スマートグリッド

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スマートグリッド (smart grid) とは、デジタル機器による通信能力や演算能力を活用して電力需給を自律的に調整する機能を持たせることにより、省エネとコスト削減及び信頼性と透明性の向上を目指した新しい電力網である。

目次

[編集] 概要

スマートグリッドは、新しい機能を持った電力網である。最初にアメリカ合衆国の電力事業者が考案した。「スマート」という語が表すように、発電設備から末端の電力機器までをデジタル・コンピュータ内蔵の高機能な電力制御装置同士をネットワークで結び合わせて、従来型の中央制御式コントロール手法だけでは達成できない自律分散的な制御方式も取り入れながら、電力網内での需給バランスの最適化調整と事故や過負荷などに対する抗堪性を高め、それらに要するコストを最小に抑えることを目的としている。

元々、米国の脆弱な送配電網を新たに登場したコンピュータ技術によって低コストで安全に運用する手法を模索する過程で生まれた構想であり、電力網における供給者と需要者の間をデジタル通信線によって結ぶというアイデアに、家庭電化製品のネットワーク化推進に失敗していた高機能家電への進出を狙うメーカーやデジタル通信用のデバイス・メーカー、さらにはITネットワークを主導している企業までが、家庭内へデジタル回線を引き込む良い機会と捉えて大きな関心を寄せるようになった。また、米国だけに限らず多くの国で、プラグインハイブリッドカー電気自動車、家庭用太陽電池発電などの普及が見え始めたのも、米国が官民挙げて次世代の送配電網の必要性を論じるきっかけになった。

このように米国が新技術による新たな電力網に"smart grid"という名を与えて産業界での新たな分野を作り始めたが、同様の動きは先進各国でも生じていて、まず欧州が米国と同じような構想で域内の電力網の再構築・向上を検討している。日本では、現行の電力網で電力供給が安定して運営されていることもあり、電力業界側は比較的消極的と言われる。

スマートグリッドを現実化するには、電力の送電網/配電網とその周辺の将来技術の予想や電力需要の量的・質的予想、技術開発と規格統一といった多くの課題があるが、電力網全体に新技術を盛り込んだデジタル式の通信および電力制御を行う装置を配置するだけでも、巨額投資が見込めるため、電力機器メーカーや設備工事業者だけでなく、自動車メーカーやデジタル通信装置に関わる多くの関連業界が新市場と捉え、特にこうした分野に技術的優位性を持つ日本や米国などでは官民一体で推進しており、周辺産業界とも協力してまずは国際的な標準化の確立を目指している。

消費者利益に結びつくかどうかは未知数であるが、最小のコストで送電網を構築することに狙いがあるため構築コストの低減が大きな課題である[出典 1]

事業所や工場など、限られた範囲でエネルギー供給源から末端消費部分を通信網で管理する場合も定義に含まれ、サブカテゴリーとして「マイクログリッド」と呼称される。

[編集] 目的

[編集] 日本

政府
企業

高機能電力メーターのようなIT機器関係だけでなく、電力制御技術全般や超伝導ケーブル、NAS電池のような大規模蓄電池システムを売り込もうという産業界からのビジネスチャンスとしてとらえる見方がある[出典 1]

高温超伝導送電線[1]のように要素技術レベルで省電力となるものも含まれるなど、対象となる技術やアイデアの境界線は明確ではない。実現への手段には広がりがあるが、目的は以下のようなものに集約できる。

[編集] 米国

  • 政府
    • 景気刺激
    • 新たな規格を自国内で確立し、次世代インターネット産業での自国企業の立場を確固たるものにする。
  • 企業
    • 送電線網の信頼性向上
    • 温室効果ガスの削減義務
    • 電気自動車/プラグイン・ハイブリッド自動車へのインフラ整備
    • 高機能電力メーターから参入して家庭IT機器のネットワーク化を独占する[2]
    • 個人の電力消費データを元にシミュレーションを行い、電力事業者へ売り込む。

[編集] 欧州

電気自動車、プラグイン・ハイブリッド自動車へのインフラを整備。

[編集] 中国

スマートグリッド(智能電網)を利用した電力供給体制の整備に4兆元(約50兆円)の投資を決定[3]

[編集] アジア

脆弱な送電線網の信頼性向上に利用しようという視点で注目。

[編集] 方法

スマートグリッドには多数の構想や計画が含まれており単純に集約することは容易ではない。また具体的なアイデアも2009年現在は計画段階にあるものが多いが、おおむね以下のようなサービスが想定されており、一部は実施段階にある。

