警笛

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内, 検索

警笛(けいてき)とは自動車鉄道車両船舶等において、自らが近づくことをを使って他の通行対象に知らせるために使用する保安用具である。警音器(けいおんき)ともいう。また、制服警察官が警告など用いる備品。

自動車ではクラクション (Klaxon) やホーン (Horn) と呼ぶ物を指し、船舶は汽笛(きてき)、鉄道車両でも蒸気機関車を中心に汽笛とも称する。因みに霧笛とは、船舶の汽笛による霧中信号を指すこともあるが、正式には霧信号所による音波信号のことである。

目次

[編集] 自動車

警笛区間の規制標識

自動車では「クラクション」または「ホーン」と呼ばれることがある。「クラクション」という呼び名は、フランスの自動車部品メーカー・クラクソン (en:Klaxon) の製品が有名だったために語源となったといわれる。警笛を鳴らすためには警笛用のスイッチを操作することになるが、大抵はステアリング(ハンドル)の何処かに取り付けられている。警笛用のスイッチは、操作している間のみ通電し音を発生させ続けるものが主流である。

警笛は警笛区間や危険な場合にのみ使用するものである。日本では、道路標識で指定された警笛区間や危険な場合を除き、警笛を鳴らす行為は騒音問題の原因となるため道路交通法で禁止されている(詳しくは法規制の項を参照)。

自動車の場合、警笛に端を発するトラブルが発生することもあり、傷害事件殺人事件に発展してしまった事例もある。後者としては1977年に東大阪市で相手に射殺される事件がある。

[編集] サンキューホーン

日本においては相手車両への感謝の気持ちを表すために警笛を軽く鳴らす、いわゆるサンキューホーンサンキュークラクション)という行為があるが、サンキューホーンは警笛の目的外使用にあたり道路交通法は警笛の目的外使用を禁じているため、このような使用方法は違法行為である。

サンキューホーンと同様の意味合いを持つ行為としては、光(ハザードランプ)で謝意を示すサンキューハザードがある。目的外使用にあたるが、サンキューホーンとは異なり、法律では明確に使用を禁じられてはいない。

[編集] ミュージックホーン

一部の自動車部品販売店では警笛にエコーがかかったり、圧縮空気や電気を使用して音楽を奏でる製品が販売されている。しかし保安基準により音調が変化する警笛の設置は禁じられており、一般公道での使用はできない。

[編集] 法規制

警笛について、日本では以下のような法規制がある。

[編集] 装備

道路運送車両法第41条(自動車の装置)第14項にて、国土交通省令で定める基準に適合するものでなければ設置し使用することができない旨定められている。なお原動機付自転車においても、同法第44条7項(原動機付自転車の構造及び装置)にて自動車の場合と同様の取り決めがなされている。

さらに、道路運送車両の保安基準第43条(警音器)の第1項において自動車(ただし、被牽引自動車は除く)は警音器を備えなければならないと規定されている。また、同条2項および3項にて警笛の音量や音色について規定されており、告示で定める基準に適合するものでなければならないとされている。

[編集] 使用

道路交通法第54条(警音器の使用等)第2項で規定されている通り、警笛区間や危険な場合以外には使用してはならない。これに違反した場合の罰則が同法第121条第1項第6号で規定されており、2万円以下の罰金又は科料に処するとされている。

警笛の無意味な使用はもちろんのこと、青信号などで前車の発進を促す時や低速走行の車に後車が警笛を鳴らす行為、また後車が前車への抗議を表現するために警笛を鳴らす行為、車の到着を知らせるために警笛を鳴らす行為等も見受けられるが、このような行為も警笛の乱用につながるため当然違法である。

ただし旅客自動車運送事業運輸規則第50条第2項第2号は、路線バスや観光バス等の運転者の遵守事項として「発車の直前に安全の確認ができた場合を除き警音器を吹鳴すること」と規定し、バス停等からの発車の際の吹鳴義務を定めている。

[編集] 鉄道車両

鉄道車両における警笛の概要を以下に述べる。

[編集] 警笛の種類

一般にエアタンクに圧縮した空気を勢い良くに送り込んで笛を吹鳴させる空気笛(または空笛と呼ぶ。形としては笛よりもラッパに似ており、「ファーン」という余韻を持つ音を発する)を用いるが、近年は環境(騒音)問題に配慮した電子音(「パーン」という余韻を持つ音が多い)を採用したり変わったものとしては音楽を使用するものもある。その内、電子音の警笛を「電子警笛(電笛、電気笛)」、音楽を鳴らすものを「ミュージックホーン(音楽笛)」という。2種類以上の警笛を搭載している車両もある。

