方向指示器
方向指示器(ほうこうしじき)とは、自動車、オートバイなどに付ける保安部品で、右左折や進路変更の際に、その方向を周囲に示すための装置である。
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概要 [編集]
方向を灯火の点滅で示すことから、日本ではウインカーと通称される。アメリカでは blinker もしくは turn signal 、イギリスでは directional indicator 、あるいは単に indicator と表記する。ドイツでも以前は Winker (ヴィンカー)と呼んでいたことがある。特に矢羽式・腕木式のものを英語圏では「trafficator」、「semaphore」、日本では「アポロ」として区別することもある(下記、歴史を参照)。
日本では上記のウインカー(またはウィンカー)の他、部品名や整備書にはターンシグナルランプという呼称が用いられて来たが、今日ではユーザー向けのカタログや取扱説明書もターンランプなどの表記へ移行している。
また、全てのランプを同時に点滅させることでハザードランプとしても使用される[脚注 1]。
設置部位により、前部方向指示器(フロントターンシグナルランプ、フロントターンランプ)・側面方向指示器(サイドターンシグナルランプ、サイドターンランプ、サイドマーカー[脚注 2])・後部方向指示器(リアターンシグナルランプ、リアターンランプ)というように呼び分けられる。最近の自動車では、ドアミラーに側面方向指示器を内蔵する車種が増えているほか(下記、ドアミラーターンランプを参照)、タクシーのように屋根にもランプを装備している例もある(下記、タクシーウインカーを参照)。
方向指示器はあくまで保安部品なので、仮に故障したとしても、車両としての走行機能には影響しない。しかし、多くの車両が同時に走行する公道上では、交通安全を確保するため欠くべからざる装備であり、日本を含めほとんどの国において構造・動作・操作に関するルールが定められている(下記、法令・規格を参照)。
歴史 [編集]
初期の自動車においては、交通絶対量が少なかったこと、またオープンボディが大半であったことなどから、装備としての方向指示器は存在しなかった。進路変更を周囲に伝達する必要がある場合は、馬車時代からの身振りを踏襲した「手信号」による意思表示を用いており、それで充分だったと言える。なお、手信号は現在も道路交通法において認められている。
その後、大量生産の時代を迎えて交通量が爆発的に増大し、交通の円滑性、安全性から進路変更時の合図が重要となり、同時にクローズドボディの普及により、車外に何らかの信号装備が求められるようになった。
1893年、イギリスのJ・B・フリーマンによって文字盤式の方向指示器が発明される。これは車体後部に表示内容を変更できるロール式の掲示板を設置して、手動操作によって「left」・「right」の文字表示できるようにしたものであった。
1900年代初頭には、イギリスのF・フォークナーによって、ボディサイドに装備する矢羽式(やばねしき、または腕木式 = うでぎしきとも)の方向指示器が発明される。この矢羽式は、可動式の表示器を通常はボディサイド(外付けのものは灯体)に収納しており、操作時にアームを車体から突出させて周囲に意思を伝える方式である。矢羽式の方向指示器は、手旗信号を基にしたもので、鉄道用信号機としても、セマフォ式鉄道信号機と呼ばれ、世界的に普及している。自動車では、セマフォ方向指示器を略した「セマフォ」のほか、「トラフィケーター」などと呼ばれている。動作はケーブルを介した手動式か、吸気管の負圧を利用したバキューム式であった。
1908年に、イタリアのアルフレード・バラッキーニがアームの中に電球を入れたものを発表した。当時、電気式ヘッドライトがすでに普及しはじめていたため、矢羽を透明樹脂製とし電照式とすることで、夜間でも被視認性の高い方向指示が可能となった。操作はまだケーブルを介した手動式であったが、1918年、イギリスのネーリックモーターシグナル社が、小型モーターを用いた電動式アームで特許を取得した。しかしこのシステムも、ギュスターヴ・ドネとモーリス・ボワソンの二人のフランス人発明家のアイディアによってすぐに時代遅れとなる。彼らは1923年にアームのアクチュエーターを電磁石に置き換え、指示器全てがピラー(柱)に完全に収まる、より小型で簡潔なシステムを発表した。さらに、1927年、ドライバーに作動を通知する車内インジケーターを追加し、その後のスタンダードへとまとめあげたのは、ドイツのマックス・ルールとエルンスト・ノイマンである(ワイヤー式でインジケーターを持つものも多数ある)。電磁式のメーカーでは、イギリスのルーカス、ドイツのヘラなどが代表的である。
日本では自動車の普及と灯火類の法整備が遅かったため、一般向け乗用車などでの車体内蔵式の採用期間は非常に短く、左右独立点滅式方向指示器の義務化以降は、未装備の車両向けを中心に、アポロ工業の外付け型矢羽式方向指示器が汎用品として市場をほぼ独占した。そのため、アポロ製品が矢羽式方向指示器の代名詞となり、さらに車体内蔵式を含む矢羽式方向指示器の全てが「アポロ」と呼ばれるほど一般的な存在であった。
小型車で点滅式が主流となった後でも、三輪自動車、大型トラック、バスでは、新車にもアポロとそのライセンス品が使われていた。これらの外付け型は多くの車種に対応するため、大きさは大・小、電圧は6V・12V・24Vの各種が用意されており、矢羽内の表示灯も初期は常時点灯式であったが、後に点滅式へと変更されている。また、点滅式方向指示器とアポロとの併用も見られた。その後アポロは点滅式への移行に伴う需要の低迷から急速に衰退し、アポロ工業自体も1964年にサンウエーブ工業に吸収合併されている。
矢羽式実用化後に、バイメタルを応用し、矢羽を廃した点滅灯式方向指示器が考案され、1935年にはイタリアのフィアット1500 や、アメリカのビュイックに採用されている。
矢羽式と点滅式はしばらく共存していたが、点滅式は特に昼間時の視認性の良さと、断線・焼損の懸念のある電磁石や、機械的可動部が排除されたことによる信頼性の高さにより、欧米では比較的すぐに、日本においても1950年代までには主流となっていった。
1960年代、特にアメリカでは道路交通の過密化、高速化が進み、自車と周囲の安全を確保するため、より多くの情報を伝達する必要が生じた。そのため、方向指示器は、その全て(前後、左右)を同時に点滅させることで停車中であることを知らせるハザードランプとしての機能も併せ持つようになった。日本車でも輸出向けから採用が始まり、全車に普及していった。
また、点滅機構もバイメタルからトランジスタとリレーを用いたものへと代わり、その後も改良が続き、タマ切れ時に点きっぱなしになる欠点を補う、倍速点滅機能も盛り込まれた。
1990年代に入り車両電装品の電子制御化が進むと、方向指示器は外部から視認が容易な位置にあること、また元々、点滅機構を備えることから、盗難アラーム、リモコン操作の確認など、車外から何らかの合図を確認する目的でも使用されることになる。
オートバイでの方向指示器の装備は四輪車よりも遅く、1950年代に矢羽式がオプション装備されたのが始まりで、すぐに点滅式に交代している。
構造 [編集]
方向指示器は、車外に取り付けられ合図を表示する表示部(ランプ)、車内に取り付けられドライバーが合図操作を行う操作部(レバーまたはスイッチ)、操作に従い表示部の動作を制御する制御部から成り立つ。
表示部 [編集]
表示部は点滅を行うランプであり、乗用車の場合は車体前部・後部・側面の3か所に装備される。大型車の場合は車体中央部側面にも装備される。オートバイの場合には車体前部側面および車体後部に装備される。
日本の現在の車両保安基準では、方向指示器の灯光の色は橙(とう)色でなくてはならない[1]。ただし、現行の保安基準が施行される以前に登録(製造)された車両についてはこの限りでなく(1960年代までに製造された車の多くは赤色のテールランプ(尾灯)が方向指示器を兼用していたが、1970年代からフルモデルチェンジやマイナーチェンジを経て赤色のテールランプと橙色の方向指示器が別々になっていった)、また在日米軍の車両については、日本の車両法、道路交通法が適用されないため、前部は車幅灯と兼用、後部はブレーキランプやテールランプとの兼用という車両がある。
