自動車教習所

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自動車教習所(じどうしゃきょうしゅうじょ)は、運転免許を受けようとする者に対して、自動車運転に関する道路交通法規などの知識、そして運転に関する技術を教習させる施設である。

狭義では都道府県公安委員会道路交通法第九十九条に基づいて指定した指定自動車教習所、および届出自動車教習所のことを指す。都道府県により各種学校の認定を受けている自動車教習所[1]は、学校教育に類する教育を行う教育施設である。

東京都目黒区に在る日の丸自動車学校の俯瞰写真。赤く点在する物が教習車。

概要[編集]

道路交通法の上では「自動車教習所」とされているが、名称(屋号)は「〜自動車学校」「〜ドライビングスクール」「〜モータースクール」「〜ドライビングカレッジ」などと名乗っている所もある。世間一般には「自動車学校」や「教習所」ではなく、その地域によって独特の呼び方(例:「車校」(しゃこう:愛知県などでの地域用語))も存在する。株式会社有限会社の運営する教習所が多いが、一部には市町村が設置した公立の教習所、学校法人交通安全協会の運営している教習所も存在する。都市部では二輪教習専門の教習所もある。

普通自動車免許に関する技能教習、学科教習、技能検定などが主な業務となるが、教習所によっては大型自動車中型自動車大型自動二輪車普通自動二輪車などの教習・検定も実施している。また、公安委員会の委託を受けて、高齢者講習や運転免許取消処分者講習、運転免許取得時講習、初心運転者講習などを実施している。ペーパードライバーや高齢者、プロドライバーなど免許保有者に対して運転免許取得者認定教育を行っている教習所もある。

フォークリフト運転などの技能講習特別教育を定期的、もしくは不定期に行っているところも一部で存在しているが、これらの講習は都道府県労働局長登録教習機関として行っており、自動車教習所の業務とは別物である。

多くの自動車教習所では普通自動車においては、おおよそ60時間程度の講習カリキュラムが組まれており、これらを数週間から数か月の期間で習得させていく[2]。そのため、在校生は自宅から教習所へ通っていくかたちをとるが、一部の自動車教習所ではホテル旅館といった宿泊施設に泊まりこみながら教習を行う、合宿免許と呼ばれる合宿教習を行っている所もある。

区分[編集]

指定自動車教習所[編集]

道路交通法第九十九条によって公安委員会の指定を受けた教習所のことを指す。公認自動車教習所とも称するが法律用語ではない。

修了検定(仮免許技能試験)、仮免許学科試験は教習所内、卒業検定(本免許技能試験)はその周辺の路上で行い、本免許学科試験のみ運転免許試験場で実施する。卒業検定に合格した卒業者には卒業証明書が発行され、1年以内に運転免許試験場へ持参すれば技能試験(実地試験)が免除される。技能試験に通るのがかなり難しいこともあり、新規に普通自動車免許を取得する者のうち95%が指定自動車教習所の卒業生である。2005年末時点で、全国で約1450校が存在し、卒業生は年間188万人となる。業務の中核となる普通免許の卒業者は136万人で、18歳人口の減少もあり、ピークだった1990年の3分2以下に減少している。廃業する教習所も増えており、この10年で80校が閉鎖した。指定自動車教習所には検定期限と教習期限があり、教習期限は大型特殊第一種とけん引第一種および限定解除審査は3カ月、その他は9カ月が限度であるため、この間に技能教習と学科教習を全て修了しなくてはならない(期限が切れた場合は学費の再納入を要する)。また、検定期限は全車種において全ての教習を修了させた日から3か月以内に卒業検定に合格しなくてはならないこととなっている。

届出自動車教習所[編集]

公安委員会に届出を出している教習所のこと。全国に約130校ほど存在するが、その統計的データは未整備である。

自ら検定や仮免許試験を実施している指定校と比べると、未指定の届出校では、それらの実施が認められておらず、在校生自らが運転免許試験場まで行って仮免許技能試験、仮免許学科試験、本免許技能試験を受けなければならないというのが大きな違いである。しかし学科や技能の教習に関する規則がほとんど定められておらず、自由度が高いことが挙げられる。免許取得までのカリキュラムや最低教習時間というものが義務付けられておらず、その分、教習料金を安く抑えることも可能なため、免許の取消処分者など運転技量に自信のある人間が受験する場合には料金面と時間面で有利な場合がある。大型免許やけん引免許など運転経験が求められるコースも同様である。