[編集] 実施段階

[編集] スマートメーター

電気使用料の検針作業を人が行わず、通信機能を持った電気メーターが自動的に電力事業者へ遠隔報告する (AMR)。料金確認目的のみならず、電力使用量を常に観測する事で供給計画に役立てる。今後登場するさらに高機能なスマートメーター (AMI) では、事業所内や家庭内のエアーコンディショナー照明温度計、セキュリティ機器などの制御まで行うことが構想されている[4][出典 2]スマートメーター英語版の導入は2009年末現在、欧州での導入が先行している[5][出典 3][6][出典 4][出典 5]

  • 供給者のメリット
    • 検針のための人件費や時間を削減できる。
  • 消費者のメリット
    • 外出先からの家電制御が容易になる[出典 6]
  • 供給者のデメリット
  • 消費者のデメリット
    • 設備負担が電気料金に上乗せされる[出典 7]
    • 意図しない機器制御を受ける恐れがある[7]
    • クラッカー等による電力系統を通じた生活の覗き見が可能になる[8]

[編集] 構想段階

[編集] HEMS

HEMS(home energy management system、家庭内エネルギー管理システム)は、家庭内にあって家電機器の電力消費量を表示したり、遠隔的に運転を制御する[出典 5]

事故発生時の迅速対応
停電事故発生時などで、問題箇所を素早く特定する。
  • 供給者のメリット
    • 復旧コストが抑えられる。
  • 消費者のメリット
    • 停電復旧が早まる。
  • 供給者のデメリット
  • 消費者のデメリット
    • 設備コストが電気代に上乗せされる。
電力使用制限契約による遠隔制御
電力需要のピーク時に電力機器の使用を一時的に減らす代わりに電力料金を下げる[出典 8]
  • 供給者のメリット
    • 電力消費を管理できるため、発電コストを抑えられる。
  • 消費者のメリット
    • 電力ピーク時に停止する契約を結ぶことで割安な価格で電力購入ができる。
  • 供給者のデメリット
  • 消費者のデメリット
    • 電力ピーク時等に遮断が行われるため、熱波や寒波などの際には冷暖房等の生存に必要な電力の利用までが停止する恐れがある[出典 8]
分散発電による売電の効率化とトラブル回避
事業所発電や個人宅での余剰電力の買取時に円滑に「逆方向」に電力を流し、また位相電圧を適正に維持するよう調整する。
  • 供給者のメリット
    • 電力網の末端部分での需給が可能となり、発電/変電/送電設備負担が低減できる可能性がある。
  • 消費者のメリット
    • 自家発電が多い地域では、大規模発電所に影響されにくい電力供給が可能になる。
  • 供給者のデメリット
    • 電圧や周波数といった電力品質を保つためには、発電・変電・送電設備の制御と運用に新たな技術が求められる
    • インターネットと同様にハッキング等の対象になるため、脆弱性に対する対応が求められる。
  • 消費者のデメリット
    • 電力機器が高価、または電気代に上乗せされる。
電気自動車の充電・放電スケジューリング
EVPHV充電を電力事業者の発電電力量に余剰がある時間帯に行えるようスケジュールを組む。また、電気自動車から電力需要のピーク時に放電させる[出典 1]
  • 供給者のメリット
    • 発電蓄電設備を導入するコストが抑えられる。
  • 消費者のメリット
    • 蓄電池利用料を供給者から得ることで消費者の新たな収入源になる[出典 9]
  • 供給者のデメリット
    • 蓄電池利用料が継続的に掛るため、設備建設に比べ長期的には高額になる場合がある。
    • 自動車用蓄電池を転用しているため、蓄電能力を計画できない(あるいは不安定になる)。
  • 消費者のデメリット
    • 蓄電池の利用料が維持管理費用を下回る場合がある。
    • 蓄電池として利用しすぎると、電気自動車としての利用に支障が出る。
    • 頻繁な充放電により管理方法によってはバッテリーの寿命が縮まる。

