シェンゲン協定
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シェンゲン協定(シェンゲンきょうてい、Schengen agreement)とはヨーロッパ各国において、共通の出入国管理政策及び国境システムを可能にする取り決めである。アイルランドとイギリスを除く全てのEU加盟国及び、EUに非加盟であるアイスランド、ノルウェーとスイスの計28ヶ国が協定に調印し、そのうち24ヶ国が施行している。シェンゲン協定加盟国間のボーダーポストや国境検問所は撤去されており、共通のシェンゲン査証により本地域各国への入国が可能である。但しこの協定は、非EU国民の居住や就業許可は対象外である。
本協定はベルギー、フランス、ドイツ、ルクセンブルク及びオランダの5ヶ国により、1985年6月14日にフランスとドイツに国境を接するルクセンブルクの小さな町・シェンゲン(Schengen)の近くのモーゼル川(Moselle)に浮かんだ船舶・Princesse Marie-Astrid上にて調印された。
協定の目標は、シェンゲン国家(Schengenland)という呼び名で知られるシェンゲン領域内での国境検問所・国境検査所の廃止である。シェンゲン国は欧州連合(EU。その当時の欧州共同体(EC))とは別のものである。またシェンゲン地域内には3つのEU非加盟国があり、2つのEU加盟国が存在しないにもかかわらずEUが持つ強みとなってきた。
その後さらに他の国々も協定に調印し、現在加盟国総数は28ヶ国を数えるに至った。
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[編集] 構成国と実施状況
1985年調印の協定は、シェンゲン地域創生のための手続きについて制定していた。その後1990年6月19日に調印されたシェンゲン実施条約(Schengen Convention、あるいはもっと完全にはConvention applying the Schengen Agreement of 14 June 1985 between the governments of the states of the Benelux Economic Union, the Federal Republic of Germany, and the French Republic on the gradual abolition of checks at their common borders/仮訳:ベネルクス経済連合、ドイツ連邦共和国及びフランス共和国国家政府間での、各国が共有する国境での管理の段階的な廃止に関する1985年6月14日 シェンゲン合意に係る協約)と呼ばれるシェンゲン地域を実現する協定が作られ、最初の文書に置き換えられた。
[編集] 構成国
調印年月とその国名は、次の通りである。
- 1985年6月14日:ベルギー、フランス、ドイツ、ルクセンブルク、オランダ
- 1990年11月27日:イタリア
- 1992年6月25日:ポルトガル、スペイン
- 1992年11月6日:ギリシャ
- 1995年4月28日:オーストリア
- 1996年12月19日:デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン
- 2004年5月1日:チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア、スロベニア
- 以下の国は調印はしたが、未実施である。
[編集] 例外
加盟国内における、次の地域はこの協定の対象外である。
- ドイツのヘルゴラント島(Helgoland)とビューシンゲン(Büsingen)
- フランスの海外県、海外領土、特別自治体
- オランダの蘭領・アンティル諸島、アルバ
- イタリアのリヴィーニョ(Livigno)
- ノルウェーのスバールバル諸島(Svalbard)
- ただしこの中のヤンマイエン島(Jan Mayen Island)は対象である。
- ただし正式にはシェンゲン地域から除外されるが、実質的には統合されているとみなせる。