取り付け位置も詳細に決められており、まず車体の周囲360度からいずれかの方向指示が視認できなくてはならない、さらに個々の方向指示器の動作視認範囲が決められており、たとえば右前面の場合であれば、方向指示器の中心を起点とした車体正面方向中心線から、左周り45度・右回り80度の範囲で点滅動作が視認できなくてはならない。
旧来のランプユニットは金属のプレス品の反射部と電球を保持する口金(ソケット)とを溶接した本体に、ゴム製のガスケット(シール)をはさみ、着色された樹脂レンズをねじ止めする構造であったが、生産台数の増加した現在では、コストダウンのため、樹脂レンズと、やはり樹脂製の反射部兼用ハウジング(ボディ、本体)は高周波溶着されており、温度変化による内部結露を防ぐブリーザー(呼吸機構)を持つ。また、同じくねじ止めであった車体への取り付け方法も、灯体のボスと車体側のゴム・ブッシュによるハメ込み式へと変わっている。
以前は溶着技術にメーカー間格差があり、特定の車種で溶着不良による内部への浸水がよく見られた。
電球(バルブ)は規格化された口金タイプが使用され、JIS-C7506に規定されるBAタイプ、特にBA15sがよく使われる。このタイプは電球の口金側面に短いピンがあり、ソケットの口金側面に切られたL字型の縦溝にそってまっすぐ挿入した後、電球を捻ってピンを横溝に引っかける(スワン式と呼ばれ、ねじタイプのエジソン式に比べて振動に強い)。電球の極性は中心電極がプラス、口金部がマイナス(アース)で、ソケット底部にはスプリングが内蔵されており、電球を押し返してピンを横溝に圧着させることで電球を固定するのと同時に、アースを確保している。通常ランプユニットは樹脂製のためボディアースは使用できず、カプラー化されたソケットからコードでアース接続されている。
方向指示器の電球は一般的に、フロント用が15または21 - 27W、リア用は21 - 27W(21・23Wが主流)が使われる。サイド用は小型であり、電球もウエッジタイプと呼ばれる小振り(5Wが主流)のものが使用される。いずれの場合も電球の交換には工具を使わなくてすむように考慮されて設計されている場合が多い。ただし、近年のコンパクトカーやファミリーカーのクラスの車種では、電球交換の知識と技量を持たないユーザーに触られることを嫌い、点滅しなくなったときには販売店や整備店に相談するよう取扱説明書で指示しているものもある。
2002年頃からLEDの高輝度化に伴い、半永久的な実用性(不点寿命)・被視認性向上・消費電力低減などのメリットから方向指示器にLED照明を採用する車種が増えている。
電球を置き換えるための口金タイプなどのLEDランプも発売されているが、中には安価な汎用品を用いた商品もあり、光が拡散せずに照射範囲が保安基準を満たさない「粗悪品」もある。電球は消灯している時はフィラメントが冷えており点灯時より抵抗値が低くなっているので、点灯する瞬間に定常電流の10倍近くの大きな電流が流れる(突入電流)が、LEDでは突入電流は発生しない。一見、LEDのほうが突入電流が発生しないため好ましいように思えるが、元々、電球を取り付けるよう設計されている車両では、突入電流を利用して機械式リレーの接点のゴミを焼き切り接点の接触不良を防止するように設計されているので、LEDに交換するとウインカーリレーの接触不良を招き、故障に至ることがある。また消費電力が極めて小さいことから、装着車両側が認識できずに球切れ警告灯を表示することもあるので注意が必要である。これらの問題を解決するためウインカーを制御するリレーをLED対応にするための半導体リレーも発売されている。ただし近年製造されている車両には灯火類と制御装置が連動しているものがあり、灯火類の消費電流が変化すると制御装置が正常に判断できなくなり事故につながる恐れがあるとして注意を呼びかけているメーカーもある[2]。
アメリカ合衆国における方向指示器の規定は、世界の中でも独特である。アメリカ車およびアメリカ仕様車では、前部方向指示器は橙色(アンバー)に規定されているが、車幅灯(スモールランプ、ポジションランプ)と兼用にしていることが多く、その場合は光の増減のみで動作を示す「明滅式」である。後部方向指示器は橙色だけでなく赤色でも良く、赤色の場合はブレーキランプやテールランプと兼用されていることが多い。また、側面方向指示器の装備義務はない。日本や欧州では、これらはすでに保安適合しないため、これらアメリカ独自の仕様を持った車両を日本で運行させることは、現行の保安適合措置が施行される以前の旧型車両、もしくは日本の保安基準が適用されない例外(在日米軍の車両やアメリカ大統領専用車両など)を除き許容されない。アメリカ仕様車を日本に輸入し販売する際には、前部方向指示器の改修や側面方向指示器の増設、後部方向指示器の独立した設置など保安適合措置が必要となる(もちろん独立した車幅灯や左側通行にあわせたヘッドランプ照射範囲の改修も必須である)。なお、アメリカ仕様車では「サイドマーカーランプ」(車体側面の前・後部両端に設置される、反射板を兼ねた車幅灯連動の灯火。前部・橙色、後部・赤色)の装備義務がある。
通常、後部方向指示器は片側1灯ずつ点滅するものが多いが、トヨタ・クラウン、日産・セドリック/グロリア、三菱・エアロシリーズなどの過去のモデルや、トラック(特にデコトラ)、三菱・チャレンジャーの後期モデルなどでは独特の存在感を出すために、ゴミ収集車や路線バスなどでは路上駐停車の頻度が高いことから片側2灯以上点滅するものもある。
過去のアメリカや日本の乗用車の一部[脚注 3]と、バス協型尾灯の一部には、後部方向指示器を片側三連ずつとし、順次点灯させて点灯部の面積を徐々に増すものや、点灯部が流れるように移動する「シーケンシャルタイプ」と呼ばれるものが存在したが、共に現在では認められていない。バス協型には、テール、ブレーキ、ターンの全てを兼用とした赤レンズが三連のものと、保安基準の改正に合わせ、上が橙レンズの三連、下が赤レンズの三連の計6個のランプとした改良型とがある。デコトラなどでこれを真似たカスタムも見られる(三連を大きく超える個数のものもある)が、輝点の移動や点灯面積の変化が認められていないため、保安適合措置違反となる。
操作部 [編集]
ターンシグナルスイッチ [編集]
方向指示器の操作部は、合図の開始と方向を指定するターンシグナルスイッチが主なものである。初期の車用ターンシグナルスイッチはダッシュボード上に装備されたレバーによるワイヤー操作や、トグルスイッチなどの電気的スイッチが主流であった。電気式では、左右(あるいは上下)2方向に接点を有するスイッチがよく使われ、ドライバーは合図の開始と終了を、スイッチをオンオフすることで操作していた。1950年代頃からハンドル操作を阻害しないようにと、ステアリングコラムから延びるスティック状の操作桿(レバー)が主流となりターンシグナルレバーとも呼ばれるようになった。ステアリングコラムに装着されたことによりハンドル操作との連動が容易になり、ハンドルを戻したときに自動的にレバーが中立位置まで戻り、合図がオフとなるオートキャンセラーの装備が進むこととなる。ただし、オートキャンセラーはアメリカ車などではステアリングポストに装備された初期から普及したが、欧州車などでは近年までオートキャンセラーを装備しない車種も見られた。またホーンリングを円周方向にスライド(時計・反時計まわりに回転)できるようにし、スイッチとしたものもあった(日本では1960年代のトヨタ車が採用)。
標準的なオートキャンセラー付きスイッチの場合、レバーを操作して一定の位置を越えるとクリック感があり、レバーがオン位置で固定されオートキャンセラーの待機状態となる。クリック位置を越えずにレバーを保持し続けると、合図は継続するがレバーは固定されず、指を離すとバネの力で中立位置(オフ位置)まで戻る。レーンチェンジなどの微少なハンドル操作の場合、ハンドル舵角が少ないためにオートキャンセラーが作動しない場合が多く、戻し操作を手動で行う必要がある。上記機能はこの戻し操作の手間を大幅に軽減することができるが、初期のオートキャンセラーには備わっておらず、この機能の普及初期には「レーンチェンジャー付き」と称したメーカーもあった。現在は、レバーを軽く一度だけ操作すれば、あらかじめ任意に設定可能な複数回の点滅を自動で行う車種もある(主要なドイツ車など)。なお、現在のBMW車(MINIを含む)では、レバーを操作してもオン位置で固定されず常にセンター位置に戻る方式を採用している。慣れが必要な方式ではあるが、誤操作によるターンシグナルの解除や出し直しを素早く行えるというメリットがある。
