地熱発電

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様々な地熱エネルギー

地熱発電(ちねつはつでん、じねつはつでん)[1]とは、地熱(主に火山活動による)を用いて行う発電のことである。再生可能エネルギーの一種であり、太陽の核融合エネルギーを由来としない数少ない発電方法のひとつでもある。ウランや石油等の枯渇性エネルギーの価格高騰や地球温暖化への対策手法となることから、エネルギー安全保障の観点からも各国で利用拡大が図られつつある。

目次

概要 [編集]

アイスランドレイキャヴィーク近郊に立地する同国最大の地熱発電所、Nesjavellir発電所

地熱発電は、地熱によって生成された水蒸気により発電機蒸気タービンを回すことにより電力を得る[2]

地熱発電は、地熱という再生可能エネルギーを活用した発電であるため、運転に際していわゆる温室効果ガス二酸化炭素の発生が火力発電に比して少なく、燃料の枯渇や高騰の心配が少ない。また太陽光発電風力発電といった他の主要な再生可能エネルギーを活用した発電と異なり、天候、季節、昼夜によらず安定した発電量を得られる。資源量も多く、特に日本のような火山国においては大きなポテンシャルを有すると言われる[3][4]再生可能エネルギー#資源量を参照)。

一方地熱発電は、探査・開発に費用と期間を要し、初期コストが高く、また火山性の自然災害に遭遇しやすいといった難点もある。

方式 [編集]

現在利用されている地熱発電では、主にドライスチーム、フラッシュサイクル、バイナリーサイクルの3つの方式が用いられている[5][6][7]。この他、熱水・蒸気資源が無くても発電できる高温岩体発電が研究されている。

またタービンで利用した後の蒸気をそのまま大気に放出するか冷却して水に戻すかにより、背圧式と復水式に分類される。

ドライスチーム [編集]

蒸気発電を行う場合、蒸気井から得られた蒸気が殆ど熱水を含まなければ、簡単な湿分除去を行うのみで蒸気タービンに送って発電スチーム(dry steam)式と呼ぶ[6]。日本での実施例に松川地熱発電所八丈島発電所などがある。

フラッシュサイクル [編集]

復水式地熱発電(シングルフラッシュ)設備の概略図[8]
復水式地熱発電(ダブルフラッシュ)設備の概略図[9]

得られた蒸気に多くの熱水が含まれている場合、蒸気タービンに送る前に汽水分離器で蒸気のみを取り分ける必要がある。これをシングルフラッシュサイクルという[10]。日本の地熱発電所では主流の方式である[5]

蒸気を分離した後の熱水を減圧すれば、更に蒸気が得られる。この蒸気をタービンに投入すれば、設備は複雑となるが、15~25%前後の出力の向上及び地熱エネルギーの有効利用が可能となる[5][9]。これをダブルフラッシュサイクルという[5][9]。日本では八丁原発電所及び森発電所で採用されている。

更に、ダブルフラッシュサイクルで蒸気を取り出した後の熱水を更に減圧して蒸気を取り出すトリプルフラッシュサイクルも存在する。ダブルフラッシュサイクルよりも設備は更に複雑となるが、出力の向上に伴うメリットは小さく、ニュージーランドなどに少数の例があるのみである。

バイナリーサイクル [編集]

地熱バイナリー発電設備の概略図[8]

地下の温度や圧力が低いため地熱発電を行うことが不可能であり、熱水しか得られない場合でも、アンモニアペンタンフロンなど水よりも低沸点の熱媒体(これを低沸点流体という)を、熱温水で沸騰させタービンを回して発電させることができる場合がある。これをバイナリー発電(binary cycle)という[5]

温泉発電(温泉水温度差発電)
直接入浴に利用するには、高温すぎる温泉(例えば70~120℃)の熱を50℃程度の温度に下げる際、余剰の熱エネルギーを利用して発電する方式である[5][11]。熱交換には専らバイナリーサイクル式が採用される。
発電能力は小さいが、占有面積が比較的小規模ですみ、熱水の熱交換利用するだけなので、既存の温泉の源泉の湯温調節設備(温泉発電)として設置した場合は、源泉の枯渇問題や、有毒物による汚染問題、熱汚染問題とは無関係に発電可能な方式である。 地下に井戸を掘るなどの工事は不要であり確実性が高く、地熱発電ができない温泉地でも適応可能であるなどの利点がある。
日本ではイスラエルオーマット社製のペンタンを利用した発電設備が八丁原発電所で採用されている。発電設備1基あたりの能力は2MW(BWR-4型原発のおよそ400分の1の定格で一般家庭に換算して数百世帯から数千世帯分の需要を賄う)で、設置スペースは幅16メートル、奥行き24メートルとコンビニエンスストア程度の敷地内に発電設備が設置されている。朝日新聞の報道によれば、日本国内にはバイナリー発電に適した地域が多く、全国に普及すれば原子力発電所8基に相当する電力を恒久的に賄うことが可能であるとの経済産業省の見解がある[12]

高温岩体発電 [編集]

天然の熱水や蒸気が乏しくても、地下に高温の岩体が存在する箇所を水圧破砕し、水を送り込んで蒸気や熱水を得る高温岩体発電(hot dry rock geothermal power; HDR、もしくはEnhanced Geothermal System; EGS)の技術も開発されている[3][13]。地熱利用の機会を拡大する技術として期待されている[3]。既存の温水資源を利用せず温泉などとも競合しにくい技術とされ、38GW(38000MW)以上(大型発電所40基弱に相当)におよぶ資源量が国内で利用可能と見られている[3]。多くの技術的課題は解決している。2000年から、2年間実証実験、発電が実施されたが、現在はコスト増を理由に中止されている[14]。 また現在の技術ならばコストも9.0円/kWhまで低減する可能性が指摘されているが、我が国のように地下構造の変化の大きい地域で、240MW の発電所建設が可能かどうか調査が必要としている[3]

2008年には、googleがベンチャー企業等に1000万ドルを出資して話題になった[15]。2010年時点では、オーストラリアのジオダイナミクス社により75MWの大規模な高温岩体地熱発電プラントの建設が進められている[16]

事例などを参照>高温岩体地熱発電

マグマ発電 [編集]

さらに将来の構想として、マグマだまり近傍の高熱を利用するマグマ発電の検討が行われている。開発に少なくとも50年はかかると言われる[17]が、潜在資源量は6TW(6千万MW)におよぶ[3]と見積もられ、これを用いると日本の全電力需要の3倍近くを賄えるだろうと言われている[17]

背圧式と復水式 [編集]

背圧式地熱発電(シングルフラッシュ)設備の概略図[8]

地熱発電で利用されるタービンには、背圧式と復水式がある[18]

背圧式タービンは、タービンで利用した後の蒸気を大気に放出する。後述の復水式に比べおよそ2倍の蒸気を必要とする一方、設備が簡易で安価であり、開発・試験・予備等が目的の設備に向く[8]。比較的短期間で製作・設置が可能であり、主に数MW程度の小規模設備で用いられる[8]

復水式タービンは、タービン利用後の蒸気を復水器で凝結させて水にする。設備が複雑で工期も長くなるが、蒸気の利用効率は高くなる[8]。比較的大規模な設備で用いられる[8]

技術 [編集]

井戸 [編集]

蒸気を採取するための坑井(蒸気井)の深さは、地下の構造や水分量などによって異なり、数10mから3,000mを超えるものまでさまざまである[19]。通常は1km以上3km以下である[20]

蒸気発電およびバイナリー発電では、発電に使った蒸気(復水器で凝縮されて水になる)や余った熱水を地表に放出・放流させると地下の蒸気や熱水が枯渇してしまうおそれがある。また、熱水に含まれる金属などの成分が、河川や湖沼の水質に影響を与えることも懸念される。そのため、発電に使用した後の蒸気や熱水は坑井(井戸)を通じて地下に戻すことが行われる。これを還元という。還元用の井戸(還元井、かんげんせい)は蒸気井よりも浅いことが多い。還元井は当初から還元井として掘削される他に、勢いの衰えた蒸気井が転用されることもある。

一方、還元する量が多すぎたり場所が悪かったりすると、地中の温度を下げたり、地中の蒸気や熱水の流れを乱してしまい、発電に利用可能な蒸気や熱水が得られなくなることがあるため、還元の際は適切な場所や量を選定する必要がある。

貯留層管理 [編集]

蒸気や熱水が溜まっている地中の部位は貯留層と呼ばれるが、貯留層の温度や水分を維持するために蒸気の利用や還元を計画・実施することを、貯留層管理という。貯留層管理は、地熱資源を持続的に利用するために重要な技術である。

