だいち

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陸域観測技術衛星「だいち」 (ALOS)
所属 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
主製造業者 NEC東芝スペースシステム
公式ページ 陸域観測技術衛星「だいち(ALOS)」
国際標識番号 2006-002A
カタログ番号 28931
状態 運用終了
目的 地球観測
設計寿命 3年以上(5年目標)
打上げ機 H-IIAロケット 8号機
打上げ日時 2006年1月24日
10時33分(JST
機能停止日 2011年4月22日
運用終了日 2011年5月12日
物理的特長
本体寸法 一翼太陽電池パドル付き箱型
6.2 m x 3.5 m x 4.0 m
質量 約4t
発生電力 7,000W以上(寿命末期)
姿勢制御方式 三軸姿勢制御
軌道要素
軌道 太陽同期準回帰軌道
静止経度 東経90.75度
近点高度 (hp) 698km
遠点高度 (ha) 700km
軌道半長径 (a) 7,070km
離心率 (e) 1.4130281E-4
軌道傾斜角 (i) 98.2度
軌道周期 (P) 98.7分
回帰日数 46日
サブサイクル 2日
搭載機器
PRISM パンクロマチック立体視センサー
AVNIR-2 高性能可視近赤外放射計2型
PALSAR フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダー

陸域観測技術衛星だいちALOS, Advanced Land Observing Satellite、エイロス)は、地図作成、地域観測、災害状況把握、資源調査などへの貢献を目的として宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した地球観測衛星2006年1月24日H-IIAロケット8号機で打ち上げられた。

運用終了まで650万シーンを撮影し、新潟県中越沖地震四川大地震等の災害被害観測、ブラジルの熱帯雨林における違法伐採や日本国内の不法投棄監視、国土地理院の作成する地図への適用など、さまざまな成果を挙げた。

目次

[編集] 任務

[編集] 地図作成

1/25000の地形図を作成するために必要な情報を取得する。

[編集] 地域観測

世界の各地域における環境と調和した開発を可能にする地域観測を行う。

[編集] 災害状況把握

国内外で発生する大規模災害の際に、素早く被災地域の状況を把握する。

[編集] 資源探査

地形の特徴などを解析することにより、主として石油、天然ガス等の地下資源探査に利用する。

[編集] 観測機器

PRISM(パンクロマチック立体視センサー)

一度に幅70kmの範囲を2.5mの高分解能で観測し、地表のデータを取得することを目的に設計されている。人間が見ることのできる波長の光を直下視、前方視、後方視の3方向の独立した光学系で観測することにより、地表の凹凸を標高という形でデータを取得する。それぞれの望遠鏡は3つの反射鏡とCCD検出器によって構成されている。

AVNIR-2(高性能可視近赤外放射計2型)

1996年打ち上げのみどりに搭載されていたAVNIR(高性能可視近赤外放射計)の改良型センサー。マルチバンドの地上分解能がAVNIRの16mから10mと大幅に改良されている。赤、緑、青の3色+近赤外領域の4種類で観測することにより、多目的なカラー画像を製作する。また、ポインティング可能角度が40°から44°に改良されたことで、災害時などの緊急観測に迅速に対応でき、極域の一部を除く地球上すべての地域を、3日以内に観測することができる。

PALSAR(フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダー)

1992年に打ち上げられたJERS-1(ふよう1号)衛星に搭載されていた合成開口レーダー(SAR)の改良型センサ。衛星から発射したマイクロ波の反射を観測するセンサーのため、観測する領域の天候・昼夜等に影響されることなくデータを取得できる。また、観測範囲や分解能が可変であり、柔軟な観測を可能にし、地球上すべての地域を5日以内に観測することができる。3つの観測モードがあり、高分解能モードでは10mの分解能による詳細な地域観測が可能である。SCAN SARとよばれる広域モードではやや解像度は劣るが、従来の合成開口レーダーの3~5倍に当たる幅250~300kmでの観測が可能である。ポラリメトリモードとよばれる多偏波モードでは、2種類(縦波と横波)のマイクロ波を送受信する。多偏波での送受信は世界初の技術であり、より詳細な地形データを観測することができる。

