パスポート

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英国旅券
他国のものと違い、最上部に「欧州連合」と英語で表記されている
インド旅券

パスポートpassport)または旅券(りょけん)とは、政府ないしそれに相当する公的機関交付し、国外に渡航する者に国籍及びその他身分に関する事項に証明を与え、外国官憲保護依頼する公文書である。

パスポートの概要[編集]

パスポートは、国際移動する場合に原則必要なものであり、査証(ビザ)はパスポートに刻印ないし貼付される。査証が渡航先の政府による出入国管理であるのに対し、旅券は渡航元政府による出入国管理の役割を果たしている。旅券に関する標準文書はICAO(国際民間航空機関)において制定されている。

国(政府)が発行する公的書類として、自らの国籍国外においては身分を証明する最も公的で通用度の高い身分証明書とされるばかりでなく、自国内においても身分証明書として利用されている。

歴史[編集]

所有者が国籍を持っている国だけが発給し、なおかつ複数の旅行・複数の目的地で有効な現代のパスポートの概念は、20世紀中頃から始まったものである。それ以前は一般的に、どの国からでも誰にも発給することができた。その有効期限は非常に限定されており、通常一回の旅行用であった。ローマ帝国時代には既に形式が出来ており、“この旅行者に危害を加える者は、ローマ皇帝に宣戦したものと看做す”の一文(旅行者の人身保護規定文)が記入されていた。

このように、初期のパスポートは現代の査証に類似しており、その主な機能は所有者の身分と国籍を証明するものである。1920年代まで、パスポートは一枚の紙面であった。現在の冊子形式のパスポートは英国の市販製品に起源を持ち、それは入出国証印のための冊子が入ったの小物入れであった。数年後英国政府がこのデザインをコピーした。

パスポート (passport) という言葉は、海の (port (ポート)) だけでなく、都市城壁の (porte(ポルト)) を通過する(pass (パス))ために要求された中世の文書が起源であると考えられる。中世ヨーロッパでは、かかる文書を、地方当局より誰にでも発給することができ、通常所有者に通過を許可した町や都市のリストが含まれていた。フランスでは、1793年、国内外を問わずすべてのフランス人旅行者に居住地の警察署が発行するパスポートの取得を義務づけている。この制度は1860年代まで続いた。当時のフランスでは宿に泊まるにも就職するにもあらゆる場面でパスポートの提示が必須であった。犯罪歴のある人物には黄色いパスポートが発行されあらゆる場面で差別を受けていた。この様子はレ・ミゼラブルの中で書かれている。

この時代、開かれた貿易地点であると考えられた海港への移動では、パスポートはあまり求められなかったが、そこから内陸の都市へと移動するには必要であった。初期パスポートは、必ずではないが多くの場合、所有者の身体に関する記述を、20世紀初頭の頃のみであるが写真と共に収容していた。

国内でのパスポート携帯は、西ヨーロッパでは19世紀半ばには廃れた。一方旧ソビエト連邦など、社会主義国では国内パスポートの義務付けが行われていた。日本でも戦時中は「旅行許可証」が発給され、保持していない者は移動が許されなかった。

日本最初のパスポートは、住所、氏名、年齢以外に目、鼻、口、顔など写真が普及していない時代に顔の特徴が明記されていた。

国際民間航空機関 (ICAO) の役割[編集]

第一次世界大戦の後、国際連盟におけるInternational Conference on Passports, Customs Formalities and Through Tickets(仮訳:旅券、通関手続きと通し切符に関する国際協議会)、後に国際連合国際民間航空機関 (ICAO) が、パスポートのレイアウトと機能についての標準ガイドラインを発行した。これらのガイドラインは、現代のパスポートを大きく方向付けてきた。

ICパスポートの導入[編集]

ICAOは偽造防止・利用者の利便性向上のためICパスポート導入を検討し、2005年に国際標準を策定。アメリカ同時多発テロ事件後のテロリズム対策の強化などもあり、各国はICパスポートの導入を進めている[1]