- デンマークの労働協約では、グリーンランド及びフェロー諸島とシェンゲン加盟国の間を行き来する人々は国境での検査対象とならないと取り決められている。なお、the Traditional Free Movement of Persons acquis of the European Community(仮訳:伝統的な欧州共同体での人の自由移動)はグリーンランド及びフェロー諸島には適用できない。
[編集] 実施状況
- 1991年4月8日:ベルギー、フランス、ドイツ、ルクセンブルク、オランダ、イタリアのシェンゲン加盟国とポーランドの間での査証の廃止(同年3月29日に合意)
- 1995年3月26日:ベルギー、フランス、ドイツ、ルクセンブルク、オランダ、ポルトガル、スペイン
- 1997年
- 2000年3月26日:ギリシャ(但し名目上は1997年12月8日に実施したこととなっている)
- 2001年3月25日:デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、アイスランド
- 2007年12月21日:陸路および海路の入国について。チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア、スロベニア
- 2008年3月30日:空路入国も実施。チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア、スロベニア
- 今後の実施予定
2007年末から実施した東ヨーロッパ諸国と同時に調印したキプロスは、異なる予定で動いている。スイスにも実施が求められており、従って未実施は計4ヶ国、現在残りの24ヶ国がシェンゲン協定実施中となる。
シェンゲン加盟国以外に、特記すべきいくつかの国がある。正式にはシェンゲン地域には入っていないが、既に国境検問所が撤去されており実質的に加盟しているとみなせる国にモナコ、サンマリノ及びバチカン市国がある。他方アンドラには、国境検査所が残っている。
以上の国はこれまで伝統的な欧州共同体での人の自由移動について合意しておらず、また本協定の加盟国でもない。しかし、これら各国は隣接する国との間で、国境検査の廃止に関わる合意が存在する。地中海に接するモナコの場合、フランス当局がモナコ海港の国境管理を行っていることから、シェンゲン協定締結国であるフランスの一部ともみなせ実質的な加盟国といえる。
リヒテンシュタインもまたシェンゲン地域に含まれない。協定調印は済ませたが未実施であるスイスとの国境は自由に行き来できる。しかしオーストリアとの間では国境検査を行っている(同国内には空港がないため、国外からの移動は陸路に限られる)。また欧州経済地域(EEA)の一部として、伝統的な欧州共同体での人の自由移動を批准している。リヒテンシュタインはシェンゲン協定の調印へ向けて、2005年8月に交渉を開始した。
[編集] シェンゲン協定の規定
シェンゲン協定が制定される前、西ヨーロッパ諸国民は国民IDカード又はパスポートを国境で提示することで隣国へと移動することができた。他地域の国民はパスポートに加えて査証が必要な場合には、訪れたいヨーロッパの各国別々に取得せねばならなかった。国境検査所の膨大なネットワークが大陸を張り巡らされており、必要な書類作成並びに審査によって人の流れや運輸及び貿易に時間的な遅れや費用が余計に生じていた。
シェンゲン協定により加盟国間での国境検査は廃止するが必要な取り決めはそれだけに留まらず、加盟国のシェンゲン外に対する国境検査政策を統一することも意味する。これは、ある国が受け入れ可能であっても他国には入れなかった人物が片方が認めてさえいれば両方に入国可能になるために欠くことができない。例えばまた、もし入国基準が統一されていなければ移民者は最も入り易い国境を通過し、直接は入国しづらい国へと向かうこともできてしまうこととなる。
加盟国がもし自国国家の安全に関わるとみなせる状況と判断したときに短期的に国境検査所を設置することは、条約の2.2項により認められている。
- ポルトガルがサッカー欧州選手権2004開催時に設置。
- フランスがD-Day(第二次世界大戦において連合国がフランスのノルマンディーに上陸した日である1944年6月6日)の60周年記念式典で設置。
- フランスが2005年7月のロンドン同時爆破事件の後、一時的に設置。
