風力発電

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北海道に多い風力発電用風車
Estinnes Wind Farm ベルギー
ダリウス型風力発電機
世界の風速分布、0m/s(濃い青)~14m/s(白)
世界の風力発電の累計導入量(1996-2010年)[1]
世界の風力発電の累計導入量予測[2]
(動画)日本の風力発電

風力発電(ふうりょくはつでん)とはの力(風力)を利用した発電方式である。

目次

概要 [編集]

風力エネルギーは再生可能エネルギーのひとつとして、自然環境の保全、エネルギーセキュリティの確保可能なエネルギー源として認められ、多くの地に風力発電所や風力発電装置が建設されている[3]。開発可能な量だけで人類全体の電力需要を充分に賄える資源量があるとされる。

風力発電の状況 [編集]

世界 [編集]

風力発電は世界的に大規模な実用化が進んでおり、2010年には世界の電力需要量の2.3%、2020年には4.5~11.5%に達すると言われる[4]

2010年末の風力発電の累計導入量は194.4 GWに達し、前年に比べて22%増加した[5]。2010年末時点での累計導入量は、新規設備への投資額は2274億ユーロに達した[5]。特にアジアでの伸びが顕著で、筆頭の中国での導入量は42GWに達している[5]

風力発電機メーカー市場のシェアは2009年時点でデンマークVestas社が12.5%で1位、米国GE Energy社が12.4%で2位、以下中国Sinovelが9.2%、ドイツEnerconが8.5%、中国のGoldwindが7.2%、スペインGamesaが6.7%と続いている[6]

世界累計設置容量(2010年末)[7]
順位 国名 容量(GW)
1 中国 42.3
2 米国 40.2
3 ドイツ 27.2
4 スペイン 20.7
5 インド 13.1
6 イタリア 5.8
7 フランス 5.7
8 英国 5.2
9 カナダ 4.0
10 デンマーク 3.8
- その他 26.5
世界全体 194.4
世界新規設置容量(2010年)[7]
順位 国名 容量(GW)
1 中国 16.5
2 米国 5.12
3 インド 2.14
4 スペイン 1.52
5 ドイツ 1.49
6 フランス 1.09
7 英国 0.96
8 イタリア 0.95
9 カナダ 0.69
10 スウェーデン 0.60
- その他 4.75
世界全体 35.80

欧州 [編集]

2006年の欧州での導入量は2005年に比べ約19%増加し、48027MWに達した。設備全体による年間発電量は約100TWhに達する見込みである。これは2005年のEU全体の電力消費量の3%に相当する。2020年にはEUの全電力需要の13%を風力だけで賄える見込みである[8]。 政策的には、殆どの国が固定価格買い取り制度(FIT)制と呼ばれる制度を軸として普及を進めている(再生可能エネルギー#普及政策参照)。 普及の最も進んでいるデンマークでは既に国全体の電力の2割が風力発電によって賄われ、なおも普及を進めており、2025年には5割以上に増やせるとしている[9]スペインでは2010年に風力発電で電力需要の16.6%を供給し、また電力由来の二酸化炭素排出量の26%を削減した[10]。非化石エネルギーのシェア増加により電力コストが抑えられて隣国フランスよりも安価となり、2010年には8.3TWhを輸出した[11]。また2011年3月には風力発電による月間の発電量が21%を占め、原子力やガス複合火力を抜いて最大の電力供給源となった[11]

米国 [編集]

米国は、以前からカリフォルニア州やテキサス州で大規模な風力発電ファームを建設していたが、2008年5月にエネルギー省(DOE)が2030年までに電力需要の20%に相当する約290GWを風力発電で賄うという目標を立ててからさらに設備が増えた。しかし2010年は金融危機等の影響で市場が前年より縮小し、中国に累計導入量で抜かれた[5]

資源量 [編集]

風力発電は、開発可能な量だけで人類の電力需要を充分に賄える資源量があるとされ、世界全体で実際に発電可能な量の見積もりは文献により異なるが、一説では年間約498000TWh(テラワット時)が発電可能とされる[12]。これは世界全体の電力需要量(14TW)の約4倍に相当する。

日本では電力需要の35GW(ギガワット)程度の資源量が開発可能であると推定されている[3]。 「日本では風況が悪く風力発電に向かない」などとする意見が存在したが、実際には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による風況調査などで設置有望地域が多く存在する可能性が示されている[13][3]。日本での陸上での導入量としては、2030年までに20GW、2050年までに25GWなどの導入シナリオが提示されている[3]。さらに洋上風力発電まで考慮すれば、合計81GW程度まで利用可能と言われる[3]

風力発電所 [編集]

ジャイロミル型発電機
北海道稚内市

風車の型式 [編集]

電力用としては、水平軸のプロペラ型が最も多く用いられている。(風車参照) その他、用途に応じて垂直軸のダリウス型、ジャイロミル型、サボニウス型またはその併用型を用いる場合もある。また直線翼垂直軸型[14]、スクリューマグナス風車(マグナス効果参照)もある。風車以外では、振動板に風を受け、圧電素子で電力を得る方法が研究されている。[15]

ローター径と効率 [編集]

風力原動機はローターの直径が大型化するに伴い効率が向上し、採算性も向上する。地上付近では地面や障害物等による摩擦があり、高所の方がより効率よく風を捉えられるのが大きな理由である。このため発電事業用の風力原動機は大型化する傾向にある。2005年は、世界的に2.5MWクラスが中心であった。2008年には5MWの機種も登場している[16]。 しかしながら、保守の観点から考えるならば、ロータ径が大型化するにつれて、タワーは高くなり、ブレードは長くなることから、点検や補修に困難が生じやすくなる。

発電量はローターの半径の2乗、風速の3乗に比例する。効率は最高59%である(ベッツの法則[17]。1919年、ドイツのアルバート・ベッツにより導き出された。

日本メーカーでは1MWクラスが主流であったが、近年、2〜2.4MWクラスのものが商品化された[18]。また、家庭への普及を狙って小規模の風力原動機を商品開拓する動きもある[19]

工期 [編集]

風力発電機のタワー部分の工事
典型的な風力タービンを組み立てているところ(イギリス)。ギヤボックス (増速機)、シャフト、ブレーキユニットなどが見える。
風力発電機のブレードを設置場所まで運んでいる様子(イギリス)

