連動型地震
連動型地震(れんどうがたじしん)とは、複数のプレート間地震(海溝型地震)、あるいは大陸プレート内地震(活断層型地震)が再来間隔より短い間隔で連動して発生することである。連動のタイプとしては、ほぼ同時に発生する場合や時間差[注 1]で発生する場合がある。
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概要 [編集]
海溝型地震、活断層型地震にかかわらず地震の発生には断層のずれ(破壊)が大きく関わっているが、あるアスペリティで地震が発生すると、それに起因して隣接した別のアスペリティにおいても蓄積された歪みが解放されることで大きな断層のずれが生じ、連動して地震を発生させることがある。
複数の地震が連続してほぼ同時に発生する場合は、単独地震に比べて震源域が広大であるため巨大地震となる場合が多い(複数の震源領域における地震を合計して計算するため、おのずとマグニチュードも大きくなる)。また、それにより巨大津波を発生させることも多い。一方、連動する地震に時間差がある場合でも、それらの地震の震源域は隣接しているか、重複している場合がほとんどである。本震の震源域と離れた場所で地震が誘発される誘発地震とは基本的に異なる。
マグニチュード(M)9以上を記録した2004年のスマトラ島沖地震や2011年の東北地方太平洋沖地震は複数震源領域における連動型地震とされる。また、南海トラフの地震である東海地震、東南海地震、南海地震は過去の記録や地質調査などから連動して発生する可能性が高いとみられており、さらに千島海溝・琉球海溝等における地震でも地質調査などにより過去に連動して発生した可能性が指摘されている。
海溝における連動型地震 [編集]
日本近海 [編集]
千島海溝 [編集]
北海道太平洋側南東沖の千島海溝では津波堆積物の分析により、過去に十勝沖地震と根室半島沖地震が連動することでM9にも迫る巨大地震が発生した可能性がある。連動型地震によるものとみられる巨大津波痕は2500年の間に5回、約500年間隔で残されており、最新のものは17世紀に発生したとみられている[1]。また、北海道大学の平川一臣特任教授(自然地理学)の調査により道南の森町で同時期のものとみられる津波堆積物(津波高は推定5m以上)が発見された。このことから従来の十勝沖と根室沖の連動だけでは説明できないとし、震源域は三陸沖北部の青森沖まで達していた可能性があることも指摘されている[2]。
さらに平川は地質調査によりこの巨大地震が17世紀初頭に発生したことを突き止めたが、17世紀初頭に大きな津波が2回発生した記録はなく、北海道東部で15〜20mの津波が到達した痕跡があることなどから、これまで三陸沖・日本海溝沿いを震源とするM8.1の地震とされてきた1611年の慶長三陸地震がこの巨大地震に該当し、千島海溝沿い(北方領土の色丹島沖か襟裳岬沖)を震源とするM9規模の地震であった可能性が高いとしている[3]。
日本海溝 [編集]
「三陸沖地震」も参照
2011年の東北地方太平洋沖地震は、日本海溝の三陸沖から茨城県沖までの南北500km、東西200kmの震源域において、最大滑り量約20mの規模で3つの断層が極めて短時間のうちに連動して破壊されたことにより、日本における観測史上最大で、文献などの記録から推定される日本の歴史地震と比較しても最大とみられるMw9.0の超巨大地震となった。この地震で発生した巨大な津波により三陸海岸を中心に東北地方の太平洋岸で、甚大な被害を残している。さらに、地震と津波により深刻な原子力事故である福島第一原子力発電所事故も発生した。加えて、この地震では離れた地域における誘発地震も発生している。
この地域では過去にも同様の規模の地震が発生した可能性が指摘されており、869年の貞観地震は、岩手県沖から福島県沖、あるいは茨城県沖の震源域をもつ連動型巨大地震と推定されている[4]。これは福島県と宮城県沿岸で従来発見されていた津波堆積物が岩手県沿岸でも発見されたことなどが根拠となっている。