複合的な利用 [編集]

発電に伴う余熱や温水を、複合的に利用する事例もある。余熱を温室栽培に活用[21]したり、温水を利用すると共に発電所自体を観光資源にしている例[22]等が見られる。

環境への影響 [編集]

環境性能 [編集]

地熱発電は地熱のエネルギーを利用して発電し、発電時に化石燃料を燃焼させる必要が無い。このため発電量あたりのCO2排出量が低く、建設等に要したエネルギーも通常1年程度で回収できる[23][24]

注意)火山性ガスにはCO2が含まれるので、2000年の柳津西山地熱発電所のように、単位電力量あたりのCO2排出量がガス火力発電並に大きい場合もある [25]

熱水・蒸気内の有害物質 [編集]

主に水蒸気中に硫化水素砒素水銀などの有害物質が含まれていることも多い。しかしそもそも、地熱発電で利用される地下熱水は、再度地下に還元水として戻されるため、地上に有害物質が大量に放出される危険性は少ない。また硫化水素などは、除去装置によってほとんど取り除かれるため、適切な対応により環境への悪影響を無視することができる。実際、河川や地下水の汚染も確認されていない。

因みに、その際に生成される硫黄からは硫酸を製造できる他、これを原料にしてマッチや花火用火薬、肥料を製造することもできる。

地震の誘発 [編集]

地下との熱水の出入りにより微小な地震が発生することがある。ただし、通常は高感度な地震計でしか感知できないような無感地震である[26]。また、大規模な地震を誘発させた例もない[26]

減衰する [編集]

各発電所ともに所定の出力を維持するために、補充井の掘削を実施。平均して 3.1年に 1 本の頻度で掘削。(大岳、大沼を除く)補充井を掘削したとしても、ほとんどの発電所が所定の出力を維持できていない[25]。実際、年間発電電力量は2012年のエネルギー白書によると1997年の37.57億kWhをピークに2010年には26.32億kWhと30%低下している。

エネルギー効率が低い [編集]

公表されている資料から蒸気量と発電量との比より求められる日本の地熱発電所の平均発電熱効率は15~20%の範囲である[25]。このため発電量の4倍以上の熱が地上に放出される。殆どの発電所が山中にあるため冷却手段は冷却塔を用いるしかなく、地下からの蒸気量同じオーダーの水蒸気が放出される事となう。



日本における地熱発電 [編集]

歴史 [編集]

日本では1919年(大正8年)に帝国海軍中将・男爵山内万寿治が、軍人として国のエネルギー安全保障に興味を示し、大分県別府で地熱用噴気孔の掘削に成功した。これを引き継いだ東京電灯研究所長・太刀川平治が1925年(大正14年)に出力1.12kW(0.00112MW)の実験発電に成功したのが最初の地熱発電とされる[27]。しかし、微力だったことから、山内の死後程なくして地熱発電の実用は立ち消えとなった。実用地熱発電所は岩手県八幡平市松川地熱発電所日本重化学工業株式会社)が1966年(昭和41年)10月8日に営業運転を開始したのが最初である。

現状 [編集]

地熱発電は石油などの化石燃料を使わないクリーンエネルギーであり、日本では約5%しか自給できない天然ガスにも匹敵する貴重なエネルギーを国産で採掘できることから、原油価格やウラン等の核燃料価格の変動リスクがない国産エネルギーとして、見直しが進められている。[28]。地熱発電はコストが高いとされているが、近年になって費用対効果も向上しており、近年の実績では8.3円/kWhの発電コストが報告されている[29]。特に、九州電力の八丁原発電所では、燃料が要らない地熱発電のメリットが減価償却の進行を助けたことにより、近年になって7円/kWhの発電コストを実現している。

現在のところ、日本において地熱発電によって生産されている電力の総容量はおよそ530MW(53万キロワット)で2010年(平成22年)段階で世界第8位である[30]。地熱発電に関わる技術は高く、140MWと1基としては世界最大出力の地熱発電プラント(ナ・アワ・プルア地熱発電所)を富士電機システムズ(現在は富士電機(旧富士電機HD)に吸収合併)がニュージーランドに納入するなど[31]2010年(平成22年)の時点で、富士電機、東芝三菱重工の日本企業3社が世界の地熱発電設備容量の70%のプラントを供給している[30][32]

