90式戦車
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| 性能諸元 | |
|---|---|
| 全長 | 9.76 m |
| 車体長 | 7.55 m |
| 全幅 | 3.33 m (サイドスカートを含めて約3.4 m) |
| 全高 | 2.34 m |
| 重量 | 50.2 t |
| 懸架方式 | ハイブリッド式 (油気圧・トーションバー併用) |
| 速度 | 70 km/h (加速性能 0-200 mまで20秒) |
| 行動距離 | 350 km |
| 主砲 | 44口径120mm滑腔砲 Rh120 |
| 副武装 | 74式車載7.62mm機関銃 (主砲同軸) 12.7mm重機関銃M2 (砲塔上面) |
| 装甲 | 複合装甲 (砲塔前面 及び 車体前面) |
| エンジン | 三菱10ZG32WT 水冷2ストロークV型10気筒 ターボチャージド・ディーゼル 1500 ps/2400 rpm(15分間定格出力) 最大トルク 4410N・m(450kgf・m) 排気量 21500cc |
| 乗員 | 3名 |
90式戦車(きゅうまるしきせんしゃ、Type-90 tank)は74式戦車の後継として開発された、陸上自衛隊において国産三代目となる主力戦車である。
目次 |
[編集] 概要
第3世代主力戦車に分類される、陸上自衛隊の戦車。61式戦車のすべてと74式戦車の一部を更新するため、2007年までに約300輌が調達された。製造は三菱重工業が担当し、価格は一輌辺り約8億円(2007年度調達価格)と言われている。
44口径120mm滑腔砲と高度な電子機器などによって構成された国産の射撃管制装置により、高い射撃能力を持つ。ベルト式弾倉を持ち、西側諸国の第3世代戦車では初となる自動装填装置を採用したため、乗員は装填手が削減され三名となっている。装甲には複合素材が用いられ、その正面防御力は世界最高水準と評価されている。
上陸してきたソビエト連邦軍の機甲部隊に対抗する事を開発目標としており、世界の第3世代戦車に並ぶ性能を有すると考えられている。ソ連崩壊後は防衛予算削減が進み、調達数の削減により300輌で生産終了となったため、61式戦車の代替には足らず、後の戦車部隊編成に影響を与えた。
北海道の北部方面隊以外では教育部隊の富士教導団・第1教育団・武器学校にしか配備されておらず、本州以南の機甲部隊は74式戦車を主力とする。
現在は冷戦の終結、防衛方針の変化や防衛費の削減、東アジアの軍事バランスの変化など、世界、国内の情勢変化を受けて、全国的な配備を目指した後継機種「TK-X」が開発中である。
[編集] 開発
本車輌の開発は74式戦車が制式化された直後、1970年代の半ばには既に開始されたと言われている。当時は米ソ冷戦下にあり、T-80戦車を搭載した旧ソ連のLSTロプーチャ級戦車揚陸艦が北海道石狩湾に出現した際、74式戦車では能力的に不足であるとされていた。その事から北海道での運用を考慮し、強力な旧ソ連製戦車に対抗できる戦車として設計されている。神奈川県相模原市にある防衛庁技術研究本部第4研究所と、三菱重工業が中心となり開発を開始した。
当初はエンジン・主砲・射撃統制装置・サスペンション・新型装甲と、各部分の開発が別々に進められたが、1980年代に入り試作車輌が完成した。一時はイギリスからチョバム・アーマーの売込みがあったものの、日本が得意とする軽量で強度の高い複合装甲を用いる方が良いとの結論に達した為、50tという軽量でありながら高い正面防御力を有するに至ったと言われている。
試作車は1982年から1984年までに2輌、1986年から1988年にかけて4輌が完成。開発試験と部隊試験が1989年まで続けられ、1989年に正式に採用が決定し、1990年8月6日に「90式戦車」として制式化された。車体の開発・生産は三菱重工業が、主砲は日本製鋼所がドイツのラインメタル社製44口径120mm滑腔砲Rh120をライセンス生産している。開発費はおよそ300億円。