一方、仮免許・本免許の技能試験、仮免学科試験を届出校では実施できないため、在籍生自らが運転免許試験場で試験を受けねばならないという負担もある。手続きは基本的に受講生自らが行わなければならない。運転免許試験場での技能試験は指定自動車教習所の技能検定より難しく(法律上の難易度は同じであるが、初めて通る道といつも通り慣れている道では、試験の際のメンタル面で違うためや、指定教習所はぎりぎりのところで甘く判定している場合が少なくないため)、初心運転者で途中で挫折して指定校への転校をするケースがあり経済的な負担が大きい。また、届出校は入校の際に、公安委員会の指定校ではないデメリットを伏せて募集するため、実情を知らずに勘違いして入校した在籍生とのトラブルもある。

なお、届出自動車教習所のうち、国家公安委員会規則で定められた特定教習を実施することができる教習所のことを特定届出自動車教習所と呼ぶ。これを終了した者は免許取得後に受けなければならない取得時講習が免除される。仮免許合格後に、所定の5日間以上10時間以上の教習を受けた後、この特定教習を受けておけば、路上試験合格後に即日免許が交付されるという特典がある。

指定外自動車教習所[編集]

公安委員会の指導・監督を受けていない教習所のこと。主に運転練習することを目的としている。車両と指導員だけで路上や私有地で教習するプライベートな教習所もあり、ペーパードライバー講習として利用する人もある。

教習カリキュラム[編集]

ここでは普通自動車免許について言及する。

指定自動車教習所[編集]

教習方法を定める規則[編集]

教習の時間及び方法は「指定自動車教習所等の教習の基準の細目に関する規則」(国家公安委員会規則第十三号)などで定められている。この関連法令、及び各公安委員会の指導の元で、全国の指定自動車教習所は同一の基準のカリキュラムを組んでいる。

教習生が受ける教習は、教室で教本や動画を使って交通規則や安全知識を学ぶ学科教習と、実車などで運転技術を習得する技能教習の二つがある。また、基礎的な運転や知識を学ぶ第一段階、その応用となる第二段階に分けられる。

教習時間は、1教習時限につき50分と定められている。なお、免許を保有していない場合、普通自動車免許を取得するまでに必要な教習最短時限数は、技能教習34時限(AT限定は31時限)、学科教習26時限である。二輪免許を持っている場合、技能教習32時限(AT限定は29時限)、学科教習2時限である。大型特殊(限定なし)免許を持っている場合、技能教習26時限(AT限定は23時限)、学科教習5時限である。大型特殊(カタピラ限定)免許を持っている場合、技能教習34時限(AT限定31時限)、学科教習5時限である。

教習受講料は主に「基本料金(教本代金)・(修了検定・卒業検定などの)各種検定料・(仮免などの)各種免許証発行手数料・(高速教習時における)有料道路普通車通行料金・追加教習料金」で構成されており、夜間(18時以降)教習の場合は「夜間料金」が上乗せされる教習所もある。

第一段階[編集]

学科教習第一段階は、道路上で運転するための基本的な知識を学習する。最短時限数は10時限であるが、学科教習1番(運転者の心得)は必ず最初に受講する。残りの2番から10番は順番に関係なく受講できる。

技能教習第一段階(基本操作及び基本走行)は、全て教習所の場内で実施する。最短時限数はMT車の場合15時限、AT車は12時限である。また、教習生の疲労などを考慮して、技能教習の1日あたり最大時限数は2時限とされている。

技能教習のうち1時限は模擬運転装置(トレーチャー)での運転練習となる。ただし教習所によっては、すべて実車での教習となる場合もある。また、無線指導装置による無線教習が最大3時限まで実施されることもある。監視室にいる指導員からの無線連絡によって、教習生が自力で場内において運転を実施する。教習生の技量、教習所の方針によって、実施しないこともある。

技量が上達せず項目をクリアーできない場合、追加教習として時限が延長されていき、その分の追加料金が発生する。最後の教習時限には、教習効果を確認するための「みきわめ」(見極め)を行う。検定に合格するレベルに達していない場合、延長教習としてさらに時限数が延びる。この追加教習・延長教習による技能教習の追加時間及び追加料金は、教習生の技量によって大きく異なる。

修了検定と仮運転免許学科試験[編集]

第一段階の学科教習を全て受け、技能教習のみきわめに合格すると、修了検定になる。運転装置を操作する能力、交通法規に従って運転する能力などの基本運転が身についているかどうかを判定することが目的である。警察庁交通局長通達による運転免許技能試験実施基準に準じた方法により、検定の方法や採点基準は全国的な統一が図られているが、さらに具体的な採点方法などの細部については各都道府県の公安委員会ごとで定められる技能検定基準や技能検定実施要領などが基準となるので、都道府県ごとに若干の差異が認められる。

