太陽熱発電
太陽熱発電(たいようねつはつでん)は、太陽光を太陽炉で集光して汽力発電やスターリングエンジンの熱源として利用する発電方法である。太陽光発電よりも導入費用が安いほか蓄熱により24時間の発電が可能である。燃料を用いないため燃料費がかからないほか二酸化炭素を排出しない。
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[編集] 特徴
太陽電池で発電を行う太陽光発電と異なり、太陽熱発電は太陽光をレンズや反射鏡を用いた太陽炉で集光することで汽力発電の熱源として利用する発電方法である。太陽光がエネルギー源のため今後数十億年に渡り資源の枯渇のおそれがない再生可能エネルギー利用の発電方法である。燃料を用いないため二酸化炭素などの温室効果ガスを排出せず、燃料費が不要であるため運転にかかる費用を低く抑えられ、有毒ガスの発生や燃料費高騰によるコスト上昇のリスクもない。
太陽光発電に比べて、高コストな太陽電池を使う必要がない、太陽電池より反射鏡のほうが製造・保守の面で有利、エネルギー密度が低い自然エネルギーを利用するのにも関わらずエネルギーの集中が可能、蓄熱により発電量の変動を抑えることが可能で夜間でも稼働できる、発電以外にも熱自体を利用することが可能、火力発電との共用が可能など種々の利点がある。太陽エネルギーを利用するにもかかわらず、再生可能エネルギー特有の欠点をある程度克服することが可能である。
夜間でも稼働できる反面、昼間の曇天・雨天には効率が悪くなる。さらに、夏至・冬至の昼間の差が大きい高緯度地域には向かない。そのため、低緯度の乾燥地域での建設が有効である。また、太陽光発電と異なりスケールメリットが効くため、施設を大規模にするのが好ましい。循環系を充分に密閉できれば宇宙空間での稼働も可能である。
太陽熱発電に対する注目は、砂漠を持ち広大な面積を有する国で高い。陸地が限られ利用上の競合が多い日本ではあまり適さない発電方式である。それでも1981年に香川県三豊郡仁尾町(現・三豊市)で実験が行われたが、期待した成果は得られなかった。それ以来日本では大規模太陽熱発電の実験は実施されていなかったが、2010年には東京工業大学玉浦裕教授の研究チームが山梨県に実験設備を建設する計画を発表した。国内では30年ぶりである[1]。
[編集] 集光型太陽熱発電
集光型太陽熱発電とは、レンズや鏡や反射板を用いて太陽光を集光し、その熱で水を蒸発させることで蒸気タービンを回転させ発電する発電方式である。発電の原理は古典的な火力発電と同じものであるが、熱の発生に燃料の燃焼ではなく太陽熱を利用する。
太陽光を得られない夜間には溶解塩等を用いた蓄熱による熱を利用するほかに、燃料を燃焼させて発電するハイブリッド方式とすることも可能である。
[編集] タワー式太陽熱発電
タワー式太陽熱発電(Solar power tower、Central Tower power plants)とは、平面鏡を用いて、中央部に設置されたタワーにある集熱器に太陽光を集中させることで集光し、その熱で発電する発電方式である。中央タワー方式、集中方式などとも呼ばれる。数メートル四方の鏡、数百枚から数千枚を用いて集められた太陽光を一箇所に集中させることが出来るため、1000℃程度まで加熱することも可能である。
一方で、正確に太陽光を集中させるためには、太陽の動きに合わせて鏡を正確に動かさなければならない。また鏡とタワー上部の集光器の間に光をさえぎるものがあってはならないため、より多くの光を集めるにはタワーを高くしたり、鏡の設置場所を高い位置にすることが必要となり、それにともない設備費も高くなる。
ヘリオスタット(Heliostat)と呼ばれる、平面鏡、太陽の動きに追従して鏡の向きを調整する機構、それらを支える枠とで構成される、光を反射する装置と、タワー上部に設置された集熱器、タワー下部の蒸気タービン、発電機、復水器などで構成される。各ヘリオスタットで反射された太陽光が、タワー上部の集熱器を加熱し、そこで加熱された液体(水、オイル、溶融塩など)は、タワー下部に送られ、水を蒸発させて蒸気タービンを回すことにより、発電が行われる。蓄熱器を用いて昼間熱を蓄えておけば、夜間の発電も可能となる。他の集光型太陽熱発電方式のものにも言えることであるが、集光用の鏡は面積が大きく、風の影響を受けやすいため、その構造には相応の強度が求められる。
