マグニチュード

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マグニチュードmagnitude)とは、地震が発するエネルギーの大きさを表した指標値である。1935年に、アメリカの地震学者チャールズ・リヒター(以下単に「リヒター」)によって初めて定義された。マグニチュードは地震のエネルギーの対数に比例し、マグニチュードが2増えるとエネルギーは1000倍になる。なお、英語圏ではリクター・スケールRichter scale、リヒターの英語読み)との表記が一般的である。

一般に使われるマグニチュードでは、概ね8(表面波マグニチュードで8.5、実体波マグニチュードでは7程度)を超えると数値が頭打ち傾向になるため、より正確に地震の規模を表す指標として、モーメント・マグニチュードが考案され、地震学では広く使われている。

ある地点における地震の揺れ(地震動)の程度を表した震度とは異なる。

なお、magnitudeは「大きさ・重要度」という英語(名詞)であり、とりわけ対数スケールを用いた数量の比較の術語として用いられる。天体等級も英語でマグニチュードと言う。

目次

[編集] マグニチュードと地震のエネルギー

地震が発するエネルギーの大きさをE(単位:J(ジュール))、マグニチュードをMとすると

log10E = 4.8 + 1.5M

という関係がある(マグニチュードの計算に用いる対数は常用対数である)。このことと一般的な波動の性質から、マグニチュードが1増えるとエネルギーは101.5×1倍(10\sqrt{10}倍、およそ31.62倍)になる。

[編集] 一般的なマグニチュードの種類

以下、振幅という場合は片振幅(中心値からの振幅)を意味する。

[編集] リヒターのマグニチュード ML

リヒターは、ウッド・アンダーソン型地震計(2800倍)の最大振幅A(単位:μm)を震央からの距離100kmのところに値に換算したものの常用対数をマグニチュードとした。従って、地震波の振幅が10倍大きくなるごとに、マグニチュードが1ずつあがる。

ML = log10A

[編集] 表面波マグニチュード Ms

グーテンベルク(1945)は、表面波マグニチュードを

Ms = log Ah + 1.656 log Δ + 1.818 + C

で定義した。ここで、Ahは表面波水平成分の最大振幅、Δは震央距離(角度)、Cは観測点ごとの補正値である。

これとほぼ同じであるが、国際地震学地球内部物理学協会の勧告(1967)では、

Ms = log (A/T) + 1.66 log Δ + 3.30 (20° ≦ Δ ≦ 60°)

としている。Aは表面は水平成分の最大振幅(μm)、Tは周期(秒)である。

[編集] 実体波マグニチュード mB

グーテンベルクおよびリヒター(1956)は、実体波マグニチュードを

mB = log (A / T) + Q(h,Δ)

で定義した。Aは最大振幅、Tはその周期、Qは震源の深さhと震央距離Δの関数である。経験的に、

mb = 0.63 Ms + 2.5

が成り立つ。

[編集] モーメント・マグニチュード Mw

金森博雄(1977)は、地震を起こす断層運動のモーメント(Mo)を、従来のマグニチュードに関連づけ、これをモーメント・マグニチュードとした。

Mw = (log Mo - 9.1 ) / 1.5
ただし Mo = μ×D×S

Sは震源断層面積、Dは平均変位量、μは剛性率である。

モーメント・マグニチュードの最大値は、1960年チリ地震で、Mw=9.5 であった。

  • 断層面の面積(長さ*幅)と、変位の平均量、断層付近の地殻の剛性から算出する、まさに断層運動の規模そのものである。
  • M8を超える巨大な地震では、地震の大きさの割りにマグニチュードが大きくならない「頭打ち」と呼ばれる現象が起こる。モーメント・マグニチュードは、これが起こりにくく、巨大地震の規模を物理的に評価するのに適しているとされる。

[編集] 気象庁マグニチュード(2003年9月24日以前)

2003年9月24日までは、下記のように、変位マグニチュードと速度マグニチュードを組み合わせる方法により計算していた。

変位計、h≦60kmの場合
Mj = log A + 1.73 log Δ - 0.83
Aは周期5秒以下の最大振幅。
変位計、h≧60kmの場合
Mj = log A + K(Δ,h)
K(Δ,h)は表による。
速度計の場合
Mj = log AZ + 1.64 log Δ + α
ここで、AZは最大振幅、αは地震計特性補正項である。

[編集] 気象庁マグニチュード(2003年9月25日以降)

変位マグニチュードは、系統的にモーメントマグニチュードとずれることがわかってきたため、2003年9月25日からは計算方法を改訂し、合わせて過去の地震についてもマグニチュードの見直しを行った。ただ、モーメントマグニチュードと気象庁マグニチュードにはバラつきがあるため注意が必要である。

変位によるマグニチュード
Md = 1/2×log(An2+Ae2) +βd(Δ,H) + Cd (An,Aeの単位は10-6m)
ここでβdは、震央距離と震源深度の関数(距離減衰項)であり、Hが小さい場合には坪井の式に整合する。Cdは補正係数。
速度振幅によるマグニチュード
Mv = α×log(Az)+ βv(Δ,H)+ Cv (Azの単位は10-5m/s)
ここでβvは、Mdと連続しながら、深さ700km、震央距離2,000kmまでを定義した距離減衰項である。Cvは補正係数。