2010年(平成22年)度の環境省によるポテンシャル調査[33]では、理論的埋蔵量である「賦存量」は設備量にして約33GW(33,000MW)と見積もっている。そのうち、地形や法規制等の制約条件が考慮された「導入ポテンシャル」は約14.2GW(14,200MW)、経済的要因等の仮定条件に沿った「シナリオ別導入可能量」は、シナリオによって1080〜5180MW(温泉発電を含む)と見積もられている。この導入可能量については国立公園等の規制の影響が大きく、国立公園外から斜めに掘削する条件を変えるだけで導入可能量が大幅に増えることも同時に指摘されている[33]

2012年、地熱発電の電力買取価格が15年間42円と決定。さらには小規模地熱発電所に限り、国立公園内の開発工事も届出不要となるなどの、規制緩和が図られた。これにより熊本県小国町や、福島県土湯温泉などで小規模地熱発電の設立が計画されている。[34][35]

  • 2012年、長崎県、島原半島、雲仙市、小浜温泉で小規模地熱発電。2013年2月から発電する予定。買取価格42円で3000万の収入、早期の初期投資回収と、長期利益収入を見込む。環境省の発電事業、実証実験でもある。出典>スマートジャパン[36] 小浜温泉(雲仙市)は海に面した古くからの湯治場で、大量の100度を超える高温の温泉水があり、現状では大量に捨てている。とも報道されている。
  • 2012年10月22日栃木県、県内の温泉発電、調査開始。発電コストは20円以下。[37] 発電量に比例するが、小規模買取価格42円で大きな利益がみこまれている。 出典>下野新聞[38]
  • 2012年12月4日 地熱で初の固定価格買い取り。と、報道された。大分県、別府市。 発電会社「瀬戸内自然エナジー」は、住宅地に温泉供給している。供給前の100度以上の温泉熱エネルギーを使って、バイナリー発電する。40~50キロ・ワット時を九州電力に売電する。 買い取り価格は、小規模地熱発電の、単位電力42円だと思われるが、報道は、ない。再生可能のエネルギーの買取基準についても報道は、ない。出典>読売新聞[39]
     まず試験発電をするが、低圧の送配電線なので、50Kwまでしか売電できない。その場合でも年収1800万がみこまれる。順次発電機を増設して、高圧の送配電設備もする。このことから、送電設備も発電会社の負担であると考えられる。出典>スマートジャパン。[40]

2013年 [編集]

  • 2013年1月4日、八丈島の地熱発電を3倍に増設、揚水発電でピーク電力発電も予定、出典、東京都[41]
  • 2013年1月21日、北海道、標津町、武佐岳地域で、6月から地熱発電事業の調査、石油資源開発の発表。 計画、予定出力から小規模、地熱発電、買取価格42円を狙って早期に発電開始を画策する。>出典、時事 [42]
  • 2013年2月8日、 八丈島の地熱発電の件。硫化水素のにおい、は、東京電力の無策と、答弁。 東京都、猪瀬直樹知事、8日の定例会見。出典、産経、[43]
  • 2013年5月18日 阿部首相、大分県地熱発電を視察、小規模地熱発電、技術者、常駐する規則をはずす。と、報道された。出典、毎日 [44]

課題 [編集]

日本国内の地熱発電による発電量は世界的に見ても上位に位置するが、経済大国である日本全土の莫大な総発電量からすると、国内地熱発電の割合は0.2%を担うに過ぎない。530MWは、福島第一原子力発電所や美浜原子力発電所などにある中型原子炉1基分にすぎない。九州電力では比較的に地熱発電が盛んだが、それでも九州地方全域で生産可能な電力の総量の2%を占めるにとどまる。

日本で地熱発電が積極的に推進されにくい理由は、国や地元行政からの支援が火力や原子力と比べて乏しいこと、地域住民の反対や法律上の規制があるためである。発電所の候補地の多くが国立公園に指定されているが、1972年(昭和47年)に当時の通商産業省環境省の間で交わされた「既設の発電所を除き、国立公園内に新たな地熱発電所を建設しない」ことを約する覚書[45]により、事実上発電所の新設が認められていない。また、国立公園以外の候補地も、近くに温泉観光地が存在している場所が多く、温泉の源泉への影響や景観を損なう発電所建設は地元の反対が根強い。例えば、群馬県嬬恋村では2008年(平成20年)に地熱発電の計画が浮上したが、その予定地が草津温泉の源泉から数kmしか離れていないため、温泉に影響が出る可能性が必ずしも排除できないとして草津町が反対を表明した[46]が、科学的根拠はしめされなかった。草津温泉では、地熱発電と温泉との因果関係の有無を検証するための地下ボーリング調査等を行うことにも反対している。