- タワー式太陽熱発電の例・計画
- Solar One,Solar Two :アメリカ、カリフォルニア州のモハーヴェ砂漠に建設された タワー式太陽熱発電所。Solar Oneは1982年に設置され、1995年にヘリオスタットの追加や設備の改良をうけ、Solar Twoとなった。出力10MW。1999年に運転停止。
- Solar Tres :スペイン南部の、アンダルシア州に建設が計画されている。出力15MW。
- PS10 :スペイン南部の、セビリア近郊に建設が計画されている。出力11MW。
[編集] トラフ式太陽熱発電
トラフ式太陽熱発電(Parabolic trough 雨樋型)とは、曲面鏡を用いて、鏡の前に設置されたパイプに太陽光を集中させ、パイプ内を流れる液体(オイルなど)を加熱し、その熱で発電する発電方式である。パラボリック・トラフ方式、分散方式などとも呼ばれる。
タワー式太陽光発電と比較すると、高温の液体が移動する距離が長くなるため熱損失が大きくなりがちであるが、タワーの一点に光を集中させる必要が無く、鏡を単純に並べることが出来るため大規模な施設の建設が容易である。
各鏡において線状に集光し、パイプを流れる液体で集めた熱エネルギーを運搬するという形をとるので、温度は400℃程度となる。そのためより低い温度でも効率的に発電できるタービンの開発なども求められている。
光を線状に集光する曲面鏡と、その前に延びるパイプ、太陽の動きに追従してそれらを動かす機構、高温の液体を循環させるポンプ、蒸気タービン、発電機などで構成される。 各曲面鏡で反射された太陽光が、鏡の前を横切るパイプを加熱し、そこで加熱された液体(オイルなど)が蒸気タービンに送られて水を蒸発させ、蒸気タービンを回すことにより、発電が行われる。蓄熱器を用いて熱を蓄えておけば、夜間の発電も可能となる。また、蒸気タービンを用いることを利用して、特に夜間や曇天時など、天然ガスなどの燃料を用いてガスタービンを回して発電し、その排気ガスの熱と、太陽熱とをあわせて蒸気タービンを回すといった方法で、効率的な発電を行うものもある。このような、従来の火力発電と太陽熱発電とを結合したものは、ISCCS(Integrated Solar Combined Cycle System)と呼ばれる。
- トラフ式太陽熱発電の例・計画
- Solar Energy Generating Systems (SEGS) :アメリカ、カリフォルニアのモハーヴェ砂漠に建設された9基の太陽熱発電所。SEGS I は1985年に運転開始。SEGS IX の運転開始は1991年。天然ガスによる火力発電を併用しており、合計出力約350MW。天然ガスの燃焼による発電は、全体のおよそ25%である。現在世界最大の太陽熱発電所であり、太陽光発電をあわせても世界最大の出力を持つ。
- Nevada Solar One :アメリカ、ネバダ州に2007年に建設された。カリフォルニアのSolar Oneと関係は無い。出力64MW。
[編集] Andasol
Andasol 太陽発電所はスペインのグラナダのGuadix近くのヨーロッパ初のトラフ型太陽発電所である。
Andasolはヨーロッパ発のトラフ式太陽発電所でAndasol 1は2009年3月から稼動している。高度1100mの高地に設置され、砂漠気候のおかげで年間日射量は2,200 kWh/m²である[2]。 どちらの発電施設も発電出力は50 メガワット(MWe)で年間約180 (GW·h)(1年あたり21 MW)である。それぞれの集光器の面積は51 ヘクタール(サッカーの競技場70面に等しい)。 敷地面積は約200 ha[2]。
Andasolは日中の熱を蓄熱装置を備える。硝酸ナトリウム60%と硝酸カリウム40%の混合溶融塩に蓄熱する。夜や曇天時にはこの熱でタービンを駆動して発電する。これにより年間の発電時間は倍になる[3]。 蓄熱量は1,010 MW·hの熱で夜間や雨天時にタービンを約7.5 時間全力運転することが可能である。蓄熱装置はそれぞれ全高14 m、直径36 mの溶融塩を貯めたタンク2基で構成されている。Andasol 1は電力を最大200,000人に供給できる[3][4]。