特にアメリカ政府アメリカ合衆国国土安全保障省出入国管理及び市民権局)は、テロ対策に伴う入国管理強化の一環として、諸外国にパスポートへのICチップ技術の導入を強力に求め、対応しない国の国民にはビザ免除プログラム適用を認めない態度を取っているため、生体認証のための情報などをICチップに記録しようとする動きが起こっている。

日本のパスポート(旅券)について[編集]

10年用の日本の一般旅券
(ICパスポート)
外務大臣要請文と名義人の身分事項ページ(非ICパスポートのもの。ICパスポートはレイアウトが異なる)

日本の法令上では、パスポートのことを旅券(りょけん)と呼ぶ。詳細は、旅券法(昭和26年法律第267号)、旅券法施行令(平成元年政令第122号)、旅券法施行規則(平成元年外務省令第11号)により定められている。

種類・様態[編集]

日本には、(一般)旅券・公用旅券・外交旅券・緊急旅券の4種類のパスポートがある。いずれの旅券にも、皇室の紋章でもあり、日本の在外公館において国章に代わり慣例的に用いられている十六八重表菊と同じ菊花紋章のひとつである十六一重表菊が表紙中央に印刷されている。また、身分事項ページの顔写真上部には、首相政府内閣)、皇室の慣例的な紋章である五七桐花紋が印刷されている。また「日本国旅券」の文字は篆書体で印刷されている。

なお、サイズはB7サイズ(ISO規格のものであって、JIS規格ではない)である。

  • (一般)旅券 - 一般的なパスポート
    • 有効期間は、5年用(紺色)と10年用(赤色)の2種類がある。成人者はどちらにするか選択できるが、未成年者は5年用しか取得できない。これは「未成年者は成長に伴う容貌の変動が著しい」とみなされているため。
    • 現在は、期限内なら何度でも出帰国できる「数次旅券」が原則となっているが、以前は1回の渡航のみに使用できる「一次旅券」も自由に申請・取得できた(法令上は一次旅券制度自体は残っているが例外的運用となっている)。
    • 通常は渡航先がすべての国と地域となっている[2]が、犯罪を犯したり検察庁から公訴を提起されている者・仮出所中・執行猶予中など事情がある者については、行き先や有効期限が制限されたパスポート(限定旅券)が交付されたり、申請を却下される事もある。
  • 公用旅券 (OFFICIAL PASSPORT) - 国会議員や一般の公務員、公的機関の職員(例として国際協力機構のエージェントや青年海外協力隊の隊員、学術研究機関の学者など)、文化庁の認める在外研修員が公務で外国へ渡航する場合に交付される。
    • 「OFFICIAL PASSPORT」表記で緑色の表紙
    • 赴任・帰任の往復のみ有効な一次旅券が原則だが、渡航が頻繁な者に限って数次公用旅券が発給され、またヨーロッパなどへの派遣の場合、申請によって渡航先を増やす事も出来る。
    • 一般旅券とは内容も違い、身分証欄には名義人の官職名や旅行目的(普通は「政府(所属機関)の命による」である)が記載されている。
  • 外交旅券 (DIPLOMATIC PASSPORT) - 皇族、三権の長、国務大臣等政府高官、外交官等が公務で渡航する場合に交付される。つまり、皇族以外の国民は個人で持つ一般旅券と必要に応じて外交旅券や公用旅券、両方を取得する事になる。
    • 「DIPLOMATIC PASSPORT」表記、濃茶色の表紙
    • 渡航地までの往復の一次旅券が原則だが、渡航が頻繁な者(職業外交官など)に限って数次外交旅券が発給される。公用旅券同様、身分証欄には名義人の官職名があり、「注意」の欄には旅券法違反時の罰則についての説明書きが無い。
    • なお、外交旅券を持っている事と外交特権がある事は全く別である。外交特権を得るには外交官アグレマンを派遣先政府から受けなければならない。また公用と外交の旅券は本人の所属機関から発給申請が行なわれ、個人で申請する事は出来ない(旅券事務所にも申請書はない)。取得理由の任務が終わったら帰国後に返納する。
  • 緊急旅券(EMERGENCY PASSPORT)[3] - 在外公館に設置された旅券作成機が故障等で交付が不可能で、なおかつ本国外務省での旅券交付を待つ時間的余裕がない場合や帰国のための渡航書の交付基準に当たらない者に交付される。
    • 「EMERGENCY PASSPORT」表記
    • 有効期限は1年。
    • 一般旅券と同様に利用できるが、スタンプによる記載のため機械式読み取り、ICチップによる読み取りは不可能。そのため一部の国では査証免除取極の適用外となる。