また、超巨大地震の周期的な発生が指摘される千島海溝沿いの震源域(根室沖〜襟裳岬)と東北地方太平洋沖地震の震源域(陸中〜常磐沖)の中間部分にあたる下北〜陸中沖(日本海溝北端部にあたる下北半島沖〜三陸沖中部)でも、これまでにM9規模の超巨大地震が3000年前、紀元前後、12〜13世紀のおよそ1000〜1200年間隔で発生してきたことが地質調査により推定されている[5]。これは北海道根室市から宮城県気仙沼市までの計11地点における過去3500年間の津波痕跡データの分析により、北海道〜東北地方の太平洋沖で巨大津波を発生させる可能性がある地震は3震源域に分類できるというもので、特に下北〜陸中沖は前回の発生からすでに800〜900年が経過する空白域となっているため最も切迫度が高いと考えられ、千島海溝沿いの巨大地震や東北地方太平洋沖地震の震源域が下北〜陸中沖まで拡大する可能性も考慮に入れられている[6][7]。
相模トラフ [編集]
「関東地震」も参照
相模トラフを震源とする巨大地震には、1703年の元禄関東地震(元禄地震)と1923年の大正関東地震(関東地震)の2例がこれまでに確認されており、発生間隔は少なくとも約200年以上とされてきた。しかし、これとは別に相模トラフのなかでも南東側の房総半島南東沖を震源域とする巨大地震(外房型)が周期的に単独発生している可能性が、2011年9月に日本地質学会で発表された。上述した2例のうち特に規模が大きくM8.1を記録した元禄関東地震については、「大正型」の震源域に加えて、房総半島南東沖の「外房型」の震源域による連動型地震の可能性も指摘されている[8]。
南海トラフ [編集]
詳細は「東海・東南海・南海連動型地震」を参照
南海トラフでは東海地震、東南海地震、南海地震といった巨大地震が約100年から150年の周期で発生している。過去の傾向からこれらの地震は連動関係にあり、南海トラフにおける連動型地震として甚大な被害を幾度も残している。また連動のタイプとしては、ほぼ同時に発生する「宝永型」、数時間から数日といった短時間内に発生する「安政型」、数ヶ月から数年以内に発生する「昭和型」の地震に区分される。
昭和の東南海地震では、東海地震の震源域とされる駿河トラフ内において断層の破壊が進まず、東南海地震の単独発生(2年後に昭和南海地震も発生)となっているが、歴史上の「東海地震」とされる地震の記録では、現在の東海地震と東南海地震双方の震源域を含めた地震を指しており、駿河トラフ内・東海地震震源域における巨大地震の単独発生はこれまでに確認されていない。近年まで歴史文献の記録などから南海地震や東海・東南海地震の単独発生とされてきたいくつかの地震では、地質調査などにより連動型地震であった可能性が高まりつつあるものもある。
さらに、南海トラフ西端部の日向灘付近を震源とする日向灘地震が、東海・東南海・南海の連動型地震、または単独の南海地震に連動して発生する場合があるとの説が近年いわれている[9]。具体的には、1498年の日向灘地震では南海地震の一部であったか南海地震と連動した可能性が、1707年の宝永地震では東海・東南海・南海連動型地震に加えて日向灘地震が連動して発生し、南海トラフ全域での連動型巨大地震となった可能性が指摘されている。
この他、東海・東南海・南海の3連動型地震に加えて、津波地震と推定されている1605年の慶長地震の震源域とされる南海トラフ寄りの領域(プレート境界のうち特に浅い部分)が連動した場合にM9クラスの超巨大地震となる可能性が指摘されており[10]、津波の高さも3連動型地震と比べて1.5倍から2倍になる可能性がある[11][注 2]。また、887年の仁和地震(東海・東南海・南海連動型地震)は津波の数値復元によって、M9クラスの超巨大地震との推定もなされている[12]。
琉球海溝の巨大地震 [編集]
南海トラフ南西端から続いている歴史文献などの記録がない奄美群島沖の琉球海溝(南西諸島海溝)プレート境界でも、推定M9クラスの超巨大地震が数千年に一度の割合で発生する可能性が示唆されている[13]。海底地殻変動の観測[14]によれば、測定用の海底局が沖縄本島から北西方向へ年間7cm移動していることから、推測される固着域(アスペリティ)は幅約30 - 50kmでプレート間カップリング領域が形成されていることが判明した[15]。
