震度

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

震度(しんど)とは、

  1. 地震学において、地震の揺れの程度を示す指標。震度階級。
  2. 建築分野において、建築物の耐震性能を表す数値。耐震度。

地震学における震度[編集]

2007年のペルー地震の震度分布図。改正メルカリ震度基準でUSGSの推定によるもの。

地震学において、震度とは、ある地点における地震の揺れの大きさを表した指標である。震度階級震度階ともいう。それぞれ揺れの違いがある10前後のレベルで表現され、世界では地域により定義の異なるいくつかの震度階級が用いられている。現在の日本では気象庁震度階級が使われており、日本では一般的にこれを「震度」と呼ぶ。

震度階級の性質[編集]

断層破壊で放出されるエネルギーの大きさを表すマグニチュード(地震の規模)とは異なり、観測する地点によって全く異なる。

マグニチュードは地震そのものの強さを表し1つの地震につき1つの値をとる[注 1]一方、震度は地震動の強さを表し1つの地震につき場所によって多数の値をとる(後述の「最大震度」だけは1つに地震につき1つの値をとる)。

その地震によって各地で観測されたうち最大の震度を最大震度というが、「震度○の地震」という表現は、「その地震の最大震度」を意味する場合と、「その地震におけるある地点の震度」を意味する場合があり、混同される場合があるので注意を要する。

原則として震度は震源(震央)からの距離に逆比例し、震源から遠いほど震度は小さくなる。最大震度は震源の直上である震央付近となるのが普通で、震度の広がりを地図上に表すと同心円に近い分布をとる。ただ、主に地表付近の地盤の固さや地下のテクトニクス構造(プレートの重なりの構造)の違いが揺れを増幅させたり減衰させたりして、震度が周囲より大きくなった小さくなったりすることがある。これが顕著なところを異常震域ということがある。

厳密には震度は震央からの距離に逆比例し、震央からの距離が同じ地震でも、震源の深さが深くなるほど、同じ地点でも震度は小さくなる。なお、日本付近の約100kmより深い太平洋プレートで発生する深発地震の中には、プレートの重なりの原因の異常震域のため、震央で揺れが小さいにもかかわらず東北地方や関東地方の太平洋岸で揺れが大きくなる事例がしばしば見られる。

また、マグニチュード(規模)が大きな地震ほど、震度は大きい比例関係にある。震源が浅い直下の地震では、マグニチュードの値と気象庁震度階級(震度)の値がほぼ同じになることが経験的に知られていて、例えばM4程度の地震では最大震度が4となることが多い。ただし、地盤の固さ震源の深さなどにより最大震度は比例関係から外れる場合がある。

震度の計測[編集]

震度階級の計測方法は地域によって異なる。現在の日本では機械による計測値、いわゆる「計測震度」のみを使用し、人体感覚、被害の程度などは参考にしていない。デジタル震度計が観測した計測値を10段階に換算して気象庁が発表している。気象庁は地震や津波の早期周知のため、地震発生数分以内に報道機関などに震度を含めた地震情報を発表するが、震度3以上の場合は都道府県を数個に区切った地域ごとの震度、後に地点ごとの震度という形式で段階的に詳細な情報が発表される。大規模な地震では、その後にデータを詳細に分析するなどして、推計震度分布図が作成される。またアメリカUSGSも、既知の地盤強度データをもとに推計震度分布を発表している。ちなみに、現在までの計測の最大は東北地方太平洋沖地震で宮城県栗原市で観測された計測震度6.67の震度7である。

日本以外の多くの地域では、加速度計や地震計といった機械のデータも参考にされるが、主に人体感覚や被害の程度などを総合的に勘案して、人が判定している。日本でも1996年9月までは、気象台の職員が、体感や被害などから判定していた。

なお、震度の定義は何度か改定されている場合が多く、研究資料として用いる場合の連続性が問題となる場合がある。気象庁震度階級を例にとれば、計測震度が導入された1996年10月1日の改正前後で大きな差がある。また気象庁震度階級は観測点数が1990年代 - 2000年代にかけて急増し観測密度が高くなったため、震度の統計には補正が必要である。

世界の様々な震度階級[編集]