なお、天皇皇后は国際慣習における元首待遇により旅券は必要無い。

この他に、渡航先で旅券を紛失して再発給を待つ時間が無いなどの理由がある人に対し、日本へ帰国する渡航中に使用するための1回限り使用可能な渡航文書として「帰国のための渡航書」が交付される。この場合は当該渡航書の発給と同時に日本の外務省の記録上でそれまで所持していた旅券が無効化されるため、元の旅券が後日発見されても使用することはできず、新たに旅券取得の手続をする必要がある。また、旅券を持っていない(又は自分の旅券が失効してしまっている)が「親族が外国で急な事故に巻き込まれ救援等に出向く必要がある」「外国で行われる発表展示会や研究・開発の発表に出席しないと日本の国益を損ねる」などという事態が発生した際には即日または翌日発行の「緊急発行」という処理方法がある(通常は申請から交付通知発送まで1週間ほどかかる)。

日本に到着後の入国審査官による帰国手続の際、船員手帳しか持っていない、パスポートの期限が失効していた等々の理由で帰国確認の証印を押せない場合は、「帰国証明書」が交付される。こちらは「帰国のための渡航書」のように外務省が発行する文書でなく、法務省地方入国管理局に属する入国審査官の判断・都合により交付されるもの(渡航文書の代替でなく証印の代替)に過ぎないため、法令上直ちに元の旅券が失効とはならない。

また現在の日本で唯一の「住所が本人手書きで、住民票と異なる住所の記載が許容される写真付きの公的な本人確認書類」である。

なお、アメリカ合衆国による沖縄統治時、沖縄県以外に戸籍を置く日本国民がアメリカ施政権下の沖縄県に渡航する際には、旅券ではなく、日本政府が発行する「身分証明書」という特殊な書類を要し、逆に沖縄県に戸籍を置く日本国民(「琉球住民」)が日本本土へ渡航する際には、琉球列島米国民政府が発行する「日本渡航証明書」が必要であった。(出入管理庁#渡航手続アメリカ合衆国による沖縄統治#交通

記載事項[編集]

名義人の身分事項ページ(ICパスポート)

一般旅券の身分事項のページには以下の事項が記載されている。

  • 型 - パスポートの頭文字『P』
  • 発行国 - 『JPN』
  • 旅券番号
姓名は原則としてヘボン式ローマ字大文字)で記載。別表記が認められた場合はそれを括弧で付記 [例:SATO (SATOH/SATOU)]。2000年4月から長音表記 に[H]の使用が認められた[例:SATO (SATOH)][4]。また2008年2月からは、明確な理由・主義・理念・信条等があってその旨を申請し、申請書裏面にある誓約欄に、その後生涯氏名の表記を変更しないことを誓う署名をすれば、非ヘボン式ローマ字でも受理されるようになった。
  • 国籍 - 『JAPAN』
  • 生年月日 - 『DD MMM YYYY』の形式で記載(MMMは英語月名の頭3文字。以下同じ)
  • 性別 - 男性は『M』、女性は『F』
  • 本籍 - 本籍地の都道府県名のみヘボン式ローマ字(大文字)で記載
  • 発行年月日 - 『DD MMM YYYY』の形式で記載
  • 有効期間満了日 - 『DD MMM YYYY』の形式で記載
  • 所持人自署 - 申請書に書いた署名が転写される
  • 発行官庁 - 日本国内で発行された場合は『MINISTRY OF FOREIGN AFFAIRS』(つまり外務省)、在外公館で発行された場合は当該公館の英語名称

