炊飯器

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
象印製電気炊飯器

炊飯器(すいはんき)とは、を炊いてにするための調理器具。

概要[編集]

家庭用においては電気式(電気炊飯器)とガス式(ガス炊飯器)があり、それぞれ電気釜ガス釜ともいう。業務用ではライス・ボイラーといわれる大型のものや、洗米から炊飯までこなす全自動炊飯器なるものまで多様な種類が存在する。

電気式のものでは炊飯には30分(蒸らし時間を入れると1時間弱)程度の時間が掛かるが、こと日本では1990年代より主流となっているマイコン内蔵の高度化した機種では、内蔵されたマイコンの演算機能により、炊き上がりの設定時間から炊飯開始の時刻を逆算、任意の時間に炊き上がるような製品も見られる。なお炊飯に掛かる時間は、炊く量、熱源の能力(電熱ヒーターワット数や入力電圧あるいは火力)、外気温気圧などによって一様ではない。外気圧の影響を受けにくいような圧力釜状の機能を持つ製品も上級機種に多く、廉価版の安価で単純な機能しか持たない製品との差別化が図られている。

電気式で家庭用の、いわゆる白物家電に属する炊飯器は、発売当初は日本国内でのみ製造・販売・購入されていたが、日本食ブームに乗って欧米へ、またアジア諸国の米飯を食べる地域でも家庭所得の増大と省力化の波に乗って輸出され、後に現地生産、さらには日本への輸出もされるようになっている。

なお、日本では「ジャー炊飯器」として家庭用品品質表示法の適用対象となっており電気式のものは電気機械器具品質表示規程に定めがある[1]

電気炊飯器[編集]

機能・仕様・価格[編集]

一般家庭用としては、小は単身者用の1(180ミリリットル)程度のものから、大は10合(1.8リットル=1)程度まである(業務用の製品では3升程度のものまである)。大きさ、機能、使用する素材、原産国によって価格の開きは大きく、5千円~12万円程度までの幅がある。メーカー各社は競って味や保温性などを改良している。

安価な製品は中蓋がアルミで出来ており、電熱ヒーターで内釜を加熱しており、マイコン式と呼ばれている。マイコン式は発熱効率が悪いため、釜自体を発熱させる事でより効率よく熱を伝えることのできるIH(Induction Heating)式を採用したものが主流となっている(なお、IH式もマイコンで制御されている)。高価な製品では中蓋がステンレスフッ素加工炭素繊維で出来ており、IH式に圧力釜を採用したものがあり、圧力IH式と呼ばれている。この方式は、発生した水蒸気を閉じ込めて釜の内部を高圧とすることにより沸点を高め(1.4気圧110℃程度まで)、より高温で炊飯できる。また、もっちりと炊いたり、玄米消化良く炊いたりすることもできる。また、最近はスチームによって加熱・保温するものも出ている。業務用においては、マイクロ波式のものもある。

内釜には、熱伝導率の高いダイヤモンドなどを張り合わせたり、遠赤外線を放射する炭やセラミックを使ったり、ディンプル加工をしたりして炊きムラを少なくしている。その他、全面加熱や大きな沸騰を起こすことでも、炊きムラを少なくすることができる。また、内釜に比熱の高い炭などの炭素素材を使って蓄熱性を持たせ温度を上げたり、真空断熱によって発熱効率を上げかつ省電力で保温できるようにしたりといった工夫も行われている。また、蒸気に含まれるご飯のうまみ成分を釜内部に戻したり、超音波や真空によって米に水を浸透させたりといったことも行われている。また、保温においては、釜内を真空にして酸化や水分蒸発を防いだり、スチームで水分を保ったりといったことも行われている。

炊き上がりのバラツキを低減するために、温度センサの他、赤外線センサや重量センサなどが使われる。

その他、耐久性を上げるため、フレームにアルミダイキャストを使ったものや、内釜に特殊コーティングを施して内釜の3年保証や5年保証を行っているものが存在する。

採用技術の例[編集]

