フライホイール・バッテリー

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フライホイール・バッテリー(Flywheel-battery)とは、エネルギーの保存方法の1つであり、電気が持つエネルギーを一時的に回転運動の物理的エネルギーに変換することで保存しておき、後ほど電気が必要な時に回転運動から発電によって電気を得るものである。

特徴[編集]

  • 単純な構造であり長寿命で保守が簡単
  • 低温時の性能劣化がない
  • 貯蔵エネルギー量が容易に判る
  • 事故発生時に特別な安全対策が求められる

構造[編集]

フライホイール・バッテリーの構造概略
1.容器 2.フライホイール(ローター) 3.発電機/モーター 4.軸受け 5.インバーター 6.真空ポンプ 7.充電 8.放電

真空ポンプによって真空に保たれた格納容器の中に、フライホイール(ローター)とモーター発電機が1本の軸で自由に回転できるように取り付けられている。容器を真空に保つのは、フライホイールの回転抵抗を低くするためである。また、軸受けにも非接触型の磁力軸受けなどを採用することで、回転による抵抗を軽減している。磁気軸受けには保守の手間を軽減するという利点もある。 フライホイールは比強度(材料強度を密度で割った値)の高いものが求められるため、炭素繊維強化樹脂(CFRP)のような材質が使用される。モーター兼用の発電機はギャップを広めにとった強力な永久磁石を備えたブラシレス・モーターが使われる。モーター兼用の発電機は格納容器の外のインバーターに電線で接続され、充電時と放電時にはこれらが逆に働き、他の電池と同様に電気エネルギーを蓄えることができる。

使用例[編集]

実用に供されているものとしては、1985年に日本原子力研究所の核融合実験装置JT-60にコイル励磁・加熱用電源として導入された設備がある[1]。2008年には、東京大学物性研究所に、日本原子力研究開発機構核融合試験装置JFT-2Mのフライホイールが移設され、強磁場発生磁石の電源として稼動が始まった。

鉄道[編集]

1988年8月には京浜急行電鉄逗子線神武寺駅 - 新逗子駅間にある逗子フライホイールポストに25 キロワット時・3,000 キロワットのものを設置して、鉄道の回生電力を貯蔵して有効活用するために用いている。これにより回生電力の12 パーセントの再利用を可能にしている[1][2]

電力系統の安定化[編集]

電力系統の安定化を目的として、1996年には沖縄電力が58 キロワット時・26,500 kVAのシステムを導入している[1]風力発電の電力系統安定化を目的としたプロジェクトも存在する[3]

自動車[編集]

欧州では路線バスの走行用に使用されたこともある。

本田技術研究所の試作例では、34.7 kgの本体重量で2.5万回転/分から5万回転/分程度の回転速度で250Whのエネルギーを保存して、最大出力15 kWを生み出した。充放電効率は93%以上でエネルギー密度は7.2 Wh/kg、出力密度は432 W/kgであった。 比較として、日産ディーゼル(当時、現「UDトラックス」)社製のキャパシタ・ハイブリッド中型トラックでは、エネルギー密度は6 Wh/kg、出力密度は600 W/kgであったので、ほぼ同等であると云える。

モータースポーツ[編集]

自動車レースF1では、2009年シーズンのレギュレーションから運動エネルギー回生システム(KERS)が導入され、多くのチームはバッテリーにエネルギーを充電する電気式KERSを採用したが、ウィリアムズはフライホイールを利用する機械式KERSを関連技術を持つ企業を買収した上で開発した[4]

結局、ウィリアムズもパッケージングの都合からバッテリー式を選択したが、開発したシステムが耐久レースアウディ・R18 e-torn クワトロに転用され、2012年のル・マン24時間レースにおいてハイブリッドカー初の総合優勝を果たした[5]

他にも世界各国で研究開発が進められている。

出典[編集]

  • 杉本和俊著 『ディーゼル自動車がよくわかる本』 山海堂 2006年7月24日初版第1刷発行 ISBN 4381077709

脚注[編集]

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関連項目[編集]