[編集] 主な運用の推移

  • 2007年9月3日 ブラジル政府(環境再生可能天然資源院)の依頼を受け、南米アマゾン川流域の違法伐採による森林破壊を監視する体制がスタートした[1]。犯行現場を迅速に抑えるため、通常は3ヵ月後に配信されるPALSARによる撮影画像が、10日以内にブラジルの研究機関へ配信されるようになる。
  • 2008年4月から、青森県岩手県秋田県不法投棄監視する体制がスタートする予定である。日本で初めてのもので、画像解析岩手大学により行われる。
  • 2008年1月8日 画像データが、予想以上の誤差やノイズ(乱れ)の影響で、基本図を単独で作るには精度不足であることが明らかになった。一因としては衛星の制御が困難で誤差5メートル以下の基準に達しなかったことがあるが、これは修復可能である。最大の原因は地上の様子の複雑さの見積もりの甘さで圧縮データを完全に戻すことが出来ず、ノイズが大量に発生したため。(2008年1月9日 読売新聞)
  • 2008年1月16日 文部科学省宇宙開発委員会において、高さ方向の誤差はデータの蓄積により、画像ノイズは国土地理院と共同で新規開発したノイズ軽減ソフトウェアを用いることにより、それぞれ改善できると発表した。2008年4月の発表によると、1月の時点で高さ方向の誤差は地上基準点を用いて5m以下を達成しており、画像ノイズについても国土地理院の研究に基づいたブロックノイズ低減ソフトウェアを3月からJAXA地上設備に適用しているという。これを受けて国土地理院は、2月26日に、それまで地形の経年変化や平地の建物の形状修正等に限定されていただいちによる画像を、等高線を引く作業に適用する許可を各部署に伝達した。これにより、地形図の迅速な修正にだいちの画像が使用されることになった。[2]
  • 2010年1月4日パキスタンフンザ渓谷にて地すべりによる天然ダムアッタバード湖)が形成された。宇宙航空研究開発機構は、だいちが同年5月30日の画像の分析から、ダム湖の規模を推測した[3]
  • 2010年1月19日、宇宙航空研究開発機構(JAXA) は、陸域観測技術衛星「だいち」がハイチ地震による地殻変動を捕らえたと発表した。震源の西側にある海岸付近が少なくとも35センチメートル東へ動いたことが分かったという。[4]
  • 2011年3月11日東北地方太平洋沖地震を受け緊急観測を行い400シーンを撮影し10府省・機関へ情報を提供した。これまでだいちは海外へ情報を提供してきたことから、そのお返しとして海外から5000シーンの情報が提供された。
  • 2011年4月22日、午前7時30分頃、発生電力の急低下とともに、セーフホールドモードに移行し、搭載観測機器の電源がオフ状態、全機能停止となっていることが「こだま」による中継データから判明した[5]。制御不能となったため、50年以上後には大気圏突入、消滅が見込まれている[6]
  • 2011年4月23日以降はテレメトリが受信できなくなる。その後も太陽電池による発電を期待して復旧が試みられ、同年5月中旬まで運用が続けられる予定[7]
  • 2011年5月12日、午前10時50分、バッテリー停止命令送信。運用終了[8]
  • 2011年10月18日海上保安庁が海氷衛星画像提供への感謝の気持ちとして、だいちに対してレーザー光線を伝達した[9]

[編集] だいち2号・だいち3号

陸域観測では継続的に観測を行いデータを蓄積していくことが重要である。しかし、だいちは光学観測機器とSAR観測機器を同時に搭載する大型衛星であるため、開発や製作に時間を要し、打ち上げ失敗や故障時に全ての観測が不可能になり、開発と運用両面でのリスクが高い。そのためJAXAでは、今後の陸域観測ミッションを、従来の「みどり」や「だいち」のような大型衛星ではなく、複数の中小型衛星によって行う方針を固めた。こうしてJAXAは、2006年10月25日に開かれた文部科学省の宇宙開発委員会にて、解像度を1mにまで高めた「だいち後継機」4機による観測体制を2010年までに整備する方針を報告した。現在では下記のようなレーダー衛星と光学衛星を先行して1機ずつを打ち上げて、その後は両タイプの衛星を継続的に打ち上げていく計画に変更されている。

[編集] レーダー衛星「だいち2号」

2008年7月、JAXAにより災害監視衛星システムSAR衛星の開発が宇宙開発委員会に提案され[10]、同年8月7日の宇宙開発委員会の推進部会と、同年8月20日の宇宙開発委員会の本委員会で「開発研究」フェーズへの移行が妥当であるとの判定を受けた。毎日新聞の同年7月5日の記事によると開発費は地上設備を含めて292億円であるという。災害監視衛星システムSAR衛星では、これまでの衛星の成果を踏まえ、災害発生時に迅速に情報を収集することができるよう複数機を同時運用するなど、実用機としての運用性や継続性を重視した計画になっていた。