[編集] 再生可能エネルギーへの対応

再生可能エネルギーへの対応のためにスマートグリッドが用いられる要素も大きい。

太陽光発電風力発電のような、地上で得られる自然エネルギーから発電する電力は、その発電量が時々刻々と変化して一定には得られないという特性がある。それぞれの発電元に固有の蓄電池を備えて送出電力を平準化する形式もあるが、コスト高や維持管理の手間なども考慮すれば最善策であるか疑問がある。できるだけ多くの自然エネルギー由来の発電システム同士を連接することで総体としての発電電力量を平均化できれば、蓄電池容量を減らすと同時に蓄電池も集中できれば維持管理も楽になると考えられる。自然エネルギー由来の発電システムは地理的に分散して存在するために、多数を連接するには専用の送電網を作るよりも既にある商用電力の送電網、つまり電力系統を利用する方がムダがないが、周波数や電圧といった電力品質を電力系統内の隅々まで維持し続けるためには、需要家側と送出側、そして電力系統を管理する側が相互に協調する必要がある。

スマートグリッドでは、こういった再生可能エネルギーを電力系統で問題なく扱えるようにするための方法として、センサネットワーク技術と充電技術で対応する構想が存在する。

センサ・遠隔制御技術
スマートグリッドでは、一般住宅や事務所・工場といった需要家の電力消費をセンサネットワーク技術と遠隔制御技術を活用して監視し負荷制御することによって、電力消費量の平準化と電圧・周波数の安定化を図る。例えば真夏の昼間に電力需要がピークとなれば、家庭のスマートメーターを経由した無線や有線による遠隔操作によってクーラーの設定温度を短時間だけ2度ほど上げる。
充電技術
太陽光発電や風力発電のような、発電電力が変動し制御できない発電装置では、個別の蓄電池に発電した電気を蓄えることによって外部に送出する電力量を一定にする、または、必要なだけ放電するといった使用法が従来から用いられてきたが、スマートグリッドではこの考え方をさらに進めて、蓄電池の設置位置に関係なくグリッド内で全てを共通化すれば発電した電気の実質的な蓄電可能量を増やすことができるとするものである。太陽光発電所や風力発電所ごと、配電網ごとや家庭・事業所ごと、充電のためにコンセントに接続された電気自動車等の蓄電池といった全てを連携して用いるためには、どこの電池に充電可能な空きがあるのかや、どの電池から放電すべきかなどを細かく制御する必要があり、センサ・遠隔制御技術も必要となる[出典 2]

[編集] 逆潮流の問題点

家庭や工場といった通常は電力を消費する側が反対に電力系統に対して電気を送り出す電力のことを「逆潮流」と呼ぶ。電力系統内で配電する電力の容量は電力消費の大小、つまり需要に応じて設計されているが、逆潮流ではこの設計時には想定しなかった供給者が電力系統に加わることになる。

品質維持
代表的な逆潮流の問題点に、電圧変動と周波数変動がある。電力系統でも大規模な送電系統では中央給電指令所の集中監視の下で主に発電所の調速器[9]によってこれら電力供給での品質が維持されているが、電力会社が発電量をコントロールできない逆潮流が多量に流入すると、電力の品質維持が困難になると考えられる。
位置による不平等
事業所発電のような大規模な発電を逆潮流として受け入れる場合には電線や変圧器にもそれなりの対応が行えるだろうが、無数の小規模な発電への対応は問題となる可能性がある。例えば同一の変圧器によって配電される住宅地内の複数の家が発電した電力を同時に逆潮流として流せばその分だけ電圧は電線や変圧器などの許容量に応じて局所的に上昇する。日本では電気事業法第26条および電気事業法施行規則第44条の定めにより101±6Vや202V±20Vの範囲内に収める必要があり、これを超えると各家ごとに備わったパワーコンディショナが規定通り機能すれば無効電力として売電されない。また、変圧器から遠い家では電圧上昇の影響を大きく受けるために変圧器に近い複数の家が逆潮流を行えば、配電系統の末端側は常に電圧の規定値上限近くになってしまって、最悪の場合には末端側の家は発電して余った電力を全く売電できなくなる可能性がある。
このように将来、家庭での発電と売電が普及した時に家の立地によって売電できなくなる事態を避けるため、変圧器を増やして逆潮流を行いやすくする対策が議論されている[出典 2]

[編集] 従来型の電力系統の見直し

例えば日本の電力会社は「99.9999%の高い確度で周波数は規定内に収まっている」とその安定度を強調するが、多くの先進国では電力の安定供給に最大限の努力が払われている。極めて安定な電力供給は当然のように考えられてきたが、停電などの大きな障害は別としても、逆潮流のような電力の安定性を阻害する要因の登場に対して、本当に電圧や周波数の変動を避けるために大きな設備投資が今後も必要か疑問の声が出始めている。周波数だけ見ても、産業用などで使われる同期式モーターのような今となっては特殊な物を除けば、多くの機器が正しい周波数を必要とはせずに、インバーター式による操作性と運転効率の改善による省エネルギーを志向する時代になっている。電圧についても、インバーター式の電源や直流動作のために内部で電圧の自動調整を行う電源回路を備える電気製品が主流となり、少しくらいの電圧の変化は多くの機器では全く影響しないようになっている。