また、南海トラフから琉球海溝までの全長約1000kmの断層が連動して破壊されることで、震源域の全長も2004年のスマトラ島沖地震に匹敵する非常に細長い領域におけるM9クラスの連動型地震、あるいはM9クラスの二つの超巨大地震が連動して発生する可能性があるとも指摘されている[16][17][18][19][20][10]。これは、御前崎(静岡県)、室戸岬(高知県)、喜界島(鹿児島県)の3つの海岸にある、通常の南海トラフの地震が原因と推定されるものより大きな平均1700年間隔(直近は約1700年前)の4つの隆起からなる隆起地形が根拠となっている。
日本近海以外 [編集]
スンダ海溝(ジャワ海溝) [編集]
スンダ海溝における2004年スマトラ島沖地震では、スマトラ島北西沖ニアス島からインド領アンダマン諸島北端まで全長1,000km - 1,600kmにも及ぶ断層(プレート境界面)が短時間のうちに連動して破壊されたことで、Mw9.1の超巨大地震となった。
- スマトラ島沖地震 (2004年12月26日) (Mw)9.1 - 死者22万人、負傷者13万人
- スマトラ島沖地震 (2005年3月28日) (Mw)8.6
- スマトラ島沖地震 (2007年9月12日) (Mw)8.5
活断層における連動型地震 [編集]
日本内陸部の巨大地震 [編集]
活断層によるものでは、中央構造線と周辺の断層帯における連動型地震が知られている。また、その他の活断層においても連動性が疑われる地震がいくつか存在する。
- 1596年9月1日(文禄5年閏7月9日)に中央構造線内で慶長伊予地震が発生すると、その3日後の9月4日(同7月12日)には豊予海峡を挟んだ対岸で慶長豊後地震(大分地震)が発生、さらに、その翌日の9月5日(同7月13日)には六甲-淡路島断層帯[注 3]において、これらの地震に誘発されたとみられる慶長伏見地震も発生している[注 4]。なお、慶長豊後地震は中央構造線と連続あるいは交差している可能性がある別府湾-日出生断層帯の東部で発生した地震である。また、記録にはないが慶長伊予地震の震源域東側に当たる中央構造線の四国中央部から東部でも、9月1日から六甲-淡路島断層帯が動いた9月5日にかけて連動して地震が発生した可能性がある[21]。
- 1586年1月18日(天正13年11月29日)に発生した天正地震は、近畿から東海、北陸の1891年の濃尾地震を上回る広い範囲にかけて甚大な被害が伝えられており、飛騨の白川断層、伊勢湾、または現在の岐阜県における阿寺断層、1998年の調査で地震活動が明らかになった養老断層など震源断層については諸説あるが、複数の断層が連動してほぼ同時に動いた可能性が指摘されている[22]。
- 1614年11月26日(慶長19年10月25日) 高田領大地震(M 7.7) - 従来、震源は直江津沖とされてきた[23]。震域は会津、伊豆、紀伊、山城、松山諸国まで及んだとされ、越後高田藩では地震と津波により死者多数とする記録も有るが、震源が京都沖の局所的な地震とする見解もある[24][25]。同日に伊豆でM7.7の地震があり、津波は銚子の飯沼観音にまで到達。
アメリカ中西部の巨大地震 [編集]
- 1811年12月16日 アメリカ中西部ミシシッピ川沿い、ニューマドリッド地震(英語版) - M 8クラス(USGSによればMw 7.7)の地震が2回発生。1812年1月23日と2月7日にもM 8クラスの地震が発生。
脚注 [編集]
注釈 [編集]
出典 [編集]
- ^ 千島海溝プレート間地震の連動が巨大な津波をもたらした(産総研)
- ^ 「500年間隔地震」 巨大津波 道南も 朝日新聞 2011年7月21日
- ^ 慶長三陸津波:1611年発生、北海道沖M9が原因 平川・北大特任教授が新説発表(毎日新聞 2012年1月26日)
- ^ 大阪市立大学大学院理学研究科の原口強准教授による。日本応用地質学会、2007年10月
- ^ 前述の平川によって示された、北海道〜東北地方の太平洋沖を震源とし巨大津波を発生させてきた地震の分類による。2012年1月26日発行の専門誌「科学」。
- ^ 前述の平川による。下北沖にM9級震源域か=1000年間隔で発生―「切迫度高い」・北大(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版/時事通信配信 2012年1月27日)
- ^ 下北沖でもM9地震か(読売新聞(青森) 2012年1月27日)