日本車の場合はターンシグナルスイッチと、ヘッドランプなどの他の灯火類のスイッチを組み合わせて操作レバーとしたコンビネーションスイッチが主流である。欧米車においてはヘッドランプなどのスイッチがダッシュボードに装備されている場合もあり、ターンシグナルスイッチ単独のレバー(ただしパッシング・ロー/ハイビーム切り替え機能は残っている)も見られる。また、まれにダッシュボードからパドル状の操作スイッチをステアリングホイール付近に延ばす方式(三菱・ギャラン)や、メーターナセルのふちにロッカースイッチを装備する方式(シトロエン・BX)なども見られる。
ターンシグナルスイッチの位置は、日本国内で販売される国内メーカーの車では通常ステアリングコラムの右側にレバーが装備されているが、日本国外においてはハンドル位置の左右にかかわらず左側に装備される場合が多い。これは、ISO規格で規定されているためである[3]。そのため、日本国内で販売される日本車と、日本国外の左側通行国の中でも特に欧州圏(イギリス・アイルランド・マルタ・キプロス)で販売される右ハンドルの日本車とでは、ターンシグナルスイッチの左右位置が違う。その他の国においては、オセアニアの左側通行国であるオーストラリアやニュージーランド、また東南アジアのタイやインドネシアでは日本と同じく右側配置が基本であり、現地生産車はもちろん日本や韓国からの輸入車は大半が右側配置となっているが、これらの国でも欧米からの輸入車はISO規格の通り左側配置である。
- イギリスは左側通行だが、現在生産されているイギリス車のターンシグナルスイッチは、右ハンドルにおいてもステアリングコラムの左に装備される。ただし、ISO規格が登場する以前は右側に装備した車種が大半であった[脚注 4]。
- メルセデス・ベンツの多くの車種では、誤操作防止の観点から、ターンシグナルとワイパーの操作を一本のレバーに一体化している。このレバーの位置も、かつては「右ハンドル仕様=ステアリングコラムの右側・左ハンドル仕様=左側」であった(モデルW201、W124、W126の時代まで)。しかし、 現在はISOの規格に合わせ左側に統一されている。
- 日本向けの輸入車の一部には、日本国内に合わせ右ハンドル・右側ウインカーを採用している車種がある。北米生産のGM車(キャデラック、サターン)、ヒュンダイ各車など。
オートバイの方向指示器の操作部(ターンシグナルスイッチ)は、左側ハンドルのグリップ付近に左右方向(または上下方向)のスライド式のスイッチが装備されていることが多いが、ハーレーダビッドソンやBMWなどの一部車種では、右および左のグリップ付近にそれぞれ右と左のターンシグナルスイッチが装備されていることもある。特殊な例としては、ホンダ・スーパーカブが「そば屋の出前持ちが片手で運転できるように」との配慮から、スロットル操作を担う右グリップ側に装備されている。
オートバイは機械的キャンセラー機構を作動させるほどのハンドルの回転角がなく、車体をバンクさせる(傾ける)ことによってハンドル操作をせずとも比較的容易に方向を変えられる、という二輪車独特の特性を持つことから、ハンドル連動式のオートキャンセラー機能の装備は技術的に難しかった。ただし、カワサキ・Z1-R/Z1R-IIなど、ターンシグナルが作動してから一定時間経過後に走行距離でオフとなる時限・距離式のオートキャンセラーが装備されたことはある。代わりにオートバイ独自の機構として、プッシュキャンセル式スイッチが開発された。これは左右に動くスライド式スイッチだが、スイッチは指を離すと中立の位置に戻り、さらに中立位置ではスイッチを押し込める(プッシュ)ようになっており、プッシュするとターンシグナルの動作が終了するという機構である。プッシュキャンセル式は、はじめ中型以上の排気量区分(400cc超)を中心に普及したが、やがてほかの排気量区分へも普及していった。ちなみに前述のハーレーダビッドソンやBMWなどでの左右独立式のターンシグナルスイッチも、再度スイッチを押し込むなどの操作でターンシグナルの作動を終了するという意味で、変則的なプッシュキャンセル式だといえる。
なおそれ以外の方式としては、1982年にホンダ・CBX400Fインテグラが角度検知センサなどを使用したオートキャンセラーを装備したが、当時は動作が安定せず姿を消している。またホンダ・フュージョンでも、右左折終了時に自動でターンシグナルの作動を終了するオートキャンセル機能を搭載していた。フュージョンのオートキャンセル機能は比較的高精度だったが、ターンシグナルを自動終了するだけという機能の単純さに対して掛かるコストが見合わないと、他の車種にまで大きく普及することはなかった。以上の経緯から、オートバイでは現在も手動終了のプッシュキャンセル式が主流であり、より良い方式が開発されない限りは、この状況が変わる様子はない。
ハザードスイッチ [編集]
ハザードランプのスイッチは、ウインカースイッチとは別体で用意される。かつて乗用車と小型商用車のハザードランプのスイッチは、ステアリングホイールの前側(運転者から見て奥)のステアリングポスト上側など、目立たない場所に小型のプルスイッチやシーソースイッチが装備されていることも多かった。今日では、ほとんどの自動車においてダッシュボード中央や運転席と助手席の間など、運転席、助手席、後席のどこからでも操作しやすい位置に、かつてよりも大き目のプッシュスイッチが設置されている。緊急時に備えてイグニッションキーがオフや抜かれた状態でもハザードランプは作動する。また、一部の車種は急制動時や衝撃を感知したときにも自動的に作動する。
ハザードランプは、車両の全てのターンシグナルランプを同時に点滅させる。ターンシグナルスイッチ操作で方向指示が行われている間にハザードスイッチを押すとハザード機能が優先され、ターンシグナルは機能しなくなる。通常、ハザードランプを動作させたままでは方向指示は全く機能しなくなるため、ハザードランプの消し忘れには十分注意しなければならない。ただし、ドイツ車の一部(メルセデス・ベンツ、MINIを含むBMWなど)では、ハザードランプ動作中にターンシグナル操作を行うとその間のみ方向指示を優先するという配慮をほどこした車種もある。
大型トラック、バスのハザードスイッチはステアリングコラム左側のレバーを、(日本の普通車での)右レバーでいうところの「パッシング」でオン・オフ切換とするものが一般的。以前はレバーを上へ操作してオン、下へ戻すとオフ(またはこの逆)、レバーを手前に引くと作動する車種もあったが、現状では特に大型車では手前に1段引くと排気ブレーキ、さらに手前に引くと排気ブレーキとリターダが作動するパターンが多い。普通車から乗り換えたとき(逆のパターンでも)には注意を要する。
オートバイはハザードランプの装備義務は持たない。川崎重工業がいち早くハザードスイッチを装備していたが、オートバイのヘッドランプが常時点灯にされることに伴い、ヘッドランプスイッチを廃した代わりにハザードスイッチを装備させるなどして、近年では全メーカーの250ccクラス以上の日本仕様のオンロード系車種の多くに装備されるようになってきている。また、機能独立したスイッチを装備しない車種にハザードランプを追加する場合は、別体スイッチを装備する場合もあるが、ターンシグナルスイッチを利用して特定操作(例えば右、左、キャンセル、など)によってハザードランプを作動させるようにしたものも存在する。
インジケーター [編集]
操作部の、もう一つの装備として、ドライバーやライダーに合図の動作を知らせるインジケーターがある。多くの場合、メータパネル上に表示部と同調して点滅するランプが装備され、また、聴覚による動作確認として点滅のクリッカー音が発せられる。インジケーターは左右別のランプが装備されるのが一般的だが、欧州車には左右共用のランプを一つだけ装備するものがある。例としてはオペル・コルサ(Bモデルまで)、ルノー・トゥインゴ(初代・現行モデル共に)など一部の欧州製小型車に見られるほか、1990年代前半頃までのフェラーリ各車(348など)にも同様の装備が見られる。オートバイの場合にはメータパネルのスペース上の問題から、左右共用タイプも比較的多くみられた。
動作音はリレーの動作音をそのまま利用する場合が多かったが、操作部の電子化が進んだ現在では電子合成音を採用するケースが増えている。一般的なブザー音(ピ・ポと言うような高低二音)の他、高級車では従来のクリッカー音を再現したものがある。また、トラックなどの大型車では方向指示器を操作した際に外部のチャイムを鳴らしたり、チャイムと共に「(右または左)へ曲がります」と音声を流すことによって車外の歩行者などに注意を喚起させるものもある。一部の路線バス車両では、左の方向指示器を出したときのみチャイムが鳴るようにし、バス停留所の乗客への注意喚起と、巻き込み事故防止を図っている。
制御部 [編集]
制御部の主な機能は、ランプ(表示部)を一定間隔で点滅させることである。点滅の周期は、日本・アメリカの法令では毎分60 - 120回の一定周期と定められている。また、その他の地域においても、欧州を中心とした標準化委員会において同様の規格が採用されている[4]。
点滅制御は通常リレー(ターンシグナルリレー)が使用される。ターンシグナル各ランプの点滅は安全性の問題から完全に同期する必要があり(点滅時期がずれると、仮現運動知覚 apparent motion perception により幻惑されるおそれがある)そのため、各ランプは通常一つのリレーによって制御される。一部の例外としてバッテリーレス仕様のオートバイでは、全てのランプを同時に点灯させるだけの電力を供給できない場合があるので、ランプは前後交互に駆動される仕様となっているものがある。この場合、後方から見た時前後のランプが同時に見えないように注意が払われている。
ターンシグナルリレーは、通電すると接点部分が一定間隔でオンオフを繰り返す電子部品であり、ランプへの給電ラインの途中に接続される。操作部のスイッチによりランプへの通電が開始されると同時にターンシグナルリレーは動作を開始し、点滅制御を開始する(ランプへ通電する時は必ず点滅する回路となっている)。
旧来のターンシグナルリレーはサーモスタットに使用される物と同様のバイメタル方式が使用されてきた。これは温度変化に伴って形状が変化する2種類の金属を貼り合わせたバイメタルと、通電時に発熱するヒータを備えるもので、通電が開始するとバイメタルが変形し、オン(またはオフ)となり、同時にヒータへの通電が切れ、バイメタルが元の位置に戻る、以後同様の動作を繰り返すことで点滅制御を行う。バイメタルは金属物性を動作原理とするもので、非常に耐久性に富み、特性も極めて変化しにくい(=点滅周期が安定している)ためこの方式は長年主流であった。ただ、ヒータ部については加熱/冷却が繰り返されるため安定性の高い金属が採用され、これが部品を比較的高価としていた。
電気部品の発達に伴い、大容量キャパシタ(コンデンサ)を利用した電気式リレー(渦電流式と呼ばれる)も使用されるようになるが、キャパシタの容量劣化による点滅周期の変化が起きやすく、寿命の点ではバイメタル方式の方が優れていた。さらに電子部品の発達により、タイマICなどの半導体素子の制御による電子式(トランジスタ式)リレーが登場する。ターンシグナルリレーに使用される半導体制御式リレーは、通常の半導体リレー(電流接点自体も半導体で構成される)と異なり、点滅制御は半導体制御で実施するが、リレー自体は機械式のものを採用している。近年では、リレー自体もパワー半導体に置き換えるものも見られるようになってきている(方向指示器の操作回数が多い路線バスでは、リレーの接点不良による方向指示器の故障を避ける観点から、1980年代半ばからパワートランジスタ素子で点滅させる無接点タイプが一部の事業者で採用されている)。電子式リレーは点滅精度では最も安定しており、部品単価も抑えられるため、近年にはほとんど電子式リレーが採用されていた。
なお、高度に電子化された現在の自動車においては、車両構成部品点数削減によるコスト低減のために、バイメタル方式や電子式リレーなどを単体で設置するのではなく、室内灯やドアロックなど他のシステムを制御するコンピュータユニットにターンシグナル点滅制御を統合することがほとんどになっている。
機械式リレーを採用するもうひとつの理由は、断続時に生じる機械的作動音(メカニカルノイズ)により点滅の動作状態を聴覚的に認識できることである。近年では半導体リレーも用いられるが全くの無作動音化されてしまうので、この場合、機械的作動音を発生させるための発音回路を付加したり、ランプ点滅に寄与しないごく小さな機械式リレーを付加することが行われる。
制御部のもう一つの役割が、ランプの状態監視である。日本・アメリカ・EUの各法令と規格では、方向指示器はランプ切れなどのトラブルが発生した場合に、異常をドライバーに通知するように定められている[脚注 5]。
通常、この機能もターンシグナルリレーが請け負っている。ターンシグナルリレーと各ランプは、それぞれ並列に接続されており、回路のどこかがオープン(断線、カプラ抜け、腐食や熱変形による接触不良など)になったり、どれかが球切れを起こしても他のランプは点灯(点滅)可能である。しかし、バルブが切れることによりターンシグナルリレーの負荷が変化し(短絡以外は負荷が減る)、点滅制御の特性を変えるようになっている(バイメタル式であればヒータの発熱量が変化する、電子式であれば時定数抵抗値が変化する、近年の電子式であれば電流検出抵抗により電流値の変化を検出する)。これにより、ターンシグナルランプの点滅間隔が短く(いわゆるハイフラッシャー状態)なったり、点灯状態にすることで異常をドライバーに知らせるようになっている。
なお、近年の電子制御の発達により、イモビライザーに代表される盗難アラーム、遠隔ロックなどのリモコン機能が実装されるようになり、その車両側応答インジケーターとして方向指示器が使用される傾向がある(アンサーバック機能)。これらの場合は、それぞれの回路はウインカーリレーとは別体に設置され、ハザードスイッチと同様の出力をターンシグナルリレーに一定時間与えるようになっており、これにより、これらの回路が故障したとしてもターンシグナル動作に影響が与えない配慮がされている。また、ハザードのポリシーをさらに発展させて、エアバッグなどの安全装備と連動して、事故時に制御部が自動的にハザードを発するオートハザード機能を搭載する車種も増えている。
法令・規格 [編集]
方向指示器に関する法令・規格には次のようなものがある。
日本 [編集]
- 道路運送車両法
- 第41条第1項第15号 (方向指示器を装備しない自動車(二輪車等含む)の運用禁止)
- 第44条第1項第9号 (方向指示器を装備しない原動機付自転車の運用禁止)
- 道路運送車両の保安基準
- 第41条 (自動車・自動二輪車の方向指示器に関する詳細)
- 第41条の2 (補助方向指示器に関する詳細)
- 第41条の3 (非常点滅表示灯に関する詳細)
- 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示
- 第48条、第104条、第160条 (自動車・自動二輪車の方向指示器の技術的基準)
- 第49条、第104条、第161条 (自動車・自動二輪車の補助方向指示器の技術的基準)
- 第176条、第182条、第188条 (原動機付自転車の方向指示器の技術的基準)
- 別添59 (方向指示器の技術的基準の詳細)
- 別紙1 (方向指示器の種類)
- 道路交通法
- 第53条 (車両の進路変更時の合図の方法)
- 第120条第1項第8号 (進路変更時の合図不履行に関する罰則)
- 第120条第2項 (不必要な合図に関する罰則)
アメリカ [編集]
- Federal Regulations part571 Federal Motor Vehicle Safety Standards No.108 "Lamps, reflectivedevices, and associatedequipment" (方向指示器を含む灯火類に関する法律)
- SAE Standard J588e "Turn Signal Lamps for Use on Motor Vehicles" (方向指示器の構造規格)
EU [編集]
