胴体着陸

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胴体着陸した大日本帝国陸軍飛行第50戦隊一式戦「隼」二型(キ43-II)。接地の衝撃で機首のプロペラは後方に折れ曲がり、エンジン部分は脱落している

胴体着陸(どうたいちゃくりく)は、航空機の緊急着陸方法の一つである。

概要[編集]

本来の降着装置(車輪、スキーなど)を用いず機体そのもので着地を行うものをいう。複数ある降着装置のうち、一部が使用できない結果、胴体が地面に接地して着陸した場合も胴体着陸に含まれる。主に故障などで降着装置が出ないときなどの非常時に行われる。設計段階で想定内の事態であり、機種ごとの詳細な着陸手順は Pilot's Operating Handbook(POH) の EMERGENCY PROCEDURES の項に記載されている。

他の原因により空港以外の場所 (地上・水面) に着陸せざるを得なかった場合、着陸装置の抵抗による衝撃を減らすために胴体着陸を敢行する場合がある。逆に通常の着陸手順に従い空港に着陸する場合は、現代の航空機では着陸にすべての着陸装置が使えない(すべての脚が出ない)ということは稀であり、機が揚力を失いバランスを崩した後にいかに安全に停止させるかが問題になる (接地後も高速走行中は揚力のため正常に滑走することが多い: #事故としての胴体着陸の事例参照)。この場合は火災の発生を抑えるため、燃料を使い切る、あるいは投棄して行うことが多い。ボーイング747のような大型旅客機は燃料を多く積載した場合、最大着陸重量を超過することがあるため、燃料を投棄する装置がついているが、それよりも小型の航空機は装置がついていないものもあり、この場合着陸地上空を旋回するなどして燃料を消費した上で胴体着陸を行う必要がある。

水面への胴体着陸[編集]

水面への胴体着陸(着水)への事例も知られており、安定して着水できた事例もあれば機体が崩壊した事例もある。前者の事例としては日本航空サンフランシスコ湾着水事故があげられる。

湖面や海面のような広い水面に対して着水する場合は減速時の距離の制限がないために、そのまま低空で減速し、揚力が失われた段階で流体の海上に自由落下することになる。水面は垂直に高速で激突した場合はコンクリート並みの硬さになるが、不時着水時に機体にかかる力は鉛直方向のみを考慮する必要があり、海上数メートルからの海面への落下と同じ衝撃である。条件がよければ機体の弾性だけで衝撃を吸収可能である。これは飛行艇の着水時の機体にかかる衝撃と同じである[1]

一方、飛行艇とは異なり通常の旅客機では造波抵抗を逃がす構造になっていないので、着水したあとに急激に減速したり、機体が前のめりになる可能性はある。一見平坦に見える海面でも、高さ数十cm~2mほどのうねりが数m~数十mで存在するため、波と平行な向きに不時着水するとこの危険性は少ない。衝撃は陸地ほど機体・乗客に重大な損傷を与えるものではないであろう[2]。少なくとも固体にそのまま突撃する衝撃とは桁違いに小さいことは留意する必要がある。

地上に胴体着陸した場合とことなり着水した場合は水没という要素が加わる。すなわち、着水したとしても激しい衝撃により搭乗者が負傷または失神し、さらに短時間で機体が沈没すれば、多数が溺死する可能性もあるという指摘がある[要出典]。一方、日本航空サンフランシスコ湾着水事故が実例となったように意識のある生存者は自力で脱出出来、機体の破損状況次第では水没まで数十分間の余裕があり、救助は十分可能であるとする意見もある[要出典]。着水後に機体構造が保全されていれば機体を沈没させるほどの海水の浸入には相当量の時間がかかると考えられる。また仮に燃料投棄が終わっていれば機体にはかなりの浮力が付加されるはずである[3]

事故としての胴体着陸の事例[編集]

註・出典[編集]

  1. ^ 米国においては747に相当する大きさの飛行艇が過去に製造されたことがある。詳しくはH-4 (航空機)の項を参照のこと。
  2. ^ 交通事故程度のような衝撃を乗客は受けることにはなる。
  3. ^ たとえ燃料が満タンでも燃料自体は海水より軽い。また海上の方が燃料投棄を安全にかつ短時間に行える利点がある。
  4. ^ 松山空港で小型機が胴体着陸 けが人なし - 47NEWS 2009年10月10日

関連項目[編集]