新戦車(後の90式戦車)の主砲については、初めからラインメタル社製の44口径120mm滑腔砲の採用が予定されていたが、日本製鋼所にも国産120mm滑腔砲の開発が発注された。同社がラインメタル社製品を圧倒する性能を目指した結果、貫徹力で僅かにラインメタル社製品を凌ぐ射撃試験の成績を得たが、品質管理の難しい材質を使用しているとされ、量産時においてはラインメタル社製品との性能差は無いに等しいとの理由で採用されなかったという。しかし、不採用ながらも、同等以上の性能を発揮した国産砲により、ラインメタル社とのライセンス契約料を低く抑え、砲身素材まで完全国産化できたとされる。
現在、この試作車のうちの1輌が陸上自衛隊広報センターで屋内展示されている。これは初めて90式戦車が公開されたときの写真と同じく、砲塔正面装甲をキャンバスで覆い隠している。また、車体前面には92式地雷原処理ローラ用の6箇所の取付け座が有る事が確認出来る。試作車は土浦駐屯地と前川原駐屯地でも1輌ずつ屋外展示されており、後者にはストレートドーザが取り付けられている。
[編集] 特徴
[編集] 火力
主砲には西側第3世代主力戦車の標準主砲となっているラインメタル社の44口径120mm滑腔砲を備え、弾種はAPFSDS(離脱式装弾筒付翼安定徹甲弾)とHEAT-MP(多目的対戦車榴弾)を使用する。90式の正確な走行間射撃を可能にしているのが、照準具安定装置、自動装填装置、熱線映像装置、各種のセンサーと連動したデジタル計算装置である。照準具安定装置の自動追尾機能は車体が上下に揺れたり、左右に方向転換しても常に捕捉した目標を捉え続け、砲が目標を向いた状態にできる。
射撃統制装置がレーザー測遠機や砲耳軸傾斜計、装薬温度計、横風センサー等から送られてくる情報を計算し、弾道へ与える各種要素を割り出す。そして照準装置への入力・設定を照準制御器に送る事で、砲弾は的確な軌道を描いて目標に命中する[2]。これら国産ハイテク技術が導入された射撃統制装置や自動装填装置を用い、射撃には大容量のデジタル弾道コンピュータとジャイロを併用する事で、たとえ目標及び自らが移動していたとしても、高精度な行進間連続射撃や急激な制動をかけて車体が前のめり、後ろのめりになった状態でも正確な射撃が可能となった。なお、90式の滑腔砲は射角自体は狭いものの、サスペンションによって車体を傾斜させることでこれを補う。
この44口径120mm滑腔砲弾の薬莢は、焼尽薬莢と呼ばれるもので、底部を残して燃え、無くなる仕組みで、空薬莢を捨てる必要がない。
日本の演習場では、広さの問題から90式戦車の売りの一つである行進間連続射撃や最大射程射撃訓練などが十分に出来ない為、1992年(平成4年)度より毎年9月にアメリカ・ワシントン州のヤキマ演習場に90式戦車を持ち込んで戦闘射撃訓練などを行っている。ヤキマ演習場で高機動テストや走行間射撃テストを行った際には、走行しながら3km先の目標に命中させるなどの性能に、テスト最終日にはアメリカ軍関係者が詰め掛けたという。2002年(平成14年)度からは、演習徹甲弾の導入により富士総合火力演習でも行進間射撃が披露されるようになっている。
砲塔内の車長席には正面に照準潜望鏡、潜望鏡操作パネル、サーマルモニター、照準機ハンドルなどがある。潜望鏡操作パネルには28個のスイッチとランプがあり、車長はこれらを見る事で自らの車輌の状態を知る事ができる。また、車外の車長用視察・照準装置を介して外の様子を知る事ができる。車長席側の装填装置にはハンドルを取り付ける穴があり、装填装置が使用不能になったとしても、車長がハンドルを取り付けて回す事で弾薬を装填できる。砲手席には正面とサイドにパネルがあり、正面のパネルには14個、サイドパネルに20個のスイッチが備わっている。砲手席左側には無線装置がある。照準ハンドルには追尾スイッチ、角速度ボタン、レーザー発射スイッチ、撃発安全レバー、撃発ボタンの計5個のボタン・スイッチがあり、両手の指を使い操作する[2]。 砲塔後部にはラックと、円筒形の風向センサーを備えている。