[編集] 特殊なマグニチュードの種類

[編集] 地震動継続時間から求めるマグニチュード

地震記象上で振動が継続する時間Tdはマグニチュードとともに長くなる傾向がある。そこで一般に、

M = c0 + c1 log Td + c2 Δ

の式が成り立つ。c0、c1、c2は定数、Δは震央距離である。c2は小さいため、第3項を省略することもある。過去には河角(1956)のWiechert式地震計に対しての式

M = 4.71 + 1.67 log Td

などが提案されている。

地震波記録の回収や解析に多大な労力を要した1970年代頃までは、1つの地震計記録からマグニチュードを概算する方法として、気象台・観測所などで利用された。ただし各定数は地震計の特性に大きく依存するため、短時間で多くの地震波記録を扱うことができる現在ではこの式はほとんど用いられない。

[編集] 有感半径から求めるマグニチュードML

グーテンベルグとリヒター(1956)は、南カリフォルニアの地震について、有感半径Rを用いて、

ML = -3.0 + 3.8 log R

の式を得ている。 日本でも市川(1960)が日本の浅発地震に対して

M = -1.0 + 2.7 log R

を与えている。なお、Rは飛び離れた有感地点を除く最大有感半径(km)である。

[編集] 震度4,5,6の範囲から求めるマグニチュード

気象庁の震度で、4以上、5以上、6以上の区域の面積(km2)をそれぞれS4、S5、S6とするとき、勝又と徳永(1971)は

log S4 = 0.82 M - 1.0

また、村松(1969)は

log S5 = M - 3.2
log S6 = 1.36 M - 6.66

という実験式を得ている。

地震計による記録がなかった歴史地震のマグニチュードを推定する際に有効である。家屋被害に関する文献記録から各地域の震度を求め、それをもとにマグニチュードを推定する。

[編集] 微小地震のマグニチュード

微小地震については上記のMs、mB、気象庁マグニチュードなどでは正確な規模の評価ができない。そこで、たとえば渡辺(1971)は上下方向の最大速度振幅Av(cm/s)と震源距離r(km)を用いて、

0.85M - 2.50 = log Av + 1.73 log r

の式を示している。なおこの式はrが200km未満のときに限られる。マグニチュードがマイナス値を示す場合にもある程度有効であるため、ごくごく微小な人工地震のマグニチュードを求める際にも利用される。

[編集] 津波マグニチュードMt

低周波地震ではMs、mB、気象庁マグニチュードを用いると地震の規模が実際よりも小さく評価される。そこで阿部(1981)によって、津波を用いたマグニチュードMtが考案された。

Mt = log H + log Δ + 5.80

ここでHは津波の高さ(m)、Δは伝播距離(km)(Δ≧100km)である。

津波地震では、津波マグニチュードは表面波マグニチュード・実体波マグニチュードよりも大きくなるが、モーメントマグニチュードとは近い値をとる。

[編集] マグニチュードの目安

簡易な計算式として、マグニチュードがdM増えたときのエネルギーの倍数は1000(0.5*dM)となる。 たとえば、マグニチュードが1増えるとエネルギーは約31.62倍、2増えると1000倍となる(1節参照)。

また、マグニチュードが1増えると地震の発生頻度はおよそ10分の1になる(下記参照)。

[編集] マグニチュードの大小と被害

地域や構造物の強度等にもよるが、一般にM6を超える程度の直下型地震が起こると災害となる確率が高い[1]。M7クラスの直下型地震では、条件にもよるが大災害になる。阪神淡路大震災はM7.3(Mw6.9)である。また、東海地震南海地震といったプレート型地震はM8前後である。一般的にマグニチュードが大きくなると、地震断層面も大きくなるため、被害の程度だけでなく被害が生じる範囲も拡大する。

M5未満では被害が生じることは稀で[2]、M2程度の地震では、陸上でも人に感じられないことが多い。M0クラスになると、日本の地震計観測網でも捉えられない場合がある。なお、理論上マグニチュードにはマイナスの値が存在するが、この規模の地震になると精密地震計でも捉えられない場合が多く[3]、また常時微動やノイズとの区別も難しくなってくる。

大きな地震のマグニチュードを求めることは、地震の規模や被害の推定に有用である。一方マグニチュードが小さく被害をもたらさないような地震も、地震や火山・プレートテクトニクスのメカニズムを解明するのに役立つため観測が行われている。