また、次のような外務大臣要請文(日本語及び英語)が、表紙裏面(非IC旅券は身分事項ページの次葉)に記載されている。

日本語

『日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、関係の諸官に要請する。 日本国外務大臣(公印)』

英語

『The Minister for Foreign Affairs of Japan requests all those whom it may concern to allow the bearer, a Japanese national, to pass freely and without hindrance and, in case of need, to afford him or her every possible aid and protection. 』
  • ICパスポート化されてから、身分事項の一部文字に白抜きマイクロ文字が追加されている。
    • 発行国「JPN」のそれぞれ縦棒(Nは左側)に、生年月日が挿入されており、Jには西暦の下二桁、Pには月、Nには日が挿入されている。
  • ICパスポートの所持人自署の上にある細かな穴は、16行16列のドットの水平、垂直のずれで情報を符号化しているようである。
    • 水平方向にずれているドットをプロットすると、「JP」の2文字が現れる。

ICパスポート[編集]

ICパスポートのICチップ(集積回路)が埋め込まれたページ

外務省(領事局旅券課)は2006年3月以降、アメリカ合衆国の要請により一般・公用・外交全種の旅券においてICパスポート(バイオメトリック・パスポート)を導入、交付を開始した。旅券の表紙にはICパスポートを示す世界共通マークが表示されており、後半の厚めのページにICチップが埋め込まれている。現在は顔写真のみが電磁的記録されているが、将来的には、生体認証虹彩認証、指紋認証、顔認証など)を利用した出入国管理を行う計画があり、現在関係省庁において実験(e-Passport 連携実証実験)及び検討が行なわれている[5]

単にICパスポートと言った場合は、氏名、生年月日、性別、国籍、有効期限、旅券番号などのいわゆる文字情報がパスポート内部に電子的に記録されているだけだが、バイオメトリック・パスポートとして知られているものは、写真画像を記録して入国審査時に所持人の実画像と電子的に比較したり、さらには指紋画像まで含まれているものあり、海外においてはeパスポート (e-Passport/e-passport) と呼ばれることもある。すでに世界で50カ国を超える国がバイオメトリック・パスポート(eパスポート)を導入している[1]。またICパスポートやICを搭載したIDカードを導入した地域では、自動出入国システムの設置も順次進んでいる。

日本では2007年11月より、成田空港自動化ゲートが設置された。アジアにおいてもシンガポールチャンギ空港や、シンガポールとマレーシア国境における自動出入国システム、香港中国深圳の出入境に置かれた香港居民のための「e-channel/e-道」などがすでに運用されている。

なお、一部にある誤解とは異なり、ICパスポートに電子的に査証が書き込まれることはない。ICパスポートに記録されている情報は、改変を防ぐためからも機構的に読み出し専用である。目に見えるスタンプやシールのない査証は、査証を発行した国の入国管理当局のサーバコンピュータに査証情報が保存されているだけである。

申請(一般旅券の場合)[編集]

旅券は、原則として住民票のある都道府県の旅券窓口(パスポートセンター)で申請する。2006年以降は、旅券発給業務の市町村への移譲に伴い、地域の市役所・町村役場等が窓口になっている自治体もある(茨城県栃木県新潟県岐阜県静岡県岡山県広島県愛媛県佐賀県熊本県など)[6]。 海外からの一時帰国者など住所のない者については、一時滞在地での申請が認められるなどの例外がある。申請手続の正確な情報については、当該窓口に問い合わせるか、外務省の公式サイトや各自治体のパスポート関係の情報を確認のこと。

