砂漠

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

砂漠さばく沙漠とも)とは、降雨が極端に少なく、砂や岩石の多い土地のこと。 年間降雨量が250mm以下の地域[1]、または降雨量よりも蒸発量の方が多い地域などの定義がある。

植物がほとんど生息せず、水分も少ないため、気温の日較差が激しい。よって農業には適さず、人間の居住が難しい地域(アネクメネ)である。砂漠地は岩石(メサ、ビュート)、礫(れき)、砂、ワジ(涸れ川)、塩湖などで形成され、砂漠地の中で水が得られる希少な場所は人などが生息できるオアシスとなる。

海の砂漠は砂漠ではないが、本項で解説する。

分類[編集]

土質による分類[編集]

「砂漠」という表記からの連想もあり、一般的には見渡す限り砂地が広がって風紋を織りなしている情景がよく想像されるが、実際には岩原など、地形は多岐にわたる。世界では岩石砂漠、礫砂漠、砂砂漠の順に多い。

成因による分類[編集]

砂漠を形成する要因は、以下のように分類される。それぞれについて、分布する緯度に差異が見られる。

  • 熱帯砂漠海岸砂漠
    大陸の西側を赤道方向に向かう寒流沿いの、大陸の海岸線にみられる。寒流の上を渡る風は水蒸気の供給が少ないことと、大気が安定して上昇気流が起こりにくいことによる。
    緯度10~20°の大陸西岸に分布する。アタカマ砂漠ナミブ砂漠など。
  • 亜熱帯砂漠中緯度砂漠
    熱帯で生じた上昇気流が大気上層を中緯度まで移動してから下降することによって発生する亜熱帯高圧帯の影響下に一年中あることによる。
    緯度20~30°にみられる。サハラ砂漠カラハリ砂漠オーストラリアなど。
  • 温帯砂漠
    • 雨陰砂漠
      山脈の方から吹き込む卓越風の風下となるために、下降気流地帯となるため生じる。
      緯度35~50°にみられる。パタゴニアなど。
    • 内陸砂漠
      から遠く、水蒸気の供給量が少ないため生じる。
      ゴビ砂漠タクラマカン砂漠など。

日本には、伊豆大島の火山地帯などに砂漠と呼ばれる場所はあるものの、砂漠に分類される地域はない。広大な砂礫地である鳥取砂丘は砂漠でみられる地形とよく似ているが、あくまで温帯湿潤気候下で降水量は豊富であり、風で絶えず砂が動くために植物が生えにくいことから生じたものである。

砂漠化[編集]

地球上の砂漠は、毎年600万ヘクタールの規模で拡大を続けている[2]。これは、上記のような気候による影響だけではなく人間の活動に伴う要素が大きい。砂漠化によって、

  1. その地域に居住する人々の食料生産ができなくなる
  2. 二酸化炭素の吸収源である森林が減少し、地球温暖化を加速させる

などという深刻な影響がある。こうした砂漠化を進行させる原因は、

  1. 熱帯雨林の過剰な伐採により土地の給水能力が衰える
  2. 家畜の過放牧
  3. 過剰な焼畑農業

などが指摘されている。

不確定要素はあるものの、1980年と2000年を比べると、サハラ砂漠とその周辺では、降雨量の増加により緑化が進行しているとされる[3]

砂の組成[編集]

砂漠の砂の組成は砂漠によって異なる。またその組成は、砂漠の成熟度に影響を受ける[4]。砂漠においては昼夜の温度差や氷結によって岩石→礫(れき)→構成鉱物単位に分割され、さらには細粒化する。さらに砂漠環境であっても、化学的な風化作用によって鉱物は溶解する。これら風化作用に対する抵抗性は鉱物によって異なり、かんらん石輝石角閃石、Caの多い長石などは風化を受けやすく、Caの少ない長石石英などは風化を受けにくい。特に石英は抵抗性が高く、成熟した砂漠で最後まで残る鉱物種となる。

成熟した砂漠の例としてはリビア砂漠(石英91.7%)、オーストラリア砂漠(同80~100%)、カラハリ砂漠(95%以上)、ナミブ砂漠の一部などが挙げられる[4]。特にサハラ砂漠の一部であるリビア砂漠には大小の天然ガラスの塊で構成された領域が点在し (リビアングラス)、どのように生成されたのかが謎となっている。

逆にタクラマカン砂漠(36%)などはきわめて未成熟である[4]

砂漠一覧[編集]

世界の巨大砂漠

アジア[編集]

アメリカ[編集]

アフリカ[編集]

サハラ砂漠。大きさは900万平方キロに及ぶ。

オセアニア[編集]

南極[編集]

  • 南極大陸(南極大陸は大陸全土が砂漠と言われている)