- UNECE Regulations (1958 Agreement and addenda) Addendum 5: Regulation No. 6"UNIFORM PROVISIONS CONCERNING THE APPROVAL OF DIRECTION INDICATORS FOR MOTOR VEHICLES AND THEIR TRAILERS" (方向指示器の構造規定)
- UNECE Regulations (1958 Agreement and addenda) Addendum 47: Regulation No. 48 INSTALLATION OF LIGHTING AND LIGHT-SIGNALLING DEVICES (方向指示器を含む灯火類の実装規定)
さまざまな用法 [編集]
日本では、方向指示器は右左折や進路変更の合図[5]、ハザードランプは自車が交通の障害物(=ハザード)となっていることを表示するため(日本では夜間照明されていない路上での駐停車中の使用も含まれる[6])と定められており、これらが道交法に規定されるハザードランプの本来の使用法である。しかしながら、方向指示器、ハザードランプを本来の目的以外のさまざまな合図に使用することも行われている。車両から何らかの合図を発信するには灯火類を使用するのが有効であるが(特に夜間)、ヘッドランプやテールランプなどの灯火装備は本来目的以外の目的に使用するには光量(と消費電力)が大きすぎる、操作性が悪いなどの問題があり、これらの条件から方向指示器が使われてきたと考えられる。また、ホーン(警笛、警音器)も車両からの『合図』(ただし、法令上の「合図」ではない)の一つであるが、特に日本では余程重大な警告でない限り使用しない。日本国外ではハザードランプや灯火よりもホーンを頻繁に使用し、この点は日本独自の慣習であるといえる。
日本ではこのように、方向指示器、ハザードランプをさまざまな合図に使用してきた。その一方で、後述するハザードランプの用法に対し否定的な意見も根強い。その主張として共通しているのは「合図の濫用」ではないのかという指摘である。道路交通法および施行令で「合図」として定義されている灯火類の使用方法は、右左折、進路変更、転回(そのほか停止、徐行、後退)だけであり、これらの行為を行わないときは「当該合図をしてはならない」とされている。従って、方向指示器として使用する場合、上記の範囲から逸脱する用法は違反といえる。ただし、ハザードランプにおける下記のような用法については、「推奨」や「暗黙の了解」で実施されているものであり、明確な使用基準は存在していない。このように、ハザードランプの多目的使用については、各自の責任に委ねられているのが現状である。
方向指示器の用法 [編集]
右左折時 [編集]
実際に交差点に進入・右左折する際の方向指示器の点滅を指す。原則として、右左折時の交差点進入30m手前から開始する。進路変更時の方向指示器とセットになる場合もある。右左折待機中には点滅させず、進入する直前にしか点滅させないのは道交法違反「合図不履行」となる。特に左折時のそれは巻き込み事故の原因ともなり得る。
進路変更時 [編集]
日本では、右左折時の交差点進入30m手前までに進路変更(車線の左側もしくは右側に車体を寄せる)を完了する。実際の進路変更動作の3秒前に方向指示器を点滅させるのが原則である。あるいは二車線以上の道路で他の車線に移る場合に活用する。この場合、やはり進路変更の約3秒前に方向指示器を点滅させるのが原則である。方向指示器を出さないままの右左折時待機もみられるが、進路無変更のまま、信号が青になる直前後の方向指示器点滅による左折も上記同様「合図不履行」であり、自転車や原動機付自転車、自動二輪などを巻き込む原因ともなり得る。
右左折・進路変更ともに方向指示器は形式的なものと認識したり、また規則どおりの操作は教習中の初心者のようで格好悪いとみなす風潮が多くのドライバーに見られる[要出典]。例えば、方向指示器の操作をぎりぎりまで履行しない者や、全く点滅させない者も多いが、当然ながら他車両に対し直前までは自車は直進することを示した上で突然左折することになるため、巻き込み事故を誘発しやすい(特に日本の教習所ではこの点は徹底して教習し、運転免許試験でも減点対象となる)。
駐停車時 [編集]
走行中、路肩などに駐停車する際は、例えば左側に駐車する場合は左方向指示器を出し、安全確認を行い、緩やかに路肩に寄せる。駐停車中も左方向指示器をつけっぱなしにしている車を見かけるが、これは正しくない。本来、駐停車時の方向指示は「『路肩に寄せる』という意味の合図」であり、停止後は速やかに方向指示器を消すべきである。ただし、夜間など自車の存在が他車に認識されにくいような状況の場合、灯火を点灯するべきである。ただし、交差点など右左折のできる場所では、「ハザードランプ」を点滅させる方が望ましい。
排気ブレーキ使用時 [編集]
大型、中型車には通常のブレーキの他に、排気経路を強制的に閉塞することで強力なエンジンブレーキを発生させる排気ブレーキが装備されている。従来、制動灯はフットブレーキ操作時以外に点灯してはならないものと規定されていたため、排気ブレーキによる制動時は制動灯が点灯しなかったが、排気ブレーキの作動に気付かない普通車などの後続車が追突する事例があった。一部のトラックはアフターマーケットパーツで緑色の灯火を後部に取り付けて排気ブレーキ灯としていた(規定灯火類以外の点滅する灯火ということになり、厳密には違法)ものもあったが、そうでない大型車において、排気ブレーキの作動時に方向指示器、あるいはハザードランプを点滅させる用法が見られた。その後、法改正により、排気ブレーキ使用時にも制動灯が点灯してもよいことになり、またそのようなシステムが普及したことから、現在ではこの用法は少なくなっている。
追い越しの意思表示 [編集]
高速道路走行時などに、先行車に対して追い越しを開始する旨の伝達にはヘッドランプのハイビームを用いたパッシングランプが使用されることがある。ところが、追越車線または最も中央車線寄り車線を走行中に低速車に追いつき、追い抜くことが不可能になった場合、さらに道路の中央寄り(左側通行であれば右、右側通行であれば左)の方向指示器を点滅させる用法が見られる。行き場のない側へ車線変更することから転じて、先行車に対し追越進路を塞いでいる旨を伝える意味がある。
パッシングランプは先行車のドライバーに必要以上の緊張や重圧を与えるため、威圧感を低減させる意味(日本ではパッシングランプの使用を原因としたトラブルもあり、エチケット的意味で)で、また欧州においては一般に追い越しの行われる速度や頻度が日本より高く、また中央分離帯のない対面通行道路が多いため、追い越しをしようとする車とされる車との間でも意思疎通を行う慣行(追いつかれた車両が対向車線寄りの方向指示器を点滅させた場合、対向車・先行車があり「この場所での追い越しするべきではない」との意思を表示する慣行)から一般道・高速道路ともに用いられている。
アメリカにおいては以上のような用法はほとんどみられず、日本においても一般的とはいえない。
譲り合い時の合図 [編集]
大型車同士がすれ違うことのできない道路で、譲られた車が進行するときに右方向指示器を出す場合は、中央線がない場合(ある場合ならすれ違える)道路中央から大きくはみ出すという意味で使われる。また、高速道路本線第一通行帯の走行車両が加速車線からの車に前方進路を譲り流入を促す場合に、左方向指示器を点滅する場合がある。これは、左方向式きが道路交通法に定義された合図であり、「合図に係る行為をしないのにかかわらず、当該合図をしてはならない。」とあることから、違反である。ただし、前2項目と同様あまり浸透していないこと、パッシングランプよりは誤解を招かないだろうとの意見から、問題視する意見は多くない。さらに、高速道路本線第一通行帯を定速走行中の大型車が、自車よりも速い車両に追いつかれた場合、後続車両に追い越しを促す意味で左方向指示器を点滅する場合がある。追いついた後続車両は大型車によって前方視界が塞がれている場合が多く、前車は安全に追い越し可能であるとの意思表示ともいえる。この場合においても追い越し車両は漫然と追い越しをするのではなく、安全確認が求められるのはいうまでもない。
後退(バック進行)時の方向指示 [編集]