一般に国内窓口での初申請において必要とされるものとしては、以下のものがある。

  • 申請用紙 - 窓口、支庁市・区役所・町村役場等に用意してある。2009年6月に申請書が改正され新様式となり、非へボン式・別名併記や外国式の名前を希望する場合の「非ヘボン式ローマ字氏名表記等申出書」の提出が不要になった[7][8]。旅券窓口によっては、在庫がある場合は旧様式の申請書も使用している。
  • 身分を証明する文書(運転免許証等。種類は厳格に定められている。)
  • 戸籍謄本・戸籍抄本(戸籍が電子化されている市町村では戸籍全部事項証明書または戸籍個人事項証明書)
  • 住民票の写し - 住基ネットに接続されている自治体住民は不要[9]。住民票が必要な場合、宮城県など、本籍地の記載を求められる場合もある。住基ネットの利用ができない自治体住民である場合はもちろん、住居の異動直後の場合や住基ネットに接続されていても利用を希望しない(拒否する)場合には必要。
  • パスポート用の顔写真 - 写っている顔の大きさに制限があるので、撮影の際には注意すること(2006年3月20日以降の申請から、ICチップ内蔵型旅券発給開始に伴い、申請用写真の規格が変更された)。眼鏡を使用している場合、かけたままでも構わないが、光がレンズに反射する場合等は不可の場合がある。
  • 印鑑 - 書類への押捺を済ませていても、記載事項訂正を要する場合に備えて認印(身分証明を印鑑証明で行なう場合は登録印章)を持参する。

なお、2009年3月1日以降の申請から、それまで必要だったはがきは不要となった。以前は、未使用のはがきに、宛先として住民票記載の住所及び氏名を記載したものが必要だった(家族が同時申請する場合ははがきは1枚で良かった)。発給準備が整うとこのはがきが通知として使われ、申請者はそのはがきを持参・提出して受け取る事になっていた。 申請については、本人以外でも、同居親族等本人が指定する者が代行できる(前もって申請書を入手し、指定箇所に本人の署名が必要)が、受け取りは本人が必ず出向かなければならない。なお、未成年者の申請は親権者の同意が必要となる。

以下のようなケースでは、必要書類が異なるので確認すること。

  • 国外(在外公館)で申請する場合
  • ページの残りが足りなくなった場合(増補 - 1回しか認められない。2回目からは新規発給となる)
    • 上記の場合は、住民票のある都道府県の旅券事務所に「一般旅券査証欄増補申請書」を提出する。40ページからなる増補(すべて査証用ページ)が末尾に挿入・編綴される。日本と海外の渡航の反復が多いビジネスマンなどに需要がある。
    • この増補は、旅券の使用途中に行い得るだけでなく、新規発給の際に同時に申請する(つまり最初から40ページ多い状態で発給を受ける)ことも可能である。

なおパスポート申請についても電子申請制度が導入されたことがあった。しかし、2005年度の利用が103件に留まり、財務省予算執行調査で1件あたりの経費が1,600万円程度かかっていることなどが指摘され[10]、2006年に廃止された。

旅券法改正により、2006年以降旅券発給業務が市町村でも可能になり、関係条例および準備が整った自治体では、住民票のある市町村役場で申請・受領を行う[11]。指定された市町村の住民については、県による窓口が廃止され、市町村役場の窓口での手続きとなる[12][13]

日曜日も開いている窓口があるが、ほとんどは受領のみで、申請はできない。ただし、和歌山県では2010年より都道府県レベルでは初めて日曜日の申請を受け付けている[14]。なお、前記した旅券発給業務の市町村委譲によって、一部の市町村の住民は日曜日の旅券受領ができなくなり、サービス低下につながっている側面もある。

受領(一般旅券の場合)[編集]

パスポートの受取りに必要な書類は次のとおり。申請は親族・旅行業者などによる代行が広く認められているが、受領に関しては(別人による不正受給防止などの観点から)原則として本人が直接窓口で対面形式で受領することが必要となる。

  • 一般旅券受領書(申請受理時に都道府県庁の窓口において申請者(代行者含む)に交付)
  • 所定の手数料に相当する収入印紙(旅券申請窓口か郵便局において購入)及び都道府県収入証紙(旅券申請窓口などで購入)
  • (2009年2月28日までに提出された申請の場合は)都道府県から本人あて送付を受けた官製はがき
    • 2009年3月1日以降提出の申請の場合、受領時のはがきの提出制度は廃止された。

受領の期限[編集]

