洋上風力発電
洋上風力発電、またはオフショア風力発電(Offshore wind power) とは、主に海洋上における風力発電のこと。
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概要 [編集]
洋上では陸上に比べてより大きな風力が得られるため、風力発電所を洋上に建造した場合、より大きな電力が供給できると考えられている。
洋上("offshore")とは言っても必ずしも海洋上を意味するのではなく、湖、フィヨルド、港湾内などに設置されたものも含めることに注意する必要がある。また発動機の形態に関しても、通常の風力発電と同様に基礎が地面に固定されたものもあれば、海が深くて地面に基礎を設置できない場所でも利用可能なように浮体式の基礎を用いたものがある(浮体式洋上風力発電と呼ばれ、実用化を目指して研究が進んでいる)。
2011年現在、洋上風力発電が普及しているのはほぼヨーロッパのみであるため、本稿ではヨーロッパにおける状況を中心に述べる。
歴史 [編集]
1991年に史上初めて洋上風力発電所が建設されたのは、ヨーロッパのデンマークであった。それ以来、ヨーロッパが洋上風力発電の歴史をリードしている[2]。2009年の10月の時点で、ヨーロッパで26箇所の洋上風力発電所が建設中であり、それらの発電所は平均して76MWの出力があった[3]。またヨーロッパで2010年に建設された風力発電の総発電量9.3GWのうち、0.9GW(9.6%)が洋上に建設された[4]。2010年現在の各国における洋上風力発電所の総発電能力においては、イギリスが1.3 GWとずば抜けており、ヨーロッパの残りの国の総発電能力を合わせた1.1 GWよりもはるかに高い数値となっている。[5] 以下、デンマーク(854 MW)、オランダ(249 MW)、ベルギー(195 MW)、スウェーデン(164 MW)、ドイツ(92 MW)、アイルランド(25 MW)、フィンランド(26 MW)、ノルウェー(2.3 MW)と続く[6]。
2010年現在、洋上風力発電用のタービン(風力原動機)に関してはデンマークに拠点を置くシーメンス・ウィンド・パワー社(シーメンス社の子会社)とベスタス社が市場シェアの 91.8%を担っている。導入実績に関してもドン・エナジー社(デンマーク)、バッテンフォール社(スウェーデン)、E.ON社(ドイツ)とヨーロッパの電力会社がリードしている[7]。2010年10月の時点で、北ヨーロッパを中心に3.16 GWの発電能力があるが、現在の発注状況からすると、2014年の終わりまでにさらに16GW以上の洋上風力発電が導入され、とりわけイギリスとドイツの2国がリーディングマーケットになるだろうと考えられている。全世界的な観点から見た場合、2020年までに全世界の洋上風力発電による電力の総計は75GWに達すると見られており、とりわけ中国とアメリカでの伸びが期待されている[7]。
技術 [編集]
2009現在では、ヨーロッパで標準的なスペックの洋上風力発電用の原動機は1基あたり3MWの発電能力がある。将来的にはこれを5MWにまで高めることが期待されている[2]。
洋上では安定性のため、水深によって異なったタイプの基礎が求められる。いくつか解決策があるが、一例を挙げると:
- 水深30m未満では直径6mの円柱型の基礎を利用する。
- 80mまでの水深では重力着底型構造物を利用する。
- Tripod piled structuresを利用する。
- Tripod suction caisson structuresを利用する。
- 油田やガス田で見られるような鋼鉄製のジャケット工法を利用する。
- さらに水深のあるところでは浮体式洋上風力発電を利用する[2]。
洋上風力発電を行う際、タービンはアクセスがしづらい海洋上などの場所に設置されるため、通常の陸上風力発電に比べて信頼性が重視される。船を用いた定期的なアクセス手段が必要で、ギアボックスの交換などの重工業的な作業のためにジャッキアップ・リグ(海洋掘削装置)なども必要とされる[7]。設備の修理と維持をするためには、専門の管理チームを組織する必要がある。タービンへのアクセスは船かヘリコプターが用いられる。陸地からはるかに離れた場所に建設される風力発電所に関しては、管理チームのための居住スペースが必要とされる[8]。
洋上風力発電の先進国である欧州においても、風力発電所の設計および建設許可を得る際には1000万ドルの出費と5年から7年の歳月がかかり、さらには思ったような結果がでないリスクもある。ゼネコン各社はこれを改良するように政府に要求している[9][10]。洋上風力発電第2位のデンマークでは、当局によって徐々にではあるが改善され、ハードルがかなり下がった模様である。[11]
洋上風力発電のデザインのガイドラインに関してはIEC 61400-3に記載がある[12][13]。
各地の洋上風力発電所 [編集]
「:en:List of offshore wind farms」および「:en:Lists of offshore wind farms by country」も参照
2010年現在、ヨーロッパ各地に39の洋上風力発電所があり、あわせて2,396 MWの供給能力がある。100GW以上のプロジェクトがヨーロッパで進行中である。European Wind Energy Associationは目標を2020年に40GW、2030年に150GWとしている[2]。
2010年11月現在、300MWの発電能力があるイギリスのThanet Offshore Wind Projectが世界最大の洋上風力発電所である。デンマークのHorns Rev|Horns Rev II(209 MW)がそれに続く。
| 発電所 | 出力 (MW) | 国 | メーカーと型番 | 稼動年 | 参照 |
|---|---|---|---|---|---|
| Thanet | 300 | 100 × ヴェスタス V90-3MW | 2010 | [14][15] | |
| Horns Rev II | 209 | 91 ×シーメンス 2.3-93 | 2009 | [16] | |
| Rødsand II | 207 | 90 × シーメンス 2.3-93 | 2010 | [17] | |
| Lynn and Inner Dowsing | 194 | 54 × シーメンス 3.6-107 | 2008 | [18][19][20][21] | |
| Robin Rigg (Solway Firth) | 180 | 60 × シーメンス | 2010 | [22][23] | |
| Gunfleet Sands | 172 | 48 × シーメンス 3.6-107 | 2010 | [23][24] | |
| Nysted (Rødsand I) | 166 | 72 × シーメンス 2.3 | 2003 | [18][25][26] |
カナダのオンタリオ州は五大湖への洋上風力発電を推し進めている。その中には洋上20km、400MWのTrillium Power Wind 1も含まれる[27]。他にも太平洋上に洋上風力発電所を建設するプロジェクトもある[28]。