メーカー 吸水 温度上昇 炊きムラ抑制 蒸気のうまみ還元 保温 内釜の耐久性 その他
三菱[2] 可変超音波吸水 炭コート 全面加熱 蒸気密封・うまさカートリッジ
東芝[3] 真空ひたし 圧力釜 ダイアモンドチタンコート・遠赤ダイアモンド銀コート・全面ディンプル うまみドーム蒸気口 真空美白保温 ダイアモンドチタンコート
パナソニック[4] 高温スチーム・高硬度中空セラミックス・高断熱中空セラミックス 全面加熱・遠赤ハードコート(ダイアモンド含有) スチーム再加熱 遠赤ハードコート(ダイアモンド含有)
パナソニック (旧三洋系)[5] 可変圧力吸水 圧力釜 純銅仕込み釜 うまみタンク 最適加熱
日立[6] 圧力スチーム 蒸気カット スチーム・真空断熱 ゴールドフッ素加工
タイガー[7] 圧力釜・剛火IH・熱封土鍋コーティング(セラミックビーズ+中空ガラスビーズ) 遠赤土鍋コーティング・土鍋風大かきまぜ技(大沸騰) 高耐久フッ素加工
象印[8] プラチナナノ粒子を使った水質アルカリ化によるたんぱく質分解 圧力釜 側面加熱・羽釜リング 最適温度保温
シャープ[9] かき混ぜによる粒引き離し 中空ビーズ かき混ぜによる温度ムラ抑制 かき混ぜによる泡切り 液晶ガラス入りフッ素コート かき混ぜによる洗米

付加機能[編集]

以前は、炊飯機能だけでなく保温機能も備えている炊飯器を炊飯ジャージャー炊飯器等といったが、1980年代以降の電気式はこれが大半であり、ことさらそのような呼び方はしなくなった。ガス式でも電気による保温機能を備えているものがある。

普通の飯だけでなく、おこわなども美味しく炊けるような付加価値をつけているものも多数あり、さらに機種によってはパンを焼き上げる機能や、パン生地、ヨーグルト発酵に適した温度を維持する機能なども付加されている場合もある。

2000年代に入り、日本国内では、炊飯器でスープ肉じゃがなどの煮込み料理やスポンジケーキなどを調理することが消費者の間で流行し、炊飯器だけで調理できるレシピを収録した書籍も刊行されている。しかし使用する機種によっては内釜や炊飯器本体を傷める可能性もある。特に釜内側にテフロン加工をしてある機種では、中に瀬戸物の食器を入れて調理する際に、その糸底でこのテフロン加工に傷が付くおそれがある。また内釜に焦げ付きが出来たり、内部のパッキングが傷む・匂いが染み付いて炊飯時に臭いが残るなどのトラブルも聞かれる(当然、用途以外に使った場合の故障には、無料修理保証は適用されない)。 日本国外では、そのような機能が日本メーカーの製品も含めて標準となっていて、自動調理電気鍋と化しているものもある。

歴史[編集]

「電気を使用して飯を炊く」と言う発想自体は古くから存在する。現に旧日本陸軍1937年(昭和12年)に制式採用した九七式炊事自動車には炊飯櫃という原始的な電気炊飯器が装備されていた。これは四角い木製の箱の両端に電極を付けたものである。炊飯櫃の中に研いだ米と水を入れて電極に通電すると、中の水が通電により発熱して炊飯を行う。そして米が炊きあがると、水分が減少するため抵抗値が上昇して発熱量が少なくなり、そのまま保温に移行するという原理であった。しかし、この方式では水の種類や米の研ぎ加減によって発熱量が変化して炊き加減がばらつく上に、感電の危険が大きく、家庭用とするには不向きであった。

家庭用の電気炊飯器は、初期の開発中のものは、単にヒーターで加熱し一定温度になると切れる、という単純な構造のものであった。だが、この方式では外気温の影響を受けやすい(加えて日本では四季により季節の寒暖の差が激しい)ことから、米が生煮えになることが多く、未完成品であった。各メーカーは失敗続きのまま、試行錯誤を繰り返していた。この段階では櫃の中に電熱線を入れ込んだ試作機すらみられた。これについては東京通信工業(現在のソニー)が設立当初に取り組んでいる[10]。また1950年代には熱源が練炭で、炊きあがりを電気式のブザーで知らせる練炭炊飯器も存在した[11]

最初に実用的な電気炊飯器を発明したのは、東京の町工場である「光伸社」の三並義忠[12][13]である。釜を三重化する方法を採用することで、実用的な炊飯が可能となった(これは空気の層による保熱機能で、温度を高めるようにしたもの)。

やがて1955年(昭和30年)に自動式電気釜という名で東芝から製品化されたときには、「二重釜間接炊き」[14]という方式が導入された。これはバイメタル技術を利用したもので、自動で電源オフにする機能である。このおかげで、いったん電源オンにすれば、あとは自動的に電源オフになるので、炊飯中に常時見張っている必要がなくなった。さらに、自動的に電源オンになるタイマーも別途併売された。これらにより、電源のON・OFFが自動化されたので、いったんタイマーをかけておけば、夜眠っている間に炊飯されて、朝起きたら炊き上がっているようになった。全自動化されて便利だったため、電気釜は大ヒット商品となった(東芝内では製品化する際、「寝ている間に米を炊こうなどという女と結婚したいのか」と製品化に反対、または製品化しても売れないという声もあった)。[要出典]