風力発電機の設置工事に必要な期間(工期)は、規模や環境にもよるが、概して他の発電方式よりも短い。1基では通常3〜4ヶ月とされる[20]。20基程度では10〜11ヶ月、50〜100基程度の大規模な集合型風力発電所でも1〜2年ほどの例がある。 デンマークの沖合6-15kmに2MW基を80基、合計160MWを建設した実例では、現場での建設作業は約半年、製造から含めても約1年半で済んでいる[21]。これは他の大規模集中型発電所(原発地熱発電所など)に比べると格段に短い。これは需要構造の変化への対応や機器の更新を容易にする他、工事期間中の利子も低く抑える効果がある。例えば、下記のような利益が得られる。

  • 集中型発電所では工期が長い分、将来の需要増加の可能性を見越して常に多めに設備を建設しておく必要があり、また一基当たりの容量が大きい分、見込み違いによる無駄も多くなりやすい。しかし風力のような小規模分散型電源を用いる場合は、比較的短期かつ小さい単位での増設や移設が可能である[22]
  • 定期保守や修理に要する期間が短い(さらに多くの場合、個々の設備ごとに時期をずらして行うことが可能である)ため、系全体の稼働可能率をその分高くできる[22]
  • 大規模な集合型風力発電所では、複数の工区に分けて順番に建設・稼働開始させ、意図的に将来の機器の更新時期をずらす場合がある。これによって機器の更新時期でも集合型風力発電所の大部分は稼働を続けることができ、需要の変化などによる財務リスクも抑制できる。また風力発電機は現在でも活発に技術開発が行われており、毎年のように性能が向上した機種が登場している。このため風力発電機を段階的に建設することで、後で着工・稼働開始する工区になるほど、より高性能の機種を導入できる利点がある[23]

ただし、工事に先立って風況調査などにある程度の準備期間が必要になる。また近年の需要急増により、納期が1年を超える例も見られる[24]

保守については、一般に風力発電機は大規模集中型発電所(原発・大型火力など)に比して修理や点検が比較的容易であり、必要な時間も短くできるとされる[22]。 ただし日本の場合は2008年時点で風力発電機の8割程度が輸入品であるため、修理部品などは海外から取り寄せる場合が多くなる。そのため部品が届くまで数ヶ月かかることがある[25]

洋上風力発電所 [編集]

洋上風力発電List of offshore wind farms参照)

洋上風力発電所(コペンハーゲン沖のMiddelgrunden洋上風力発電所
洋上風力発電の累積設備容量推移[26]

海上に風力発電機を設置することを洋上風力発電(オフショア風力発電、海上風力発電、海洋風力発電)と呼ぶ。地形や建物による影響が少なく、より安定した風力発電が可能となる。また立地確保、景観、騒音の問題も緩和できる。2010年末時点で、欧州を中心に3GW以上が導入されている[26]

水深が浅い海域において海底に基礎を建て、大規模なウインドファームを建設する例が各国で見られる[27][28]。元々はデンマークを中心に建設が進められてきたが、近年になって欧州全域に広がる勢いをみせており、特に英国における伸びが著しい。英国政府が掲げるその目標は、2020年までに洋上風力発電設置容量33GW(Round 1,2,3合計)導入目標という壮大なものである。ドイツにおいても、北海における国家プロジェクトAlpha Ventus 60MWを皮切りに、2009年以降の導入加速が見込まれる。日本においても港湾内などにおける建設例が見られ[29]、2010年3月には茨城県にて初の港湾外への設置事例が稼働を開始している[30]

また水深が深い場所のために、独立行政法人海上技術安全研究所IHIMUなどにおいて、浮体式の基礎を用いる方式も研究されている。2009年にノルウェーにおいて、フルスケールとしては世界初の浮体式洋上風力発電施設Hywindが建設さた[31]。沖合いでの洋上風力発電(沖合風力発電)については、電力の陸上への送電が困難であるため、発電した電気で水素を製造し、これを圧縮したり、有機ハイドライドに吸着させる等により輸送することが研究されており、これにより電力変動の問題も解決されることが期待されている[要出典]。また、科学技術政策研究所では、2002年3月に「深海洋上風力発電を利用するメタノール製造に関する提案[32]」を発表しており、沖ノ鳥島周辺、三陸沖太平洋、北海道北西沖日本海などを有望海域として、日本の全エネルギー需要を賄えるほどの大規模なシステムなどを提唱し、その経済性等の試算を行い、実用化が可能であるとしている。

洋上水素製造構想(研究中) [編集]

九州大学の研究者を中心に、海上に巨大な風力発電所を造り、新しいエネルギーとして活用しようという構想の研究会が発足している[33]。 構想によると、海上にはちのす状に浮かべた六角形のコンクリート構造物(一辺300メートル)の上に、従来の2倍以上の風力を得る直径100メートルの風力原動機を設置。送電線は使わず、得られた電力で海水を電気分解して水素を作り、その水素を船で陸に輸送して水素発電や燃料電池に使うというもの。高強度の新素材や効率的な風車、水素貯蔵などの最新技術を組み合わせ、原発1基分に相当する100万キロワット級の発電を低コストで目指している。新素材の耐用年数は100年以上とされ、発電コストは原発の半分以下に抑えられる。六角形の浮体の内部を養殖場にすることで、漁業補償の問題も解決できるとしている。資金の目途が付けば6〜7年で技術確立が可能としている。

空中風力発電(研究中) [編集]

空中風力発電の例

米国、ヨーロッパでは次世代の風力発電として、強くて安定した風が得られる上空に風船などで風力原動機を持ち上げて設置する空中風力発電機英語版(AWT,英語: Airborne wind turbine)などのアイデアが検討されている[34] [35][36][37][38][39]

特性 [編集]

風力発電は従来の集中型電源と様々な点で異なる特性を持つ。

長所 [編集]

主に環境負荷の小ささ、化石燃料の使用量削減、エネルギー安全保障、産業振興・雇用創出などが挙げられる[3][22]

  • 二酸化炭素などの温室効果ガス排出量の低減効果がある。(#温室効果ガス排出量参照)
  • 比較的発電コストが低く、事業化が比較的容易である。(#費用対効果参照)
  • エネルギー自給率の向上が見込める。(#エネルギー収支参照)
  • 小規模分散型の電源であるため、事故や災害など有事の際の影響を最小限に抑え、全体の稼働率を高くできる。(#工期参照)
  • 工期が短く、需要総量の変動に対応しやすい。また投資してから運転開始までの利子も少なく済む。(#工期参照)
  • 運転用燃料を必要としないため、物価変動由来(インフレなど)の事業リスクを減らせる。(#費用対効果参照)
  • 大規模集中型の発電所に比較して、修理やメンテナンスに要する期間を短くできる[22]。(#工期参照)
  • 離島など、燃料の確保や送電コストの高い地域の独立電源として活用できる[3][22]
  • 冷却水を必要としない[22]
  • 小型のものは需要地に隣接して設置可能であり、送電コストの低減に役立つ場合がある[22]
  • 個々の設備が比較的小規模で個人でも運用可能である[22]
  • 風が吹けば夜間を含めいつでも発電が可能である。