これら諸問題について、地熱発電を推進している日本地熱学会などの推進派グループでは、国立公園内にも巨大ダムや大型施設が立地していることから、環境省の裁量次第で建設できると反論している。また、地下の地熱エネルギーおよび温泉資源についての科学的調査の結果、日本において地熱発電所が温泉などの周辺環境に影響を与えた事例が一例もないこと(ただし、外国では熱水の還元不足などから温泉に影響を与えた例がいくつか確認されている[47])から地熱発電所と温泉・観光地との共存共栄は可能であるとの見解を示している[48]

日本は火山が多く地熱発電に適しており、太陽光発電風力発電に加えて地熱発電の開発も進めるべきだ、との指摘がなされてきた[17]。2009年1月には、20年ぶりに国内で地熱発電所を新設する計画が報道されている[49]。2010年には、秋田県湯沢市での事業化検討に向けた新会社の設立[50]大霧発電所での第2発電所建設計画が進行している。

行政も、2008年(平成20年)には経済産業省で地熱発電に関する研究会を発足したり[51][52][53][54]、2010年度には、地熱発電の開発費用に対する国から事業主への補助金を、2割から3分の1程度にまで引き上げることを検討するなど[55]2008年(平成20年)から2009年(平成21年)にかけては地熱発電の促進が積極化しつつあった。しかし、2010年(平成22年)5月、民主党政権による事業仕分けにより、「地熱開発促進調査事業」と「地熱発電開発事業」の2事業が 廃止や白紙化を前提とした「抜本的改善」の措置をうけることが決定された[56]。このことについて、日本地熱学会は懸念を表明している[30]

東日本大震災とそれに伴う福島第一原子力発電所事故により再生可能エネルギー開発が喫緊の課題となったことを受け、2011年(平成23年)6月、環境省は地熱発電所設置における二大課題である「国立公園に関わる規制」および「温泉施設に対する影響評価」の見直し作業に入った[57][58]

温泉地との争い [編集]

地熱発電の開発が進まない理由の一つとして、前述の通り周辺の温泉地からの反対がある。これは、地熱発電の新設により、温泉の枯渇、湯量の低下、温泉の温度低下のおそれがあるとし、反対されることが多い。

しかしこれまでにも、枯渇の因果関係が地熱発電にあるとされた温泉に対しては、発電事業者が廃熱水との熱交換により、温熱水とした地下冷水を供給するなどの補償が行われており、全くの無補償というわけではない。

また、温泉地からの反対は、地下熱源の利用を巡り、地熱発電所と周辺の温泉とを調停する仕組みが確立されていないため解決が難しくなっている、という指摘もある[59]。例えば利水利用に当っては、水争いといわれるような歴史があり。上流の地域が利水権を独占することはなく、上流と下流とが調停する習慣が古くからあった。しかし地下熱源に関しては、これまで温泉業者だけが独占的に利用してきたため、習慣的に既得権益化して温泉権となって、地下水流構造とは無縁に土地の権利とされる現状である。そのため地下熱源利用を巡っても、新たに調停の仕組みが不可欠と考えられる。

日本の地熱発電所 [編集]

柳津西山地熱発電所

火山の多い東北地方九州地方の一部に集中している。 北海道電力、九州電力の発電所名には『地熱』がつかない。特に八丁原発電所では、資源を輸入する必要がない地熱発電のメリットが減価償却の進行を助けたことにより、近年になって7円/kWhの発電コストを実現している。

地下の地熱貯留層を管理し、地熱を枯渇させないためには、プラント1基あたりの発電能力は一般的な水力発電と同等の数十MW程度と小規模となる。プラントは小規模ながら、計画的な消耗品の交換と貯留層の管理を行うことによって、長期間にわたって安定した電力を供給でき、なおかつ事故のリスクも小さいことから、エンジニアリングに精通している極少数の労働者によって運転や保守点検が行われている。現在、消耗品や貯留層の管理にかかるコストの高さが、国内での地熱発電の普及を妨げる障害となっている。

