業そのものはJAXAに業務委託した。しかしながら、この頃には国際的な衛星打ち上げ需要が減少しつつあり、また、アリアンスペースだけでなく、中国、ロシアなどがより低価格でのビジネスを展開するようになったため、今後RSCが安定的にビジネスを継続できる見込みがなくなり、RSCはH-IIロケット試験3号機、H-IIAロケット7号機および9号機の打ち上げを履行した後、解散した。
三菱重工 [編集]
三菱重工は以前よりH-IIAの製造を行っているが、2007年の13号機から、打ち上げ作業を含めてH-IIAロケット打ち上げ関連業務のほとんどが民間企業である三菱重工に移管された。また、かつてRSCが行っていたような商業打ち上げの受注活動も、三菱重工が行うことになった。
ロケットの開発も含めて移管されるため、H-IIAで使用される機器や構成についてもある程度三菱重工自身の判断で変更できるようになる。このため三菱重工は今後打ち上げるH-IIAロケットの構成をH2A202とH2A204の二つの形式に絞ると発表している[10]。
また、打ち上げ費用を70 - 80億円に抑えて商用衛星の打ち上げ市場で受注を獲得するため、従来は打ち上げ費用に含まれていた射場の点検費や修繕費、ロケットの飛行データの提供費などとして、1回当たり20 - 30億円程の公的負担を、JAXAを通じて国に求めている。
移管後の初めての打ち上げとなる13号機では、以下の点が変更された。
- ロケット打ち上げ前の極低温点検の省略
これまでのH-IIAロケットの打ち上げでは、必ず極低温試験が実施されていた。これにより、数億円単位での費用が節約できる。 - 第1段上部に、三菱重工のスリーダイヤの社章が入る。
これまでは、RSCが打ち上げサービスを行った7号機および9号機はRSCのロゴが、それ以外の機体にはNASDAまたはJAXAのロゴが、SRB-Aの側面に入っていた。13号機のSRB-Aには何もかかれていない。 - 天候判断を含む打ち上げ作業そのものが、三菱重工によって行われる。
ただし、最終的な打ち上げ実行・中止の判断や、安全管理業務は、JAXAによって行われる。これは、国際法[45]により、ロケット打ち上げに関する責任は国家が負うと定められており、万一他国に損害を与えた場合は、JAXA法[46]により、国の機関であるJAXAが全責任を負うこととなっているためである。
商業打ち上げ [編集]
2008年1月12日、三菱重工は韓国の人工衛星KOMPSAT3(アリラン3号)の打ち上げを受注したと、正式に発表した。入札には三菱重工のほかユーロコット社のロコットも参加していたが、H-IIAの方が低価格を提示したとされる[47]。ロコットはKOMPSAT2の打ち上げにも使われていた。三菱重工の入札額は非公開だが、ロコットの打ち上げ費用は40億円程度であるため、それより安いと思われる。
85億円以上するH-IIAで40億円のロコットに対抗できたのは、KOMPSAT3をGCOM-W1と相乗りで打ち上げるためである。GCOM-W1は1,900 kg、KOMPSAT3は800 kg、合計しても2,700 kgであるためH-IIA202型のペイロード(太陽同期軌道、夏期)3,600 kgを下回る。すなわち、GCOM-W1打ち上げ用H-IIAの余剰能力を販売したということであり、KOMPSAT3のためにH-IIAを新規に製造したわけではない。
2012年5月18日、H-IIA 21号機によりアリラン3号を予定軌道に投入し、初の商業衛星の打ち上げを成功させた[48][49]。
静止衛星や大型衛星など、H-IIAの増産に繋がるような本格的な商業打ち上げは未受注である。
脚注・出典 [編集]
- ^ a b c わが国の宇宙輸送系の現状と今後の方向性 平成23年2月24日(首相官邸公式サイト 宇宙開発戦略本部)
- ^ JAXA職員のブログ“「JAXAいはもとの宇宙を語ろう!いはもと版今日の話題(ブログ)」の2005年12月2日の記事”. 2010年11月21日閲覧。
- ^ 三菱重工の輸送系開発・運用の歴史 三菱重工公式サイト
- ^ 平成23年 世界の宇宙インフラデータブック ロケット編 社団法人 日本航空宇宙工業会に更新分を換算した。
- ^ “JAXA 種子島宇宙センター 2010年トピックス”. 2011年7月8日閲覧。
- ^ H-IIAロケット204型ロケットの開発状況と11号機の打上げに向けた準備状況JAXA
- ^ H-ⅡAロケット15号機の打上げに係る飛行安全計画、地上安全計画の概要JAXA
- ^ a b 三菱重工公式サイト 打上げ輸送サービスとは
- ^ “SRB-A(概要と燃焼試験)JAXA宇宙輸送ミッション本部”. JAXA. 2010年11月21日閲覧。
- ^ a b 三菱重工、「H2A」2機種に半減・民営化でコスト減 NIKKEI NET:企業 ニュース - ウェイバックマシン
- ^ LRBには補助エンジン系は装着されない。主要諸元:全長36.7 m、外形4.0 m、質量117 t、推進薬質量99.2 t、推力2200 kN、燃焼時間200 sec、推進薬種類 液体水素/液体水素、比推力440.0 sec、姿勢制御方式 ノズルジンバル、主要搭載電子装置 誘導制御系機器、H-IIAシステム解説書 NASDA 2000年3月