短所 [編集]

主に出力電力の不安定・不確実性と、周辺の環境への悪影響の問題があり、特に設置場所の選定が重要となっている。

  • 風力原動機を設置する場所の風況が発電の採算性に大きく影響する。(#事前調査と発電量予測参照)
  • 風速の変動に伴って、出力の電圧や力率が需要と関係なく変動する。(#出力変動参照)
  • 台風サイクロンなどによる強風で、定格を大幅に超える速度で運転すると、風力発電機の破損を招く場合がある。(#強風参照)
  • 周囲に騒音被害を与える恐れがある。(#生活環境(騒音・低周波等)参照)
  • 現時点ではコスト面で法的助成措置を必要とする場合が多い。また、系統の拡張などにある程度の追加費用を要するとされる。(#費用対効果参照)
  • ブレードに鳥が巻き込まれて死傷する場合がある。(#鳥類への影響参照)大きい風力発電の場合
  • 落雷などで故障したり、事故の原因になる場合がある。(#事故参照)
  • 風車は年々、タワーは高く、ブレードは長くなる傾向にあり、それに伴い点検や補修に係るコストを増大させる(#ローター径と効率参照)
  • 風量によっては余剰電力を増大させる。
  • 景観が威圧的で、人によっては恐怖心、不気味さを与える。
  • 地震によって発電停止することがある[40]

導入規模の効果 [編集]

小型風力発電機の例
街路灯の頂上に設置し太陽光発電と併用

風力発電は小規模分散電源であり、導入規模や範囲が増すほど全体的な信頼性と安定性が高まり、発電コストも低減する。

  • 風力発電設備は普及クラスのものであれば、稼働可能率[41]自体は非常に高くすることが可能であり、稼働可能率95%以上の例も多数報告されている。これは一般にメンテナンス等に要する時間が短いことによる。たとえ個々の風車の稼働可能率が低くても、導入数の増加や他の分散型電源との併用により、全体でみた稼働可能率は100%に近づく。これに対して一般的な大規模集中型発電所では、1990年頃の米国の例では原子力73%、化石燃料火力発電所の平均で85%、水力でも91%程度と報告されている([22]P242)。
  • 風力発電設備が稼働不可になる要因としては、風速不足を除くと落雷、故障、定期保守、系統の故障、などがある。英国における一例では、それぞれ原因の48%、37%、13%、2%を占めたと報告されている([22]P241)。風力は変動するため、個々の風車の稼働率は通常40%以下となる。
  • 異なる場所に分散して設置された風車同士は、距離が離れるに従って、出力変動の相関性が低くなる。特に速い(高い周波数の)変動においてこの傾向は顕著となり、合計の出力がある程度平滑される[42]。このため出力の平準化には、分散配置が有効とされる。ただし、完全に変動が無くなるわけではない。
  • 大規模化と分散配置により、大きな変動は残るものの、全体でみた変化の速度が遅くなり、電力網によるサポートがより容易となる。オランダ内の海岸沿いの6地域でを対象とした調査では、数時間程度の間隔で出力に大きな変動が見られるが、100万kW規模の変動が起こる確率は、その規模の火力発電設備が強制停止される頻度と同程度であると報告されている[22]
  • 小規模な導入量では、出力変動への対策コストは必要以上に高く算出される[43]
  • 系統連系する際に許容できる導入量の見積もりは、シミュレーションの前提条件の小さな違いで大きく異なる結果となる。このため変動の許容量を必要以上に小さく見積もっている例も散見される[44]

寿命 [編集]

大型機における原動機部分の寿命は通常20年程度[45][46]とされる(機種や条件によっては30年とする場合もある)。設計寿命は主に耐久性とコストのバランスで決定される。基礎部分の寿命は50年程度で設計し、2世代に亘って利用することが可能である。なお日本では減価償却資産の耐用年数が17年[47]とされることからこれを寿命の代わりに用いて計算する場合があるが、その分発電コストを5%程度高く見積もることになる。

寿命を迎えた原動機については、集中型発電所に比べ、更新で一度に止める風車の数が少なく工期も短いため、発電所全体の稼働状況に与える影響は少ないとされる。また風力発電技術は現在も改良が続いているため、より高性能な機種へ更新して競争力を高めたり、需要構造等の変化へ対応する観点からは、更新サイクルがある程度短い方がメリットがあるとされる[要出典]

温室効果ガス排出量 [編集]

風力発電の発電量当たりの温室効果ガス(GEG)排出量は小さく、日本では25〜34g-CO2/kWhなどの計算例がある[48](g-CO2/kWhはライフサイクル中に排出される温室効果ガス(GEG)を二酸化炭素(CO2)に換算し、発電量あたりに直した値)。この値は設置地点毎の風況や風車の性能に左右される。近年の大型で高性能な風車ならば、10g-CO2/kWhを切る場合もあるとされる[49]。設置効果は750kW機1基が500エーカー(約2平方km)の森林に相当するとも言われる[50]

日本の電力の平均GEG排出量は 約346g-CO2/kWh(発受電端、2001年)と計算されている。例えば寿命20年でGEG排出量が25g-CO2/kWhの場合、CO2ペイバックタイム(CO2的に「元が取れる」までの利用期間、CO2PT)は 20×(25/346)=1.45年 となる。10g-CO2/kWhならば約7ヶ月である。

エネルギー収支 [編集]

「生産から設置・運用〜廃棄に至るまでのライフサイクル中に投入するエネルギー」を「風力により生み出すエネルギーによって節約できる」までの時間をエネルギーペイバックタイム(EPT)、また寿命との比をエネルギー収支比(EPR)という。原動機の性能および設置場所の風況に大きく左右されるが、通常EPTは数ヶ月程度[51][52][48]とされる。またエネルギー収支比は38〜54とも見積もられている[48]。大型化などの技術改良のほか、リサイクルや基礎部の再利用等によって今後も改善が見込まれている。

費用対効果 [編集]

風力発電は、水力発電に次いで再生可能エネルギーの中では採算性が高く、「2500-5000kw級の大口径風車・電池コストを考えないならば」天然ガス価格百万Btuあたり10-20ドルでは、天然ガス火力や原子力と競争可能なコストまで下がっている。(但し、米国ではシェールガス乱掘でガス価格が5ドルに下がったために、2013年現在では 再びガス火力が有利になっている)。 但し、導入に際しての「幹線送電線までのアクセス送電線建設コスト」「電池コスト」を補うために、直接・間接的な支援を行う国が多い。