パスポートは発行の日から6か月以内民法140条の規定により発行当日不算入)に受領しないと失効する。その後に改めて発行を希望する場合は再び新規発給申請の手続きをとる。前回の申請の受領書と官製はがきの提出を要求されることがあるが必ずしも必要ではない。

パスポート名義人が死亡した場合[編集]

パスポート名義人が何らかの理由で死亡した場合は、死亡した事実が分かる書類と共にパスポートセンターへ提出及び日本国パスポートを返却しなければならない。なお、日本国外の場合は、日本大使館または日本総領事館へ持参すれば良い。[15]

日本のパスポートの歴史[編集]

日本初のパスポート(1866年発行)
  • 1866年5月21日慶応2年4月7日)日本初のパスポート誕生、当時は「ご印章」と呼ばれ、学業・商業のみの利用制限であった。留学経験者やフランスの役人の話を元に、1枚の和紙に墨で書かれた。写真の代わりに、容姿の特徴が書かれてある。
  • 1878年明治11年)2月20日 「海外旅券規則」において初めて法的に「旅券」という用語が使われた。その120年後にあたる1998年(平成10年)に、これを記念して2月20日を「旅券の日」と制定した。
  • 1900年(明治33年)6月4日 「外国旅券規則」が制定され、根拠法令の名称が「海外旅券規則」から変わった。ただし、当時、上等の旅客においては、旅券なしでも海外渡航ができた[16]
  • 1917年大正6年)1月20日 「外国旅券規則」の改正により、パスポートへの写真貼付がはじまった[17]
  • 1926年(大正15年)1月1日 国際的な基準に従い、パスポートが手帳型になった[18]
  • 1951年昭和26年)11月28日 旅券法が公布され、旅券が法律によって定義されることになった。この旅券法に基づき同年12月1日に交付された「一般旅券発給申請書等の様式に関する省令」によって、従来の「外国旅券規則」は廃止された。旅券法が法律として定められたのは、渡航の制限、手数料、罰則などが新憲法下で法律事項とみなされるようになったからであった[19]
  • 1992年平成4年)11月1日 国際的な基準に従い、機械読取り式旅券(Machine Readable Passport=MRP旅券)の発給が開始される。
  • 1995年(平成7年)11月1日 それまでの有効期間5年間のものに加えて10年間有効の旅券も発行されるようになった。ただし、未成年者の場合は5年間のものしか取得できない。
  • 2004年(平成16年)3月29日 岡山県で、全国初の電子申請開始。以後各県で開始される。
  • 2006年(平成18年)3月20日 ICチップ内蔵型旅券の発給受付開始。
  • 2006年(平成18年)9月30日 電子申請終了

なお、都道府県発行の報告書に歴史が詳しく記載されている場合もある[20]

備考[編集]

パスポート盗難[編集]

外国において日本のパスポートは盗難の被害に遭いやすい。これは日本が多くの国と友好な外交関係を結んでおり、ビザなしで入国できる国が多いことが挙げられる。外国ではパスポートは「日本国民」であるという証明であり国際的に通用する身分証明書であるため国外滞在中に紛失・盗難するとパスポートを再発行、または帰国のための渡航書が発給されるまで帰国できなくなる。

団体の代表者・引率者・添乗員等がまとめて保管しているのは盗難の格好の的となるため、日本政府は旅行代理店に対し添乗員等がパスポートを不用意に預かってはならないと指導している。

特定国独自の取扱[編集]

  イスラエル
  イスラエルのパスポートで入国できない国
  イスラエルのパスポート、イスラエルのスタンプやビザを含むパスポートで入国できない国

国によっては政治的な問題により、パスポートの国籍や渡航記録だけで入国拒否されることがある。

イスラエルとイスラム諸国の対立[編集]

複数のイスラム国家で、イスラエルのパスポートによる入国が拒否されるだけでなく、パスポートにイスラエルの出入国スタンプやビザが残っている外国人も入国拒否の対象となる。イスラエルは対抗して当該イスラム諸国民及び各国に滞在した経験のある人を入国拒否している。