その他、カウンターテロリズムの観点から地熱発電に注目すると、重要防護施設としての性質上、ゲリラコマンド不審船からの襲撃に備えて原子力関連施設警戒隊の常駐が行われている原子力発電所や、防災上、一定の能力を有する自衛消防隊の常駐が必要な火力発電所など、他の発電方式と比べてセキュリティ上の懸念も少ないことから、無人で運転されている発電所が多い。

無人の発電所の様子は、遠隔地にある施設に勤務しているオペレーターからデータ通信を用いて常時監視され、必要に応じて専門家が現地に赴いて管理や修繕作業等を実施する。

都道県 都市 発電会社 発電所 位置 容量
(MW)
北海道 森町 北海道電力 森発電所 地図 25
岩手県 八幡平市 東北水力地熱 松川地熱発電所 地図 23.5
雫石町 東北電力 葛根田地熱発電所 地図 80
宮城県 大崎市 電源開発 鬼首地熱発電所 地図 15
秋田県 湯沢市 東北電力 上の岱地熱発電所 地図 28.8
鹿角市 東北電力 澄川地熱発電所 地図 50
三菱マテリアル 大沼地熱発電所 地図 9.5
福島県 柳津町 東北電力 柳津西山地熱発電所 地図 65
東京都 八丈町 東京電力 八丈島地熱・風力発電所 地図 3.3
熊本県 小国町 廣瀬商事 岳の湯発電所 地図 0.05
大分県 別府市 杉乃井ホテル 杉乃井地熱発電所 地図 1.9
九重町 九州電力 大岳発電所 地図 12.5
九州電力 八丁原発電所 地図 112
九州電力 滝上発電所 地図 27.5
九重観光ホテル 九重地熱発電所 地図 1
鹿児島県 指宿市 九州電力 山川発電所 地図 30
霧島市 九州電力 大霧発電所 地図 30
大和紡観光 霧島国際ホテル地熱発電所 地図 0.2
合計 514.7

(†印が付されたものは自家用発電所)

このほか、検討中・工事中等のものとしては、下記のものがある。

  • 大分県・湯布院温泉(工事中)[60][61]
  • 福島県・磐梯地域(検討中)[62][63]
  • 北海道・上川町(検討中)[64]

日本各地の発電所の特色 [編集]

  • 北海道電力、森発電所は、標高が300メートル程度と低い濁川カルデラ内に立地している。無償で地域の農業ハウス栽培に熱温水を提供している。
  • 九州電力、山川発電所は鹿児島湾、指宿市にある海が見えるほどの標高が低いカルデラ湾そばに立地する、発電所である。

世界の地熱発電 [編集]

フィリピン東ネグロス州の地熱発電所

歴史 [編集]

世界最初の地熱発電は、1904年イタリアラルデレロにおいて天然蒸気を利用した運転が行われ(0.75馬力)、1913年に発電所としての商業発電が始まった(250kW,(0.25MW))。なお、100年以上が経過した現在でもラルデレロでは地熱発電所が運営され続けている。

現状 [編集]

2005年の世界の地熱発電設備容量の合計は8878.5MWである。全世界の総発電設備のうち地熱発電の割合は約0.3%になっている。

国別首位はアメリカ合衆国で、このうち約9割がカリフォルニア州に集中している。他にネバダ州ユタ州ハワイ州で地熱発電が行われているが、エネルギー省では西部・南部の州で地熱エネルギー開発を進め、2006年までには地熱発電所のある州を8州にまで増やす計画である。

アメリカに次いで発電容量が多いのは火山国フィリピン。フィリピンは国内に建設を進めていた2基の原子力発電所を運転開始の直前になって廃絶し、代わりに同じ発電設備容量の地熱発電所を建設した。フィリピンは国内総発電量の約4分の1を地熱でまかなう「地熱発電大国」である。

産油国であるインドネシアでは、化石燃料の枯渇後を見据え、海軍によるシーレーン防衛に努めるとともに、2015年までに国内の電力のうち4.5GW(4,500MW)を地熱発電で賄い、2025年までに9.5GW(9,500MW)の地熱発電を実現させることで化石燃料を節約するエネルギー安全保障戦略を国として打ち出している。