ドイツは開発適地の枯渇とともに頭打ちになったが、中国と米国が急速に設備容量を増やして、両国とも風力発電量は日本における水力発電の設備容量1000億kwhを追い抜いており、米国のグリーンニューデイールを支えている

また、ドイツで始まった「固定価格買取制度」は風力発電会社の収入を安定化させて、風力発電会社の社債を、投資可能な格付けの金融商品に育て上げるのに成功した。老人が 預金から、より利率の良い風力発電投資信託にシフトすることで、風力発電建設が急速に進み、経済成長に寄与した。 (但し、風力資源未開発地が枯渇するにつれ、ドイツ政府は、2013年時点で、風力より2-3倍コストが掛かる収益性の悪い太陽電池を、政治的イデオロギーのために時期尚早に「固定価格買取制度」の対象としたために、天然ガス価格上昇とともに、ドイツの家庭電気料金が3倍に跳ね上がる原因となってしまった)

大規模に導入しているデンマークにおいては、風力発電の経費は過去20年間で80%以上削減され、通常電力と競争可能な水準まで低下した[53]。温暖化対策費まで考慮すると、欧州における風力は石炭火力より発電経費が一桁少ないとする試算もある[54]。なお、近年の資材の高騰により、装置価格の増加も報告されている[55]

風力発電は一度設置してしまえば、その後は、化石燃料の価格変動による影響がほぼ保守費用などに限られるため、その分事業が安定化する利点がある[22]

火力発電を減らして風力発電で代替するにあたっては、出力変動などの対策、および、送電網の拡張や予備発電設備容量の確保等が必要となる[55][56]。一般的には、程度の導入割合までは、その追加費用が実用的な範囲で済むとされる(例:[55][57][58])。欧州では域内での風力発電などの増加に対応した系統の拡張が検討されている[59]

日本における単純な(温暖化対策費などの費用を含めない)単位発電量あたりの費用は、2001年の時点で10〜24円/kWhとされ、国内でも条件が良ければ実用水準の9~13円/kwhに達する施設もいくつかある。但し、一般的に欧米の風車が2500-5000kwの大口径で効率がいいのに、日本の風車は業者の資金不足や長尺プレード陸上輸送の困難もあって、2013年現在においても400-1500kwの中小口径が多く効率が悪いのと、(円高のため)台風や落雷を想定してない欧州製の風車を購入して、台風や落雷による故障で赤字になった失敗ケースがイメージを悪くしている。

2013年現在、円安政策で火力に対して風力が有利になり、日本の台風や落雷を前提に設計された国産風車が輸入風車に比べて 以前より割安になることで、日本の風力発電は 欧米に対する建設や大口径化の遅れを取り戻す事が期待されている。

2015年度に、日本一の風力発電施設となる見通しの風力発電を手がける、中部電力の設備子会社シーテックと伊賀、津両市出資の第3セクター青山高原ウインドファームの発表によれば、40基で計8万kWの発電能力を有する風力発電用風車と変電所の建設総費用は、約200億円と見込まれている。

課題 [編集]

諸課題の中でも(出力変動、強風対策などの)技術的課題については、性能や安全性の向上を狙った開発競争の焦点となっている。従来問題点とされてきた点の多くは技術的に対処が可能とされる。

近年は日本の企業や研究機関により日本の環境に適した風車の開発も活発に行われている。

生活環境(騒音・低周波等) [編集]

風力発電の課題のひとつに騒音対策・低周波対策がある[60]

人家に近接して設置された場合に、近隣住民がめまい・動悸・耳鳴りなどの違和感を訴える例が出てきた。ブレードやタービン部が出す風切り音などの騒音低周波振動[脚注 1]が原因だろうと指摘されるようになった。

住宅に近接して設置された風車から発生して、近隣住民が苦情や健康被害を申し立て、環境省が調査に乗り出した[61]こともある。

騒音・低周波などが報道などで知られるようになり、設置計画に対して予定地の住民の反対運動がおきる例も出た。

かくして騒音や低周波の対策が研究され、対策が検討されたり、それが具体的に打たれるようになった。また法制度的にも環境アセスメント対象事業への追加が2009年検討された。

技術的な改善策の1つが、ブレードの断面の改良である。昔の風車では航空機用の翼断面を用いていたため、翼端周速が100〜120m/sに達し、騒音を大きくする要因となっていた。この翼端周速は風車専用の翼断面(厚翼)を用いることで大幅に低下し、現在は大型機でも60m/s程度となっている。さらに、多極式発電機の採用によるギアレス化(ギアノイズを排除)、ダウンウインド型からアップウインド型への移行(タワー下流の乱れた気流を横切る音を排除)などの対策により、騒音は200m〜300m程度離れれば周囲の風音と区別がつかない水準(または「冷蔵庫程度の騒音」)にまで減少する[62]

2010年3月29日、環境省は愛知県田原市で風力発電設備から350m離れた住居内で160から200Hzを特徴とする騒音と低周波音が測定され、愛媛県伊方町では約210mと240m離れた2つの住居内もでそれぞれ31.5Hzと160から200Hzが測定されたと発表した[63]。また同じく2010年10月7日には「騒音・低周波音の実態把握調査」を発表し、出力20kWを越える40都道府県の186事業者からアンケート結果を得て、苦情継続25件、苦情終結39件、計64か所で騒音や低周波音の苦情があったと発表した。苦情継続25件のうち風力発電施設から至近の住宅までの距離が「300mから400m未満」で8件(32%)と最も多く、「200m超300m未満」、「500m超600m未満」、「700m超800m未満」でそれぞれ4か所(各16%)、であった[64]

風力発電装置は民家からできるだけはなれたところに設置することが望ましいとされており、計画段階からそれに注意したほうがよい、とされる[60]

鳥類への影響 [編集]

Lattis構造のタワーが林立する古いウインドファーム(カリフォルニア、テハチャピ山地)。横桁に留まろうとして鳥類が誘引され被害に遭う。
一般的な円柱状タワーを用いた風力発電所(オトンルイ風力発電所幌延町