Andasol 1の建設費は約300百万ユーロ(380百万米ドル)である[5] 。開発会社によるとAndasolの1kw・hあたりの発電コストは0.271ユーロを見込んでいる。[6] 熱エネルギー貯蔵コストは1kw・hあたり50米ドルで アメリカの国立再生可能エネルギー研究所 (NREL)のGreg Glatzmaierによると Andasolの総費用の約5%である[5]・ スペインでは太陽熱発電の電力は固定価格買い取り制度により0.27ユーロ/kW·hで25年間に買い取られる[4]。
Andasol発電所はスペインの電力網が夏季に空調設備の稼動によって電力需要が頂点に達する時に助ける。 Andasolからの電力供給は日中で、午後に最大出力に達するので電力需要に応じやすい[4]。
Andasol 1とAndasol 2の開発にはソーラーミレニアムとACSが関わった。計画後、設計、建設は両者が分担した。 Andasol 3はソーラーミレニアムとMAN Ferrostaalの事業体が開発した。Marquesado Solar SLは投資事業体でAndasol 3の取りまとめと運営を行う[7] [8] [9]。
[編集] アルキメデス計画
アルキメデス計画 とはイタリアのシチリアで建設中の太陽熱発電施設である。ガス複合発電と太陽熱発電の組み合わせによる世界初の商業的に運用される発電施設となる予定である[10]。
この計画はシラクサの近くにかつて住んでいたアルキメデスに因んで命名された。ガス複合発電と組み合わせることで5メガワットの発電力で4500世帯に電力を供給する[11]。
施設の核となる鏡はEnel-Eneaと協業である。広範囲に設置された鏡により集光された太陽光で管の内部を流れる液体を加熱する。液体の温度は天候にかかわらず常に高温に保たれる。2009年に稼動する予定である。
この施設は360の放物面鏡により太陽光を管に集光して内部を流れる食塩水を550℃まで加熱する。 太陽熱発電をガス発電所に加えることで二酸化炭素の排出を7300トン減らすことが出来る[12]。
[編集] ディッシュ式太陽熱発電
ディッシュ式太陽熱発電(parabolic dish,dish/engine system 皿型)とは、放物曲面状の鏡を用いて、鏡の前に設置されたスターリングエンジンなどに太陽光を集中させ、発電する発電方式。パラボラアンテナと同様の形状である。ディッシュ/スターリング方式などとも呼ばれる。 他の方式と比較すると、単体で機能する小型のシステムであり、必要となる土地面積も少なくて済むため、移動用の発電装置や送電が商業的に困難な離島や山間部といった地域での電力供給方法としても期待されている。導入コストは高いものの、高いエネルギー効率が期待できるため現在開発が進められている。2008年にアメリカのサンディア・スターリングエネルギーシステム社は総合発電効率31.25%を達成したと発表した[13] 。
[編集] ソーラーチムニー
ソーラーチムニー(solar chimney、Solar updraft tower)とは、太陽熱によって暖められた空気の上昇による気流の風力を利用し、タワー内のタービンを回して発電する発電方式である。「ソーラー上昇気流タワー」などとも呼ばれる。
発電の仕組みは、風力発電と類似のものである。大気の加熱による上昇気流を用いるため、蓄熱により夜間も含めた24時間の発電が可能である。
構造は、温室に煙突をつけたものである。中央部に向け少しずつ高くなっていく円形の温室をもち、内部の空気は太陽光によって暖められて膨張し、軽くなった空気が屋根に沿うかたちで上昇する際に中央の煙突から上空に排出される。この時の気流を煙突内のタービンが受けて回転し発電が行われる。
ソーラーチムニーの発電力は、太陽光の強さ、温室部分の大きさと煙突の高さによって決められる。上空ほど気圧が低いため有利であるが、太陽光の強さを一定とすると、より広大な土地とより高いタワーの建設がより効率的で大きな発電につながる。高層になるほどタワーの建設に費用がかかるが、他の方式と同じく燃料が不要なため運転にかかるコストは低く抑えられる。