例えば電話回線では、専用回線によって高い通信品質を維持しできたが、それを構築して維持管理するのに大きなコストをかけてきた。デジタル通信でも当初はコストをかけた専用回線や伝送品質を保証する回線でスタートした後、今では品質と同程度に低コスト性にも配慮してベストエフォート方式を採用したIPネットワークが世界中を席巻しているが、品質に不満の声はあまり聞かれない。

今後さらに電気製品のインバータ化は進み、長期的に見れば家庭内でも自宅内発電と共に蓄電池を備える家が増えると予想される。逆潮流に対応するために電力網への追加投資が必要だとする議論もあるが、通信回線サービスが高い品質維持からベストエフォートへと変わったように、電力サービスにおいて極端な高品質化の維持にコストを掛け続ける必要があるのか、ベストエフォートではだめなのか再検討を求める意見もある[出典 2]

[編集] 各国の状況

[編集] 米国

アメリカ合衆国ではカリフォルニア州の電力危機ニューヨークの大停電をきっかけに、送配電網の整備を求める声が大きくなった。2003年の大停電事故の1ヵ月前に、米エネルギー省は「Grid2030」という送配電網の近代化に関するレポートを発表していた。2007年12月には「スマートグリッド」関連の投資資金補助や試験プロジャクトの予算に1億米ドルを拠出することを法律で決めた。バラク・オバマ大統領の就任1ヵ月後の2009年2月には、景気刺激策である「米国再生・再投資法」(American Recovery and Reinvestment Act, ARRA) の一部として、「スマートグリッド」関連分野に110億米ドル(日本円で1兆1000億円相当)を拠出することを決めた。これが今日、米国の通信とIT機器メーカーの間まで広がったスマートグリッド・ブームのきっかけとなった。

ニューメキシコ州では州政府と日本の新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) が中心となり、スマートグリッド構想に基づく実証研究プロジェクト「Green Grid」を企画している。日本の経済産業省は以前より州政府と太陽熱発電などの再生可能エネルギーでの繋がりがあり、協力関係にあった。2009年2月には州政府から日本へ提案され、4月に会合が持たれて、6月末までにプロジェクト概要を提案し、2009年の夏には可否が決定される予定である。5MWの配電線(フィーダー線)1本を対象にして、1,200軒の家庭、1つの学校、複数の事業所を含む地域の電力網に2MWの電力貯蔵施設と1MWの太陽光発電施設を加えた[10][出典 1]

オバマ大統領は、アメリカ連邦議会 に対して、代替エネルギーの生産を2009年からの3年間で2倍にし、新しい「スマートグリッド」を建設するための法案を通過させるために遅滞なく行動するように要請した[出典 10]

化石燃料温暖化ガスの排出削減はエネルギー安全保障や地球温暖化問題の対策の1つとして、多くの政府が推進しているが、米国の電力消費量を5%削減できれば、5,300万台分の自動車に相当する化石燃料の節約と温暖化ガス排出量の削減が実現するといわれており[出典 11]、その実現手段の1つにスマートグリッドが有効ではないかと期待されている。

スマートグリッドによる米国国内の電力網の変化は、概ね3段階の過程を経ると考えられる。最初は2009年現在から既に始まっているスマートメーターの導入であり、既に全米では8州を除く42の州政府が政策での何らかの形でスマートメーターへの取り組みを示しており、一部は取付け段階にある。第2段階は2011年から2020年頃までの期間で、無線や有線通信によって家庭内の電気を使用する機器類の電力使用を遠隔操作することが想定されている()。スマートメーターをこの電力遠隔制御ネットワークのノードとする計画もあり、多様な家電製品に無線LANや電力線通信のような機能を持たせることで電力制御だけにとどまらない新たな付加価値を製品に与えられる。このため、従来は映像・音響機器といったデジタル機器だけが家庭内ネットワークの対象だと見られていたのが、冷蔵庫や洗濯機まで加わる状況となり、多くの家電メーカーが将来の大きなビジネスチャンスに興味を示している。また電気自動車プラグインハイブリッド車も充放電を行う家庭内での大きな蓄電池としてこれらの機器に加わる。第3段階では2030年頃までに、あらゆる機器類が自律的な負荷制御を行うような状況が想定されており、配電網内に大規模な蓄電施設が設けられると考えられている。