アメリカ合衆国[編集]

アメリカではアメリカ同時多発テロ事件を受け、2006年10月26日以降に発給されたパスポートは、ICパスポート(バイオメトリック・パスポート)でなければ査証(ビザ)免除を認めないとアメリカ合衆国国土安全保障省が決定した。

日本では2006年3月20日以降、ICパスポート(バイオメトリック・パスポート)の発給を開始している。それ以前に発給されたパスポートも、機械読み取り式旅券であれば(日本国内で発行された日本旅券は全て機械読み取り式旅券)、2006年10月26日以降もビザなしでアメリカへの入国が可能である。ただし、2010年9月以降は電子渡航認証システム (ESTA) での承認(特別な事由を除いて、承認対象のパスポート有効期限または承認後2年間のどちらか短い期間まで有効)が必須となった[21]。申請に際して手数料14米ドルを徴収される(これは「旅行促進法」が3月に公布され、半年以内の施行が決定したことによるもの)。有効なビザまたは ESTA の承認有効期間でなければ、入国を拒否される。

リビア[編集]

大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国では2007年(平成19年)11月以降に、アラビア語併記の無いパスポートでの入国はできなくなり、リビアに入国するためには、あらかじめパスポートにアラビア語併記の手続きをしておく必要があった [22]。カダフィ政権が崩壊し、リビア国となってからは、旅券のアラビア語併記の手続きは不要となっている[23]

セカンド・パスポート[編集]

パスポートといえば、通常は自国民に対して交付するパスポート(ナショナル・パスポート)が一般的だが、その他にもさまざまな種類のパスポート・渡航文書が存在する。

  • 自国と関係の深い外国人等に便宜的に交付する外国人パスポート (Foreign Passport)
  • 外国人に対し自国への再入国を担保(再入国許可)する為に交付する再入国許可書(ナショナルパスポートに直接交付される再入国許可証とは違う物)
  • 難民条約・難民議定書に基づき認定された難民に対し難民を庇護している国が交付する難民旅行証明書(日本では外務省ではなく法務省が発行)
  • 敵視し合っている・交戦状態にある複数の国へ渡航する必要がある場合に申請する2冊目のパスポート[24]
  • 互いに相手国の存在を認めていない場合に、その地域を訪問するために、パスポートの代わりに利用される身分証明書。韓国人が北朝鮮に渡航する為の「訪問証明書」や「観光証」(開城金剛山観光用)、台湾人が中国に渡航する為の「台湾居民来往大陸通行証」や、中国人が台湾を訪問するための「中華民国台湾地区入出境許可証」などがある。いずれもビザなどの押印ができるように冊子型の体裁を整えている。

また、政府以外の機関がパスポートに相当すると主張しているものとして

  • いくつかの非公的機関が、旅券に偽したカモフラージュ・パスポートと呼ばれるものを提供している。発行元の非公的機関は、いくつかの国で、場合によってはビザの発行などが認められることもあると主張している。
  • 多額の投資と一定期間の居住により市民権を得た後、パスポートの発行を申請する事が出来る国があると主張する業者も存在する。主な用途としては、租税回避、テロ回避(米国パスポートを所持しているとテロリストに狙われやすい)などが主張されている。

国際機関が発行する渡航文書[編集]

その職務の特殊性から、国際連合(レセパセ)・国際赤十字などの国際機関が発行する渡航文書も存在する。

パスポートの代替[編集]

関係が良好で交流が盛んな国の間では、その他の身分証での入国が認められたり(例:EU)、旅券による出入国管理自体が行われていなかったりする所もある[25]

また、独自の出入境管理を行っている香港では、居住者は所持を義務付けられているIDカード(香港IC身分証)で出入境が可能で、e-道という自動出入境ゲートがある(IC身分証を持っている香港在留資格のある外国人も利用できる)。

同様の自動出入境ゲートサービスがオランダのアムステルダム・スキポール空港にも存在する。

文化[編集]

派生的表現[編集]