- ^ “ロケットの回収後フェアリングの活用方法を募集します”. JAXA. 2012年5月19日閲覧。
- ^ H-IIA/H-IIBロケット 衛星フェアリング(川崎重工)
- ^ “準天頂高精度測位実験について 評価その2対象分 (PDF)”. JAXA. 2011年1月23日閲覧。
- ^ “H-IIAロケットに相乗りする小型副衛星の通年公募について (PDF)”. JAXA (2008年4月23日). 2010年5月26日閲覧。
- ^ ロケット用誘導制御計算機の変遷と展望 NEC技報
- ^ “H-IIAロケット (PDF)”. JAXA. 2010年7月8日閲覧。
- ^ http://www.satellite-business.com/html/images/pdf/177_pdf2.pdf[リンク切れ]
- ^ http://rocket.sfo.jaxa.jp/204-3.html[リンク切れ]
- ^ a b “基幹ロケット高度化”. JAXA (2011年12月10日). 2011年12月23日閲覧。
- ^ “標準型以降のH-IIAロケット開発の在り方”. NASDA (2002年5月10日). 2010年11月21日閲覧。
- ^ “H-IIAロケット打上げ輸送サービストップ > ラインアップ > H-IIAロケット”. 三菱重工. 2010年11月21日閲覧。
- ^ “H-IIA開発計画等の見直しについて”. 宇宙開発事業団 2012年7月8日閲覧。
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- ^ 新規の軌道で新たに飛行安全解析を実施する必要がある準天頂トランスファー軌道(QTO)ではなく、飛行実績のあるGTOを使用した。“準天頂高精度測位実験について (PDF)”. 2011年1月1日閲覧。
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- ^ a b 情報収集衛星打ち上げ成功 H2A 成功率95%を達成 北朝鮮の軍事施設監視に弾み、産経新聞 2011年12月12日
- ^ “H-IIAロケット22号機による情報収集衛星レーダ4号機および実証衛星の打上げ結果について”. JAXA (2013年1月27日). 2013年1月27日閲覧。
- ^ a b 情報衛星小型化へ研究着手 北朝鮮監視強化で政府、47NEWS(共同通信)、2005年1月10日
- ^ アリラン3号、日本のH2Aで「格安」打ち上げ、朝鮮日報、2012/05/19
- ^ “JAXAなど、情報収集衛星レーダー4号機を来月打ち上げ”. 日刊工業新聞」 (2012年12月5日). 2013年1月19日閲覧。
- ^ “GPM相乗り公募小型副衛星の選定結果について”. JAXA (2011年12月14日). 2011年12月14日閲覧。
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- ^ “ALOS-2相乗り公募小型副衛星の選定結果について”. JAXA (2012年3月28日). 2012年3月28日閲覧。
- ^ “はやぶさ2の状況について”. JAXA (2011年5月25日). 2013年1月18日閲覧。
- ^ a b 宇宙政策委員会 第3回宇宙輸送システム部会資料
- ^ a b c d e 内閣府宇宙戦略室 (2012年7月31日). “参考資料2 主要な宇宙開発利用施策の概要 その1 (PDF)”. 宇宙政策委員会 第1回会合 配布資料. 内閣府. p. 6. 2013年1月27日閲覧。
- ^ 宇宙政策委員会 第8回会合 配布資料その6、2012年11月8日
- ^ a b 宇宙政策委員会 第8回会合 配布資料その8、2012年11月8日
- ^ a b c 情報収集衛星の研究・開発、首相官邸
- ^ “H-IIAロケット固体ロケットブースタ認定型モータ燃焼試験(その2)の結果について-信頼性向上活動のまとめ-”. JAXA (2010年2月3日). 2010年2月4日閲覧。
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- ^ 宇宙政策委員会 第8回会合 配布資料その5
- ^ 宇宙条約第6条・第7条および宇宙損害責任条約第2条
- ^ 独立行政法人宇宙航空研究開発機構法第22条
- ^ “アリラン3号、日本のロケットに乗って宇宙へ…2011年予定”. 中央日報 (2008年10月31日). 2010年4月3日閲覧。
- ^ “【H2Aロケット成功】「性能に間違いはなかった」 関係者安堵の表情 韓国側も満面の笑み2012.5.18 11:52”. 産経biz (2012年5月18日). 2012年5月18日閲覧。
- ^ “H-IIAロケット21号機による第一期水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W1)および韓国多目的実用衛星3号機(KOMPSAT-3)の打上げ結果について”. JAXA (2012年5月18日). 2012年5月18日閲覧。
外部リンク [編集]
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