シグナス (宇宙船)

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シグナス補給船
Cygnus Orb-D1.5.jpg
シグナス標準型
詳細
役割: ISSへの物資輸送
乗員: 0名
打ち上げロケット: アンタレス
寸法
標準型 拡張型
全高:[1] 3.66 m 4.86 m
直径: 3.07 m 3.07 m
重量: 1,500 kg 1,800 kg
体積:[2] 18.9 m3 27 m3
打ち上げペイロード:[2] 2,000 kg 2,700 kg
廃棄ペイロード:[3] 1,200 kg 1,200 kg
性能
滞在期間: 約30日間 未定

シグナス英語: Cygnus)は、アメリカ航空宇宙局 (NASA) の商業軌道輸送サービス (COTS) の契約に則り、オービタル・サイエンシズ社 (OSC) の開発した国際宇宙ステーションへの物資補給を目的とした無人宇宙補給機である。

概要[編集]

ISSドッキングするシグナス

COTSの第1候補としてK-1を開発していたロケットプレーン・キスラーが資金計画が不透明な中で2007年に資金調達に失敗し、それが原因でCOTS契約が終了されたことを受け[4]2008年にCOTSの第2次選考を行いスペースXドラゴンとともにシグナスが新たに契約された[5]

標準型2段式アンタレスによって打ち上げられるシグナスは、宇宙ステーション補給機 (HTV) と同様にグローバル・ポジショニング・システム (GPS) やTDRSを用い、ISSに自動でランデブーした後、カナダアーム2によってハーモニー(ノード2)の共通結合機構 (CBM) に結合する。

2013年4月にアンタレスロケットが初打ち上げに成功[6]、次いで同年9月にシグナス1号機の打ち上げが行われ、ISSへの初結合に成功した[7]

構成・諸元[編集]

シグナスの標準型と拡張型

シグナスは既存の技術を最大限活用し再構築することでリスクを抑え、低コストで信頼性の高いシステムを実現する。サービスモジュール (SM) と与圧貨物モジュールの2つの部分で構成される。

サービスモジュール (SM)[編集]

SMはOSCの静止衛星用の衛星バスシステムSTARバスの推進系や電源系、STARバスを改修して用いた小惑星探査機ドーンのアビオニクスを流用して開発。

主要諸元
  • 寸法 : 直径 3.1 m × 1.3 m
  • 全備質量 : 1.8 t
  • 電源 : 固定型GaAsトリプルジャンクション太陽電池パドル
    • 実用4号機 (CRS 4) からはATK社が開発した円形のUltraFlex太陽電池パネルに切り替え[8][9]
  • 発生電力 : 3.5 kW(初期型)
  • メインエンジン : IHI社のBT-4エンジン(推力445N)
  • 推進剤 : MON-3 / N2H4
  • スラスタ:Aerojet Rocketdyne社のMR-106Mヒドラジンスラスタ 32基[10]
  • バッテリ:GSユアサ社のLSE190リチウムイオン電池を採用[11]

近傍接近システム(ISS等とのランデブードッキング時、姿勢制御や動作状態のデータをやり取りして誘導する通信機器)には日本のHTVに使われた三菱電機製のPROXシステムが採用されている[12]

与圧貨物モジュール (PCM)[編集]

PCMは与圧物資補給用の貨物モジュールである。NASAが従来スペースシャトルでISSへの与圧物資補給に使用してきた多目的補給モジュール (MPLM) の技術を用い、タレス・アレーニア・スペースによって開発・製造が行われている。なお、結合機構には、日本の宇宙ステーション補給機(HTV)やスペースX社のドラゴン宇宙船と同様にISS標準の共通結合機構を使用しているが、シグナスでは大きな貨物は運搬しないため、ハッチはやや小さなサイズのものを使用している点が特徴である。

主要諸元
  • 寸法 : 直径 3.1 m × 3.8 m
  • 全備質量 : 3,500 kg
  • ペイロード : 2,000 kg / 実用4号機からは2,700kgに能力拡張

非与圧貨物モジュール (UCM)[編集]

UCMは非与圧物資補給用の貨物モジュールである。NASAが従来スペースシャトルでISSへの非与圧物資補給に使用してきたエクスプレス補給キャリア (ELC) の技術を用い、開発が行われる。

注:UCMはコンセプトレベルの構想であり、実際の開発はされていない。

回収貨物モジュール (RCM)[編集]