蒸気機関車では空気の代わりに蒸気を送り込んで、激しい走行音がする中でも遠くまで確実に聞こえるよう2-5和音の「ポー」や「ブォー」などという音を発する笛が使われている。他の鉄道車両よりも太く大きな重低音が出る。3和音はイギリス及び一部の日本の機関車で、5和音は日本の昭和初期以降製造の機関車で採用された。電気機関車及びディーゼル機関車では空気を用い、単音の「ピー」という甲高い音になる。これらはチューニングをすることによって、それぞれ異なる音色を出すことが可能である。

社によっては上り方と下り方の運転台の向きで音階を変えている路線もある(東武鉄道京王電鉄など)。また、電子警笛では、横浜市営地下鉄や、京阪京津線などのように、その土地のイメージにあう音(船の汽笛、寺の鐘など)を基にして作られた独特のものを採用している路線もある。

[編集] 吹鳴方法

通常、電車および気動車の空気笛は運転台の足元にあるペダルを踏むことによって吹鳴できる。(左や中央にもペダルがある場合は右のペダル。左や中央のペダルは通常、前灯ディマースイッチ)

そのため、電子警笛またはミュージックホーンを装備した車両はこのペダルを浅く踏むと電子警笛またはミュージックホーン、強く踏み込むと電子警笛またはミュージックホーン+空気笛を吹鳴させることができる。

変わったところでは、名古屋鉄道7000系「パノラマカー」では「空気笛」「電気笛」「音楽笛(ミュージックホーン)」にそれぞれ独立したペダルがある。阪急電鉄他一部の車両は足元に空気笛ペダル、電子笛が手押しボタンという配置もある。

自動列車運転装置(ATO)を搭載した車両などでは自動運転を行っている場合にはペダル側を格納して手押しボタンのみを使用する事もある。

蒸気機関車の場合は機関車によって異なる。幹線用の大型テンダー機関車(D51形やC57形など)は本務機関士側のみにペダルが装備され、機関助士側からはテコ棒によって鳴らす構造であり、大型以外の機関車はテコ棒によって鳴らす構造である。

電気機関車とディーゼル機関車は概ね、テコの原理によって吹鳴できる。  

[編集] 吹鳴の場所

警笛(汽笛)を鳴らす場面としては次のような場合が挙げられる。

  • 駅を発車する場合(通常の列車では、下に挙げるごく一部の事業者を除き省略されているが、臨時・回送列車では耳にすることもある。ローカル私鉄など、利用者が比較的少なく、本数もあまりない路線だと、発車や到着の合図に鳴らす場合もある)
  • 交通量の多い踏切や警報機のない踏切、上下列車がすれ違った直後に踏切を通過する場合
  • ある程度以上のトンネルや鉄橋の通過前
  • 保線工事が行われている場合
  • 警笛吹鳴表示の存在する箇所(第4種踏切の手前など)
  • 停車場外(駅間)で停車していた列車が発車する場合(信号待ちの状態から発車する場合等)
  • 優等列車など通過列車が駅を通過する場合(都市近郊駅では列車案内装置の普及で、このケースで鳴らすことは定期列車では少なくなったが、臨時・回送列車では鳴らすことがある)
  • 停車駅に到着する場合(主にラッシュ時で混雑している場合、地下鉄駅でカーブや上り坂の先に駅があるような場合)
  • 推進運転、停止位置の修正に入るとき
  • 駅構内・車庫で入換をするとき
  • 気動車ディーゼル機関車エンジン始動時。
  • 非常制動時。
  • その他、危険回避のため
  • 鉄道ファンへのサービス(俗にサービス警笛と呼ばれるもので、本来警笛を吹鳴する場所や状況でなくとも、撮影者へのサービスとして発車時や通過時に警笛を鳴らす事がある。これは運転士の裁量による)

※かつて盛んに行われた貨物駅(操車場)における貨車の入れ替え作業であるが、現在でも機関車が移動、停止、連結などを行う際の警笛(汽笛)の鳴らし方が規定されている。また、東北地方や名古屋鉄道、阪神電気鉄道などにも線区それぞれ独特の鳴らし方(踏み方)が存在するが、ともに割愛する。