なお、電気釜の開発と自動化の開発が混同されたり、電気釜の開発と電気釜の製品化が混同されるなど、「東芝が電気釜を開発した」という誤解も世間では広がっているが、これは正しくない。東芝は電気釜の開発過程では、光伸社に協力はしたが、主導したわけではない。

後の1956年(昭和31年)には、松下電器も電気炊飯器を製品化している。松下電器製のものは鍋と釜を二層構造とすることで、比較的外気温に影響されない炊飯が可能であった(この方式を二層形電気釜という。その後二層形は炊飯に時間がかかることや消費電力が大きい欠点があり、1960年代以降は次第に廃れていった)。

この当時の炊飯器は保温機能を備えておらず、最後におひつに移す作業が必要で、またすぐに冷めてしまっていた。そうした中で、象印マホービンが1965年に半導体による電子制御の保温機能を備えた電子ジャーを発売。同商品は年間200万個を売る大ヒット商品となった(開発の際には、もう米を見るのもイヤになった開発者もいるという)。その後、三菱電機1967年(昭和42年)に保温機能を備えた炊飯器を発売する[15]

これらの登場によって、従来、家庭において洗米から水張り・火加減を行って、最後におひつに釜から移すという主婦の作業を軽減させる事にもつながり、洗濯機と並んで日本の家庭の必需品とまでなっている。1960年代を通してタイマーにより前夜にセットしておけば、早朝に炊飯する手間が省ける機能を備えた機種が登場、普及を見せた。東芝では保温機能を持つ機種を「保温釜」、持たないものを「電気釜」と呼んでいるが、純然たる「電気釜」は業務用を除き1990年代までに絶滅し、東芝の商品一覧からその名を消している。さらに「保温釜」の呼び名も一時期できるだけ使わないようにしていた時期があったが現在は普通に使われている。

1980年代よりマイコン制御を取り入れる機種が登場して多機能化時計を内蔵し、タイマー設定も2つまで記憶できるなど)も進み、1990年代にはマイコンによる各種機能によって好みの炊き加減(硬い、柔らかいなど)が選択出来るように成った他、玄米飯など、健康ブームにも関連して、様々な食品が調理できるものも登場している。中には蒸し器としても利用できる機種もある。

なお1980年代末には早くもIH(Induction Heating)方式による加熱を採用した機種も登場した[16]が、これらでは様々な設定の組み合わせて加熱を細かく制御する事により、よりおいしいご飯が炊けるような工夫をしている。圧力釜仕様の製品では1.2気圧~1.7気圧程度(家庭用は法規制で1.4気圧程度迄)の圧力がかかるようにして沸点を100℃より高くしたり、高価な機種ではスチーム加熱などの機能を備えていることが多い。

1990年代には、中国で、機能は限られるが安価な炊飯器が大量に生産されるようになり、日本を含む各国に輸出されるようになった。このため、日本のメーカーは商品の機能を増やすなど、付加価値をつけることで対抗することとなった。

2000年代になり、内釜に金属以外の素材を使用し、遠赤外線の作用などによって、ご飯の風味が良くなることを特徴とした高級品が出現し、注目を集めている。三菱電機は「本炭釜」と称する炭素材削り出しの内釜を使用した高額商品を販売した。また、有田焼などの陶器の内釜を使用した商品もある。陶器を使用したや生薬用の電気調理器具は中国に1980年代からあり、近年は炊飯器も製造されている。

内蔵電池[編集]

電気式の炊飯器の一部には、コンセントからプラグを抜いた状態でも時計を機能させ、タイマーや炊飯設定を記憶させておくためのリチウム電池が内蔵されている。電池が消耗すると通電していない状態では時計表示が消え、タイマー予約もできないが、炊飯や保温は支障なく行える製品がほとんどである。電池は基板はんだ付けされた接片にスポット溶接されており、ユーザー自身による交換は想定されていない。そのため有料修理となるが、電池代+技術料(さらに部品代が加わる場合や基板交換の場合もある)でおおよそ4000円~8000円程度となる。

国外から見た日本の炊飯器[編集]

1980年代以降、中国韓国など、米食を主体とする国でも、電気炊飯器が製造・販売されているが、価格競争重視のため単純な炊飯機能のみの単機能モデルがほとんどであった。

このため、日本観光目的でやってくる高所得者層から出稼ぎでやってくる労働者まで、上手に美味しく炊ける日本国内向けの多機能炊飯器を土産に選ぶケースも多かった。しかし、日本国内向けに販売されている炊飯器はほぼ全て100V専用品のため電圧の差などの関係で日本国外ではそのまま使用できないケースもある。なお、秋葉原などの電気街に行くと、外国人観光客向けに115V/120V/200V/240Vなど、さまざまな国の電源に対応した多種多様の炊飯器が販売されており、観光客が英語などで表記されている炊飯器の箱を持っている姿が見られる。