M8以上の地震を巨大地震、M9以上の地震を超巨大地震と区分けすることがある。

[編集] マグニチュードの大小の目安

エネルギーの比較も参照のこと。
マグニチュード 地震の大きさ エネルギー(J)換算 TNT換算 備考
-2.0 極微小地震 63 J 0.015 g 60J: 30W蛍光灯の2秒間点灯時の消費電力
-1.5 350 J 0.083 g -
-1.0 2 ×103(k) J 0.48 g -
-0.5 11 ×103(k) J 2.6 g -
0 63 ×103(k) J 15 g -
0.5 350 ×103(k) J 84 g -
1.0 2 ×106(M) J 480 g  
微小地震
1.5 11 ×106(M) J 2.6 kg M1.5: 2007年ペルーの隕石落下時に発生した地震(en:ニュース)
2.0 63 ×106(M) J 15 kg -
2.5 350 ×106(M) J 84 kg -
3.0 2 ×109(G) J 480 kg -
小地震
3.5 11 ×109(G) J 2.6 t -
4.0 63 ×109(G) J 15 t 小型核爆弾が放出するエネルギー
M4.0: 北朝鮮の核実験 (2006年)で観測された地震(CTBTO)
4.5 350 ×109(G) J 84 t -
5.0 2 ×1012(T) J 480 t M5.0: ツングースカ隕石の衝突 (1908年)時に発生した地震(推定)[4]
M5.2: 長岡地震 (1961年)
中地震
5.5 11 ×1012(T) J 2,600 t M5.6: 新潟北部地震 (1995年)
55~63TJ: 広島の原爆が放出したエネルギー
6.0 63 ×1012(T) J 15,000 t M6.1: 長野地震 (1941年)
6.5 350 ×1012(T) J 84,000 t M6.5: 宮城県北部地震 (2003年)
7.0 2 ×1015(P) J 48万 t M7.0: 福岡県西方沖地震 (2005年)
M7.3: 兵庫県南部地震 (1995年)
大地震
7.5 11 ×1015(P) J 260万 t M7.5: 新潟地震 (1964年)
M7.9~8.0: 四川大地震 (2008年)
8.0 63 ×1015(P) J 1,500万 t M8.0: 濃尾地震 (1891年)
210PJ: 過去最大の核兵器が放出したエネルギー
巨大地震
8.5 350 ×1015(P) J 8,400万 t M8.5: 明治三陸地震 (1896年)
9.0 2 ×1018(E) J 4億8,000万 t M9.1~9.3: スマトラ島沖地震 (2004年)
超巨大地震
9.5 11 ×1018(E) J 26億 t M9.5: チリ地震 (1960年)
これ以上の規模の地震は実測でも地質調査でも発見されていない。
10.0 63 ×1018(E) J 150億 t (M10.0): 地球を丸一周する長さのトランスフォーム断層が動くとこの規模になる。
10.5 320 ×1018(E) J 840億 t -
11.0 2 ×1021(Z) J 4,800億 t -
11.5 11 ×1021(Z) J 2兆6,000億 t 15ZJ: 地球が太陽から受ける総エネルギー1日分
12.0 63 ×1021(Z) J 15兆 t (M12.0): 地球を丸一周する長さの逆・正断層が動くとこの長さになる。
(地球表面が地割れによって真っ二つにひび割れる)
注: 隕石や原爆のエネルギーについては、「放出した全エネルギー」と「それにより発生した地震のエネルギー」の大きさが異なる点に注意。

[編集] 頻度の目安

地震の発生頻度は以下のグーテンベルグ-リヒターの関係式により表される。 logn = abM

この式はマグニチュードがMのときの地震の数をnで表す。傾きを表すbを「b値」と言い、統計期間や地域により若干異なるものの、0.9~1.0前後となる。この式から、マグニチュードが1大きくなるごとに地震の回数は10倍となる。ただ、実際に観測される地震の回数をグラフに表すと、M3~M8付近では式に沿ったものとなるが、M3以下とM8以上では、正しく表されなくなる。これは、M3以下の地震は、規模が小さすぎるために観測できていないものが多いからであり、この規模の地震の観測数を調べることで地震の観測網の能力を計ることもできるとされている。一方、M8以上の地震は、発生回数自体が少ないために正確に表せていないもので、より長期間調査することで精度が高まるとされている。

日本での頻度の目安は以下の通り。規模の小さなものは、1小さくなる毎に10倍になると考えればよい。

  • M8.8以上 : 日本での発生は未確認
  • M8.0~8.7 : 10年に1回程度
  • M7.0~7.9 : 1年に1~2回程度
  • M6.0~6.9 : 1年に10数回程度

また、M5程度の地震は世界のどこかでほとんど毎日発生しており、M3~4程度の地震は日本でもほとんど毎日発生している。

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

[編集] 脚注

  1. ^ M6程度でも、外洋の海底下を含む非居住地域で発生する地震や、深発地震では災害が発生しないことが多い。
  2. ^ 明治時代以降に日本で発生した地震のうち、気象庁マグニチュードMJ5.2未満の地震では死者が発生したことはない。長岡地震はMJ5.2で死者5人。
  3. ^ 高密度に地震計を配し、その地域内で発生した震源の浅い地震などは十分観測できる場合もある。
  4. ^ Traynor, Chris, The Tunguska Event, Journal of the British Astronomical Association, 107, 3, 1997

[編集] 外部リンク