米国でのこういった動きに対応して、米国内の企業だけでなく日本を含む世界中の企業が将来の大きな市場を目指して自社の持てる技術を宣伝している段階である[出典 2]

[編集] 日本

日本では類似したアイディアが住友電気工業住友精密工業などにより提案されており、太陽を起源とする再生可能な新エネルギーと、今日技術的に適用可能となった高温超電導直流電力ケーブルの組み合わせによる地球規模の電力網敷設を段階的に推進すること、そのために、「PPLPソリッドDC・超長距離・大容量・国際連系・海底ケーブル」が必要であること、それらによって最終的には人類の必要とする全エネルギーを再生可能な手段によって得られることが期待されている[出典 12]

経済産業省望月晴文事務次官は、2009年2月19日の記者会見で、アメリカでスマートグリッドが提唱されているのは送電網がつぎはぎだらけで、よく大停電を起こすのが理由で、日本は送電網がしっかりしているから追従する必要はないのではないかという見方を示した[出典 13]

東京工業大学東京電力東芝日立製作所などが共同で「日本版スマートグリッド」実証実験を東工大キャンパスで2010年度から行うことが報道された[出典 14]。実験には、東芝日立製作所の他にも、東芝三菱電機産業システム富士電機システムズ(現富士電機)・明電舎伊藤忠商事関電工の参加が決まっており、さらに増える可能性もあるという。実験期間は3年間の予定である[出典 14]

実証実験では実際の家庭生活を想定し、家庭用の太陽光パネルを設置して冷蔵庫などの一般的な家電製品や電気自動車、ヒートポンプ給湯器に利用する一方、余った電力については蓄電池にためたり、電力会社に実際に売ったりするという。電力の売買状況をコンピューターで把握し、コンピューター内にシミュレートした送電線網への影響を分析。送電線網に影響を与えずに太陽光発電を有効利用できる売電の時間帯や電気自動車への充電時間帯などを検証する[出典 14]

日本と米国での状況を比べれば、米国が多種多様な企業がスマートグリッドのビジネスに参入の意向や興味を示しているが、日本国内では家庭内通信まで踏み込んだ改革を目指す計画ではなく、新築住宅などでの太陽光発電と小型コジェネレーション装置といった家庭内発電での取り組みがまず進められている状況である。日本国内は米国と異なり電力網でも電力監視センサのネットワーク[11]が充実してきており、各電力会社は需要家の負荷変動を予測しながら細かな変動は電力監視のネットワークで随時捕まえてきめ細かな対応を行うことが可能であるとされている。米国のように一般家庭の家電製品を電力需要に応じて遠隔制御する取り組みにはそれほど積極的ではない[出典 2]。このため、欧米や中国などが進める大規模なスマートグリッド計画とは裏腹に、産官学共同であるにも関わらず比較的小規模な実証試験ばかりがいくつか行われている程度の現状が、携帯電話やデジタルテレビ放送と同様にこの分野でも"ガラパゴス化"に繋がるのではないかと危惧する声も出ている。

[編集] 英国・イタリア

英国とイタリアでは、電力料金の不払いに対応するために、スマートメーターの導入を進めている。

[編集] 標準化

IEEEでは2009年からP2030通信規格の策定に当たる予定である。また、米国政府はNISTに、機器・システム間での相互運用性確保に関連した標準規格(機器・システム自体の標準規格ではない)の選定を指示した。NISTは、これを受けてEPRIと委託契約を行い、2009年7月26日現在、中間報告書が公表されている。

ZigBeeやHomePlug Powerline Allianceなどの企業も宅内電気機器に採用されるよう働きかけを行っている[出典 1]