技能検定員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務員に従事する職員とみなされている(みなし公務員)。当日、視力検査など適性試験を受けた後、助手席に技能検定員、後部座席には不正防止のため他の受験者を同乗させ場内コースを運転する。コース、担当検定員は当日発表される。これに合格すれば、仮運転免許学科試験、不合格なら1時限以上の補習教習を受講して再検定となる。

検定に受かれば仮運転免許学科試験である。公安委員会から教習所に委託された公的な試験であり、30分間に○×式50問で45問以上正解で合格となる。これに合格すれば、仮運転免許証が発行される。

第二段階[編集]

AT・MTともに、学科教習の最短時限数は16時限、技能教習の最短時限数は19時限になる。教習生のレベルによって追加教習・延長教習で技能教習時間が長くなる点は第一段階と同様である。技能については、方向変換・縦列駐車などの項目については場内で実施する。また、第二段階での技能教習の一日当たり最大時限数は3時限とされている(連続3時限乗ることはできず、2時限受けたら1時限以上空けることが義務付け)。

第一段階とは異なり、特徴的な教習がいくつかある。後半に1時限(あるいは複数教習と組み合わせて実質2時限)実施される高速教習がその代表である。複数で教習車に乗り込み、教習所の近くのインターチェンジに向かい、一人あたり15キロメートル程度、高速道路を走行する。ただ、近くに制限時速60キロメートルを超えるスピードで走ることができる高速道路がない都市部や過疎地の校所では、運転シミュレーターによって代用されることもある。またこの教習は、教習を実施する高速道路で50km/h規制(速度規制)が実施された時点で教習が無効になり、後日、再び実施されるか、運転シミュレーターにて代用される。[3]

学科1時限、技能1時限を組み合わせた危険予測ディスカッションという項目もある。最大3名で交替して運転をした後、教室に戻って指導員を交えながら交通場面に潜む危険要素の発見の仕方、対処について話し合う時間である。また、学科では応急救護教習も3時限実施する。これは、1994年から追加された比較的新しい教習項目。交通事故による負傷者に対する応急処置を学習する時間で、模擬人体装置や自動体外式除細動器などで実習を行う。医師歯科医師看護師救急救命士などの資格を持つ者は免除される(救命講習修了や赤十字救急法救急員は認められない)。

第二段階の学科教習を全て受け、技能教習のみきわめに合格すると、卒業検定になる。路上検定は、交通実態に対処する運転者の主体的な対応能力を判定することが目的である。道路場面や周囲の交通、危険予測に対応できる運転ができるかどうかが試される。助手席に技能検定員、後部座席に他の受験者を同乗させ、当日発表された路上コースを運転する。終了後、場内に戻り、縦列駐車か方向転換かどちらかを実施する。これに合格すれば、卒業証明書が手渡される。不合格なら補習教習を1時限以上受けて再試験になる。

この卒業証明書と仮運転免許証などを持って、合格から1年以内に住民票のある都道府県の運転免許試験場へ行き、視力検査など適性試験を受けた後、本免許学科試験に合格すれば運転免許証の交付を受けることになる。

届出自動車教習所[編集]

教習の時間および方法については特に定められていない。その代わり、運転免許試験場で仮免許技能試験、仮免許学科試験、本免許技能試験などを受験しなければならない。また、本免許技能試験に合格した後、指定自動車教習所へ行って、普通自動車免許の場合は7時間(危険予測講習2時間、高速道路講習2時間・応急救護処置教習3時間)の取得時講習を受講しなければ免許証が交付されない。

なお、特定届出自動車教習所では、国家公安委員会規則で定められた特定講習を受講することができる。普通自動車免許を取得する場合は、高速教習・危険予測・応急救護など計7時間。これを受けると終了証明書を取得することができ、取得時講習が免除される。

自動車教習所の施設など[編集]