鳥類レッドリストに該当するイヌワシクマタカオオタカフクロウノスリなどの希少猛禽類の幼鳥が、風力発電のブレード(回転羽根)に衝突(バードストライク)して死亡するケースがある。衝突死の多くは鳥が風車の回転範囲を通り抜けようとして、回転翼を避けずに体が切断されることにより生じる。一説にはモーションスミア現象によって高速の羽根が見えず、反対側の景色が透けて見えるため鳥が気づかないためといわれている。鳥類の目は人間に比べモーションスミアが起こりやすいという実験結果が出ている。鳥類は生息地の喪失、繁殖の妨害、採餌地の喪失、などの影響も受けているが、バードストライクは鳥の大群が通るルートの地域で多数発生していることがわかっている。設置する場所や形態の選定さえ適切ならば、通常の送電線以下の危険性しか及ぼさないとの報告もある(クローネ (Krone) 他)[65]。米国での年間平均バードストライク数は大型風車1基につき2.19羽(2001年)ドイツでは同0.5羽である(すべて狐などによる死骸持ち去り数を調整済み)。米国でのバードストライク総数は年間約10億羽であるが、風車によるものは0.01%であり、窓ガラスなどに比べてきわめて低い数字である。英国王立鳥類保護協会も「適切に設置された風力発電所は、鳥類に大きな脅威を及ぼさないと考える」と表明している[66]。スペインの影響調査では風車設置場所を飛行する鳥類の死亡率は0.1〜0.2%と報告されている。しかし、日本では風力発電は環境影響評価法(環境アセスメント法)の適用外であるため、事前の調査も事業者の自主努力に頼っている状態であり、不十分な環境影響評価も多い。また、事前調査では文献や他の事例を引用した定性的な予測になりがちで、評価を正確に行うことが難しい。精度の高いデータにもとづく評価は風車設置後の事後調査でしか得られないことが多い。そのため都道府県によっては独自の条例により環境基準を設けているところもある(バードストライク#風力発電施設参照)。

技術的には、下記のような対策が考慮される。

  • 予め設置地域の鳥類の生息状況を調べ、影響の少ない設置場所や形式を選定する。
  • 渡り鳥の接近をレーダーによって探知し、事前に回転翼を止めておく。
  • 風車付近での猛禽類の採餌行為を無くすため、周囲にテープや案山子を配置する[67]
  • 同じ発電量でも、ブレードの回転速度が遅くなるように設計する(翼断面や発電機によって決まる。#騒音参照)
  • タワー(支柱)に鳥が留まらないよう、横桁や出っ張りをなくした円柱状の設計とする。
  • 視認しやすい白色で塗装する。但し、目立たない色に塗装するという景観への配慮と矛盾する可能性がある。
  • フラッシュ光により警戒を促す。但し、景観問題への配慮が必要となる。
  • つば付きディフューザ風車や風レンズ風車のように、視認しやすい物を付ける。
  • 風車部分をネットで覆う。

他に渡り鳥の飛行ルートへの悪影響についても懸念されており[68][69]、渡りの重要なルートへの設置は避ける必要がある。

両生類、魚類、昆虫への影響 [編集]

陸上風車の建設工事で生じる土地改変(森林伐採など)により流出する土砂が下流域を汚染する場合がある。特にサンショウウオなど希少動物は生息する源流の汚濁に敏感なため、悪影響が心配されている。洋上風車の場合も工事中に伴う海水の濁りなど、周辺環境への影響を完全に除くことは難しい。

景観 [編集]

風力発電機の設置に当たっては、自然景観への影響が問題になる場合もある。例えば風光明媚な観光地などでは、風力発電機の設置によって景観が変わるために反対された。また、青山高原ウインドファーム青山高原全体で34基)やせと風の丘パークのように、建設に伴った樹木伐採や大型風車の乱立による景観の悪化から観光資源が減少する声がある。一方、大型風車が林立する雄大な光景を新たな観光資源とする動きもある。例えば北海道幌延町の風力発電所(28基)はツーリングするライダーに人気がある。

また環境省は風力発電を積極的に推進すべきものと位置付ける一方、自然公園への立地に関しては風力発電施設設置のあり方に関する検討会[70]を設けるなどして審査基準の検討を行い、現時点では予防的立場から概して慎重な姿勢を取っている。これに関してはパブリックコメントなどで規制緩和を求める意見も多く寄せられるなど、諸外国同様、議論の余地を常に残している。公的な設置基準としては、2004年春に自然公園法施行規則が一部改正され、同年4月1日より施行されている[71]

米国と英国でのウインドファーム建設直後と1年後の周辺住民への意識調査ではいずれも、2回目が景観と騒音での反対が少なくなっている[67]

出力変動 [編集]

風力発電の出力は昼夜問わず不随意に変動するため、需要への追従は基本的に他の調整力に富んだ電源(火力発電、貯水式水力発電など)に頼ることになる。また風力発電所の側でも、ある程度の出力の平滑化や負荷追従を行う場合があるほか、近年は発電量の予測技術も用いられている。一般的には、発電量の10%程度までは大きな問題にならないが、20%を超えると追加コストが目立って増えると言われている[72]。スペインと周辺国間では電力取引所での取引を用いた輸出入によって変動の一部を調整する例[73][74]が見られる。

短時間の変動 [編集]

風力発電は風速の変動に従って出力が需要と無関係に変動し、電圧や力率の変動をもたらす。この変動は一般に太陽光発電に比べても大きい。特に導入量が小規模の場合は高い周波数成分を含む変動が多くなる。しかし大規模に導入した場合、変動は大幅に緩和され、系統側の負担が小さくなる(#導入規模の影響参照)。実際、デンマーク、ドイツ北部、スペインなどにおいて、信頼性を犠牲にせずに電力供給量の20-40%を風力で賄えることが実証されている[75][76][77]。また既存の系統に風力発電を追加する場合、新たなバックアップ電源を付加する必要は無いとされる[78]。ただし系統容量に占める風力発電の割合が大きい場合は、ある程度の蓄電設備を加えることで系統全体で見た発電コストを低減できる場合もあるとされ、検討や実験が進められている[79]。こうした対策にはコストもかかるが、ある程度の導入割合までは実用的な範囲とされる(#コスト参照)。

個々の風車やWF単位で出力を平滑化するには、下記の対策が有効とされる。

  • 大型のブレード自体の慣性力を利用する。風の強い時に回転数を動的に上げて運動エネルギーを蓄え、風が弱くなった時に利用することで、発電機の出力を平滑化する。
  • 一部の風車を調整力としてリザーブし、適宜解列などを行うことでWF全体の出力を平滑化する。
  • 電力を一時的に蓄電池に貯蔵する。
  • 系統連系部(インバータなど)に力率の調整能力を付与する。
  • フライホイールによる慣性回転や油圧・ガス圧・空気圧(圧縮空気)による蓄圧によってエネルギーを貯蔵する。例えば圧縮空気を用いた研究例では、15%のコストの追加で稼働率を34%から93%に引き上げられるという報告がある[80]
  • 局地的な気象解析を行い、リアルタイムで発電量を予測する(#発電量予測参照)。