ただし、一発撃つごとに砲を水平に戻さないと装填できないことが欠点との指摘もある。自動装填装置については、装填ごとに砲を水平に戻す方式(T-72や90式など)だけでなく、フランスのAMX-13のように主砲を固定搭載して装填ごとに砲尾が動かないタイプ、また、砲の俯仰角に合わせて装填が可能なタイプなど複数のシステムがあり、後者については一部の自走砲で採用されており、90式の後継となるTK-Xもある程度の俯仰角でもそのまま再装填が可能であるといわれている。
主砲の滑腔砲は74式戦車が備えるライフル砲と違い空砲射撃が出来ないが、これは砲自体が空砲使用を前提としていない為であり、創立記念行事などでの訓練展示(模擬戦)では、代わりに同軸機銃の74式車載7.62mm機関銃で空砲射撃が行われる。
[編集] 防護力
セラミック系複合装甲の実用化と車両そのもの小型化により、軽量ながら防護力は高いとされている。
セラミックは硬度があるぶん割れやすい素材だが、APFSDSなどのように、セラミックが割れる速度より高速で衝突してくる物体に対してはその硬度を防御力に転換でき、重金属(劣化ウラン)などを用いた装甲よりも軽量化することができる。これによって90式戦車は防御力を維持しつつ、他の同世代戦車に比べて軽量化することに成功しており、車体そのものが小型化されたことで被弾率が低下し、発見される可能性も抑えている。
一般に公開される90式戦車の砲塔正面装甲にはキャンバス布地などが張られ、複合装甲の詳細は隠されるが、生産車輌の試験走行時に撮影された公開写真などには何も貼られていない状態のもの[1][2]が存在し、その形態からルクレールと同様の内装式モジュラー装甲と見られている。
砲塔前面の複合装甲が垂直の平面で避弾経始を考慮していないのは、装甲を傾斜させると前面投影面積あたりの重量が増加し車内容積は減少する点のほか、超高速で衝突し流体状の振る舞いで貫通するAPFSDSに対しては装甲傾斜による避弾経始が意味を成さないこと、また傾斜させずともそれに耐えられるだけの装甲材の開発に成功したこと等の理由が挙げられている。
耐弾試験では、正面装甲は44口径120mm滑腔砲を使用して発射された重金属弾体APFSDSに対して自衛隊の公式発表では「良好な結果を得た」という表現が用いられ、前面装甲に関してはM1A1エイブラムスを若干上回る防御力を持ち、側面は35mmAPDSの掃射に耐えうる性能があり、上面は榴弾の破片やSADARM程度の自己鍛造砲弾にも耐えうる耐弾性能を有しているとされる。
この耐弾試験の映像は一部マスメディアに公開されており、実際に耐弾試験映像を視聴したある軍事ライターの雑誌記事 [3]によると「バンカー内に納められた90式戦車の正面に対し別の90式戦車の主砲により射撃を実施(射距離250m程度と推測)。試験終了後にバンカー内から被弾した90式戦車が自走を行い、被弾車の車体正面の複合装甲に4発(被弾痕からHEAT-MP3発、APFSDS1発と推定)、砲塔正面右側の複合装甲に少なくとも1発(被弾痕からAPFSDSと推定)の被弾痕が確認でき、砲塔側も車体側と同等の防護力を持つと推察できる」としている。その他に「89式装甲戦闘車らしき車輌から35mm機関砲により90式戦車の砲塔側面を射撃」する場面や、「横向きに吊るした155mm榴弾を90式戦車の上空約10mで爆発(曳火射撃を想定した静爆試験と推測される)」させる場面、「覆帯下で地雷を爆発(地雷による静爆試験)」させる場面が試験映像中にあると紹介している。
また、砲塔後部にある即用弾収納部分の上面はパネル構造とされ、砲弾が誘爆した際にはパネルが吹き飛び、エネルギーを上に逃がすことができるように設計されており、乗員の安全性向上が図られている。