旧・日本国有鉄道(国鉄)時代やJR初期の時代はでの発車時に警笛(汽笛)を吹鳴することが多く、私鉄では通過列車の駅の通過時に鳴らす場合も多かった。しかし、最近では騒音問題の為か危険防止の為に必要な時、鉄橋トンネル通過前、上下列車がすれ違った直後に踏切を通過するときやその他やむを得ないときなどにしか吹鳴しない事業者が多い(特に関東地方)。一方、大阪市交通局京都市交通局のように駅入線時と発車時、駅間のトンネル内であってもカーブ進入前に必ず吹鳴する事業者、富士急行のように駅通過時と発車時に鳴らす事業者、近鉄のように駅入線時に(名古屋輸送統括部は発車時も)警笛吹鳴する事業者、阪急のように乗務員交替駅発車時に吹鳴する事業者もある。また福岡市交通局の場合は、地下鉄に乗り入れるJR九州103系に限って駅到着時に吹鳴している(かつては全ての車両が吹鳴していたがホームドアが取り付けられてからは旅客への安全面の問題が向上した為、103系以外の車両が鳴らすことは稀である)。

[編集] ミュージックホーン

ミュージックホーンとは複数の音色で音楽を奏でる警笛の事である。小田急ロマンスカー3000形「SE」車に採用されたのが最初の例である。のちに名古屋鉄道7000系「パノラマカー」小田急電鉄の他の特急車でも採用された他、地方私鉄でも富山地方鉄道遠州鉄道静岡鉄道で採用された。

なお、エンドレステープ式を採用した小田急「SE車」以外のミュージックホーンは「トランジスタ式」「IC式」の違いこそあれ、全て電子装置による演奏である。

なおMHと略されることがある。

[編集] 小田急電鉄

先駆けとなった3000形「SE」車ではエンドレステープを用いていた。なお、小田急電鉄では「ミュージックホーン」とは呼ばず「オルゴール」と称している。

小田急では騒音問題に絡みオルゴール装置の使用停止・装置自体の取り外しが進められたが、50000形「VSE」車で久々に復活した。なお、1983年に大井川鉄道(現・大井川鐵道)に譲渡された3000形「SSE」車は同社の産業遺産保存方針から小田急時代のサービスのほとんどを復活させ、オルゴールも復活した。しかし、利用客は同様に産業遺産保存方針で運転されているSL急行に流れてしまったため1989年に廃車され、1993年に解体された。

[編集] 日本国有鉄道およびJRグループ

国鉄時代においては四国総局に配置されたキハ58系気動車の一部に1963年から1969年頃まで、第4種踏切の事故対策として「ミュージックサイレン」を設置していた。この「ミュージックサイレン」装備車は、識別のために車体前面にキハ82系に似た髭状の朱色の帯が塗装されていたが、装置の撤去後は塗装も元に戻された。2008年に四国でキハ58系が営業運行を終えるのを前に、残っていたキハ58の1両にこの「ヒゲ付塗装」が再現されている[1]

[編集] 北海道旅客鉄道(JR北海道)
この節は執筆の途中です この節は執筆中です。加筆、訂正して下さる協力者を求めています
[編集] 東日本旅客鉄道(JR東日本)

JR東日本では、次のような車両に採用されている。

などの特急形車両ジョイフルトレイン

に採用している。新しいジョイフルトレインにも255系とE351系を除く特急形と同じ音楽が警笛と一緒に鳴るようになっている。これらの車両は「レ・ラ・ファ♯・レ・ラ・ファ♯・ラ・レ」の音を奏でる。

この2つの車両は、「ファ・シ♭・レ・ファ・シ♭・レ・シ♭」の音を奏でる。

[編集] 西日本旅客鉄道(JR西日本)
[編集] 東海旅客鉄道(JR東海)

JR西日本と共同開発した285系3000番台(サンライズエクスプレス)にのみ搭載される。

なお、同社は内規で電子警笛(JR東日本の車両)・ミュージックホーン(JR西日本のVVVFインバータ車およびJR東日本の特急車両、名古屋鉄道の特急車両)の吹奏を「警笛を取り扱った」とは認めていない。ゆえに、名古屋鉄道の名古屋本線を走行する列車はJRとの共用区間である平井信号場以東でミュージックホーンや電子警笛を単独で使用することは(誤用を除き)なく、作業中標識などでも空気笛を用いる。