アイスランドにあるスヴァルスエインギ地熱発電所では、発電用に汲み上げた地熱海水を利用して、世界最大の露天温泉ブルーラグーンが運営されている。アイスランドでは、地熱発電と水力発電だけで電力を賄うことを目指すエネルギー安全保障戦略を追求している。さらに、将来において燃料電池で稼働する車両や船舶が一般にも普及した場合は、その燃料となる水素を調達するために地熱発電所を更に開発するとの国策が示されている。

ニュージーランドでは、原子力発電をしないことを国策としている。そのため、原発に代わる発電方法として地熱発電を推進している。

国別地熱発電設備容量 [編集]

国別の地熱発電容量の合計は、発電容量の合計順に下記の様になっている[65]。(「地熱発電割合」は、「地熱発電容量計」を「総電力設備容量」で割ったもの。)

国名 地熱発電容量計
(MW)
総電力設備容量
(MW)
地熱発電割合
(%)
アメリカ合衆国 2,534.1 1,031,692 0.2
フィリピン 1,930.8 13,434 14.4
メキシコ 953.0 43,536 2.2
インドネシア 797.0 24,706 3.2
イタリア 790.5 78,249 1.0
日本 535.0 272,701 0.2
ニュージーランド 435.5 8,555 5.1
アイスランド 172.1 1,510 11.4
コスタリカ 162.5 1,715 9.5
エルサルバドル 151.0 1,133 13.3
ケニア 127.0 1,129 11.2
ロシア 79.0 216,000 0.0
ニカラグア 77.5 641 12.2
グアテマラ 33 1,697 1.9
中国 28.8 391,408 0.0
トルコ 20.4 28,332 0.1
ポルトガル 16.0 11,240 0.1
フランス 14.7 115,975 0.0
エチオピア 7.0 501 1.4
パプアニューギニア 6.0 --- ---
台湾 3.3 34,598 0.0
ギリシャ 2.0 11,360 0.0
オーストリア 1.2 18,030 0.0
タイ 0.3 50,532 0.0
オーストラリア 0.2 44,852 0.0

世界の地熱発電所 [編集]

題材とした作品 [編集]

脚注 [編集]

