滑腔砲

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L16 81mm 迫撃砲の砲身内部(滑腔砲)。ライフリングは刻まれていない
120mm迫撃砲 RTの砲身内部(施条砲)。ライフリングが刻まれている

滑腔砲(かっこうほう)[1]は、砲身内にライフリング(旋条)が無い砲のこと。スムーズボア(英:smoothbore)。

概要[編集]

16世紀頃から戦争火砲が普及し始めるが、黎明期の砲身は「ただの筒」であった。精度の問題はともかくとして、これらは滑腔砲身そのものである。やがて投射重量を増やすため、弾が細長い円筒状になり、他方で弾道を安定させるためにはジャイロ効果を利用し、弾を回転させる事が有効である事が知られると、火砲は砲身内に螺旋状の溝(ライフリング)を切り、砲弾に食い込ませて回転を与える、いわゆる施条砲に切り替わっていった。 においては、口径が小さいことから榴弾や、APDSのような特殊な弾丸を使用できず、下記の戦車砲のような発展をすることはなかったため、集弾性に悪影響が出る散弾銃を除き、すべてライフルである。 砲においても、対戦車砲成形炸薬弾を使用した携帯式ロケットランチャー無反動砲対戦車ミサイルへ移行し、艦砲では戦車砲と異なり下記に示すような滑腔砲を必要とする事情も発生しなかったため、施条砲のままである。榴弾砲も滑腔砲を必要とする状況は発生しなかったため同様に施条砲のままであり、現代において滑腔砲を用いているのは、大部分の迫撃砲と戦車砲程度である。

第二次世界大戦後、戦車に搭載する戦車砲において、装甲が増強された戦車を撃破するために高威力の砲が求められた。艦砲であれば、受け止められる反動の量も大きく、大和型戦艦に見られるような大口径砲を搭載することによって解消する(相対的に砲の小さい現代の艦船であっても、戦車砲に比べれば長砲身、大火力である。さらに、着弾時の砲弾の速度が終端速度に到達しているため、口径を大きくする他に威力を増大する手段が存在しない)。しかし、戦車では最新鋭の戦車であっても100t程度が実用上限界であり、受け止められる反動、即ち口径と装薬量には自ずから限界がある。 このため、同一の口径でできる限りの貫徹力を得るように設計された砲弾がHEATとAPDSである。HEAT弾はライフル砲から発射すると威力を著しく減弱されるため、滑腔砲を用いるか、スリッピングバンドを装備した砲弾によりライフル砲から発射することになる。APDSはライフルから発射されるが、さらに威力を求めた結果、スピンによる安定化が期待できなくなり、APFSDSへと発展した(詳細は各項を参照)。事実上戦車に搭載される砲弾がすべてライフルを避けるようになった結果、現代の戦車砲の大半は滑腔砲に集約されている。

近代における世界最初の滑腔砲は、イギリスロイヤル・オードナンス105mmライフル砲L7に対抗するためにソ連T-62に搭載された55口径115mm滑腔砲U-5であるが、これは、APDSにおける装弾筒の分離に問題が生じたためで積極的に滑腔砲を採用したとまでは言い切れない。 ソ連のT-62 戦車に採用されたU-5、同じくT-64 戦車に採用されたD-68 115mm滑腔砲、T-64とT-72に採用された2A46 125mm滑腔砲など、戦車の滑腔砲搭載はソ連が先んじた。西側ではラインメタル社の44口径120mm滑腔砲Rh120の採用が最初である。このように1960年代-1970年代以降に開発された戦車の大半は滑腔砲を装備しているが、イギリス軍チャレンジャー2 戦車など、一部の戦車はライフル砲を装備している。

脚注[編集]

  1. ^ 「腔」の字は本来「こう」であるが、「くう」も複数の漢和辞典に慣用読みとして認められている。また、医学分野においては「腔」の字を「くう」と読む。(「腹腔」→「ふくくう」、「口腔」→「こうくう」など)参考:[1]

関連項目[編集]