RCMは与圧物資回収用の貨物モジュールであり、大気圏再突入能力をもつ。1,200kgの物資が回収可能となる予定である。

注:RCMもコンセプトレベルの構想であり、実際の開発はされていない。現状ではシグナスは完全な使い捨て型で開発されており、回収は考慮していない。

打ち上げ実績・予定[編集]

打ち上げ日 ミッション名 搭載物 備考
2013年9月18日 COTS Demo Flight (Orb-D1) ISS補給物資など700kg。 シグナスの初打上げならびにISSに初の結合を行った。結合は当初9月22日の予定であったが誘導システムの不具合により延期となり、9月29日に初結合に成功した[13][7]。10月22日にISSから分離し、10月24日に再突入。
2014年1月9日 CRSミッション#1(実用補給フライト1:Orb-1) ISS補給物資や実験装置など1260kg (33機のCubeSatも運搬)[14] シグナス初のISSへの商業補給サービス (Commercial Resupply Services, CRS)[15]
2014年7月13日 CRSミッション#2(補給フライト2:Orb-2) ISS補給物資や実験装置など1664kg (32機のCubeSatも運搬)[16] 8月15日にISSから分離、17日に再突入。
2014年10月29日7時22分(JST)

(米東部夏時間2014年10月28日18時22分)

CRSミッション#3(補給フライト3:Orb-3) 水や食料、実験機器2290kg[17] 打ち上げに用いるアンタレスロケットのエンジン・トラブルに因り、ロケット本体が爆発し、軌道投入失敗[17]

出典・脚注[編集]

  1. ^ Thales Alenia Space - Cygnus
  2. ^ a b Cygnus Fact Sheet - 2012
  3. ^ Orbital Science COTS Program
  4. ^ NASA to Open New Competition for Space Transportation Seed Money (NASA)
  5. ^ NASA Awards Space Station Commercial Resupply Services Contracts (NASA)
  6. ^ アンタレスロケットの打ち上げ試験、完璧に成功”. sorae.jp (2013年4月22日). 2013年9月29日閲覧。
  7. ^ a b シグナス補給機が宇宙基地に到着 食料や水など届ける”. 47NEWS (2013年9月29日). 2013年9月29日閲覧。
  8. ^ “ATK Awarded $20 Million UltraFlex™ Solar Array Contract from Orbital”. ATK Press Release. http://atk.mediaroom.com/index.php?s=25280&item=93497 2011年12月3日閲覧。 
  9. ^ “Orbital debuts image of enhanced Cygnus to carry 2,700 Kg of cargo to ISS for NASA”. OSC社Twitter. http://twitter.com/#!/OrbitalSciences/status/141890637153832961/photo/1 2011年12月3日閲覧。 
  10. ^ “Aerojet Rocketdyne Thrusters Help Cygnus Spacecraft Berth at the International Space Station”. Space Travel.com. (2013年10月3日). http://www.space-travel.com/reports/Aerojet_Rocketdyne_Thrusters_Help_Cygnus_Spacecraft_Berth_at_the_International_Space_Station_999.html 2013年10月16日閲覧。 
  11. ^ “GS Yuasa Batteries Help Power Orbital Science’s Cygnus Spacecraft on Mission to ISS”. GS Yuasa Lithium Power. (2013年9月30日). http://www.gsyuasa-lp.com/content/gs-yuasa-batteries-help-power-orbital-science’s-cygnus-spacecraft-mission-iss 2013年10月16日閲覧。 
  12. ^ 米オービタルサイエンス社から、NASAの宇宙貨物輸送機用近傍接近システムを受注 三菱電機 ニュースリリース
  13. ^ シグナス補給船実証機(Orb-D1)ミッション”. シグナス補給船実証機(Orb-D1)ミッション. JAXA (2013年9月27日). 2013年9月30日閲覧。
  14. ^ “New Science Bound for Station on Orbital’s Cygnus”. NASA. (2014年1月8日). http://www.nasa.gov/mission_pages/station/research/news/orbital_investigations/ 2014年1月11日閲覧。 
  15. ^ “シグナス補給船(Orb-1)ミッション”. JAXA. http://iss.jaxa.jp/iss/flight/cygnus/orb-1.html 2014年1月11日閲覧。 
  16. ^ “Orbital Successfully Launches Antares Rocket Carrying Cygnus Spacecraft on Cargo Resupply Mission to International Space Station”. Orbital Sciences. (2014年7月13日). https://www.orbital.com/NewsInfo/release.asp?prid=1906 2014年7月15日閲覧。 
  17. ^ a b アンタレス・ロケット、打ち上げに失敗 離昇直後に爆発 sorae.jp

関連項目[編集]

外部リンク[編集]