本来、方向指示器は進路を変更する場合に使用しなくてはならない。その意味では後退(バック進行)時に進路変更する場合(車庫入れ、スイッチバックなど)にも使用すべきものであるが、リバース時の使用については地域によって扱いが異なる。日本では後述のリバースハザードが使用されることからもあまり厳しく取り扱われない。一方、アメリカでは運転免許取得時の試験で必ず評点対象となる州があるほど全体的に厳しく扱われる[要出典]。
ハザードランプの用法 [編集]
リバースハザード [編集]
日本独特の用法である。大型車が転回、あるいは車庫入れなどの大きな方向変更する際に周りにバックの意志を明確にする目的でリバースの間ハザードランプを点滅させるもの。ただし、後方に車両などが居る場合は、バック(リバース)を行う前に「ハザードランプ」を点滅させるのが望ましい。こうすれば、「バック(リバース)を行うこと」が伝わるだろう。本用法はバスの方向転換時に使用され始め、後にほかの大型車にも普及している、現在ではギアをリバースポジションに入れると自動的にハザードランプを点滅させる後付回路が販売されている。しかし、現在の法律ではリバースポジションに入れたときに自動的に点灯(点滅でも)する灯火は後退灯とみなされるため、そのような後付回路を取り付けた場合は保安基準に抵触するので注意が必要である。
一般の乗用車では駐車場などで後退して駐車しようとする際、またタクシーなどでは枝道に後退して方向転換しようとする際などにもこうした用法が見られる。
低速車の警告表示 [編集]
車両の故障、他車による牽引、もしくは荒天などにより制限速度を大幅に下回る速度や道路維持作業車・除雪車などが低速走行する場合に、周囲の車両に注意を促す意味でハザードランプを点滅させる用法がある。これは危険を周囲に伝えるという意味で、非常事態告知に準ずる用法として推奨されており、アメリカのSAEスタンダードのように明文化[7]されている場合もある。
渋滞最後尾警告 [編集]
高速道路などの渋滞最後尾についた場合などに、後続車に追突などの注意を促すためハザードランプを点滅させる用法がある。本用法も危険状態を周囲に通知するという意味で使用される。JAFは会員向け機関誌「JAFMATE」でこの使用法について触れており、欧州などでもこの使用法が見られる。点灯時期は、渋滞最後尾につく以前、渋滞発見時点の走行中から点滅を開始することが望ましい。また、NEXCO3社では「前方の渋滞を見つけたらハザードを焚きましょう」という広報物を出し、本用法を推奨している。
駐停車時のハザード [編集]
路上に駐停車する際に、夜間や緊急時でない場合にもハザードランプを点滅させるもの。左側が他の路上駐車車両などにより物陰になる場合には右ウインカーと区別がつかず、発進の合図と混同させるので好ましくないという意見もある[8]。一方ヤマト運輸では、運転手に駐車時にハザードランプを点けるよう指導している[9]。なお、日本やアメリカにおいて、通学通園バス(スクールバス)は、児童、生徒または幼児の乗降のため停車しているときにハザードランプを点滅させることが法令[10]により義務付けられている。沖縄県の在日米軍基地保有スクールバスではこの慣習が残っていることがある(逆に、一般乗合バスでは「乗降にしばらく時間が掛かるので追い越してもよい」の意思表示の場合もある)。特にアメリカでは、ハザードランプを点滅させて停車しているスクールバスの側方を一般車は通過してはならない(スクールバスが発車するまで待たなければならない)ことになっている("STOP"と書かれた看板やランプを運転席側から大きく呈示する車両もある)。日本では、右方向指示器を出しているバスの追い越しが禁止されているほか、スクールバスが乗降のためにハザードランプを点滅させて停車しているときにはその側方を通過する際に徐行する義務が課せられている。これには後方から追い抜く場合だけでなく、反対車線で停車しているスクールバスとすれ違う場合も含まれる。
濃霧走行時の警告表示 [編集]
山岳部、海岸付近を通る高速道路、一般道を走行中に濃霧にあってしまった場合、「渋滞最後尾警告」と同じく後続車の追突注意を促すためハザードランプを点滅させる用法がある。碓氷峠付近やひどい濃霧状態にある山岳道路ではこの用法がしばしばみられる(視認性確保のためだが、これはリアフォグランプが普及していない日本特有の事情ともいえる)。
サンキューハザード [編集]
通常の走行状態では使用頻度の低いハザードランプを、儀礼の手段として用いるもの。アイコンタクトやジェスチャーによる運転手間のコミュニケーションが好まれず、警音器(ホーン)を控えめにする日本ではこの用法が特に用いられる。韓国でも車線合流で譲られた場合に同様のハザードランプ使用がある。しかしこの用法は世界では特殊であり、非一般的である。
この用法は、他車から進路を譲られた場合などに、感謝する意味で使用する用法が長距離大型車ドライバーなどから普及した。1990年代には自動車会社のテレビCMにて肯定的に紹介されていた時期もある。現在でもプロドライバーが用いることが多い。典型的用法は、渋滞中の本線合流などで、列に入れてもらった車両が、譲ってくれた後方の車両にハザードランプを数回点滅させる。また、右折しようとしている車に、直進車や左折車がパッシングランプで譲る合図を送り、譲られた右折車がハザードランプで感謝の意を伝えることもある。これが、感謝の合図という意味でサンキューハザードと称される。
現在ではかなり普及しているものの、この行為を拡大解釈したドライバーにより、無理な割り込み行為の直前・直後に「免罪符」的に使用する、譲り合いのたびにサンキューハザードをいわば「必死」になって履行する初心者ドライバーが存在する、本来の意味として使用したにもかかわらず追突された(追突した)、などの事例から根強い批判がある。なお、同程度の速度と交通量の2つの道路の合流部(高速道路など)や、車線が減少する地点では、両方の車列から1台づつが交互に合流する「ファスナー合流」が基本的な運転方法であり、間違えた優先意識[脚注 6]を持って頑として譲らない行為は誤りであり、また、前に入った車のドライバーがなんら合図を出さなかったとしても、後続ドライバーが文句を言う筋合いはない。
本来ハザードランプでの合図は、語意の通り、異常時などに何らかの理由で停車する(している)ことを周囲の交通に知らせるための、非常に重要な合図であり、これを他の目的に使用すると、目的外使用に慣れたドライバーが肝心のときに事態を的確に認識できなくなり、深刻な事態を招くおそれがある、という批判である。なお、「JAF MATE(前述)」誌によれば、この用法は地域によって浸透していないことがあり、他地域の車のサンキューハザードを緊急停車と勘違いして急ブレーキを踏み、事故につながった事例もあるとのことである。
サンキューハザードの関連商品として、操作性の向上を目的とするハザードスイッチ内蔵のシフトノブや、一定回数(2回や3回)点滅後に自動復帰するスイッチと後付回路が市販されたことがある。
自動車教習所などでも道路状況などを予測することに対して便宜的に「このような使用法もある」程度に教えられるものの、「JAF MATE」と同じく「一つの合図に二つの意味を持たせてはいけない」として本来の使用法である「最後尾警告」もしくは「自車の停止」の意味とドライバーが勘違いして追突事故に至る危険性を指摘しており、本来は推奨されるものではないとしている。
サンキューハザードと同様に車両の装備品を儀礼の手段として用いるものに、警音器を使ったサンキューホーンといわれる行為がある。サンキューホーンは騒音による迷惑行為となる恐れがあり、サンキューハザードとは異なり道路交通法(第54条第2項)により明確に使用が禁じられている。
交差点での注意励起 [編集]
日本以外では、交差点進入の際、単に自車の存在をアピールする目的でハザードランプを点滅させる用法が見られる、この用法はタイ、インドネシアの東南アジアにおいて信号機などの交通制御インフラが未整備の地域で見られる。当然本来の方向指示器の意味と矛盾するため危険な行為であるが、本用法が使用される地域では方向指示器の使用頻度が低いために重大な混乱を招かないという事情がある。
「この先オービスあり」の警告 [編集]
韓国の場合、後続車に自動速度違反取締装置(オービス)があることを警告する意図で使われる。
特記項目 [編集]
