昼間点灯
昼間点灯(ちゅうかんてんとう)とは、昼間の明るいうちから車両の前照灯を点灯させることで、英語では Daytime Running Lamps(略してDRL。Daylight Running Lamps や Daytime Running Lightsと表記することもある)と呼ばれている。デイライト、デーライトともいう。当初は主に事業用自動車、緊急自動車や鉄道に限って見られたが、LEDの昼間点灯用ライト(後述)の販売開始に伴い、ドレスアップ目的なども含め、一般にも広がっている。
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目的 [編集]
自動車においては、本来必要ない時間帯にあえて前照灯を点灯して、対向車や歩行者などに自己の存在をより周知(被視認性を向上)する目的と、周囲よりも目立っていることを運転者に意識させて事故の発生を抑える目的がある。
事例 [編集]
道路交通 [編集]
オートバイ [編集]
1979年9月の秋の全国交通安全運動で、熊本県警が常時点灯のキャンペーンを行ない、それをきっかけに全国に広まった。1998年には保安基準で常時点灯が義務付けられた。現行モデルではイグニッションオン、或いはエンジン始動と同時に点灯する機構になっており、消灯スイッチが存在しない。エンジン始動時のバッテリー負荷軽減のためとして、アフターマーケットパーツとして消灯スイッチが販売されているが、走行時に使用すれば保安基準に抵触する。
四輪自動車 [編集]
1970年代から主に救急車やパトカーが緊急走行中に行っていた。1990年代初めにニヤクコーポレーションが西日本地域の一部で試行したが、対向車からは単なる消し忘れとしか見てもらえずパッシングがあまりにも多かったため、ごく短期間で中止となった。この試みは当時の日本の車社会には時期が早過ぎると判断されて受け入れられなかった。
1995年に長崎県の佐川急便が、事故防止の為に昼間に配達用トラックの点灯を始めた。ほどなく、同社や同業他社によって全国規模で実施されることとなった。
デイライトと名付けたのは、福岡県の物流会社ランテックである。賛同車両へのステッカー配布やマスコミへの取材協力を行った。
一部に悪天候時や薄暮時でも点灯しないドライバーが多い中で、「日中も有意に点灯して運転する自動車が存在する」事、夕方の早期点灯や悪天候時の点灯を「プロドライバーから」広める事となった。特に冬季の昼の時間が短く、降雪で被視認性が低下することも多い北海道での普及の意義が大きい。
現在、この運動には自治体や自動車教習所、トラックやバスを用いる大手企業などが中心に参加しており、各地の営業車や社用車が昼間点灯を行っている。
北欧諸国、カナダなど、高緯度地帯の国々を中心に、日本よりも早い時期から昼間点灯が行なわれていた。EUでは2011年2月以降に最初に形式認定された乗用車はデイライト装着が義務化となった。法改正後は小型のLEDを常時点灯用に追加することで、バッテリーへの負荷を低減させる車種もあらわれた。
点灯のタイミングは、イグニッションオン(ディーゼル自動車ではオン)、エンジン始動、パーキングブレーキ解除などがあり、点灯方法は、専用の別付けランプ、ハイビームの減光、ロービーム(テールランプ不点灯)、ターンシグナルランプの常時点灯などがある(日本国外の例を含む)。
一部地域で常時点灯が義務づけられたことから、「格納走行時の空気抵抗低減」をうたうリトラクタブルヘッドランプ車の意義が薄れ、常時点灯地域では固定式ランプ仕様となったものもあった(北米の特定地域向けの3代目ホンダ・プレリュードとその日本国内向けのプレリュード inx など)。
自転車 [編集]
滋賀県では、2003年から2005年まで、自動車の昼間点灯実施を呼び掛けていた[1]。この運動は2009年4月現在、早め点灯に内容が変更され、自転車も対象に含めている[2]。
鉄道 [編集]
東海道新幹線では開業当初から前照灯・尾灯共に常時点灯で運行した。新幹線以外では、1989年3月11日にJR西日本で列車の被視認性と安全性、また運転保安度の向上などを目的に開始したのを皮切りに、JR全社と大半の私鉄(大手私鉄で完全実施したのは1990年10月29日の名古屋鉄道が最初)において実施されている。地下鉄路線では、それ以前から地上区間を含めて常時点灯としている路線が大半であった(事業者の「運転取扱心得」などによる)。