- イギリスはシェンゲン地域でなく、つまりフランス-イギリス国境検査所は事件前から常に稼動していたにもかかわらず、設置されることとなった。爆破犯の一人は常にフランスを通じて各国と行き来しており、ローマで初めて捕えられた。
- フィンランドは2005年8月ヘルシンキ・オリンピックスタジアムで実施された2005年世界陸上選手権開催時に設置。
シェンゲン地域内での犯罪捜査に対抗するため、加盟各国警察はストラスブールに設置されたシェンゲン情報システムを通じて犯罪者、行方不明者等の情報を共有している。これにより互いの国が登録人物の背景についての情報を持つことで、ある加盟国から別の国へと移動することで消息をくらませることができなくなる。
以前には警察によって緊急追跡を受けている犯罪者は、何とか国境を渡ってしまえば警察があきらめざるを得なかったために逃げおおすことが可能であった。しかしシェンゲン協定の下では警察はそのまま国境を渡り追跡を続けることが可能となる。
シェンゲン協定は犯罪者による緩やかな国境検査の悪用を最小化するため、いくつかの関連政策領域で各国法令を一致させることを目指している。例えば麻薬に関するオランダとフランスの政策とは異なっていることから、オランダ国内で麻薬を購入しフランスへと運び込みブラックマーケットなどで売り捌こうと企むことは、2国間に国境検査所がなければ非常に簡単なことである。この麻薬関連政策の違いからフランスは条約の実施後もある期間、ベネルクス諸国からフランスへの入国者に対しての国境検査所を維持すると主張していた。
[編集] シェンゲン協定と欧州連合
ノルウェー、アイスランド及びスイスを除く全てのシェンゲン協定加盟国はEUのメンバーでもある。一方EU加盟国のうちの2ヶ国(イギリス及びアイルランド)は、シェンゲン協定に調印しないことを決めた。イギリスは国境検査所を維持し続けることを望んでいる。アイルランドはシェンゲン協定と同様な内容を持つCommon Travel Area(仮訳:共通旅行区域)に関する協定をイギリスと結んでおり、もしイギリスがシェンゲン協定に調印するならばアイルランドも同調すると述べている。またどちらも国民IDカードを発行していないこともあって、協定に加盟することはほとんど利点がないのである(デンマークも国民IDカードを発行していないが、全国民は付与されたCPR(Central Person Register)番号により様々な行政サービスを受けることができる)。またイギリスは歴史的に生きた動物を持ち込むことに対して厳格な規則を運用しており、国境検査を緩めようとはしなかった—イギリス諸島は他のほとんどのヨーロッパ諸国と違い狂犬病から免れている。
しかし一方では、イギリス又はアイルランドに在住するEU非加盟国の国民がEU内を移動するためにはイギリス又はアイルランドとシェンゲンの査証を別々に取得しなければならず、もしイギリスとアイルランドが協定に調印すれば大きな便益を受けるであろう。なおイギリスとアイルランドは2000年5月29日、シェンゲン情報システムの共用を開始した。
スカンジナビア諸国は、1952年以来シェンゲン協定と同様な自由移動に関する枠組み(Nordic Passport Union)を持っていた。これが、EU非加盟国であるノルウェーとアイスランドが協定に調印した主たる理由であった。
もともとヨーロッパは単一市場の実現を目指しており、シェンゲン協定は1985年の欧州共同体における域内市場統合計画に盛り込まれていた人の自由移動に関する一部であった。しかしイギリスなどの反対からEU加盟国間での合意が形成できなかったために、これに不満を覚え早期実現を望む国々がEUとは独立に協定を作って調印したものである。
1997年10月2日に調印され1999年5月1日に発効したアムステルダム条約では、欧州連合条約の枠組みへとシェンゲン協定を組み込むこととなり、事実上シェンゲン協定はEUの一部となった(当時のイギリス労働党政権が反対を撤回)。中でも欧州連合理事会が、シェンゲン合意の下で設けられた執行委員会に取って代わったことが特筆される。EUへの加盟希望国は、承認を受けるためにはEU外への国境政策に係るシェンゲン協定の基準を満足せねばならない。また、EU加盟国でないシェンゲン加盟国にとっては、このアムステルダム条約の結果、今後のシェンゲン協定の方向付けに関わる機会が少なくなっている。実際にそれらの国の意見は、目の前に提示されたものが何であれ賛成するか又は協定から離脱するかの二つに限定されてしまった。