ドアミラーターンランプ [編集]
ドアミラーターンランプは自動車のドアミラーに方向指示器を内蔵したものであり、安全性の向上に寄与し得る可能性があるとの調査結果がある[1]。日本では、保安基準に適応したものは側面方向指示器として規定されるが、ディーラーオプションやアフターマーケットなどで既存の側面方向指示器に追加して装着する場合、道路運送車両の保安基準の第四十一条の二に規定された補助方向指示器(後述)の扱いとなる。車体側面へのターンシグナルランプ装着義務のないアメリカ(前述)では、後側方からの被視認性を高める目的からアフターマーケットを中心にドアミラーの主として鏡面に装着するシグナルが広まっていた。
市販車での世界初採用は、1998年に登場したメルセデス・ベンツ W220である。これ以降、欧州や日本の市販車にもドアミラーターンランプを採用するモデルが増加した。
ガソリンスタンドや洗車場などに設置されている洗車機を使用する際は、「ドアミラーを格納しないとドアミラーウインカーを破損することがある」という掲示がされているところが多く、注意が必要である。
形状が似ているオートバイ用のミラーターンランプはフロントターンランプであり、車両前方から視認できるよう車両進行方向へ配光されているため、側面方向指示器ではない。
クリアレンズターンランプ [編集]
クリアレンズターンランプとは、方向指示器に透明なレンズカバー(ランプカバー)を使用するものである。
かつては、フロントに装着される方向指示器は白色灯が中心であった。アメリカにおいては、1963年から橙色の方向指示器の使用が始まり、1968年には法制化された。現在では、前述のように日本においても方向指示器の色は橙色と規定されている。このため前部の方向指示器には橙に着色した樹脂レンズカバーを使用するのが長らく一般的であったが、クリアレンズウインカーは、電球に橙色の着色球を使用する代わりに樹脂カバーを無着色のものとするデザイン上の一手法である。
法令上の方向指示器は発光時の色を規定するもので「消灯時の色は問われない」とする解釈で成り立っているとされる。かつてはカスタマイズの一環として一部のユーザーが好んで行い(車外品のランプユニットを装着)、現在ではデザイン上の選択として自動車メーカーも広く純正採用している。しかし、明光下での視認性では着色した樹脂カバーに劣るという指摘もある。また、低品質の着色電球を使用した場合は、経年劣化により着色に使用された橙色の塗膜が剥がれることがあり、白色の点滅(整備不良)になってしまう。
純正品の場合、外部レンズは無色透明、電球も白色灯を使用し内部(電球周辺)に橙色のレンズカバーを組み込んでいる例も見られる。
なお、同様にデザイン面から一部の間でリアコンビネーションランプ全面を赤くする改造も広まった(スポコン、ドリ車など)。この場合、電球を緑色に発光するタイプに取り替えることでオレンジ色の光を得られる。
補助方向指示器 [編集]
タクシーウインカー [編集]
タクシーは、急停止や方向転換、乗客の乗降車などが頻発するため、ターンランプやハザードランプの点灯を周囲に認知させる必要性が高い。東京や仙台など、地域によっては屋根の上、あんどん両脇への補助ターンランプの装備が標準化されている。これを日本国内ではタクシーウインカーまたはルーフウインカーと呼ぶ。類似の装備は日本国外でもしばしばみられ、ニューヨーク市のイエローキャブも同様の装備を持つ。また、後部の窓にターンランプと連動して「注意」という文字を点滅させる装置を装備した車両もある。
バスの乗客用インジケーター [編集]
一部の路線バスでは車内に「右折」または「左折」あるいは「急ブレーキにご注意」と、ウインカーやブレーキランプの作動を表示する装置を装備して乗客に注意を促している。
現在も導入しているバス事業者 [編集]
- 広島バス
- 芸陽バス
- 阪東バス(「急ブレーキにご注意下さい」)
- 奈良交通
- 長崎バス(「急停車にご注意」)
- 佐世保市営バス
- 大分交通(「急ブレーキにご注意」)
- 大分バス?
- 国東観光バス(「急ブレーキにご注意」)
- 熊本市交通局(「急停車にご注意」) ※基本的には全車両に装備しているが、他事業者からの移籍車両や特殊仕様の車両には装備していない。
- 熊本都市バス ※保有する車両の大半が熊本市営バスから移譲されたものなので、上記に同じ。
- 熊本バス(「急ブレーキにご注意」) ※自社発注車のみ。
- 新潟交通
- 群馬中央バス(「急ブレーキにご注意下さい」)
- 高槻市営バス
- 福島交通 (「急ブレーキにご注意下さい」)
ほか
自動車・オートバイ以外の方向指示器 [編集]
自動車、オートバイ装備以外の方向指示器としては以下のものがある。
自転車の方向指示器 [編集]
自転車の一部車種にフラッシャーとも呼ばれる方向指示器が装備されている、使用目的は自動車・オートバイ用のものと同様であるが法律などによる規定が存在しないために、その形状・動作はさまざまである。かつては自動車のように無色球と橙色のランプカバーを併用したものも少なくなかったが、多くのものは横一列に並べた赤色ランプを発光パターンによって光が流れるように見えるシーケンシャルアクションを電気制御によって行う。また自転車は搭載電源を持たないために、乾電池を用いる。
自転車の方向指示器は1960年後半から子供用自転車に多く採用されたが、ギミック的な要素が多く、実用性に疑問があったこと、また自転車の重量が増加することなどから、1990年代にはほとんどが姿を消している。
戦車の方向指示器 [編集]
戦車に代表される装甲戦闘車両は、多くの国で一般車両の法令、規定適用の例外として扱われており、方向指示器を装備する義務はない。しかしながら近年では、一般道路を走行する場合の周囲への安全を考慮して方向指示器を装備している車両が多い。しかし、これらは法令、規定に沿ったものではなく、あくまで自主的な判断として装備しているもので、一般車両の方向指示器とは異なった実装がされている。一例として、日本の90式戦車の全長であれば、方向指示器は前後のみではなく側面に補助方向指示器が必要とされるが、実際には装備されていない。これらの事情はEU圏の戦車においても同様である。
-
バックミラー基部に方向指示器を備えるレオパルト1
路面電車の方向指示器 [編集]
鉄道は他の乗り物と違って線路の上を走るため、これから曲る方向を予告する必要がない。だがかつての鉄道では、ポイントの切り替え操作が手動であったことから、接近してくる車両を見てポイントを切り替える必要があり、特に路面電車では道路上に自動車や他の電車が錯綜する中、通常の鉄道より不規則なダイヤでやって来るところを、転轍(てんてつ)手がポイントを切り替えねばならなかった[脚注 7]。
通常の天候であれば、操車塔の窓から電車の方向幕や系統板を見て正確なポイント操作ができるが、悪天候や夜間の場合、転轍手が方向幕や系統板の表示を見落としてしまい、誤ったポイント操作によって異線進入事故を起こすことがあった。こうしたことから、ポイントに接近する路面電車から操車塔へ、どちらに曲がるかの合図をより正確に知らせる必要が生じ、一部の都市・鉄道会社の路面電車では方向指示器を使用することとなった。これはここまでの話でわかる通り、法規で義務付けられているものではないため、各社によってさまざまな形状や色が存在した。
早い時期に方向指示器を取り付けた路面電車車両としては、1950年から1953年にかけて東急玉川線に投入された80形がある。当時の玉川線は、三軒茶屋交差点において渋谷方面から頻繁にやってくる二子玉川園行き電車と下高井戸行き電車のポイント操作の正確を期すために、80形新造時に正面窓上部両側に方向指示器を取り付けた。その後製造された「タルゴ」こと200形や150形には方向指示器が取り付けられたが、先に登場していた70形以前の車両には取り付けられなかった。
東急玉川線に次いで方向指示器を導入したのは横浜市電で、1953年製造の1150形が方向指示器を取り付けて登場、1958年製造の1600形も当初から方向指示器が取り付けられていた。ただ、この時期にはこの2形式以外に方向指示器の取り付けがなされなかった。