ソーラーチムニーのプロトタイプは、1980年代初頭にスペインで建てられたものである。このソーラーチムニーは、およそ195メートルの高さと4万平方メートルを超える集光面積を持ち、最大50kW程の出力を得ていた。8年間発電を行い、1989年に閉鎖された。
- ソーラーチムニーの計画
- オーストラリアでエンバイロミッション社(EnviroMission Ltd.)によって計画されている大型のソーラーチムニー。約100km² にわたる敷地に高さ1,000メートルのタワーで、200MWの発電能力を計画する[14]。
[編集] 出典
- ^ “山梨に太陽熱発電施設 東工大が計画 30年ぶり国内事業”. 環境市場新聞. (2010年1月29日) 2011年9月7日閲覧。
- ^ a b “AndaSol — EU Project”. FLAGSOL GmbH. 2009年3月30日閲覧。
- ^ a b “Andasol 1 運用開始”. RenewableEnergyWorld.com. (2008年11月6日) 2009年2月21日閲覧。
- ^ a b c (PDF) Andasol: The World's Largest Solar Thermal Power Plant Project Development in Andalucia (Spain). ソーラーミレニアム 2009年2月21日閲覧。.
- ^ a b Biello, David (2009年2月18日). “How to Use Solar Energy at Night”. Scientific American. 2009年10月18日閲覧。。
- ^ “Lower cost of production is actually a by-product of Andasol 1's energy-storage”. CSP Today (2008年10月6日). 2009年10月18日閲覧。
- ^ “Andasol 3 solar thermal project attracts utility investors”. Power Engineering (PennWell Corporation). (2009年6月10日) 2009年8月1日閲覧。
- ^ “The Construction of the Andasol Power Plants”. Solar Millennium AG. 2009年2月21日閲覧。
- ^ “Andasol 1 & 2 (PDF)”. NREL Trough Technology Workshop. SENER Ingenieríay Sistemas, S.A.; U.S. National Renewable Energy Laboratory (NREL) (8 March 2007). 2009年2月21日閲覧。
- ^ Peter Popham (2007年3月28日). “Sicily to build world's first solar power plant”. The Independent 2011年9月7日閲覧。
- ^ “Demonstration project Italy (PDF)”. www.createacceptance.net. 2011年9月7日閲覧。
- ^ “Archimede”. Enel.com. 2011年9月11日閲覧。
- ^ Sandia National Laboratories (2008-02-12), “Sandia, Stirling Energy Systems set new world record for solar-to-grid conversion efficiency”, プレスリリース
- ^ Daithi O hAnluain[南 雅喜/小林理子・訳] (2002年9月9日). “オーストラリアが世界最大の『ソーラータワー』実現へ始動”. wired.jp 2011年9月12日閲覧。
[編集] 関連項目
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