この他、風力発電で得られた電力から水素を製造する手法も研究されている[81]

長時間の出力変動 [編集]

風力発電の導入価値は、風の強い時間帯(季節)と電力需要の多い時間帯(季節)が重なる場合に相対的に大きくなる。一般には、夜間や冬期の暖房需要の多い場合には他の電源に比較して特に導入価値が高くなる。マッチしない場合(他電源による夜間電力が既に余っている場合など)にはその分価値が低くなる。また需要に対して発電量が不足する場合は、他の電源に頼ることになる。

強風 [編集]

宮古島西平安名岬の風車は2007年に復旧

風力発電機の最大の敵は強すぎる風である。風力発電機には定格風速があり、定格を大幅に超える速度で運転すると原動機の焼損やブレードの破損などを招く場合がある。そのため風速が過大な場合は、保護のために速度を抑制するか、場合によっては一時的に発電を停止する。支柱ごと倒して強風をやり過ごすものもあるが少数である。

  • ヨーロッパなど高緯度で使用されている風力発電は、その地域的な特徴(高緯度、内陸)から、台風サイクロンなどの熱帯低気圧による暴風雨の影響を受けない場合が多い。
  • インドなど中緯度以下の地域では、暴風雨にさらされることがある。たとえば、2003年9月11日の台風では、宮古島にあった7基の風力発電機を壊滅させた。これは最大瞬間風速が近辺の観測値で74.1m/sに達し、国際規格(IEC61400-1)の最高クラスの規定値(70m/s)をも超えたためである[82]
  • 欧州など風力発電機の普及が比較的進んでいる地域に比較すると、日本では台風は風の乱れ、落雷などの自然条件において、IECなどの国際規格を上回る耐性が求められる場合がある[82]。これに対応したガイドラインの策定がNEDOによって進められている[83]

強風や変動に対しては、下記のような対策が用いられる。

  • ブレードの角度(ピッチ)を変えて速度を抑制(フェザーリング)
  • ブレードまたは風力原動機全体を風に対して傾ける
  • 風車と発電機を一時的に切り離す
  • 設備全体(ポールなど)を物理的に強化
  • 騒音対策を施した上で、ダウンウインド型を採用する[84]。もしくは、強風時のみ風下にブレードを向ける[85]
  • 強風に耐えうる型式の風力原動機を採用
  • 設置地域の風況の事前調査の強化

用地確保 [編集]

陸上設置の場合は、風力発電機は1MWp(1000kwp)あたり50エーカー(約20ヘクタール)ほどの面積を必要とする。ただし風車そのものが占有する面積は主に支柱であるため5%以下であり、畑や牧草地など、高さを必要としない利用が行われる場所に設置すれば土地の確保の問題は小さくなる[72]。風量発電が一般的になり、風車公害の可能性もテレビ番組などで紹介され認知されるようになったので、近隣に人家がある場合は設置への反対運動が起きることがある。周辺地域と比較して高所に設置する場合には、立地点の整備や資材運搬、運用時のメンテナンスのために林道を造成する必要があり、それに伴う樹木の伐採が問題視される場合がある。

もっとも、近年は陸上に設置しない洋上風力発電も検討されつつあり、その場合は陸上設置にともなう諸問題は解消する。

事前調査と発電量予測 [編集]

風力発電の事業化にあたっては、事前の風況の調査が重要である。風は不随意に変動するが、その変動量や変動速度、平均強度などは確率的に取り扱うことが可能である。風力発電の発電量もまた、確率・統計的に取り扱うことができる。このため事前にある程度の量のデータを集めておくことにより、相応の確度で風況や発電量の予測を行うことができる。

日本ではNEDO等による風況調査の実施や予測技術の開発、実績データの蓄積により、事前に長期間の発電量予測が可能になっている。また実際に設置するにあたっては、測定用風車を用いた実測や、周辺地形に基づいたシミュレーションも利用される。年間総発電量の年ごとのばらつきは、10〜15年間に亘る調査により±2〜10%程度と報告されており、風況調査を充分に行えば、長期間でみた風況由来のリスクは事業上問題にならないことが多い(#参考文献の清水、飯田参照)。

近年では計算機を用いた局地気象解析技術により、短時間の変動についてもある程度の発電量の予測が可能になっている[86][87]。既に商用サービスも開始されている[88][89][90]。近年は一定規模以上の発電事業者に対し、発電量の予測を義務づける国もある(固定価格買い取り制度#併用される制度参照)。

逆に風況調査に不備のある場合、当初見込みよりも発電量が少なく、赤字となる場合がある。有名な例ではつくば市早稲田大学に委託して小学校などに3億円をかけて設置した風車の発電量が事前の風況予測が甘かったのが原因で予想より大幅に少なかった問題があり訴訟に発展した[91]。 発電量が予測を下回ったなどの事情で稼働継続に値しない状況になった場合やより高性能な機種に置き換える場合などは、地中に打ち込んだ[92]部分の移動は難しいが、上部の風力原動機は基本的に移設や転売が可能である。近年は欧州などで風力発電機の中古市場も拡大している[93]

事故 [編集]

風力発電機も他の発電方式同様、事故と無縁ではない。構造物の破損や運用・保守作業中のミスなどにより、下記のような事故の例が見られる。

  • ブレードが折損し、回転の勢いで飛散する。[94]。周囲の建造物等に被害を与えることもある[95]
  • 風力原動機の火災[96]
  • タワーの破損・倒壊[97]

こうした事故の背景として、機械的強度を十分にテストしないままに発電塔を巨大化したのが原因ではないかという指摘もなされている[94]

  • 米国での調査によると1972から2008年10月までの人の死傷を伴う風力発電機の事故発生数は75件であった[98]
  • 日本ではメンテナンス中の作業ミスにより風車が過回転状態になり、倒壊した事例などが報告されている[99]

電波障害? [編集]

風力発電の風車が立てられ始めた頃から、電波障害への懸念が相当数存在していたが実際にはそれほどの苦情は発生していない。電波障害となる要因には遮蔽障害と反射障害が考えられ、それぞれが回転翼部分と静止しているタワーとその先端のナセル部分が影響する可能性がある。21世紀現在の回転翼は全て繊維強化樹脂製であり電波に対して有意な影響を与えないと考えられるため、TV送信塔と住宅との間に設置しない事やナセル筐体の反射を低減する等のナセルとタワーの影響を事前に確認することで解決できる。また、ナセル内の発電機や付随する電力機器類からの電波ノイズの防止と遮蔽も考慮されなければならない[67]

リサイクル [編集]