多くの鉄道事業者では、ラッシュ時と閑散時の受給変化に応じて、運転間隔と列車の編成両数の増減で対応しているため、編成中に運転台(乗務員室)同士が向かい合う形で連結されることも多い。ホームから連結面間の空隙への旅客の転落防止措置として、現在では新製車両に転落防止幌の取り付けが義務付けられているが、運転台側に関しては運転時の乗務員の視界確保や、見栄えを理由に取り付け対象外となっている(ニューヨーク市地下鉄や、創始期の大阪市営地下鉄のように、運転台の妻面に転落防止用のチェーンや可動柵を装備している車両もある)。2010年12月にJR西日本神戸線舞子駅で発生した、運転台同士の連結面間への転落死亡事故を受け、同社では水平設置形の転落防止幌の試験も行っていたが、2011年5月から、同社管内で運転するすべての中間に組み込まれた運転台において、この箇所への転落防止(注意喚起)を目的として、前照灯の常時点灯を開始した[3]。
関東地方の大手私鉄では、2006年11月1日に東京急行電鉄が全線で常時点灯を開始、全事業者で実施されるようになった。その後は、近畿地方の一部大手私鉄および系列路線を除き、昼間点灯を実施しない事業者は減少傾向にある[4][5][6]。
地上のモノレール路線では、昼間点灯を実施する会社はない。
新交通システムでの状況は、まちまちである(例:ホームドア設置により公衆の軌道内立ち入りが考えにくいにもかかわらず、進行方向には終日点灯するゆりかもめ、ホームに柵などはないが昼間の地上部は消灯して運転する山万ユーカリが丘線)。
問題点 [編集]
- ライトへの電力はエンジンから供給されるため、燃費が少し悪くなると言われている。実際には、ハロゲンランプの消費電力ではアイドリング時のエンジン回転数はほぼ変わらない。
- 昼間は明るいために、運転後の消灯を忘れ、バッテリーがあがってしまう恐れがある。近年の車両では警告音である程度は防止でき、また、コンピュータ制御によりエンジン停止後一定時間で自動消灯する機能も広まっている。
- 意図的な点灯ではなく消し忘れと解釈した対向車から善意、悪意にかかわらずパッシングを受けたり、前の車や歩行者から口頭、手ぶりなどで指摘を受ける。(「昼間点灯実施中」のステッカーで“消し忘れに非ず”とアピールする車両が見られる)
- 点灯時間が長くなるため、通常よりも早くバルブが寿命を迎えてしまう。トラックやバスなどの大型車両では車側灯も同時に点灯するため、車側灯の寿命も短くなるが、フォグランプを装備した車両では日中はそちらを点灯し、車側灯の点灯を避けるケースがみられる。
- ハイマウントストップランプを装備せず、またテールランプ(尾灯)とブレーキランプ(制動灯)が一体型の車両の場合、昼間点灯を実施すると後続車からはブレーキランプ点灯の視認性が落ちてしまう。前走車がシルエットになる場合は、後方に対する昼間点灯のメリットがある。
- 自光式メーターの場合、光量が落とされるために見づらい場合がある。
- ライダーからは「道路運送車両法で常時点灯が義務化されているオートバイが相対的に目立たなくなる」、また一部からは「低身長である幼児や学童の眼球に悪影響を及ぼすのではないか」との意見[7]があった。
電力消費の少ないLED照明を用いた後付けの昼間点灯用ライト(デイライトと呼ばれることが多い)が各種発売されている。
(前照灯ではない)昼間点灯用ライトは保安基準での「その他の灯火」にあたり、青色でも違反にならない。ただし、前方に向けた赤色、点滅・明滅、照度の上限等をはじめとして、違反になる場合もある。
脚注 [編集]
- ^ 滋賀県/「前照灯昼間点灯運動」実施中
- ^ 滋賀県/「前照灯早め点灯運動」展開中!
- ^ 同社線区内で始終着する列車のみ。他社線駅を始終着とする直通列車の連結部については、全区間消灯または、増解結時・方向転換時に点灯して(この作業は米原駅に限る)同社線を引き続き運転、あるいは消灯して他社線へ送り出す。機関車牽引列車の客車との連結部は対象外。
- ^ 近畿日本鉄道では1998年3月ダイヤ改正から実施。
- ^ 山陽電気鉄道では2012年10月3日から実施。
- ^ 阪急電鉄では2013年元日から実施。
- ^ http://www.pref.nagano.lg.jp/soumu/koho/meyasu/shosai/koukai/2002/11/2002_003681.htm