- ^ 首都直下地震:想定外の震源域 房総南東沖、海溝型M8級痕跡--産総研発見(毎日新聞 2011年9月9日)
- ^ 東海・東南海・南海地震で震源域は日向灘に延びる恐れ 日本経済新聞 2011-04-21
- ^ a b ニュートン 2011年9月号
- ^ 東日本大震災6カ月 巨大地震の謎は解明できたのか(産経新聞/MSN産経ニュース 2011年9月11日)
- ^ 東京大学地震研究所地震火山災害部門の都司嘉宣准教授による。津波の数値復元に基づく,漸深海底における津波堆積物形成の検討 (PDF)日本地球惑星科学連合
- ^ 2006年の琉球大学と名古屋大学の研究による。“AGU 2006 Subduction and the Necessity of Ocean-Bottom Crustal Deformation Measurements at the Ryukyus, Japan The Assumed Aseismic Subduction and the Necessity of Ocean-Bottom Crustal Deformation Measurements at the Ryukyus, Japan” (英語). AGU (2006年). 2011年3月20日閲覧。 AUG 2006 Fall Meeting T21F-03The Assumed Aseismic The Assumed Aseismic Subduction and the Necessity of Ocean-Bottom Crustal Deformation Measurements at the Ryukyus, Japanポスター (PDF)
- ^ 2007年から2009年にかけて琉球大学、名古屋大学、台湾中央研究院らの合同による海底地殻変動観測。 “「スロー地震」世界初確認/琉球海溝で琉大など/「巨大型」発生の可能性”. 沖縄タイムス (沖縄タイムス). (2009年10月9日) 2011年3月19日閲覧。
- ^ 南西諸島の沈み込みに伴い巨大地震が発生するのか? −海底地殻変動観測からの検証 Is the Ryukyu Subduction Zone in Japan coupled or decoupled? -The necessity of seafloor crustal deformation observation (PDF)
- ^ 名古屋大学大学院環境学研究科の古本宗充教授の論文による。“第173回地震予知連絡会(2007年5月14日) 議事概要”. 地震予知連絡会 (2007年5月14日). 2011年4月1日閲覧。
- ^ 宗充, 古本 (2007年5月14日). “東海から琉球にかけての超巨大地震の可能性 (PDF)”. 地震予知連絡会. 2011年4月1日閲覧。
- ^ 宗充, 古本「東海から琉球にかけての超巨大地震の可能性 (PDF)」 、『地震予知連絡会会報』第78巻、地震予知連絡会、2007年8月、 602-605頁、 ISSN 02888408、2011年3月19日閲覧。
- ^ 古本宗充 『日本をゆるがす超巨大地震』 水谷仁、ニュートンプレス、2007年12月。ISBN 978-4-315-51808-5。2011年4月1日閲覧。(Newton別冊 連動して発生する巨大地震)
- ^ 古本, 宗充「M9─超巨大地震:日本の西半分が震源域に!?」、『Newton』第27巻第10号、ニュートンプレス、2007年8月、 ISSN 0286-0651、2011年4月2日閲覧。
- ^ 原子力安全委員会:セグメント区分 (PDF)
- ^ 中村一明、守屋以智雄、松田時彦 『地震と火山の国』 岩波書店、1987年
- ^ 大森房吉(1913), CiNii 大森房吉(1913): 本邦大地震概説, 震災豫防調査會報告, 68(乙), 93-109.
- ^ 萩原尊禮・藤田和夫・山本武夫・松田時彦・大長昭雄『古地震 -歴史資料と活断層からさぐる』東京大学出版会、1982年
- ^ 宇津徳治、嶋悦三、吉井敏尅、山科健一郎『地震の事典』朝倉書店
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