表記[編集]

当用漢字制定前は「沙漠」「砂漠」ともに使用されていたが[5]、「沙」が当用漢字から外れたために「砂漠」のみが使用されるようになった。なお、「沙」も「砂」も「すな」という意味を持つ漢字であり、むしろ「漠」という字が、水がないという意味である。

学術用語としては“desert”に対して「砂漠」という訳語が当てられる。このため、学術用語の「砂漠」はすなじ(砂地/沙地)だけを指すものではないことは既述のとおり。中国語では沙漠(砂漠)・砾漠(礫漠)・岩漠・泥漠・盐漠(塩漠)等の総称として「荒漠」を用いることがある。

生態系[編集]

砂漠は植生がほとんど存在しないため、植物を食料とする動物の生息も少ないが、植物・動物ともにまったく存在しないわけではなく、乾燥地に適応した種が各地に生息しており、独自の生態系を形成している。また、砂漠の砂は風によって巻き上げられ、遠く遠洋や他大陸にまで到達し、たとえばサハラ砂漠において巻き上げられる砂塵の量は年間20億から30億トンにもなり、2月から4月にかけてはカリブ海や南アメリカ大陸に、6月から10月にかけてはフロリダ州などに降り注ぐ[6]が、こうした砂は各地に害をもたらす一方、各大陸や海洋生態系にとって重要な栄養素の供給源ともなる。また、シロッコとしてサハラ砂漠の熱は南ヨーロッパに運ばれ、緯度の割に温暖な気候をもたらしている。

人文[編集]

砂漠は農耕が不可能であり、大部分は人類が定住することが不可能な地域となっているが、古来よりオアシスに農耕民が定住し、ナツメヤシなどの栽培を行い生計を立てていた。こうしたオアシスにおいてはしばしばフォガラカナートといった地下水路が建設され、オアシスにまで水を引き込んでいた[7]。また旧大陸の各地の砂漠には遊牧民が存在していた。砂漠の有用性が飛躍的に向上したのは、ラクダを家畜化することに成功したのちのことである。ラクダは乾燥地に適応した家畜であり、を食用とすることもでき、ラクダ乳はしばしば遊牧民の主食ともなっていた[8]が、最も有用性を発揮したのは運輸の分野においてである。ラクダは荷役動物として使用することが可能であり、ラクダを使用することでそれまで不可能であった砂漠越えの交易が可能になった。これによりタクラマカン砂漠を越える東西交易のメインルート、いわゆるシルクロードが使用可能となり、大航海時代の到来まで東西交易の柱となっていた。また、3世紀にはサハラ砂漠にもラクダが伝来し[9]、これによってサハラ砂漠を南北に越える商業ルートの開設が可能となり、サハラ交易が開始された。このサハラ交易は北のと南のの交易を柱とするものであり、この交易の生む富によってサハラの南に位置するサヘル地帯には、ガーナ王国マリ王国ソンガイ王国カネム・ボルヌ帝国といった大規模領域国家が成立することとなった。

海の砂漠[編集]

珊瑚環礁などにおいて違法な漁法として使用される青酸化合物などの毒物爆薬の影響により珊瑚が死滅し、海底に瓦礫のように珊瑚の死骸が広がっている現象を海の砂漠化と呼称する。東南アジアなどの珊瑚環礁において特に顕著である。

参照資料[編集]

  1. ^ What is a desert?, USGS
  2. ^ 地球環境問題 (PDF) - NTTコミュニケーションズ
  3. ^ サハラ砂漠、気候変動で緑化が進行か ナショナルジオグラフィックニュース、2009年9月、James Owen(インターネットアーカイブ)
  4. ^ a b c 星野光雄、砂漠砂から読み取る過去の自然環境、文部科学省科学研究費補助金 「特定領域研究」 Newsletter No.4 (2006年12月号)
  5. ^ 『大辞典 第十二巻』(平凡社 1935年) p.142
  6. ^ 「キリマンジャロの雪が消えていく―アフリカ環境報告」p158 石弘之(岩波新書、2009)
  7. ^ 「ビジュアルシリーズ世界再発見2 北アフリカ・アラビア半島」p26 ベルテルスマン社、ミッチェル・ビーズリー社編 同朋舎出版 1992年5月20日第1版第1刷
  8. ^ 「アラブ世界のラクダ乳文化」pp58-59 堀内勝/「乳利用の民族誌」所収 雪印乳業株式会社健康生活研究所編 石毛直道・和仁皓明編著 中央法規出版 1992年3月10日初版発行
  9. ^ 「サハラが結ぶ南北交流」(世界史リブレット60)p9 私市正年 山川出版社 2004年6月25日1版1刷

関連項目[編集]

外部リンク[編集]