[編集] 車体
車体の砲塔左下側に操縦者が乗車する。操縦席はオートメーション化され、ペリスコープにはワイパーが備わる。位置可変T字型操向ハンドル、電気式アクセルペダルや常用ブレーキ、アシストシリンダー付の駐車ブレーキなどの操縦装置、57個のボタンや計器類があるが、計器の数が多く複雑なため、開発中の新戦車(TK-X)では情報モニターの設置など、操作計器の簡素化も行われている。車体底部に燃料タンク、後部に冷却ファンとそれを挟む形で潜水用逆流防止弁が付いた排気管がある。その上部に変速操行機オイルクーラーとラジエターがある。操縦席の右側が予備弾薬庫となっている。
油気圧とトーションバーを併用したハイブリッド式サスペンションは、車体を前後に傾斜させる機能や、車高を上下させる機能を74式戦車から継承しており、効率的な稜線射撃を可能にしている。ただし、中央の転輪二つがトーションバーなので全油気圧式の74式戦車のように左右に傾斜させる事は出来ない。
走行中に急停止した際の制動能力は非常に高い。配備当初は不用意に制動を行った際に上半身を車外に出していた車長が胸部を打撲した事もあり「殺人ブレーキ」などと呼ばれていた。
ストレートドーザを装着した車両も少数存在し、稜線射撃、待ち伏せ等での陣地構築の際に威力を発揮する。 また、専用の装備を持つ一部の車両は車体前面に92式地雷原処理ローラが装着出来る。
[編集] 動力
エンジンには三菱10ZG32WT 水冷2ストロークV型10気筒 ターボチャージド・ディーゼル、変速機には三菱MT1500 オートマチックトランスミッション(前進4段 後進2段)が採用されている。これらはパワーパック化され、土浦駐屯地での公開実演では20分以内で交換が行われており、比較的容易に交換可能であるとされる。
1972年に技術研究本部で10ZG32WTの原型となる単筒型の実機の試作が行われ、1977年から1978年にかけて10ZG32WTの8気筒型である8ZG(シリンダ内径135mm 行径150mm)の試作が行われた。1978年から1979年にかけて所内試験が行われ、最大出力1196ps/2600rpmを達成した。これらの研究成果を元に1982年に1500psを達成した10ZG32WTが完成した。
10ZG32WTは1500ps級ディーゼルエンジンとしては排気量21500ccと小型で、また耐久性に関しても15分間における定格最大出力1500psを達成しており、諸外国のディーゼルエンジンとの比較においても10ZG32WTは過酷な高出力下での高い耐久性を達成している。
10ZGの燃費性能は定格燃料消費率234g/kWh(約172.1g/PSh)、最低燃料消費率226g/kWh(約166.2g/PSh)と技術研究本部の元研究官による雑誌記事[3]において公表されている。
同雑誌記事では、10ZGの燃費性能を他の新型1500馬力級ディーゼルエンジンと同一条件下にて比較した場合、90年代初期に技術研究本部が研究試作したターボ・コンパウンド搭載の4ストローク多気筒ディーゼルエンジン(定格燃料消費率200g/kWh、最低燃料消費率198g/kWh)や、90年代前半に登場したドイツMTU社製のMTU MT883 ka-500 4ストロークディーゼルエンジン(定格燃料消費率209g/kWh、最低燃料消費率198g/kWh)などより10ZGの燃費性能(前述の数値)はやや劣るとしている。
8気筒型である8ZGの燃費性能は、技術研究本部50年史の中で、全負荷最低燃料消費率191g/PSh(約259.7g/kWh)と公表されている。
[編集] 第3世代戦車としての評価
秘匿情報が多く実戦経験は無いが、公開される性能からM1A2エイブラムス(米)やレオパルド2A6(独)と並ぶ世界最高水準の戦車の一つと評されている[4]。
またアメリカ陸軍の雑誌アーマー誌では、アメリカ政府関係者の発言として90式戦車の高度な機能として自動追尾機能の他に、敵目標の脅威度を認識・判定する機能の存在を推測する記述がある[5]。
高評価の90式戦車だが、開発・制式化から一度も大規模な性能向上が行われておらず、より攻撃力の高い長砲身120mm滑腔砲や、集団戦に有利なC4Iシステムなどの装備は行っていない。ただし、長砲身120mm滑腔砲はその長さ故に障害物や地面への接触など運用面でのデメリットが伝えられており、C4Iも操作等が複雑化した物は乗員への負担が大きいと言われている。特にC4Iは内部空間の関係で限定的な付加しか出来ず、経費面や運用面でも効率的でないとされている。90式戦車の開発及び運用結果を反映しつつ開発中の新戦車(TK-X)では、最初からC4Iの採用を意図している。また、仮に90式戦車に、主砲の55口径120mm戦車砲への換装・射撃統制装置の機能向上・追加装甲の導入といった近代化改修を行った場合、重量が57t程度になると見られている[6]。
自動装填装置を採用している点を評価する声がある一方で、装填手が居なくなった事で搭乗員の負担が増加したとの意見がある。人員削減の思惑もあるとされるが[2]、キャタピラに着いた泥や土を除けるなど野外における整備の負担や戦車用掩体を掘る際の負担が増加したと隊員間からの声も聞かれる。砲弾装填の失敗、事故を防ぐ点は評価されている。
[編集] 砲塔形状
制式化当初からレオパルド2との形状の類似が指摘されており、防衛庁(当時)の担当官が「この様な(レオパルド2のような)のが欲しい」と発言したとの逸話が、ワールドタンクミュージアムの解説書などにも掲載された。
実際には、90式の複合装甲はレオパルド2の分割配置複合装甲とは異なり、ルクレールと同様に複合装甲の着脱が容易な内装式モジュール装甲だと考えられている[3][4]。
また形状以外では、90式戦車では前面投影面積や砲塔容積の削減で、主要国のMBTと比較し非常にコンパクトに設計されており、新素材の採用などにより防御力を犠牲にせずに軽量化を図った点が異なっている。目視での印象ではなく、同縮尺の三面図で見れば全く別物の全体形状であることが理解される。
[編集] 配備部隊
各国の戦車と比較しても小型で50tという軽量な車輌でありながら、前提としていた北海道以外では富士教導団などの教育部隊を除き本州以南はほとんど配備されていない。理由として戦車トランスポーターの数が少なくて平時の円滑な運用が難しい事と、調達数が減少した中で一括運用する為である。
開発当時の運用構想では、北海道に着上陸侵攻するソ連軍の機甲師団を北海道の原野で迎え撃つことを想定していた。そのため配備は北海道の北部方面隊に優先的に配備された。この方針は冷戦崩壊後も変わらず、中期防では北部方面隊の74式戦車を更新して北海道の戦車部隊を90式戦車に統一する予定で、2009年度末時点での配備数は約340輌になる見通し。
[編集] 在北海道の部隊
[編集] 本州以南の部隊
[編集] 価格と調達
調達価格は整備用工具や予備消耗部品が含まれた総合価格となっている。毎年の調達台数は20輌程度(2006年(平成18年)度は11輌調達予定)。バブル景気の真っ只中に制式採用され、量産効果による価格低下も見込まれて1輌10億円近い価格でも迅速に配備が可能という見通しだったが、バブル崩壊に伴う防衛費の減少やこんごう型護衛艦(イージス艦)など、他の正面装備の拡充などと時期が重なったこともあって、予想通りの調達ペースは得られなかった。
少数生産にとどまる以上は、開発費の消化も考えると1輌当たりの価格が高騰するのはやむをえない事情もあるが、継続的な調達による量産効果で、現在では1輌当たり約7億9,000万円(平成19年度調達価格)程度まで単価が減少している。
