プログレス補給船

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プログレス補給船
Progress
ISS Progress cargo spacecraft.jpg
ISS プログレス補給船
詳細
目的: 国際宇宙ステーション (ISS) への補給
乗員: 有人または無人
※有人は軌道上での移乗のみ
(有人での打ち上げは不可)
諸元
高さ: 7.23 m
直径: 2.72 m
ペイロード: 2,350 kg
能力
持続性: ISSと6ヶ月間ドッキング可能

プログレス補給船(プログレスほきゅうせん、ロシア語:Прогрессプラグリェース英語:Progress)は、現在主に国際宇宙ステーション (ISS) への補給に使われているロシアの使い捨て無人貨物輸送宇宙船である。

概要[編集]

貨物船であるプログレスは飛行中は無人だが、宇宙ステーションへのドッキング後は宇宙飛行士が中に入ることができるので、製造しているRKKエネルギア社では「有人」に分類している[1][2][3]ソユーズ宇宙船に由来し、ソユーズ打ち上げロケットで発射される。現在は国際宇宙ステーション (ISS) への補給に使われているが、元々はロシアの宇宙ステーションへの補給に使われていた。プログレスによるISSへの補給は、年に3~4回行なわれている。各補給船は、次の補給船が到着する直前まで、廃棄物の収納とリブーストのためドッキングしたままである。その後、廃棄物が積み込まれ、切り離されて軌道を離脱し、大気圏で大半が燃え尽きる。

プログレスは、サリュート6号7号)、ミールISSの4つの宇宙ステーションに燃料やその他の補給品を運搬してきた。長期間の宇宙ミッションを行なうためには、常に補給品を供給しなければならないという認識から、プログレスのアイデアが生まれた。宇宙飛行士は1人が1日につき30kgの消耗品を必要とすることがわかり、これは6ヵ月の滞在では5.4トンに達する。これだけの量の物資と乗員を、ソユーズの小さなスペースに一緒に積み込んで打ち上げることはとても無理だった。

設計[編集]

プログレスは、ソユーズとほぼ同形状・同サイズで、3つのモジュールで構成されている。

与圧された前部モジュール
ここには、乗員のための補給品(科学機器、衣服、パック詰めされた新鮮な食料、家族からの手紙など)が積み込まれている。ドッキング・ドローグはソユーズのものに類似しているが、UDMH燃料とN2O4酸化剤の配管を持つ。
燃料区画
ソユーズの再突入モジュールは、非与圧の推進剤および燃料補給区画に置き換えられた。配管は宇宙船の外側に取り付けられているが、これは、漏れが発生したとしてもステーション内に有毒ガスが流入しないための処置である。燃料は2つのタンクで運搬される。
推進モジュール
推進モジュールは宇宙船の後部にそのままあり、自動ドッキング時に使われる姿勢制御エンジンも搭載されている。ドッキング後には、ステーションの軌道を押し上げるために使われることもある。

プログレスは無人・使い捨てとして設計されたため、重量の軽減が可能であった。これは、巨大な生命維持装置や耐熱シールドが不要であることを意味している。また、各モジュールを分離する機能も無い。ステーションから離脱した後は、逆推進ロケットを噴射して大気圏で燃え尽きる。

バージョン[編集]

飛行のたびに数多くの小さな改良が実施され、大きな改良では名前が変更された。

プログレス[編集]

プログレスの名前で42機の宇宙船が作られ、最後に打ち上げられたのは1990年5月である。

貨物船の設計を担当したのは、TsKBEM(現在のRKKエネルギア社)である。1973年の中頃から設計が始まり、プログレスには暗号的な識別番号11F615A15が与えられた。1974年2月までには設計が完了し、1977年11月には最初の量産機の打ち上げ準備が整った。1978年1月20日に、ソユーズと同じロケットでプログレス1が打ち上げられた。ソユーズと同じシュラウド(保護用の覆い)も装備されていたが、緊急脱出システムは機能停止されていて、単純に空気力学的な目的のためだけだった。

このプログレスの最初のバージョンは、質量が7,020kgあり、2,300kg、すなわち打上重量の30%の貨物を運搬することができた。直径はソユーズと同じ2.2メートルだが、長さはわずかに長い8メートルである。自律飛行期間は3日間(ソユーズと同じ)で、1ヵ月間ドッキングしたままにできた。プログレスは常に補給先のステーションの後部にドッキングした。

  • 打上重量 7,020–7,249 kg
  • 貨物重量 (プログレス1-24) ~2,300 kg
  • 貨物重量 (プログレス24-42) ~2,500 kg
  • 全長 7.94 m
  • 貨物モジュールの直径 2.2 m
  • 最大径 2.72 m
  • 貨物区画の容積 6.6 m³

プログレスM (11F615A55)[編集]

改良版のプログレスMは、1989年8月に初めて打ち上げられた。最初の43回はすべてミールへ飛行し、ミールの再突入後は国際宇宙ステーションへの飛行が行われた。2009年7月のプログレスM-67が最後の飛行となった。

