宇宙太陽光発電

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

宇宙太陽光発電(うちゅうたいようこうはつでん)とは、宇宙空間上で太陽光発電を行い、その電力を地上に送る発電方法である。別名マイクロ波発電

宇宙太陽光発電衛星の想像図

目次

[編集] 概要

宇宙太陽光発電は、宇宙空間上にある太陽光発電衛星と地上の受信局によって行う。衛星軌道上に設置した施設で太陽光発電を行い、その電力マイクロ波またはレーザー光に変換して地上の受信局(構想では砂漠または海上に設置する)に送り、地上で再び電力に変換するという構成になっている。

地上と宇宙空間での太陽光発電の効率を比較した場合、約10倍程度宇宙の方が有利である。この方法が現実となれば、ほぼ24時間365日にわたって太陽光発電を利用できることとなる。

[編集] 歴史

[編集] 1960~1980年代

1976年の発電衛星構想図 (NASA)

1968年アメリカのピーター・グレイザー博士により初めて提唱された。その後、オイルショックをきっかけとして19771980年NASA(米国航空宇宙局)とDoE(米国エネルギー省)が構想検討した。この検討においては、アメリカ合衆国全土の全電力を賄うため、発電性能500万kW、総重量約5万tの超巨大衛星を静止軌道上に年に2機ずつ、合わせて60機程を打ち上げることが計画された。しかし、この研究は技術的に欠落した箇所がないとされながらも、財政の緊縮方針により凍結されることとなった。

[編集] 1990~2000年代

1990年代に入ると日本における研究活動が活発化し始め、旧宇宙科学研究所(現宇宙航空研究開発機構)を中心とした大学および国立研究所の研究者が、1万kW規模の発電をする宇宙太陽光発電「SPS2000」の概念設計を行い、基本的な技術の研究が進んだ。同じ頃に旧通商産業省工業技術院のニューサンシャイン計画の一環として、100万kW規模の発電ができる宇宙太陽光発電の構想検討を行った。また1992年にMILAX飛行機によるマイクロ波送電の試験もあった。これは、飛行機の飛行に必要な電力をマイクロ波により供給する、という試験である。翌1993年にMILAX試験で開発した技術を用いて、宇宙空間でマイクロ波電力伝達するISY-METSロケット試験を実施した。

1990年代後半に検討された発電衛星(サンタワー)構想図 (NASA)

1990年代後半にアメリカでの活動が再開し、「Fresh Look」と言う検討を行った。その結果「宇宙太陽光発電は最新の技術をもってすれば実現可能であり、既存の発電システムと同じくらいの発電単価を実現できる」とする報告を受け、アメリカ合衆国の議会はNASAに対して数10億円程度の予算を付け、研究開発を開めた。2004年1月14日ブッシュ大統領が演説・発表した新宇宙計画においても、有人火星探査に関する研究の一環として宇宙太陽光発電の研究開発を取り上げている。

一方、日本においては、1998年から旧宇宙開発事業団(現JAXA)が調査・研究を進めている。また、経済産業省でも2000年度より検討を開始した[1]。政治サイドの取組みとしても、開発を推進するための「宇宙エネルギー利用(宇宙太陽光発電)推進議員連盟」を2003年2月27日に結成した。

欧州では1999年よりInvesting in Spaceプログラムの一環として、宇宙太陽光発電に関する研究を進めている。

[編集] 長所と短所

[編集] 長所

  • 従来の発電方法に比べて発電量が多い。
  • 環境汚染を引き起こさない。
  • 資源の枯渇の心配が無い。
  • 地上の受電設備をレクテナにすることで、地上に照射されるエネルギー密度を、自然物に影響のないレベルに下げることができる。広大な面積を必要とするが、レクテナの下は居住区や農地に利用できる。地表面で、生体への影響を考慮する必要がない程度のエネルギー密度、10W/㎡程度を想定している。この場合、10km四方の受電設備で1GWの電力を受け取ることができる。

[編集] 短所

  • エネルギーが強大なマイクロ波またはレーザー光の地上への送信経路は、マイクロ波ならば電子レンジ内におかれた状態、レーザー光ならば光線銃を浴びせられたような状態になる。受電設備のない地上に向けて送信された場合、生物の殺傷と人工物の破壊が起き、戦略防衛構想で計画された光線/粒子線兵器を想起させる強力な兵器として機能する。したがって、アメリカにおける構想母体が核兵器開発の一翼を担うエネルギー省であり、その後の推進主体が国防総省であることから、国家による故意の軍事転用、というより宇宙条約で禁止されている軍事目的を隠蔽するための方便として名目上の「発電衛星」が建設されるのではないかと懸念されている。

戦術高エネルギーレーザー」および「AL-1 (航空機)」を参照

  • 大気の状態によっては、送信されたエネルギーが吸収・減衰して発電量が激減する。また、それに伴う気象・環境への影響も未調査である。
  • 特にマイクロ波の場合、野生動物(特に渡り鳥)の生態に悪影響を与える可能性が懸念されている。

[編集] 今後の計画

[編集] 米国

この節は執筆の途中です この節は執筆中です。加筆、訂正して下さる協力者を求めています

米国防総省は2007年10月10日、宇宙太陽光発電所の開発計画案(Phase 0 Architecture Feasibility Study)を公表した[2][3]

また、SolarEn社は宇宙太陽光発電用衛星からの電磁ビーム照射で熱帯低気圧の渦の温度を上げることで勢力を弱める技術の特許申請を行っている。

[編集] 日本

宇宙航空研究開発機構の総合技術研究本部の研究チームは、2020~2030年の間の実用化を目指している。100万kW級の実用システムを実用化するために、マイクロ波による電力送電方式の部分試作実験、太陽光を直接レーザーに変換する研究とNASAリファレンスシステムに代わる方式の検討などを積極的に行っている。

2007年JAXAが研究委託していたレーザー技術総合研究所大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの研究グループが、太陽光をレーザーに効率よく変換する技術の開発に成功している。開発されたのは神島化学工業製のセラミック増幅器で、レーザーへの変換効率は42%[4][5]2009年経済産業省JAXAが、マイクロ波による長距離送電技術の開発・実験に着手すると発表。政府は新しいエネルギー源として2030年の商用化を目指している [6]

[編集] 脚注

  1. ^ AFP 2001年1月31日Japan's plans for a Solar Power Station in Space
  2. ^ en:National Security Space Office "Space‐Based Solar Power As an Opportunity for Strategic Security"
  3. ^ Technobahn 2007年10月13日予算総額1兆円超、米国防総省が宇宙太陽光発電所の開発計画案を公表
  4. ^ 朝日新聞 2007年9月4日宇宙の太陽光をレーザー光に変換、地上へ 阪大など開発
  5. ^ 毎日新聞2007年9月4日朝刊3面
  6. ^ 日本経済新聞2009年6月28日朝刊

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク