マニュアルトランスミッション

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マニュアルトランスミッション車におけるシフトノブの例
5速マニュアル車のシフトパターンの例

マニュアルトランスミッション: Manual Transmission, MT、手動変速機)とは、運転者の任意により減速比(ギア)を選択するトランスミッション(変速機)である。主に内燃機関を原動機とする自動車オートバイ、農業機械などに利用されている。

概要[編集]

一般的にマニュアルトランスミッション(以下MT)は、減速比が異なる歯車の組を、変速段数と同じ数だけ持つ。これに対し、代表的なオートマチックトランスミッション(以下、AT)は、遊星歯車機構の動作を切替えることで減速比の変更を実現しており、変速段数とギアの組数は必ずしも一致しない。現代の自動車に搭載されるMTは、運転者が任意のギア段に飛び越して変速することが可能である。他方、オートバイやレース車両に見られるMTでは、隣り合うギア段でしか変速することができないものが多い。後者を特にシーケンシャル方式と呼ぶことがある。

ATが開発され普及した結果、レトロニムとして旧来の手動による変速機がMTと称されるようになった。イギリス英語ではマニュアル・ギアボックスとも呼ばれる。日本語の慣例ではMTマニュアルなどと略称される。また、一部でMTを指して「ミッション」という略語が用いられる場合があるが、「ミッション」は「トランスミッション」の略で、MTかATかによらず変速機を指す[1]

2010年代において、日本国内の自動車販売台数におけるMT搭載車の普及台数は少なく、MTが主流の業務用の大型車や作業用車両、趣味性が強いスポーツタイプ乗用車などに搭載されるに留まる(詳しくは後述)。

内部構造[編集]

上図の構成は一例で、インプットシャフトに固定される歯車は必ずしも1つの場合だけではなく、上図でアウトプットシャフトに保持されている歯車の組み合わせのいくつかがインプットシャフトに保持される場合もある。前輪駆動の自動車のように、最終減速を含むディファレンシャルギアを内蔵する場合もある。

シャフト[編集]

MTを構成する歯車やシンクロメッシュ機構の軸(シャフト、: shaft)は複数あるが、入力軸と出力軸の配置により数が異なる。たとえばフロントエンジン・リヤドライブの自動車のように、一方から原動機のトルクを受けて反対側へ出力する場合、上図のようにインプットシャフト、カウンターシャフトおよびアウトプットシャフトの3本がある。インプットシャフトとアウトプットシャフトは同軸上にあることから、一方の端が中空でもう一方の端がその中に挿入された構造を採用する場合もあり、この場合は両方を合わせてメインシャフトと呼ばれる。一方、前輪駆動の自動車に多く見られるような原動機と同じ方向へ出力する形式の場合は、インプットシャフトとカウンターシャフトの2本である。

歯車[編集]

トランスミッションに組み込まれる歯車は、選択された段位の歯車だけが噛み合う選択摺動式と、歯車同士は常に噛み合っていながら歯車とシャフトの回転を噛み合いクラッチによって断接する常時噛み合い(コンスタントメッシュ、: constant mesh)式がある。

選択摺動式変速機において、歯車はそれぞれのシャフトにスプラインを介して軸上をスライドできるように保持されている[2]。歯車の歯面を滑らせながら噛み合いと分離が行われるため平歯車が用いられる。自動車用途では後退ギア以外で用いられることはほとんどない[2]

常時噛み合い式変速機において、歯車はシャフトとは独立して回転し、組み合わされる歯車と常に噛み合っている[2]。歯車の両側面には噛み合いクラッチに接続される歯が設けられ、歯車の隣には同じ噛み合い歯のクラッチハブがシャフトに固定されて回転している[2]。クラッチハブの外周にはクラッチスリーブが保持され、クラッチスリーブは内周の噛み合い歯でクラッチハブと噛み合った状態で軸方向にスライドできる。ある段位の歯車が選択されたときは、対応するクラッチスリーブがスライドして、目的の歯車とクラッチハブを接続して動力を伝達する[2]

自動車用のMTでは3段から8段まで、用途や時代に応じて異なる段数の前進ギアを備え、後進ギアは1段の場合がほとんどである。インプットシャフトとカウンターシャフト、アウトプットシャフトで構成されるMTのうち3段あるいは4段のものでは、最高段の「トップギア」はインプットシャフトとアウトプットシャフトをクラッチで直結して伝達する構造をとり、ギア比を1:1とするものが多かった。