[編集] 四国旅客鉄道(JR四国)
[編集] 九州旅客鉄道(JR九州)
  • 883系以降の特急用電車
    • 営業運転での使用はなく業務時にのみ使用。このミュージックホーンは、ペダルで鳴らすのではなく、助手席側のコンソールボックス内にスイッチがある。
  • 海幸山幸」用キハ125形400番台
    • 出発用と到着用の2種類ある。向谷実が作曲を担当。

[編集] 北近畿タンゴ鉄道

[編集] 名古屋鉄道

ミュージックホーンで小田急に先を越された名鉄は、小田急のテープ式とは違い、当時の先端技術であるトランジスタを採用した警笛であることを強調するためミュージックホーンを「トランジスタホーン」と謳い、大いに宣伝した。往年の名鉄では、高山本線直通列車用キハ8000系を間合いで使用していた名古屋本線豊橋方面行き特急列車がミュージックホーンを連続吹鳴しつつ早朝の三河路を駆け抜けていたことから、沿線住人はキハ8000系が奏でるミュージックホーンの音楽を毎日の時報がわりにしていたという逸話が残っている。また、沿線の地元の学校ではドップラー効果の説明にミュージックホーンを使うことがあった。

名鉄のミュージックホーンには「どけよホーン」という愛称もある。これは「ミ・ド♯・ラ ミ・ド♯・ラ ミ・ド♯・ミ・ラ~」というメロディが子供に「どーけーよーどーけーよー…」と聴こえるということで、呼ぶようになったものとされる。ちなみに作曲はミュージックホーンの製作を担当した小糸工業に依頼された作曲家とされるが、名前は伏せられている。また、中京競馬場で行われる名鉄杯(1600万下)で演奏されるファンファーレにもアレンジされている[2]。また、常滑競艇場で行われた「名鉄杯争奪2007納涼お盆レース」の初日のドリーム戦(2007年8月10日)および優勝戦(2007年8月15日)のファンファーレにミュージックホーンがそのまま利用された。またかつてのCBCのラジオ番組「おはようCBC」内のコーナーでは名鉄の生CMの冒頭でこのミュージックホーンが使われていた。

元々は遮断機等未整備の踏切が多い中、列車の接近を知らせるために常時吹鳴させることを前提に作られたミュージックホーンであったが、近年は騒音問題に加え前照灯を昼間点灯させることで列車の被視認性がある程度解決されているため、常時吹鳴する必要はなくトンネルや駅ホームに進入する場合など、吹鳴させる場所が限られつつある。2000年まで道路併用区間であった犬山橋のある犬山線犬山遊園駅 - 新鵜沼駅間で比較的連続した使用が見られた。

[編集] 北越急行

JR西日本乗り入れ用の、はくたか用681系2000番台・683系8000番台もJR西日本と共通設計であることから搭載された。

[編集] 東京都交通局

上野懸垂線40形に搭載されている。JR東日本の251系・253系・E257系などと同じ音色(テンポ違い)。

[編集] 上信電鉄

6000系に搭載されている。1000系にも搭載されていたが、撤去されている。通常の営業運転においては使用されない。音色は、JR東日本の253系・E257系などで使われているホーンのテンポ違いである。

[編集] 遠州鉄道

30形の34Fで採用されたがすぐに撤去された。なお同編成は既に廃車となっている。

[編集] 静岡鉄道

1000系に搭載されている。急行運用の際に駅通過時、停車時に使用していたが、急行廃止に伴い使用されなくなった。
2011年、15年ぶりに急行が復活したことにより、再び使用されている。

[編集] 天竜浜名湖鉄道

イベント対応車両でもあるTH9200型に搭載されている。音色はいわゆる「ピンポンチャイム」である。

[編集] 首都圏新都市鉄道

首都圏新都市鉄道TX-1000系TX-2000系に搭載されている。電気笛を使用するかミュージックホーンを使用するかは運転士による。

[編集] 京成電鉄

新AE形で採用。向谷実が作曲を担当。

[編集] 脚注

[ヘルプ]
  1. ^ [1]
  2. ^ このファンファーレは名鉄ブラスバンド部による生演奏となっているが、通常ファンファーレを生演奏する競馬のレースはGI競走が中心となる。また、独自のファンファーレが用いられるのも名鉄杯宝塚記念スプリングステークスのみである。

[編集] 関連項目

個人用ツール
名前空間
変種
操作
案内
ヘルプ
ツールボックス
他の言語