[編集] 脚注・出典

[編集] 脚注

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  1. ^ 日本の住友電気工業では高温超伝導ケーブルを売り込んでいる。
  2. ^ 世界中の家庭内の電気製品が送電網を経由した電力線の通信網で情報をやり取りするようになれば、現在のインターネット機器の10-100倍の数の端末が繋がる巨大な情報網が出現するため、未来のCisco、次のGoogleを狙う企業はこれら2社のほかにもIBM、Intel、Verizon Wirelessを筆頭に、多くの企業がチャンスをうかがっている。
  3. ^ http://www.nikkei.co.jp/news/main/20100313ATGM1203512032010.html [リンク切れ]
  4. ^ スマートメーターは米国や欧州の一部の国を中心に導入が始まっており、1台あたり数千円から数万円と比較的低コストで長期的な検針作業を省いて、企業としてスマートグリッドへの積極性がアピールできることや、米国などでは電気自動車が今後は普及すると予想され、その充電へも対応できるようにインフラ整備を行っておく意味もある。
  5. ^ オランダの首都アムステルダム市では「アムステルダム・スマートシティー・プログラム」によって、2つのエリアの合計約1,200件の一般住宅にGPRS規格の無線通信機能を備えたスマートメーターを設置している。
  6. ^ イタリアでは2000年から導入が始まり、既に約2,800万台が国内の住宅に設置されている。英国・フランス・スペイン・ポルトガルで約1億台、中国で6,000万台以上の導入が予定されている。米国でも数千万台の導入が予定されていて、米国カリフォルニア州のPacific Gas and Electric社はすでに200万個を設置済みであり、約1,000万個の家電制御機能付きスマートメーターに取り替える予定である。世界的に通信方法の標準化は完了しておらず、ZigBeeZ-Wave、G3-PLCといった異なる方式の採用が進んでいる。
  7. ^ http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/31648.html [リンク切れ]
  8. ^ http://eco.nikkei.co.jp/special/gnd/article.aspx?id=MMECz9000019092009&page=2 [リンク切れ]
  9. ^ 中央給電指令所では自動周波数制御装置 (AFC) などを使って10秒ごとに変動を監視し、負荷が増えて電圧が低下するか周波数が遅れる場合には発電所の出力を増すように調整が行われ、逆に負荷が減ると逆に出力を減らすように指示する。同様にそれぞれの発電所でも1秒ごとに調速器が発電周波数を一定に保つように働いている。
  10. ^ ニューメキシコ州の「Green Grid」計画では、日本側からは経済産業省やNEDOの他にも、東京電力日本ガイシパナソニック日立製作所東芝なども会合に参加している。
  11. ^ エネルギー監視システム エコウィザードver.2

[編集] 出典

  1. ^ a b c d e 蓮田宏樹、Phil Keys著 『スマートグリッド』、日経エレクトロニクス2009年6月1日号
  2. ^ a b c d e f 狩野浩志、清水直茂、野澤哲生、Phil Keys著、『スマートグリッド ON!』、日経エレクトロニクス2009年10月19日号
  3. ^ 鈴木剛司著、『欧州トップの環境対応都市目指すアムステルダム』、日経エレクトロニクス2009年12月28日号
  4. ^ 清水直茂著、『スマートメーター』、日経エレクトロニクス2009年12月28日号
  5. ^ a b 蓬田広樹著、『低炭素社会への移行を契機に新エネルギー市場が拡大へ』、日経エレクトロニクス2009年11月30日号
  6. ^ 経済産業省 家電制御で省エネ スマートハウス実証 環境市場新聞 2009年7月9日
  7. ^ 解決すべき4つの課題 - 電力インフラの構造を変えるスマートグリッド 日経ITpro 2009年10月23日
  8. ^ a b A Smarter Electrical Grid Bloomberg Businessweek 2008年1月11日
  9. ^ 米オバマ政権のスマートグリッド戦略 日経ビジネスオンライン 2009年11月4日
  10. ^ Christoph Steitz; Karin Jensen (2009年1月13日). “Obama clean energy goal is good start: industry” (英語). ロイター. http://planetark.org/wen/51189 2009年2月28日閲覧。 
  11. ^ Litos Strategic Communication (under contract for the DOE)  (2008-09-10). “The Smart Grid: An Introduction” (pdf). United States Department of Energy. 2008年11月22日閲覧。
  12. ^ 畑良輔GENESIS計画と高温超電導直流ケーブル -究極の持続可能な「新エネルギー」の開発について-」、『SEI テクニカルレビュー』第172号、住友電気工業、2008年1月、2009年2月28日閲覧。
  13. ^ 米国景気対策法案について”. 望月経済産業事務次官の次官等会議後記者会見の概要. 経済産業省 (2009年2月19日). 2009年2月28日閲覧。
  14. ^ a b c “東電など「日本版スマートグリッド」実証実験”. 産経新聞. (2009年5月1日). p. 1-3. http://sankei.jp.msn.com/life/environment/090501/env0905012242000-n1.htm 2009年5月12日閲覧。 

[編集] 参考書籍

  • 横山 隆一 編著 『災害に強い電力ネットワーク ― スマートグリッドの基礎知識』(早稲田大学ブックレット<「震災後」に考える>)早稲田大学出版部、2011年 ISBN 9784657113023

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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