また、これらの炊飯器は、日本の粘り気のある米(ジャポニカ米)を炊くために加熱パターンなどを最適化しており、特にインディカ米(タイなど東南アジアなどで広く栽培されている長粒種)をこれで炊くと、美味しく炊けない場合が多い。これは1993年米騒動の際に日本の消費者にも広く知られることとなったが、この問題では炊飯器が古くからの伝統的な食生活を崩していると見る者もいる。

本来、インディカ米には鍋で沸騰させた湯に投じて茹で、煮上がった所で湯を切って蒸らす湯取(ゆとり)という調理法を取る。これは日本の水加減を調節するやりかたとの違いが大きいが、これを炊飯器で再現させる事が難しい。このためインディカ米を日本の米と同じように(やや水を多めにして)炊くこととなるが、伝統的な調理法と比べると、どうしても風味が違ってしまうようだ。特にチャーハンのように炒めて食べる場合には、炊飯器を使うと、出来た飯の炊け具合が良くない(表面がベタベタする)と言われている。

また、西アジアなど、内釜の底におこげができることを好む地域の場合、日本国内向けの商品では満足できない場合がある。このため、メーカーもこのような地域には、加熱パターンが異なる製品を投入している。

生産量[編集]

2005年の世界の家庭用電気炊飯器の生産量は約8500万台といわれ、内、中国が約6000万台で、大多数は広東省湛江市廉江市で製造されている。他は、日本韓国が主な産地である。

ちなみに、中国語では「電飯煲」というが、これは本来広東語の言い方で、最後の漢字も方言字であるが、広東省が生産基地のため、従来の「電飯鍋」という言い方を淘汰させてしまったものである。

ガス炊飯器[編集]

飲食店などの業務用は、ほとんどの場合ガス炊飯器やガスを使った大型の器具で[17]、数十合(数升=数リットル)を一度に炊ける容量を持つ。こちらは炊き上がりよりも所要時間の短縮に注力される場合が多い。また、釜の形状も積み重ねができるものがあるなど、家庭用と違う需要に応えられるようにデザインされている。

なお、ガス炊飯器でも電気によって放電点火する方式のものや、保温できる機能を付加機能として備えているものもある。

製造メーカー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 電気機械器具品質表示規程”. 消費者庁. 2013年5月23日閲覧。
  2. ^ 三菱電機 ジャー炊飯器:NJ-XSB10J 超音波で仕込む蒸気レスIH 炭炊釜/おいしさ
  3. ^ 真空圧力IH保温釜 RC-10VXE 商品情報:家電製品 Toshiba Living Doors
  4. ^ 特長1 200℃スチームで、一粒一粒が大きくふっくら! | スチームIHジャー炊飯器 SR-SX101 | Panasonic
  5. ^ 一粒一粒甘み立つ「可変圧力IHおどり炊き」 | 圧力IHジャー炊飯器 SR-PX101 | Panasonic
  6. ^ 圧力&スチームIHタイプ RZ-W1000K:仕様・機能:RZ-W1000K 1.0L(5.5合)炊き
  7. ^ タイガー IH炊飯ジャー JKP-A
  8. ^ 圧力IH炊飯ジャー NP-NU型|商品詳細|象印
  9. ^ 特長|KS-PX10A|ヘルシオ炊飯器:シャープ
  10. ^ 『MADE IN JAPAN』(朝日新聞社盛田昭夫下村満子、E・M・ラインゴールド共著、ISBN 978-4022605825
  11. ^ 「くらしと煉炭」(昭和35年) シナネン沿革
  12. ^ プロジェクトX 挑戦者たち
  13. ^ プロジェクトXの詳しい紹介
  14. ^ 東芝科学館
  15. ^ 2007年10月14日産経iza『“お米文化”救った 「電子ジャー」開発の秘密』
  16. ^ パナソニック1990年(平成2年)5万円の炊飯器、口コミで大ブームに!|開発物語
  17. ^ 電気では200Vの動力線が必要になり、時間がかかる上に水気の多い厨房では感電漏電などの危険が大きい。パナソニックは3升炊きが可能なIHジャー炊飯器「SR-PGB54P/AP」を発売(前者は単相200V、後者は三相200V。象印マホービン・タイガー魔法瓶にもOEM)しているが、あまりにも出力が高く、型式認定の対象外であるため、電波法に基づく許可が必要となっている(詳細は電磁調理器の項目を参照のこと)。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]