直結式トップギアを持つギアボックスを採用した最初は1898年にルノーがド・ディオン・ブートン車の改造で開発した「ヴォワチュレット」で、これは通常多用されるトップギアにシフトした状態において、トランスミッション内での摩擦を減らし効率よく駆動させることを企図したものであり、これ以後の世界各国のフォロワー多数も、同様の趣旨で多く直結式トップギアを用いている。これより高い、ギア比が1:1未満のギアは「オーバートップ」や「オーバードライブ」と呼ばれ、エンジン回転数を低く抑えて静粛性・経済性を高める効果があったが、その普及は道路交通の高速化が進展した第二次世界大戦以降である。

古くは3段や4段のMTが一般的だったが、高速巡航での燃費向上のためにオーバートップが追加されるようになり、オーバートップ付の5段MTが一般化した。日本国内においては、5速MTはトヨタ自動車によって開拓され、1970年代には安価な量産車や軽トラックにも使われ始めた。トヨタ自動車では各々のモデル名に接尾辞「SR5」を付けることによって、それが5速MTを持っていることを宣伝した。[要出典]6速MTが1990年代の初めに高性能車に採用されるようになり、2010年代には高性能車のみならず、量販車にも広がってきている。[独自研究?]あるいは、MTとは別体のオーバードライブユニットが組み込まれた例もあり、シフトノブに組み込まれたボタンによって作動する。代表例としてイギリスMG・MGBが挙げられる。

シンクロナイザー[編集]

自動車用のMTにはシンクロナイザー (: synchronizer) と呼ばれる機構が組み込まれることが一般的で、シンクロナイザーを備える変速機構はシンクロメッシュ (: synchromesh) と呼ばれる。これは常時噛み合い式変速機のクラッチスリーブと歯車が噛み合う際に、滑らかに互いの回転速度を同調(シンクロナイズ)させる機構である。

クラッチスリーブと歯車は互いに異なる回転速度で回転している場合がほとんどで、その速度差が大きい場合は噛み合い歯の衝突による騒音が発生したり、場合によっては噛み合い歯が弾かれて変速操作が円滑に行えなず、変速機構を痛めることもある。シンクロナイザーはクラッチスリーブと歯車の間の同軸上に介在し、変速操作によってクラッチスリーブが動作する過程で、滑らかな面で荷重を受けながら歯車へ押しつけられ、摩擦力でクラッチスリーブから歯車へと回転を伝達する方式が広く普及している。自動車用MTにシンクロメッシュが普及したことで、自動車の運転がより容易となった。

古くは自動車用MTもシンクロナイザーを備えていないのが一般的で、シンクロメッシュが普及したのちには対比的にノンシンクロトランスミッションと呼ばれるようになった。ノンシンクロトランスミッションは現在でも、大型の自動車や建設機械、あるいは競技用の自動車などで利用される例がある。

後進ギア[編集]

一般的な自動車用のMTでは、前進ギアが2つの歯車で一組であるのに対し、後進ギアはリバースアイドラー (: reverse idler gear)と呼ばれる歯車を加えた3つの歯車が1組で構成される。前進ギアよりも歯車を1つ多く介して伝達されるため回転方向が逆になる。

前進ギアに常時噛み合い式が採用されることが一般的になってからも、後進ギアには選択摺動式が採用されることが多かったが、後進ギアにも常時噛み合い式が採用され、同時にシンクロナイザーが組み合わされるようになった。選択摺動式の場合、カウンターシャフトとアウトプットシャフトに固定された歯車は互いに噛み合っておらず、後進が選択されるとがこれらの歯車の間にリバースアイドラーが挿入されて動力を伝達する。また、選択摺動式の場合は平歯車であるため、はす歯歯車を利用したほかの段位に比べると走行時の騒音が大きくなる。

普及状況[編集]

MTは比較的製造コストが低く、動力の伝達が効率的であるため、かつてはMTが主流で、ATはオプション設定であることが多かった。またエンジンの小さい小型車については、初期のATはトルクコンバーターの損失が大きく走行性能が悪かったため、エンジンの動力を効率的に使えるMTの方が適していた。さらに、スポーツカーオフロード車などエンジンの性能を最大限に引き出す必要がある車ではMTが多く採用されていた。しかし近年では、無段変速機(CVT)や従来ATおよびそれを制御するコンピュータの性能向上などにより、MTは数を減らしつつある。日本では1980年代後半まで、MTは自動車やオートバイの変速機構の主流であった。