2010年の時点では、アメリカには洋上風力発電所は存在しない。しかし西海岸・五大湖・太平洋岸には洋上風力発電に適した土地があり、現在建設計画が進んでいる[2]。
経済上の利益 [編集]
洋上風力発電の推進派の多くは、温室効果ガスを減らそうと言う世界的な潮流のために2009年から電力の値段は今後上がってゆくだろうと考えている。あるコンサルタント会社は2014年から洋上風力発電のkWHあたりの値段が下がるだろうと予測しており、ヨーロッパ、アメリカ、中国にはもっと洋上風力発電に適した土地があるだろうと報告している[7]。
洋上風力発電が火力発電のシェアを食うことによってエネルギーの輸入を減らし、大気の汚染や温室効果ガスも減らし、さらには新時代の発電のスタンダードとなることによって新たな雇用やビジネスチャンスを生むと期待されている。
問題 [編集]
アメリカ初の洋上風力発電所となるCape Windの建設に際して2006年に行われたデラウェア大学の調査によると、付近住民はこのプロジェクトによる海洋生物、環境、電力料金、景観、釣りや船遊びに対する影響を考慮の上で賛成か反対かを決めたとの事[29]。
景観への影響 [編集]
洋上風力発電の原動機は陸上風力発電に比べてそれほど目立ないし、居住地域から距離があるため騒音公害の可能性も低い。
生態系への影響 [編集]
洋上風力発電の建設によって海洋生物の生息環境が失われるほか、渡りをする鳥類や回遊生物の移動阻害、バードストライク、海洋環境の悪化などの問題が指摘されている[30]。
関連項目 [編集]
参考文献 [編集]
- ^ Wind in Our Sails, EWEA, 2011, Figure 1.1
- ^ a b c d e Environmental and Energy Study Institute (2010年10月). “Offshore Wind Energy”. 2011年5月8日閲覧。
- ^ Offshore Wind Energy, The Windenergie-Agentur Bremerhaven/Bremen, 2009 Issue.
- ^ Wind in Our Sails, EWEA, 2011, Figure 1.3
- ^ UK reaches 5GW of installed wind landmark New Energy Focus / BWEA, 23 September 2010. Retrieved: 8 November 2010.
- ^ “Offshore Wind Booming in Europe”. Renewable Energy World (2011年1月20日). 2011年5月8日閲覧。
- ^ a b c d Madsen & Krogsgaard. Offshore Wind Power 2010 BTM Consult, 22 November 2010. Retrieved: 22 November 2010.
- ^ Accommodation Platform DONG Energy, February 2010. Retrieved: 22 November 2010.
- ^ http://www.newjerseynewsroom.com/commentary/nj-must-make-wind-farm-permitting-process-as-quick-and-easy-as-possible
- ^ http://www.ieawind.org/Annex%20XXIII/Subtask1.html
- ^ Streamline Renewable Energy Policy and make Australia a World Leader Energy Matters, 11 August 2010. Retrieved: 6 November 2010.
- ^ International Standard IEC 61400-3 International Electrotechnical Commission, August 2005. Accessed: 12 March 2011.
- ^ Quarton, D.C. An international design standard for offshore wind turbines: IEC 61400-3 Garrad Hassan, 2005. Accessed: 12 March 2011.
- ^ “Thanet”. The Engineer Online (2008年7月25日). 2008年11月26日閲覧。
- ^ “Thanet offshore wind farm starts electricity production”. 2011年5月8日閲覧。
- ^ Horns Rev II turbines
- ^ E.ON finishes Rødsand II Business Week, 14 July 2010. Retrieved: 11 September 2010.
- ^ a b Operational offshore wind farms in Europe, end 2009 EWEA. Retrieved: 23 October 2010.
- ^ Interactive Map for Marine Estate
- ^ Interactive Map for Marine Estate
- ^ Wind farm's first turbines active
- ^ Interactive Map for Marine Estate
- ^ a b [1] UK Wind Energy Database
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- ^ Christensen, Allan S. & Madsen, Morten. Supply Chain study on the Danish offshore wind industry page 33-42 Offshore Center Denmark, 29. august 2005. Retrieved: 23 October 2010.
- ^ “Introduction to the (Nysted offshore) park”. 2010年8月19日閲覧。
- ^ Hamilton, Tyler (2008年1月15日). “Ontario to approve Great Lakes wind power”. The Star (Toronto) 2008年5月2日閲覧。
- ^ “Naikun Wind Development, Inc.”. 2008年5月21日閲覧。
- ^ http://www.eesi.org/files/offshore_wind_101310.pdf
- ^ 風間健太郎「洋上風力発電が海洋生態系におよぼす影響」、『保全生態学研究』第17巻第1号、2012年、 107-122頁。
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