90式戦車は他国の第3世代戦車に比べて高価であり、外国産戦車を輸入すべきだったと批判されることがあるが、他国戦車を輸入した際の価格に関しては、軍事情報誌 Jane's 発行のレポートによれば、アメリカのM1A2及びドイツのレオパルド2A6は輸出実績でいずれも1輌あたり10億円を超えており、フランスのルクレールは自国型でもそれに並ぶ価格となっている。
2004年9月14日には、防衛庁(当時)が2、3年後に90式戦車の調達を停止する方針であると報道され、40 t級新戦車(TK-X)調達の目処がついたとも伝えられた。
[編集] 戦略機動性
90式戦車は北海道の地形や道路条件を想定して開発されたものであり、他地域でのより柔軟な運用を行うには更なる小型軽量化が望ましいとされた。このため、40t級の次期戦車としてTK-Xの開発が進められている。
[編集] 道路を使った移動と輸送
90式戦車の重量は74式戦車を約12 t上回る為、北海道以外では通行可能な場所が限られ運用上の困難が多いと予想されている。これが戦車不要論の補強や自衛隊批判のために引き合いに出されることがあるが、実際には、補強や同時移動量の制限などを考慮すれば、北海道以外での運用も可能。
各国の主力戦車と90式戦車の重量を比較してみた場合でも、
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90式戦車 50.2 t ルクレール 56.5 t M1A2エイブラムス 62.1 t チャレンジャー2 62.5 t レオパルド2A5 スウェーデン仕様 62.5 t
であり、90式戦車の50 tという重量は60 t以上ある旧西側の先進各国の第3世代戦車などと比較すれば10 t以上軽量である。当然、大型車両の走行を前提としていない小型の橋は除いて、主要道路などのダンプやトラックが通行出来る橋はすべて通行可能になっている。
- 自走による移動
実際に北海道では、2005年の9月12日・9月19日に90式戦車と74式戦車が、2006年の8月31日・9月13日と2007年の8月31日・9月12日と2008年の9月2日・9月10日に90式戦車が、第5旅団の旅団創立記念行事に参加・撤収するため、未明に鹿追駐屯地から帯広駐屯地までの約45kmの一般公道を自走で移動している。
90式戦車が舗装路上を走行する際は、路面を傷つけないよう履帯(履板)に路面保護用のゴムパッドを装着して走行するが、90式戦車より5 t~10 t以上重い主力戦車を保有する欧米でも当然ながらゴムパッド付きの履帯で、一般公道を自走しての移動が行われている。これは平時に無用に道路を傷めないための配慮であり、有事の際にはゴムパッド無しの履帯でそのまま走行する場合もある。欧米では実際の市街地で行われる訓練や式典などでも戦車が一般公道を自走するが、日本国内では一般公道を戦車が自走する形での訓練は現在のところ行われていない。
90式戦車が装備している方向指示器(ウインカー)を、「戦車に方向指示器が付いているのは日本だけ」と根拠なく揶揄する向きがあるが、これは誤りで、レオパルド2、ルクレール、チャレンジャー2などといった欧州の代表的な主力戦車にも方向指示器や前照灯は備えられている。[7]また、一般公道を自走で移動する際はサイドミラーを取り付けるが、欧米でも同様に取り付けられる。
- トランスポーターによる輸送
トランスポーターで運搬される場合は、積載量と安全面の問題から砲塔と車体を分離して夜間に運搬される。最大積載量が50 tの特大型運搬車では砲塔及び車体を一体化させた状態で運搬する事が可能だが、最大積載量が40 tの73式特大型セミトレーラの場合は砲塔及び車体を分離して運搬する必要がある。複雑な電子装備や油圧系統を持ちながら、車体と砲塔は比較的容易に分離できる。
[編集] 鉄道輸送の現実性
長距離を輸送する際には鉄道貨物輸送が考えられるが、在来線では通常の運転形態では、建築限界に支障するため困難である。国内の道路網が不完全だと考えられた時期に設計された61式戦車は鉄道輸送を前提に計画されたが、74式戦車も含め、90式戦車が開発の段階から鉄道輸送能力を考慮せずに開発された為である。