自家用車[編集]

1990年代以降、一般的な乗用車はATへの移行が進み、MTはスポーツモデルや一部の廉価グレードを中心に残るに留まっている(アメリカのMT車の普及率は4.4%[3]、日本の場合は1.7%[4]と十数年で激減した)。また、日本メーカーのほとんどの国内向け高級車はAT仕様のみである。現在もMTが主流な欧州車でも、日本へ輸入されるものにはMTが設定されていないものが多い。また、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)などのトルクコンバーターを使わないAT車種も増えている。アメリカ、東南アジア、中東、豪州などではMTは人気がなく、ATが標準的である。アメリカや日本では、レンタカーのような一部用途の自動車は例外なくATが搭載されている。

ヨーロッパでは正反対である。ヨーロッパや一部の途上国では多くの自動車がMT装備で販売される。ただし、ヨーロッパでも最近はATが増えつつあり、2008年に西ヨーロッパで製造された車は75.2%がMT、16.1%がトルクコンバータ式AT、8.7%がその他のAT(DCT、CVT、セミAT)である。そのため日本メーカーも、日本国内仕様にはMTを設定しない車種でも、輸出用にはMTを設定している車種が多い。これについてプジョーは、ヨーロッパの人間はATについて知識不足であり、ネガティブなイメージを持っていること、販売価格がMTより高く普及しにくいと発表している[5]

一部の国や地域では、自動車運転免許の取得において、運転できる車両をAT車のみとする限定免許が設定されている(日本での定義はクラッチペダルが無い車両)。限定を取り払いたい運転者は、追加の講習や試験(日本では限定解除審査と呼ばれる)に合格する必要がある。詳細はオートマチック限定免許を参照。

営業用自動車[編集]

トラックバスなどの大型車では重量が大きいことや、運転手が基本的に運転に熟練した職業運転手であること、そして商業用途で重視されるコスト(車両価格や燃費)の低さという点で依然MTが主流である。営業車は自家用車に比べて走行距離が長いうえ、業者によっては保有車両が数千、数万台に達するなど、数パーセントの燃費の差が利益に大きく影響を与える。一方で、普通免許で運転できる小型トラックやライトバン(おおよそ1トン積み以下)、配送業務のアルバイトホームセンターの貸し出しトラックなどではATへの移行が進んでいる。大型トラックでも、クラッチのみを自動化またはトランスミッション自体はMTのままで自動変速機構を備えたセミATが長距離トラックを中心に広まっている。長距離運転するドライバーの疲労を軽減するのが目的である[独自研究?]

大型バスやトラックでもATしか設定がない車種があり、その一例を以下に示す。

日本のタクシーは近年[いつ?]までMTが主流であったが、AT限定の第二種運転免許が制定され、2013年の第二種普通運転免許取得者の17,756人中、51%の9,089人がAT限定で取得しており、二種免許もAT限定で取得する者が過半数となっている[6]。タクシー用の車種構成も、2008年から2009年にかけてトヨタ・クラウンコンフォートトヨタ・クラウンセダン日産・セドリック営業車がATのみになった。

オートバイ[編集]

オートバイでは50ccスクーターを除き、ほとんどがクラッチレバーを持つMTであったが、1995年にヤマハから発売されたマジェスティシリーズがいわゆるビッグスクーターブームの火付け役となって人気が高まり[独自研究?]250ccクラスまでは販売台数の大半がAT車となった[要出典]。それに伴い、2005年には普通二輪免許(小型限定も含む)と大型二輪免許にAT限定が新設された。250ccを超えるクラスでもAT車の販売比率は徐々に増加している。なおオートバイの場合はMTといっても、現代の自動車と違ってほぼ全てがノンシンクロミッションである。

軍用車[編集]

また、大型トラックや特殊車両などの場合、MTでは操作に習熟した者でないと発進すら困難な場合があるが、ATでは自動車の運転ができる者ならある程度運転することは可能であり、小型車両においても片手片脚を負傷した状態でも運転可能となる。

整備[編集]