しかし2008年12月の宇宙開発委員会や、総合科学技術会議、宇宙開発戦略本部において、災害監視衛星システムSAR衛星は災害監視に特化せずより幅広い用途に活用すべきとの指摘を受けた。もとより災害監視衛星システムSAR衛星は、だいちと同等以上の能力を有する衛星システムであり、宇宙開発委員会でも衛星の開発方針そのものは妥当と判断された。これらのことから、JAXAは災害監視衛星システムSAR衛星の名称を陸域観測技術衛星2号(ALOS-2)、またはだいち2号に変更することを宇宙開発委員会に報告した。

2009年11月2日に開催された宇宙開発委員会推進部会で、JAXAより開発フェーズに移行するに当たっての報告が行われ、同年12月10日に開催された宇宙開発委員会推進部会において「開発」フェーズへの移行が妥当と判断された[11]。打ち上げは2013年を予定している。

性能(括弧内は、だいちの性能)[12]
  • 緊急観測可能頻度 - 1日~2日(5日)
  • スポットライトモード - 1m×3m
  • 高分解能モード - 3m×3m他(10m×10m)
  • 広域観測モード - 100m
  • 観測可能範囲 - 2320km (右側のみ870km)
  • 地上局への伝送速度 - 800Mbps(138Mbps)
  • 設計寿命 - 5年、目標は7年

[編集] 光学衛星「だいち3号」

2010年2月現在、光学衛星の陸域観測技術衛星3号(ALOS-3)、またはだいち3号の「研究」フェーズが進行中である[13]。打ち上げは2014年を予定している。

性能(括弧内は、だいちの性能)[12]
  • パンクロマチックセンサー - 80cm (2.5m)
  • マルチバンドセンサー - 5m (10m)
  • 観測可能範囲 - 2600km (1420km)
  • 地上局への伝送速度 - 800Mbps(138Mbps)
  • 設計寿命 - 5年、目標は7年

[編集] 情報収集衛星との関係

情報収集衛星は当初、災害の監視なども含めて多目的に運用することが掲げられていた。しかし、偵察衛星としての運用を考えると、解像度などの性能は秘密にせざるを得ず(オープン・ソース・インテリジェンスの格好の標的になる)、災害監視など民生向け用途では活用できない状態になってしまった。だいち後継衛星は、情報収集衛星の民生用途版を別途用意するものと考えることもできる。

光学衛星とレーダー衛星を2機ずつ運用する構成や、個々の衛星の性能は、情報収集衛星とよく似ている。衛星の開発・製造を担当するメーカーも、情報収集衛星と同じ三菱電機である。ただし、情報収集衛星が主に軌道上予備を目的としており各衛星がほぼ同時刻に同一地点を観測するのに対して、だいち後継衛星は観測間隔を均等にするよう配置される点が異なる。

[編集] 脚注

  1. ^ アマゾンの森林伐採監視衛星利用推進サイト(宇宙航空研究開発機構ホームページ)
  2. ^ 陸域観測技術衛星「だいち」データの地図への利用に関する改善状況について (国土地理院 / JAXA 2008年4月)
  3. ^ 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるパキスタン・フンザ川の土砂崩れにともなう堰止湖の緊急観測結果(JAXAホームページ)
  4. ^ ハイチ大地震:衛星写真を公開 JAXA 2010年1月15日 毎日新聞
  5. ^ 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の電力異常について (JAXA 2011年4月22日)
  6. ^ 平成23年宇宙開発委員会(第15回) 議事録 文部科学省 2011年5月18日
  7. ^ 陸域観測技術衛星「だいち」の電力異常について”. JAXA (2011年4月27日). 2011年4月29日閲覧。
  8. ^ 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の運用終了について”. JAXA (2011年5月12日). 2011年5月12日閲覧。
  9. ^ 海上保安庁から「だいち」(ALOS)へラストメッセージとしてレーザー光線が伝達されました”. JAXA (2011年10月20日). 2011年10月31日閲覧。
  10. ^ 災害監視衛星システムSAR衛星プロジェクトの事前評価実施要領(案) (宇宙開発委員会 2008年7月)
  11. ^ 推進部会(平成21年)(第7回)議事録(宇宙開発委員会 推進部会 2009年12月10日)
  12. ^ a b 「だいち」後継機の概要(JAXA 2009年10月2日)
  13. ^ 平成22年宇宙開発委員会(第7回)議事録(平成22年2月17日)

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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