風力発電機のリサイクル技術は数が多くないこともあり開発途上である[100]。鉄などの金属類はリサイクルされる[101]が、ブレードで一般的に用いられる繊維強化プラスチックについてはリサイクル技術が普及しておらず、焼却などで処分される。使用済みのブレードからガラス繊維をリサイクルする技術は開発されている[102]

日本 [編集]

開発・普及状況 [編集]

国内最大級の郡山布引高原風力発電所33基の風車の合計出力65980kw

日本では欧米諸国に比して普及が進んでいない。理由として、台風に耐えうる風車を施設すると欧米と比較してコストが上がることや、大量の風車を設置できるだけの平地の確保が困難なこと、元々日本ではクリーンエネルギーとして太陽光発電を重視してきた歴史があることなどが挙げられる。また、日本はフランス同様に原子力発電への依存度がすでに大きいために風力への依存傾向は弱く、対照的にアメリカやドイツは原子力発電所の新設を政策的に停止しているため風力発電への依存度を増している。

日本の電力会社は風力発電事業に消極的であるが、自治体による「自治体風車」や市民グル-プによる「市民風車」等のプロジェクトの取り組みが進んでいる。[103]

日本国内の風力発電(出力10kW以上)の累計導入量は2007年3月時点で約1400基、総設備容量は約168万kWであり[104]、発電量は標準的な原発(100万kW前後)の数分の1である。2007年度は前年度に比べて導入量が半分以下に落ち込んでいる。1基あたりの出力を見ると、2007年度では設備容量1MW以上の機種が大部分を占めるようになった[105]。主要な風力発電会社は、ユーラスエナジーホールディングス(旧トーメンパワーホールディングス)(東京電力豊田通商の合弁)、日本風力開発電源開発エコ・パワーコスモ石油の子会社)、ガスアンドパワー大阪ガスの子会社)、クリーンエナジーファクトリーなどである。海外機の独擅場であった2MW以上の大型機については、国産機の開発も進んでいる[106]。風力発電設備の大部分は輸入品であり、2007年度の国産機の割合は設備容量ベースで16%[107]、基数ベースでも23%である[108]

日本の風力発電所一覧 [編集]

発電所名 所在地 出力 事業者
宗谷岬ウィンドファーム 北海道稚内市 57,000kW ユーラスエナジー
さらきとまないウインドファーム 14,850kW 電源開発
オロロンウィンドファーム 北海道小平町 03,000kW クリーンエナジーファクトリー
花咲風力発電所 北海道根室市 01,500kW クリーンエナジーファクトリー
昆布盛ウインドファーム 10,000kW クリーンエナジーファクトリー
苫前ウィンビラ発電所 北海道苫前町 30,600kW 電源開発
島牧ウインドファーム 北海道島牧村 04,500kW 電源開発
瀬棚臨海風力発電所 北海道せたな町 12,000kW 電源開発
むつ小川原ウィンドファーム 青森県六ヶ所村 31,500kW エコ・パワー
岩屋ウィンドパーク 青森県東通村 27,000kW エコ・パワー
グリーンパワーくずまき風力発電所 岩手県葛巻町 21,000kW 電源開発
釜石広域ウインドファーム 岩手県釜石市遠野市大槌町 42,900kW ユーラスエナジー
秋田新屋ウィンドファーム 秋田県秋田市 06,000kW エコ・パワー
田代平風力発電所 秋田県鹿角市 07,650kW ユーラスエナジー
仁賀保高原風力発電所 秋田県にかほ市 24,750kW 電源開発
能代風力発電所 秋田県能代市 14,400kW 東北自然エネルギー開発
サミットウインドパワー酒田発電所 山形県酒田市 16,000kW サミットウインドパワー
郡山布引高原風力発電所 福島県郡山市 65,980kW 電源開発
桧山高原風力発電所 福島県田村市川内村 28,000kW 電源開発
ウインド・パワーつくば風力発電所 茨城県つくば市 02,000kW 小松﨑都市開発
サミットウインドパワー鹿嶋発電所 茨城県鹿嶋市 20,000kW サミットウインドパワー
波崎ウインドファーム 茨城県神栖市 15,000kW エコ・パワー
波崎風力発電所 01,200kW エコ・パワー
神栖風力発電所 10,000kW ミツウロコグリーンエネルギー
ウインド・パワーかみす第1洋上風力発電所 14,000kW ウインド・パワー・いばらき
ウインド・パワーかみす第2洋上風力発電所 16,000kW ウインド・パワー
ウインド・パワーはさき風力発電所 02,000kW 小松﨑都市開発
ウインド・パワー日立化成風力発電所 02,000kW 小松﨑都市開発
鹿島石油風力発電所 01,800kW 鹿島石油
銚子ウィンドファーム 千葉県銚子市 10,500kW エコ・パワー
東京臨海風力発電所(東京風ぐるま) 東京都中央防波堤内側埋立地 01,700kW 電源開発
八丈島地熱・風力発電所 東京都八丈島 00500kW 東京電力
横浜市風力発電所(ハマウィング) 神奈川県横浜市 01,980kW 横浜市
扇島風力発電所 神奈川県川崎市 01,990kW JX日鉱日石エネルギー
三浦ウィンドパーク(宮川公園内)[109] 神奈川県三浦市 01,200kW 三浦ウィンドパーク
あわら北潟風力発電所 福井県あわら市 20,000kW 電源開発
磐田ウィンドファーム 静岡県磐田市 15,000kW エコ・パワー
石廊崎風力発電所 静岡県南伊豆町 34,000kW 電源開発
伊豆熱川ウインドファーム 静岡県東伊豆町 15,000kW クリーンエナジーファクトリー
落居ウインドファーム 静岡県牧之原市 09,500kW 白川電気土木
御前崎風力発電所 静岡県御前崎市 22,000kW 中部電力
風電君(中島浄化センター内)[110] 静岡県静岡市駿河区 01,500kW 静岡市
新舞子マリンパーク風力発電所 愛知県知多市 01,700kW 知多市
田原臨海風力発電所 愛知県田原市 22,000kW 電源開発
田原風力発電所 01,980kW 電源開発
青山高原ウインドファーム 三重県津市 15,000kW 青山高原ウインドファーム
太鼓山風力発電所 京都府伊根町 04,500kW 京都府
五色風力発電所 兵庫県洲本市 01,500kW クリーンエネルギー五色
南あわじウインドファーム 兵庫県南あわじ市 37,500kW クリーンエナジーファクトリー
新出雲風力発電所 島根県出雲市 78,000kW ユーラスエナジー
キララトゥーリマキ風力発電所 01,700kW 出雲市
江津東ウインドファーム風力発電所 島根県江津市 22,000kW 江津ウィンドパワー
江津高野山風力発電所 20,700kW 島根県
楊貴妃の里ウインドパーク 山口県長門市 04,500kW 電源開発
大川原ウインドファーム 徳島県徳島市 19,500kW 大川原ウインドファーム
瀬戸ウインドヒル発電所 愛媛県伊方町 11,000kW 瀬戸ウィンドヒル
伊方ウィンドファーム 18,000kW 伊方エコ・パーク
佐田岬風力発電所 09,000kW 大和エネルギー
大豊町風力発電所 高知県大豊町 01,200kW 高知県
葉山風力発電所 高知県津野町 20,000kW 葉山風力発電所
檮原町風力発電所 高知県檮原町 01,200kW 檮原町
大月ウィンドファーム 高知県大月町 12,000kW グリーンパワーインベストメント
長崎鹿町ウィンドファーム 長崎県佐世保市 15,000kW 電源開発
愛野風力発電所 長崎県雲仙市 01,500kW ウインドテラ発電所
阿蘇にしはらウィンドファーム 熊本県阿蘇郡西原村 17,500kW 電源開発
阿蘇おぐにウィンドファーム 熊本県阿蘇郡小国町 08,500kW 電源開発
牟礼ヶ岡ウインドファーム 鹿児島県鹿児島市 10,400kW 南九州クリーンエネルギー
長島風力発電所 鹿児島県出水郡長島町 50,400kW 長島ウインドヒル
野間岬ウインドパーク発電所 鹿児島県南さつま市 03,000kW 九州電力
甑島風力発電所 鹿児島県薩摩川内市 00250kW 九州電力
南大隅ウインドファーム 鹿児島県南大隅町 26,000kW 電源開発
宮古島風力発電所 沖縄県宮古島市 02,900kW 沖縄電力
実験終了・退役等