「パスポート」は、本来の意味を拡張して広い意味で使われることがある。

  • フリーパス
遊園地などで施設利用権付き入場券を「パスポート」と呼ぶことがある。京王アミューズメントパスポートのように施設利用権付き切符を指すこともある。のびのびパスポートどこでもパスポートのように複数の施設を利用できる券を「パスポート」と呼ぶこともある。なお、フリーパスの語源はfree pass(自由に通れる)であり、パスポートの略ではない。
  • 資格
資格として「パスポート」が使われることがある。日本の国家試験である「ITパスポート試験」がその例である。

規格[編集]

  • パスポートサイズ
パスポートの大きさを基準として、バッグやトラベルノートなどのサイズとして「パスポートサイズ」という表現が用いられることがある。
またパスポートに貼り付けられる写真のサイズがほぼ規格化されているので「パスポートサイズの写真」という表現が用いられることもある。

脚注[編集]

  1. ^ a b NXP Semiconductor 「世界中で導入されるeパスポート」
  2. ^ 1991年3月31日以前に発行された一般旅券では「朝鮮民主主義人民共和国を除くすべての国と地域」となっていた。
  3. ^ http://www.sk.emb-japan.go.jp/jp/passport.html
  4. ^ 「ONO」ではオノさんなのかオオノさんなのか判別出来ず、事故の際の身元確認に支障を来たす為。
  5. ^ http://www.cas.go.jp/jp/siryou/050114e-Passport.html
  6. ^ 2006年3月の改正旅券法施行に伴う、各地域法令による。
  7. ^ 「一般旅券発給申請書の記入例」、平成21年6月改正後の申請書様式 東京都パスポートセンター
    その他過去の変更様式:2005年12月10日から罰則関係欄の事項が追加、2006年3月20日写真サイズ変更に伴い該当部分の説明が変更された。
  8. ^ 「氏名表記例外(非へボン式・別名併記)や外国式のお名前を希望する場合」, 神奈川県 一般旅券発給申請書(裏)の記入例 2009年8月3日
  9. ^ かつて、長野県では県の方針により住基ネットに接続していなかったため住民票を必要としていたが、2008年5月以降は住民票は原則不要となった。
  10. ^ 安延申 (2006年7月13日). “利用者視点に欠けていた行政サービスの実例--パスポートの電子申請 財務省が公表、「旅券の電子申請は一件当たり費用が1600万円」”. IT PRO. http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060713/243238/ 
  11. ^ 静岡県のように、住所地以外の市町村役場でも申請可能なところもある。
  12. ^ 「県内16市町村で旅券発行可能に 県行革で業務移譲」 琉球新報 2010年1月26日
  13. ^ 岐阜県のように、県の窓口と市町村の窓口が選択できるところもある。
  14. ^ “パスポートの日曜申請受け付け好調”. わかやま新報. (2011年8月26日). http://www.wakayamashimpo.co.jp/news/11/08/110826_11622.html 
  15. ^ こんな時、パスポート Q & A”. 外務省. 2013年1月19日閲覧。
  16. ^ 女子海外渡航便宜法『女子就業案内』菅原臥竜、1906年
  17. ^ 外交史料 Q&A
  18. ^ 外交史料 Q&A
  19. ^ 昭和26年11月13日衆議院外務委員会
  20. ^ 例・福島県の平成21年の報告書
  21. ^ 米国大使館による説明 http://japanese.japan.usembassy.gov/j/visa/tvisaj-esta2008.html
  22. ^ リビアへの渡航を予定されている方へ - 外務省 (2012年7月25日閲覧)
  23. ^ 海外安全基礎データ リビア2013年8月10日閲覧
  24. ^ 旅券法第4条の2但し書き。相手国のビザや出入国記録があるとスパイ行為を疑われる。例としてアラブ諸国ではイスラエルの入国記録が、イスラエルではアラブ諸国に滞在した記録があると入国が認められない。申請理由の「対立地域渡航」をマークする事で正当と認められれば許可される。
  25. ^ 例:EU加盟国を中心としたシェンゲン協定批准各国内や、独立国家共同体内。ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体内でも予定されている。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]