エコノミークラス

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シルクエアーのエアバスA320型機のエコノミークラス

エコノミークラス(Economy Class)は、旅客機の客席の基礎となる座席区分のことである。

概要[編集]

基礎クラス[編集]

旅客機における座席区分の一つで、最も基礎になる区分(クラス)である。鉄道でいうと日本の「普通席」(普通車)、ヨーロッパの「二等車」に相当するが、ほとんどの場合、座席のシートピッチ(前後の間隔)は日本の新幹線特急列車はおろか普通列車の普通席よりも狭く(日本の鉄道車両では最も狭い特急型車両の普通席や転換クロスシート仕様の近郊型車両の標準的な座席で910mm ~ 東海道・山陽新幹線の普通席で1040mmであるのに対し、エコノミークラスは760~850mm前後)である。観光バス高速バスの4列シートに近い。→日本のバスの座席#リクライニングシートを参照。

設定[編集]

国内線や近距離国際線、格安航空会社はエコノミークラスのみが設定されているケースが多く、国際線の場合はさらにビジネスクラスが、中長距離国際線やビジネス客が多い国際線はさらにファーストクラスが設定されることが多い。なお、日本国内線においては現在も「普通席」との呼称で呼ばれることが多い上、中級席も「スーパーシート」、「クラス〇〇」などの呼称が使われている。基本的には座席スペースとサービス内容により格差がつけられている。

歴史[編集]

導入[編集]

1920年代以降に旅客機による旅行が本格化し、旅客機の収容人数が増えて、客船や鉄道などと同様に機内客室が上級席と普通席にクラス分けされて以降、上級席はファーストクラス、普通席はエコノミークラスと呼ばれるようになった。なお当時は、エコノミークラスは機体前部に置かれることが多かった。

南アフリカ航空のダグラスDC-4B

その後1945年8月の第二次世界大戦の終結に伴い民間航空が再興され、またで使用されていたダグラスDC-4Bなどの輸送機が格安で払い下げられたことから、アメリカや一部のヨーロッパ諸国で航空旅行が一般化してきた1940年代後半以降から1970年代に至るまで、殆どの大手航空会社IATAと航空会社、各国政府の間で決められた事実上のカルテル料金体系を維持しており、乗客は割高な国際航空運賃を一方的に押し付けられていた。

この様な状況であったこともあり、多くの国では旅客機での外国旅行は富裕層などの限られた旅客のものとされていた。そのために、下位クラスと言えどもそのサービスはあくまで「ファーストクラスに比べて簡素」と言う程度のものであった。

コスト削減[編集]

しかし1970年代初頭に、それまで主流であったボーイング707ダグラスDC-8などのジェット旅客機の倍程度の座席数を持つ超大型機であるボーイング747が登場し、航空会社が販売する座席供給数が急激に増えてこれまでの運賃では乗客を確保できなくなった結果、カルテルはなし崩し的に崩壊し、団体割引航空券などの格安航空券が市場に出回るようになった。

その上に、1978年にアメリカのジミー・カーター政権によって施行された航空規制緩和(ディレギュレーション。新規航空会社の設立や路線開設が事実上自由化された)の影響もあり各航空会社の利幅が急激に減少したことから、シートピッチの縮小や機内サービスにあたる客室乗務員数の削減、歯ブラシや歯磨きなどのキットの廃止、アルコール類や機内映画(イヤホン貸し出し)の有償提供(この2つは1970年代までIATAにより有償で提供することと決められていた)、機内食の選択が不可など、そのサービスはコストを意識したものとなっていった。

サービス内容の向上[編集]

ブリティッシュ・エアウェイズのエコノミークラス「ワールドトラベラー」の個人用テレビ

1970年代以前は座席の幅こそ現在よりも大きかったものの、上記のようにアルコール類や機内映画の有償提供、機内食の選択が不可というような航空会社が多かった。しかし1980年代以降の国際線における急激な競争激化を受け、それらのサービスの無償化や選択の多様化が図られた他、中長距離国際線を中心に、個人用テレビの装着や機内食の選択肢の増加、個人用機内電話の装着などサービスの充実が図られているものの、その反面、最も乗客あたりの収益率が少ないクラスということもあり、コスト削減策は以前と変わらず率先して図られている。

シートの狭さ[編集]

上記のようにエンターテインメント関連を中心に、技術の向上を受けて追加されたサービス内容も多いが、静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)を引き起こす可能性のあるシートピッチの狭さは大きな問題となっており、航空会社に訴訟を起こすケースも見られている。新幹線等日本国内の他の輸送機器に比しても非常に狭いスペースであり、長時間の輸送に耐えうるスペースが確保されていないという批判が高まっている。特に近年は、中長距離国際線においても座席の前後幅の法的規制ぎりぎりまでの縮小だけでなく、横幅の縮小によりボーイング767型機で横7列から8列に(スカイマークやヨーロッパの格安航空会社など)、ボーイング777型機で横9列を10列に(全日空(国内線のみ)やエミレーツ航空など)増加させ、1機あたりの座席数を増やすなどの策がとられている。他方、長距離国際線を中心に70cm台後半であったシートピッチを80cm台後半にまで伸ばし、プレミアムエコノミーなどの名前で割増料金をつけたサービスが、新型機を中心に行われている他、血栓塞栓症対策に改良したフットレストを装備した会社も多い。

平均的なサービス[編集]

主に中長距離国際線でのもの。

タイ国際航空のエコノミークラスの機内食

運賃[編集]

複数の運賃[編集]

「エコノミークラス普通運賃」と呼ばれる、キャンセルや日程変更などの制限が少ないものが基本運賃として設定されているものの、実際は航空会社自らが販売する「正規割引運賃」(PEX運賃)や、旅行代理店経由で販売される「団体割引運賃」(IT運賃)が主に販売されている。なお、これらの割引運賃は普通運賃の半値以下で販売されるケースが多いものの、キャンセルや日程変更の制限が大きい上、マイレージポイントの加算が少ない(社によっては100%加算する場合もある)など様々な制限が加えられる。


中間クラス[編集]

上級もしくは普通運賃利用者向け[編集]

特に近年はビジネスクラスはフラットシートの導入など座席スペースの拡大、地上ラウンジや特設カウンターの提供、機内食の充実などのサービス改善の結果、エコノミークラスとビジネスクラスとの格差が拡大したため、この間を埋めるべく、普通運賃利用者向けに座席スペースを拡大し、機内サービスなどを充実させた「プレミアムエコノミークラスなどの中間(上位)クラス」などといった区分を設ける場合も出ている。→ビジネスクラス#第4のクラス参照

下級もしくは団体客向け[編集]

なお、エールフランスなどのヨーロッパ系航空会社はカリブ海路線等のリゾート路線を中心に、エコノミークラスとは別に「バカンスクラス」を設定しているケースが多い。これらはパックツアー客や格安航空券の顧客向けに提供されていて、エコノミークラスよりも更にシートの間隔を詰めサービスを簡素化したクラスとなる(ビジネスクラスとエコノミークラスと併設された3クラス制度で運航されている)。

また、かって運航していた日本エアシステム(現在の日本航空)では、MD-81/87/90に「ボーナスシート」を設定していた。(シートの背もたれの下げ幅に制限があるなど乗り心地が悪く、かつ胴体後部にエンジンがあるため外の景色を見ることができない上騒音が大きい最後部の座席を大幅割引で販売していたもの。詳細は日本エアシステムの項を参照)。

関連項目[編集]