しかし、東海道本線などの高規格線においては決して不可能ではなく、幅3.4メートル程度であれば、最高運転速度や走行時間帯などの制約を受けるものの、輸送そのものは物理的に可能であり、現在でも、日本車輌豊川工場で製作された新幹線車両の車体は、在来線である東海道本線上を走行して新幹線浜松工場まで輸送されていた。重量面においても、高規格路線の重量限界である1軸あたりの加重16 tを考慮すると、1両4軸のボギー車タイプの貨車を用意することで輸送可能である。
室蘭本線、津軽海峡線、日本海縦貫線、山陽本線、鹿児島本線などの路線でもこれに同じで輸送は可能であるが、これらの路線は複数の旅客会社が分散して地域ごとに線路を保有しており、最高速度や走行時間帯も制約され、通常運行している他の列車ダイヤにも影響するため、実際の輸送に当たっては、事前に関係する各旅客会社側の了承を取り付けることが絶対条件となる。
新幹線フル規格での輸送もまた一つの方法である。しかし、計画された貨物新幹線は重量に堪えられるだけの橋脚等設備の強化とトンネル拡幅などの設備改良の抜本的な改正の必要性があるために実現せず、人員輸送に特化した現在の新幹線規格では想定外の重量である。新幹線側の搬入設備や専用トランスポーター貨車開発も一切着手されていない。特に国鉄分割民営化以降、在来線では施設科などの小規模な輸送はあるものの、鉄道の防衛への利用自体があまり考慮されていない。
[編集] 航空機による輸送
重量50 t以上の戦車を空輸するにはC-5ギャラクシー(米)やC-17グローブマスターIII(米)、An-124ルスラーン(ウクライナのアントノフ製)といった最大級の輸送機が必要とされる。航空自衛隊はその種の大型輸送機は保有しておらず、また現在開発中の航空自衛隊の次期輸送機であるC-Xは大型の手術車や装輪装甲車の搭載は想定しているが、戦車の搭載を想定しているという情報はない。
2006年(平成18年)度から導入されたKC-767J空中給油・輸送機のペイロード(最大積載量)はC-Xより大きく、トラックなどを搭載できるが、戦車は搭載できない。
[編集] 輸送艦による輸送
海上自衛隊の保有するおおすみ型輸送艦では最大10数輌程度と、積み込める量には限度があり、一定規模の部隊をまとめて輸送するのに必要なだけの輸送艦を自衛隊は保有していない。
おおすみ型輸送艦に各2艇ずつ搭載されているエア・クッション型揚陸艇(LCAC)は、積載能力が70tある為、90式戦車を1輌ずつ運搬し、海岸に直接上陸させる事が可能である。
[編集] 派生型
[編集] 登場作品/ホビー商品
詳細は「90式戦車に関係する作品の一覧」を参照
[編集] 脚注
- ^ 試作車のため旧型の発煙弾発射機が装備され、自動装填装置上面のブローオフパネルが省略されている。また、車長用照準潜望鏡の形状や設置位置など、量産車と異なる点がある。
- ^ a b c 丸MARU 第55巻1月号 「体験的機甲史 自衛隊の戦車」 雑誌08307-1 T1108307011008 (2002年)
- ^ a b 軍事研究2007年12月号別冊:世界のハイパワー戦車&新技術
- ^ Forecast International Re-evaluates Main Battle Tank Market
- ^ ARMOR-July-August 1999
- ^ 「軍事研究」2008年4月号
- ^ レオパルド2の方向指示器(後部)が見える写真 / ルクレールの方向指示器(前部)が見える写真
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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