ギャラリー [編集]

政策・導入目標量 [編集]

2001年6月の経済産業省の調査会による「新エネルギー部会報告書」では2010年度までの導入設備容量目標を300万kWと定め、環境省も2002年3月発表の「地球温暖化推進大綱」で2010年度までの目標を300万kWとしたが共に達成が難しく、各種規制の見直しや漁業権が設置障害にならない沖合い数十キロの水深の深い場所にも設置できる浮体式洋上風力発電の技術開発を急ぐべきとの意見も出された。また、RPS法の導入目標数値の増大も検討された。

日本国内の大型風力発電機メーカーには内外での需要増加に対応して増産し、輸出も積極的に行う例が見られる[111]。業界団体では、2020年には760万kW(うち洋上は140万kW)、2030年には1180万kW(うち洋上は560万kW)が導入可能としている[112]。また、今後の技術開発をより積極的に取り入れた値としては、2030年に2000万kW(陸上700万kW、洋上1300万kW)の目標が検討されている[113]

政策的課題 [編集]

再生可能エネルギーの買取制度 [編集]

水力発電以外の再生可能エネルギーは、既存の火力発電原子力発電に比べて普及量が桁違いに少なく、価格的競争力で不利なことなどから、何らかの形での助成や炭素税の導入などの施策を必要とする(再生可能エネルギー#普及政策参照)。

日本の現行制度(RPS法)は、電力会社に一定比率での導入を義務付ける方式であり、固定枠(quotaまたはgreen certificate trading)制に分類される。この方式は導入初期には一定の効果を示すが、各国での実績では発電事業者側のリスクが高く、実質的な発電コストの削減効果も低いなどの欠点が指摘されている[114][115]。このため風況が良いとされるイギリスなどでも普及が進まず、コストも高止まりするなど、結果的に初期の目的を達成できていない[116]。また、日本の現行制度下では電力会社が電力調達コスト的に有利な自社既存電源を優先して風力発電電力購入に消極的な姿勢も見せたり[117]、風力発電事業者の参入機会が電力会社が設定した枠や不定期な入札によって制限されるなどの問題が指摘されてきた[118]。2008年に九州電力が導入枠の拡大を表明した[119]

これに対し、採用が増えている固定価格買い取り制度(FIT制度)では電力会社に電力の買い取りを義務付け、購入価格を法的に保証することで発電事業者の負うリスクを減らす。市場原理に従って導入量を早期に拡大する一方、遅く設置した事業者ほど購入価格を逓減させて総コストを調整し、機器製造事業者間での競争を促す。過去の実績から他方式に対して導入促進とコスト削減効果が高いとされ[120]、現在では欧州の多くの国々が採用している[121]。このため日本でもその導入や検討を求める意見が市民団体などから提出[要出典]されてきた[122][123]。各政党や行政も動き、2009年に太陽光発電に対して新たな買取制度[124]が導入されたのに続き、風力発電を含む他の再生可能エネルギーでも導入が検討されている[125]固定価格買い取り制度#日本における状況参照)。

補助金依存の問題 [編集]

日本の風力発電はエネルギー対策特別会計からの補助金を元に推進されてきたが、2010年時点でその6割が赤字である[126]。直接的な原因は落雷による施設破壊や風量不足による稼働率の低さにあるが、国の補助を当てにした開発企業や自治体側のコスト意識の薄さ、国の審査の形骸化が背景にある。

こうした現状に対して政府の行政刷新会議は補助金が有効に活用されていないとの見解を示し、予算の削減を求めた[127]

風車の地図記号

その他 [編集]

2006年1月に地図記号の1つとして風力発電所が追加された。[128]

偏西風を活用するバルーン風力発電もある。[129]

外部リンク [編集]

業界団体
世界
Global Wind Energy Council(GWEC) 公式
World Wind Energy Association WWEA
欧州
European Wind Energy Association](EWEA) 公式
米国
American Wind Energy Association](AWEA) 公式
日本
日本風力発電協会(JWPA) 公式
学会
日本
日本風力エネルギー学会(JWEA) 公式
団体
製造企業
大型風車
小型風車

脚注出典 [編集]

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脚注 [編集]

  1. ^ 騒音には周波数が数十Hz以下の低周波騒音も含まれる。これはふつう人の耳には聞こえないが、障子や窓を振動させることで、感覚的に二次的に認識される。俗に「風車病」とも呼ばれる頭痛やめまいなどの自律神経失調症に似た不定愁訴や、不眠などを引き起こす被害が報告されており、各地で被害が問題になっている。これら低周波騒音にも計画段階から充分に注意する必要があるとされる。低周波騒音は、工場ボイラー、道路を走行する大型自動車などからも発生する。低周波に関しては安全基準値は策定されていない。

出典 [編集]

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参考文献 [編集]

関連項目 [編集]