公安委員会が指定した自動車教習所の場合、以下の3つの基準を満たさなければならない。

  • 人的基準 法令上の資格要件を備えた管理者とともに、公安委員会の審査に合格した指導員・検定員を配置しなければならない。
    • 教習指導員 - 俗に教官と呼ばれている。指定自動車教習所では一定の資格を持った、指定自動車教習所指導員が必要。
    • 技能検定員 - 修了検定および卒業検定を実施する検定員。運転免許試験場の試験官の業務を代行しているため、みなし公務員とされる。主に教習指導員と兼任する事が多い。
    • 管理者 - 教習業務における監督的立場にいる人物。私立学校における校長的役割を果たす。道路交通法施行令第35条で「道路の交通に関する業務における管理的又は監督的地位に3年以上あつた者その他自動車教習所の管理について必要な知識及び経験を有する者」と定められている。都道府県によっては、監督官庁より天下りをした警察OBが民間である教習所の管理者に就く場合が少なくない。
    • 設置者 - 教習の経営側にいる人物。私立学校の理事長に近い立場で、教習所の社長や経営責任者を兼ねている場合がほとんどである。
  • 物的基準 指定自動車教習所では運転免許試験場と同等の広さが必要となる。道路交通法施行令第35条イにより「コース敷地の面積が8000平方メートル」以上必要(二輪の教習所は3500平方メートル以上)とされ、坂道発進・狭路通過などコースの種類、形状および構造が法令に定める基準に適合する必要がある。また、技能教習や技能検定を行うために必要な種類の教習車、そして学科教習を行うために必要な建物、教室、その他の模擬運転装置やシミュレーターなど各種設備や機材を備えていなければならない。
  • 運営基準 教習は、法令に定められた所定の教習課程表に基づいて、教習方法、教習時間の基準に適合するようにしなければならない。普通自動車免許を取得しようとすると、学科教習課程最短26時限、技能教習最短34時限を行う必要がある。自衛隊自動車教習所を除き指定校として認可を受けるためには、それぞれの車種毎連続して10名の一発試験合格者を輩出させなければならない等、基準は非常に厳しく設定されている[4]

また、建築基準法による用途規制として、第一種低層住居専用地域第二種低層住居専用地域第一種中高層住居専用地域第二種中高層住居専用地域には建設できない。また第一種住居地域では法令上は建設可能でも3000平方メートル以下に制限されるため、実質的には建設不可能。

自動車教習所淘汰の時代[編集]

閉鎖した自動車教習所

18歳人口の減少(少子化)や若者の車離れが顕著になった1990年代末頃から都市部を中心に各教習所間の競争が激化している。売上が減少していく中で、サービス・接遇に取り組む教習所がある一方、料金のディスカウントも激しくなっている。地方部の不採算校では合宿教習に取り組むところも増えてきたが、宿泊施設などの管理や仲介業者への手数料負担が重くのしかかってくる。厳しい経営環境で回復の見込みが立たないこともあって関連企業の意向や他業種への転換を狙っての廃業が2000年頃から目立っている。通常、閉鎖する半年前に公安委員会に報告して入校を取りやめ、近隣校へ教習生の引き継ぎを行うという指導がなされてきたが、2008年10月に東京地方裁判所に破産手続き開始の申し立てを行った東京都の八王子自動車教習所(指定校)は約1700人いる教習生に総額2億円とも言われる料金の返済をしなかったため、さまざまな所で問題となった[5]。また、北海道札幌市の愛育安全相互自動車学校グループも、同年11月、安全相互二輪免許専門校(指定校)を閉鎖し、授業料を返金できないまま破産手続きに入った。

自動車教習所が登場した作品[編集]

映画[編集]

ドラマ[編集]

ゲーム[編集]

漫画[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 各種学校の認定を受けている自動車教習所は、各種学校#外部リンクにある各都道府県の各種学校一覧で確認することができる。
  2. ^ 全ての教習は入校日(入学金納入日)より起算して9か月以内に終わらせなければならない。9か月を過ぎて教習を消化できない場合は教習記録が全て無効となり、全ての教習料金も(教習所側のやむを得ない事由でない限り)原則返還されない(入校日から9か月以内に一身上の都合などにより教習生が自主退校を申し出た場合は、取消手数料などの経費を差し引いた上で期間中の教習料金を返還)。さらに仮免許の有効期限は(仮免試験に合格し仮免許証が交付された日から起算して)6か月である。
  3. ^ この運転シミュレーターは他の教習項目でも使われているが、画面を見ていて目眩を起こす教習生が少なくなく、またその教習効果について疑問視する意見もあり、現場での評判はあまり芳しくない。
  4. ^ 大型2種免許を指定自動車学校にて教習・技能検定を受講できるように法令改正された際、これまで大型2種を届出校として運用していた学校は、新たに指定を受けるために学費免除の学生を募集し検定一発合格できるよう指導を受けさせて連続10名の合格者を出せるような体制を行っていた
  5. ^ 「八王子自動車教習所」が突然の倒産-教習生に衝撃が広がる

関連項目[編集]

外部リンク[編集]