プログレスMは、基本的にプログレスと同じ宇宙船だが、ソユーズTTMから導入された改良が特徴である。太陽電池パネルを装備するようになり、最高30日まで自律飛行ができ、ミールへ運搬できる貨物は100kg増えている。また、古いプログレスとは違って、ラデューガ (Raduga) カプセルで150kgまでの貨物を地球に持ち帰ることができる。このカプセルは長さが1.5m、直径60cmで、乾燥重量は350kg、与圧モジュールのハッチに挿入し、再突入時に分離・回収される。プログレスMは、ソユーズTMと同じ新しいクルスランデブーシステムを装備。軌道上寿命は180日間。

  • 打上重量 7,130 kg
  • 貨物重量 2,600 kg
  • 乾貨物重量 1,500 kg
  • 液体貨物重量 1,540 kg
  • 全長 7.23 m
  • 太陽電池板の長さ 10.6 m
  • 乾貨物区画の容積 7.6 m³
  • 貨物モジュールの直径 2.2 m
  • 最大径 2.72 m

プログレスM1 (11F615A55M1)[編集]

プログレスM1は、プログレスMの改良型で、ステーションへより多くの推進剤を運搬できるよう水タンクの代わりに推進剤タンクを追加したタイプである(水は貨物室内に容器に満たして搭載可能)。 2000年2月に初飛行し、2004年1月まで計11回の飛行が行なわれた。

  • 質量: 7,150 kg
  • 貨物の最大積載量: 2,230 kg
  • 推進剤の最大積載量: 1,950 kg
  • 乾貨物の最大積載量: 1,800 kg

プログレスM2[編集]

プログレスM2は別の改良型で、ミール2宇宙ステーション計画向けに提案された設計だが、財政的な問題のため取りやめになった。M2にはより大きな貨物や宇宙ステーションのためのサービスモジュールが装備され、ゼニットロケットで打ち上げられる予定であった[4]

改良型プログレスM (11F615A60)[編集]

改良型プログレスMは、プログレスM型のアナログ制御機器をデジタル化した改良型で、2008年11月にプログレスM-01Mが初飛行した。旧型のコンピュータを新型に更新(TsVM-101新型コンピュータへの換装やテレメトリシステムもデジタル化)したことにより、約75kg軽量化された。 2009年7月のプログレスM-67以降は、プログレス補給船はすべてこの改良型に切り替えられた。 プログレスM1を改良した改良型プログレスM1(11F615A70)も計画されている。 なお、2010年9月末からは、ソユーズTMA宇宙船に同様のデジタル化の改良が施されたソユーズTMA-M宇宙船が導入された。

現在の状況[編集]

国際宇宙ステーション (ISS) への補給のために、現在でも使われている。STS-107コロンビア号空中分解してスペースシャトルが飛行禁止となったため、2003年2月1日から2005年7月26日まで、大量の補給品をステーションへ運搬できる唯一の宇宙船であった。ISSへのミッションでは、プログレスM1改良型が使われていて、水タンクの場所を推進剤・燃料補給モジュールから与圧区画へ変更し、より多くの推進剤を運搬できるようになっている。

ソユーズと同様(大部分のアメリカの宇宙船とは異なる)に、通常は宇宙ステーションへの自動ドッキングが可能な自律航行システムが備えられている。これは、必要に応じて手動に切り替えることができる。

2011年8月24日、国際宇宙ステーションへ向かったプログレスM-12M(プログレス44P)がロケットの異常のため墜落した。この事故まで33年間に渡って100機以上のプログレスが成功裏に打ち上げられており、プログレスシリーズとしては初の打ち上げ失敗となった[5]

他の補給船[編集]

日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)では宇宙ステーション補給機(HTV)と呼ぶ補給貨物船をISSへの貨物運搬に運用している。2009年9月10日に1号機をH-IIBロケットにより打ち上げ、2013年8月現在、4号機まで打ち上げられている。

欧州宇宙機関 (ESA) では欧州補給機 (ATV) と呼ばれる補給貨物船をISSへの貨物運搬に運用している。1号機(ジュール・ヴェルヌ)は2008年に打ち上げられた。プログレスの約3倍にあたる最高7.5トンの貨物をISS軌道上に運搬でき、12ヶ月ごとにアリアン5ロケットで打ち上げられる予定である。

アメリカ航空宇宙局スペースシャトル退役以降、宇宙ステーションへの補給手段を自身で保有しておらず、民間のスペースX社に委託しており、ドラゴンにより2012年5月より補給を行っている。また、自身の宇宙開発計画としてオリオンを2014年以降打ち上げる計画である。

ロシア自身においては、ロシア語でフェリーを意味するパロム (Parom) という名前の新しい宇宙船が、プログレスの代替としてRKKエネルギア社から提案されている。この新しい宇宙船は、計画中のクリーペルやロシアのエアロックをもつ他の貨物コンテナを回収し、最大15トンまでISSに運搬できる。

出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]