震度階級に国際標準はなく、いくつかの指標があって、それぞれの国や地域が採用したものが使われている。以下、主な震度階級を時代順に述べる。

ロッシ・フォレル震度階級英語版 (Rossi–Forel scale)
1873年成立。IからXの10段階。Xの適用範囲が広すぎること、ヨーロッパの生活を基にした基準であったため、ほかの震度階級が考案され、次第に使用されなくなった。
気象庁震度階級 (JMA seismic intensity scale)
1884年に成立。現在は1996年に計測震度計によるものに改訂されたものが使用(2008年に解説表が改訂)されており、0から7の10段階(5と6が2段階ずつある)。日本で使用。
メルカリ震度階級 (Mercalli intensity scale)
1902年に成立。後に何度か修正が重ねられ、メルカリ・カンニーニ・シーベルグ震度階級 (Mercalli–Cancani–Sieberg intensity scale, MCS scale) が提案され、1931年にはメルカリ・ウッド・ニューマン震度階級 (Mercalli–Wood–Neuman intensity scale, MWN scale) となり、現在では改正メルカリ震度階級 (Modified Mercalli intensity scale, MMI scale) という。IからXIIの12段階。アメリカ韓国などで使用。
メドヴェーデフ・シュポンホイアー・カルニク震度階級 (Medvedev–Sponheuer–Kárník scale, MSK scale)
1964年成立。IからXIIの12段階。CIS諸国、東欧諸国、イスラエルインドなどで使用。
中国地震烈度表英語版 (China seismic intensity scale, CSIS)
1980年成立、1999年改正。IからXIIの12段階。中華人民共和国で使用。
ヨーロッパ震度階級英語版 (European Macroseismic Scale)
ヨーロッパ地震学委員会により1988年成立。現在は、1998年に修正されたEMS 98が使用されている。1から12までの12段階。ヨーロッパ各国で使用。

台湾では2000年から、1996年9月30日以前の旧気象庁震度階級を参考にした、0から7の8段階の震度階級が使用されている[1][2]。韓国では、気象庁震度階級を参考にしていたものが使用されていたが、2001年からメルカリ震度階級に変更された[3]

各国の気象機関で公式に使用する震度を定めていないところも多いが、メルカリ震度階級を使用するところが多い。

それぞれの震度階級の間で、数式等を用いて対応関係を示すことは難しい。また同じ震度階級でも機関によって運用や基準が異なり、単純に同じとはみなせない場合がある。

建築分野における震度[編集]

建築分野において、震度とは、建築物の耐震性能を表現する数値のひとつである。耐震度ともいう。これは、鉛直方向と水平方向それぞれの静的加重を建築物の自重で割った値で、それぞれの方向の静的加速度重力加速度で割った値に等しい。「静的」とは、「一定振幅の振動」ではなく、一方向への加重ということである。

例えば、構造計算法の中の許容応力度計算(一次設計)では、地震力を決める係数のひとつとして標準せん断力係数Coを用いており、通常0.2、軟弱地盤における木造建築物では0.3とされていて、それぞれおよそ水平震度0.2、水平震度0.3に相当する(厳密には地域係数、振動特性係数など他の係数も関係するため若干異なる)。建築物の地上階の設計においては、1981年以前の法令で『水平震度』が規定されていたが現行法令上は標準せん断力係数がこれを代替している。地下階の設計においては法令上も『水平震度』が登場する。ここでいう水平震度0.2は水平加速度0.2g=約200ガルに相当する。

なお、耐震基準で定める一次設計水平震度0.2を超えると建物は損傷を起こし始め、二次設計水平震度1.0を超えると倒壊が始まるとされる。こう考えると1000ガル程度の地震で建物が倒壊するように聞こえるが、実際の地震では最大加速度は一瞬にしか現れないので、通常はこの数倍の最大加速度の地震に耐えることができる。ただし、卓越周期(その建物を揺らした地震動の周期をスペクトルで表した時に大きな値をとる周期)が固有振動周期に近い地震動ではこの限りでない。

このように建物の損傷・倒壊等は、加速度よりも、地震動の加速度と継続時間の積で表される速度(最大加速度に対応するのは最大速度)に比例する傾向がある。建物被害との相関性がより高い指標としてSI (Spectral Intensity) が知られているが、これは固有周期0.1 - 2.5秒・減衰定数20%の構造物に作用する速度応答スペクトル[注 2]の平均値により定義されており、単位は速度カイン (kine) を用いる。ただし、固有周期2.5秒を超えるような長周期地震動はSI値の定義外のため、被害との相関性が低くなる。

脚注[編集]

[ヘルプ]

注釈[編集]

  1. ^ 研究機関等により異なる場合もあるが、概ね近い値となる。
  2. ^ 建物を揺らす地面の地震動を速度の周期分布で表現したのが速度表面スペクトルである。これに対し、地震動に呼応して建物自体が揺れる振動を速度の周期分布で表現したのが速度応答スペクトルである。一般的に前者よりも後者の方が大きな速度値をとり、またピーク周期も異なるため、建物被害を考える上では後者の方が重要。

出典[編集]

  1. ^ 地震百問 何謂震度? 台湾中央気象局
  2. ^ TIPS FOR EARTHQUAKE PREPAREDNESS AND RESPONSE 台湾中央気象局(英語)
  3. ^ 研究速報 福岡県西方沖の地震の韓国を含めた震度分布 石川有三、日本地震学会 ニュースレター

外部リンク[編集]