なお、シェンゲン協定は欧州連合条約の一部となったにも関わらず、実際にはいかなるEUの機関によっても採決されていない。このため、協定の民主主義的な説明責任に関するいくつかの懸案が存在する。実際、ギリシャは協定に調印するに先立ちシェンゲン情報システムの合法性についての問題を提起し、個人情報への侵害ではないかと示唆した。
また、2005年5月27日にドイツのプリュム(Prüm)において、参加した7ヶ国によりシェンゲンIII協定が調印された。ドイツ、スペイン、フランス、ルクセンブルク、オランダ、オーストリア及びベルギーが調印したこの協定はシェンゲン協定とは別のものであるが、EU枠外での共同での取り組みとして、アムステルダム条約以前のシェンゲン協定に非常に近い枠組みを持つ。この協定は2004年3月11日に発生したスペイン列車爆破事件後にEUで議論されたPrinciple of Availability(仮訳:可用性の原則)、つまり各国の警察機関の間での全ての情報交換を前提としている。DNA特徴や指紋、車両、テロリストの攻撃に関する情報交換や航空警察官導入、シェンゲン協定では緊急追跡時に限られていた警察の国境横断からの大幅な権限拡大などが盛り込まれている。
[編集] シェンゲン国への入国
シェンゲン加盟国は、一つ、複数或いは全ての加盟国への3ヶ月を超過しない短期滞在のために統一された査証に関する詳細な規則を持っている。シェンゲン査証には通過用と短期滞在・旅行用があり、日本は査証免除国のうちの一つである。
査証を必要とする国の人々はシェンゲン地域と他の地域との国境において、供与された査証を提示することで査証の形式に応じて通過又は滞在を求めることができる。この共通査証はパスポート、旅行文書又は所有者に国境を通過する権利を与える他の有効な文書上に、加盟国によって貼付されたステッカーの形式で与えられる。
ただし、共通査証を単に申請して所持すれば良いということではない。もし所有者の滞在の目的と条件と同様、特に、その人物が持っているであろうその人なりの滞在中の必要最小限の生活手段が、シェンゲン協定が規定する通過・入国条件に合致することが必要である。
シェンゲン査証の獲得にあたって、旅行者は次の手順を経なければならない。
- 最初に、主たる目的地となるシェンゲン加盟国を一つ特定する。これによりシェンゲン査証申請の判断責任を持つ国家、つまり申請先の大使館又は領事館が決定する。もし複数の国の訪問を予定しているならば、シェンゲン地域の最初に入国する大使館へと、査証申請する必要がある。以上のいずれの国も、申請者の国において在外公館又は領事館を持たない場合には通常、申請者の国に存在するその国の代理となる他のシェンゲン加盟国の大使館又は領事館へと連絡を取る。
- シェンゲン査証申請書を、責任を持つ大使館又は領事館へと提出する。有効なパスポートともし必要ならばシェンゲン地域での滞在目的と状況を裏付ける資料(訪問の目的、滞在期間、滞在場所)を添えて、所定の記入用紙を提出する。また、滞在中の必要最小限の生活手段、つまり賄う必要のあるお金(滞在期間中の経費及び居住場所、また自国への帰還費用)について、立証する必要がある。申請者には査証申請のための理由を口頭説明させるため、本人が直接出頭するよう要請されることがあることを念頭に置くべきである。
- 最後に旅行者は、検疫を理由とする本国送還又は滞在中に発生した緊急医療措置に関連した費用を補填するための最小30,000ユーロの旅行保険に加入する必要がある。旅行保険の加入証明は、原則的にシェンゲン査証の許諾が降りたときに提出する。
なお、シェンゲン非加盟国の国民はシェンゲン地域内での滞在期間が制限されている。一般的な規則では最初に入国した日から数えて180日の間で、最大90日間の滞在が認められる。180日間で何回もシェンゲン地域を出入りする可能性がある場合、数次査証の供与が許諾される。ただしそのときのシェンゲン地域での滞在は、総計90日以下でなければならない。