  1. ^ : geothermal power
  2. ^ 地熱発電とは? 2.地熱発電のしくみ
  3. ^ a b c d e f 電中研レビューNo.49 未利用地熱資源の開発に向けて -高温岩体発電への取り組み-
  4. ^ Feed-In Tariffs: Accelerating the Deplyment of Renewable Energy, Miguel Mendonca, World Future Council, ISBN 978-1-84407-466-2
  5. ^ a b c d e f 低炭素社会づくりのためのエネルギーの低炭素化に向けた提言、低炭素社会づくりのためのエネルギーの低炭素化検討会、平成22年3月
  6. ^ a b DOE, EERE, Geothermal Technologies Program, Hydrothermal Power Systems
  7. ^ Idaho National Laboratory, What is geothermal energy?
  8. ^ a b c d e f g 地熱学会、地熱エネルギー入門(翻訳)地熱資源の利用
  9. ^ a b c 資源エネルギー庁、グリーンエネルギーポータルサイト、地熱(「システム」タブをクリック)]
  10. ^ 地熱発電のしくみとCO2 削減,三菱重工技報 VOL.45 NO.1: 2008
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  37. ^ 出典>東洋経済オンライン、大分・湯布院の温泉旅館に神戸製鋼のバイナリー発電ユニットを、初導入、2012/03/27、発電コストは20円/kW程度。電力買い取りか価格が、42円なら5年で初期投資を回収できる。
  38. ^ 栃木県、「温泉発電」導入へ調査、 県が本年度、事業化協議 (10月22日) 、下野新聞ホームページ SOON
  39. ^ >大分県、別府市、地熱で初の固定価格買い取り(2012年12月3日07時47分 読売新聞)
     >(2013年)明けに発電を始める。再生可能エネルギー固定価格、買取制度の対象になる。
  40. ^ 出典>スマートジャパン>自然エネルギー:温泉水が冷めても蒸気で加熱、日本初の温泉発電施設の建設開始 
     >機器は、神戸製鋼所の小型バイナリー発電システム「MB-70H」。1台当たりの最大出力は60kW 
     >機器の最大出力が1万5000kW未満なら、売電価格は1kW当たり42円(売電期間は15年間)
     >(将来)高圧に対応する送電線を引くという。
  41. ^ 出典、東京都、八丈島における地熱発電の大幅拡大[2]
    現状>平成11年設置の出力2,000キロワット
    建設予定 >地熱発電を6,000キロワット程度に3倍増
       >出力調整用の揚水発電(1,200キロワット程度)を導入 >平成26年度の整備事業開始予定、2013年1月4日 
  42. ^ >出典、時事、北海道で地熱発電調査=23年ごろの運転目指す―石油資源開発、時事通信 1月21日(月)19時0分配信
    >1万5000キロワット程度の規模で、2023年ごろの発電開始、予定 
  43. ^ 出典、産経新聞 2月11日(月)20時41分配信 、>  東京都の猪瀬直樹知事は8日の定例会見で、~ 
      >--八丈島の地熱発電の件。硫化水素のにおい、~。東京都の、対策は? 
      >猪瀬知事答弁。 (いままで)東電が反応しなかったのだろう。~ (住民の声に、対策を採るなら)新しい技術だともっと違うと思う。 
  44. ^ <安倍首相>小規模地熱発電で規制緩和を約束 毎日新聞 5月18日(土)19時36分配信
    NHK、オンライン http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130518/t10014675951000.htm 
    >(地元発電業者の発言)「小型の地熱発電も、既存の地熱発電と同様に電気事業法の適用を受けるため、技術者を常駐させなければならず、負担になっている」
  45. ^ 編集委員 滝順一 (2011年8月31日). “地熱エネルギーブームに乗り遅れる日本 九州大学の江原教授に聞く”. 日経新聞. http://www.nikkei.com/tech/ecology/article/g=96958A9C889DE1E6E1EAE4E3E1E2E1E2E2EAE0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;dg=1;df=2;p=9694E2E4E2E7E0E2E3E2E3E7E5E7 2011年8月31日閲覧。 
  46. ^ 毎日新聞、2008年6月19日の記事(財政再建を願う嬬恋村が発電所建設を求めるも、温泉を擁する草津町が反対)
  47. ^ 地熱発電所の周辺温泉への影響について
  48. ^ 日本地熱学会、報告書「地熱発電と温泉利用との共生を目指して」、2010年6月(PDF)
  49. ^ 地熱発電所、三菱マテなど20年ぶり新設 政府、春に支援策、Nikkei.net、2009年1月2日
  50. ^ 「湯沢地熱株式会社」の設立について〜3社共同で山葵沢・秋ノ宮地域の地熱調査・事業化検討を推進〜 、2010年4月
  51. ^ 経済産業省、地熱発電に関する研究会(第1回)-配付資料
  52. ^ 経済産業省、地熱発電に関する研究会議事要旨(第1回)-議事要旨
  53. ^ 経済産業省、地熱発電に関する研究会(第2回)-配付資料
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  55. ^ 「地熱発電、補助引き上げ 経産省、3分の1程度に」『日経新聞』2009年3月24日朝刊
  56. ^ 行政事業レビュー「公開プロセス」(METI/経済産業省)「中小水力・地熱発電開発費等補助金」
  57. ^ 地熱発電事業に係る自然環境影響検討会(平成23年度)”. 環境省. 2011年12月9日閲覧。
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  59. ^ 『毎日新聞』2012年8月25日。
  60. ^ 神戸製鋼、湯布院温泉旅館に地熱発電機を納入=年内稼働、時事通信、2012.3.27
  61. ^ 神戸製鋼、湯布院温泉旅館「ゆふいん庄屋の館」向けに小型温泉発電システムを受注、日経新聞プレスリリース、2012.3.27
  62. ^ 福島に地熱発電所の建設で協議 出光など、国内最大級、2012.4.3、MSN産経ニュース
  63. ^ 福島で国内最大の地熱発電所開発へ 出光興産など9社、朝日新聞、2012.4.3
  64. ^ 地熱発電開発へ熱い視線 上川、北海道新聞、2012.3.28
  65. ^ 地熱発電の基礎知識(4)、地熱エンジニアリング株式会社。データは社団法人 火力原子力発電技術協会『地熱発電の現状と動向』2007年版から引用。明らかにおかしいデータのみ、社団法人 火力原子力発電技術協会『地熱発電の現状と動向』2005年版から引用して訂正。

関連項目 [編集]

外部リンク [編集]