一方、神戸市電ではこれらの事業者とは異なり、500形以降のボギー車全車に方向指示器の取り付け改造を実施して、1958年8月1日から使用を開始した。横浜市電、神戸市電の双方とも中央にプレス加工で矢印を打ち抜いた楕円形のカバーを取り付けた方向指示器(バス用部品)を使用していたが、神戸市電ではカバーにクロムメッキを施していたのに対し、横浜市電では車体色と同一に塗りつぶしていたほか[脚注 8]、取り付け位置も横浜市電では前面窓下、神戸市電では前面裾部と異なっていた[脚注 9]。その後、横浜市電では1967年の1100形と1500形のワンマン改造時に方向指示器を取り付けたが、神戸市電とは異なり、1300形や1400形などのツーマン運行のボギー車には最後まで方向指示器の取付工事は実施されなかった。また、横浜・神戸両市電とも多数在籍していた単車は方向指示器の取付対象外であったほか、神戸市電で300・400形といった単車の代替に大阪市電の801・901形を購入した100・200形も方向指示器を取り付けられなかった。これらの事業者以外に方向指示器を使用していた路面電車としては、呉市電が存在した。
しかしその後、1950年ごろに大阪市電で開発された、ポイント前方の架線上にトロリーコンタクターという接点を設けて、通過および停車位置によってポイントを転換する方式や、京都市電において特許を取得した、軌道回路を利用してポイントの前で電車が通過するタイミングを利用してポイントを転換する方式[脚注 10]が開発されたことにより、路面電車のポイント操作も無人化に成功、日本の路面電車からは操車塔が全廃された[脚注 11]。こうして方向指示器の役目も終わりを告げた。
神戸市電の廃止後、広島電鉄に譲渡された500形や1100形、1150形には方向指示器が残っていたが、車体色と同一に塗りつぶされて、やがて撤去されてしまった。方向指示器を残したまま営業運転に使われていた最後の路面電車は、東急世田谷線[脚注 12]の150形だったが、玉川線廃止→世田谷線内のみの運行となった後も、車体更新によって撤去されるまでの間は、前照灯の点灯とともに方向指示器が点灯された状態であった。世田谷線の車両が全て300系に交換されると、営業線上で方向指示器を装備した路面電車は全廃された。
なお似て非なるものとして、路面電車の正面下部左右に、テールランプ以外の灯火を装備している車両が存在する[脚注 13]。これは大型自動車のように、道路上における大型通行物の接触注意を喚起しているものであって、方向指示器とは全く関係ない。
飛行機の方向指示器 [編集]
飛行機の場合、自機の進行方向を機外に表示する装置として航空灯(ナビゲーション・ライト、Navigation Light 、Position Light )を持つ機体がある。航空灯は右翼端が緑色で左翼端が赤色の前方から左または右に110度、尾部が白色で左右に70度ずつ140度方向に常時点灯させる。航空灯により、他機から進行方向が判別できる。
脚注 [編集]
- ^ なおフラッシャーと呼ぶこともあるが、英語の flasher には「露出狂」「性器を露出する変態」という意味があるので使わないのが無難である。日本語の「ハザードランプ」は hazard flasher や hazard indicator である。
- ^ アメリカ仕様車における車体側面の前・後部両端、反射板を兼ねた車幅灯連動の灯火もサイドマーカーと呼ばれるため、側面方向指示器と混同しないよう注意が必要である。
- ^ 日本車では日産のローレル(C30型系)、ブルーバード(510型系クーペのみ)、セドリック、グロリア(230型系)など。
- ^ この件についてISO規格の見直しが論議されてきたが、右ハンドル車において左ハンドル車と線対称の配置とすることが永続的に認められることになった模様。自動車技術会サイトのgoogle検索
- ^ 以下に、日本・アメリカ・EUの各法令と規格を示す。
- 日本の法令 : 国土交通省告示第619号「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」別添40「灯火器及び反射器並びに指示装置の取付装置の装置型式指定基準」4.5.7.2項
- アメリカの法令 : Federal Regulations part571 "Federal Motor Vehicle Safety" Standards No.108 "Lamps, reflectivedevices, and associatedequipment" Section5.5.6
- EUにおける条約 : UNECE Regulations (1958 Agreement and addenda) Addendum 47,Regulation No. 48 "INSTALLATION OF LIGHTING AND LIGHT-SIGNALLING DEVICES" Section6.5.8 "Tell-tale"
- ^ 無くなる車線側のドライバーは、他車の迷惑となるような無理な割り込みを行うべきでは決して無いが、残る車線に早くから車線を変更していたドライバーが、自分の運転が正しく、車の少ない無くなる車線から先に行く者はマナーが悪いので許さない、とばかりに、合流地点で譲らない行為も誤りであり、危険である。ある程度の速度が出ている場合は、渋滞時の合流に比べると、早くからお互いの速度や車間を認知すること、その後の素早い判断と操作など、経験が必要となるが、残る車線側のドライバーのアクセルワーク(通常はやや減速して前に入れ、相手が間に合わないときは加速して後ろに入れる。)だけでスムーズな合流が行える場合がほとんどである。
- ^ こうした転轍手の常駐する場所を操車塔と呼び、道路から一段上がった小屋か、一段下がったトーチカのような型をしていた
- ^ 横浜市電でも、1600形の方向指示器カバーは、登場当初はクロムメッキが施されていた
- ^ 神戸市電でも、1150形の一部車両では、前面窓下に方向指示器が取り付けられていた
- ^ 詳細についてはこちらのサイトを参照
- ^ 操車塔そのものはしばらくバックアップ用として残されていた。現在でも車庫ではさすがに有人操作が残っている
- ^ 東急玉川線が一部廃止後、世田谷線と名を変えた。
- ^ 特に熊本市電の古い車両はテールランプと一体化され、いかにもウインカーのようなデザインである
出典 [編集]
- ^ 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第249条第3項
- ^ 市販LEDバルブ装着についての注意事項のご案内 - 三菱自動車工業
- ^ ISO 4040 Road vehicles Location of hand controls, indicators and tell-tales in motor vehicles
- ^ UNECE(United Nations Economic Commission for Europe : 国連欧州経済委員会) Regulations (1958 Agreement and addenda) Addendum 47: Regulation No. 48 Section6.5.9 "Other requirements"
- ^ 道路交通法第53条第1項、道路交通法施行令第21条
- ^ 道路交通法第52条第1項、道路交通法施行令第18条第2項
- ^ SAE Standards 890688 The Interaction of Tun,Hazard and Stop Signals
- ^ 朝日新聞、1993年10月10日、朝刊第5面。
- ^ ヤマト運輸株式会社、CSR報告書2005 (PDF)、12頁、2007年9月25日参照。
- ^ 道路交通法施行令第26条の3 第2項
参考文献 [編集]
- 荒井久治 『自動車の発達史〈下〉―ルーツから現代まで』山海堂、1995年、ISBN 4381100689
- 国土交通省自動車交通局技術安全部監修『道路運送車両法の解説』交通総合センター、2003年、ISBN 487497001X
- 林順信 『玉電が走った街今昔』JTB、1998年
- 長谷川弘和 『横浜市電の時代』大正出版、1998年
- 河村かずふさ「神戸日記」 レイルNo.38 プレス・アイゼンバーン、1999年
関連項目 [編集]
外部リンク [編集]
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