クラッチは、主に半クラッチの使用で磨耗していく。良質のクラッチを熟練した運転手が扱う場合は何十万kmも走ることができるが、運転技能やトランスミッションの潤滑オイルの交換頻度などの諸条件によっては、修理あるいは交換頻度の増加の原因になる。

MTはギアオイルで潤滑されている。ギアオイルはATの潤滑油(ATF)ほどの頻度ではないが、定期的に交換しなければならない自動車もある(トランスミッションの修理や漏れの補充を除いてはギアオイルは100000Kmで交換あるいは交換自体が不要であるとするメーカーもある)。前輪駆動車の場合はギアオイルがディファレンシャルギアのオイルも兼ねていることが多く、交換頻度は格段に高くなる。

MTを構成している斜歯歯車での歯面の滑りや大トルク伝達時の歯面の圧力で油膜が切れるのを防ぐため、ギアオイルには硫黄リン亜鉛等からなる極圧添加剤と呼ばれる化合物が添加されており、特有の匂いがある。一部の製造業者ではギアオイルにこれらの添加物を使わず、最近までは通常のエンジンオイルを指定していたが、現在ではエンジンオイルの強化版であるらしい自社ブランドのギアオイルを指定している。

オートバイのクラッチはエンジンオイルに浸されている湿式クラッチが大半である。これは通常、エンジンの下半分とトランスミッションがケースごと一体化しており、同じオイルがエンジンとトランスミッションの両方を潤滑する。そのため四輪用エンジンオイルや一部のオイル添加剤を使用すると、クラッチ滑りを起こす可能性があるので、極力オートバイ用エンジンオイルを使用することが望ましい。

その他の変速機との比較[編集]

乗用車の場合、一般的な自動変速機と比較した場合、

  • 同じ車で比較した場合、ATの方が大型であるため、MTの方が軽量である。
  • 伝達機構が単純で高効率な歯車伝達方式であり、変速機構自体はどの自動変速機よりも伝達効率は高い。
  • 駐車場などで低速で移動する際、AT車はクリープをブレーキで調整するのに対し、MT車はアクセルをふかしながら半クラッチで速度を調整するという手法をとる。このため、MT車のようにとっさにクラッチを切れないAT車は、ブレーキとアクセルペダルを踏み間違えた時、破滅的結果を招く可能性が高い。
  • バッテリーが上がりセルモーターでのエンジン始動が不能になった場合、押しがけや引きがけ[7]によるエンジンの始動が可能である。
  • 踏切内でのエンジン故障などの緊急時に、ギアを入れたままセルモーターを回すことによって、短距離であれば移動が出来る。ただし、近年の車に装備されているクラッチスタートシステムを使用できないように改造しているか、搭載していない古い年式の車種に限定される。
  • 発進の際にクラッチを切ってギアを投入するという一連の作業が存在するので、アイドリングストップ機構を組み込みやすい。しかし、近年は変速機の種類に関わらず同機構を搭載した車種が増えている。

上記のようにATに対して様々な利点があるが、ATの多段化や高性能化、CVTやセミATの普及、やDCTのようなトルクコンバータを使わないMT由来のATの出現、制御コンピュータの高性能化、そして何よりMTは良くも悪くも運転者の技量・思考が反映されやすく、変速やクラッチ操作の違いにより乗り心地や加速力、燃費、機構の寿命などが変動しやすいため、ほとんどのメリットは日本では重要視されなくなりつつある。また近年の日本では、AT車が主流となり以下のような状態が発生している。

  • クラッチ操作が要らないためATのほうが楽に運転できることや、1990年代以降はAT限定免許が普及したことなどから、ATへの需要シフトによりMTが一部の趣味的な用途の車と位置付けられ、MTが用意されている車種は激減した。逆にMTのみの運転経験しかない者にはAT車のクリープ現象が精神的負担となる場合もある。
  • かつては同一車種の同一グレードで比較した場合、AT車はMT車と比較して割高なことが多かったが、AT車の普及により価格差が少なくなった。現在はMT車とAT車の価格差がない場合が多い。特殊な例では、ダイハツ・コペンの場合、2010年のマイナーチェンジでMT車のほうがAT車よりわずかながら高くなった。またフィットRSの場合、多少の装備差はあるものの、MT車のほうがCVT車より20万円以上高く設定された時期があった[8]
  • 自動変速技術の向上、自動変速に連動させたエンジン回転数、燃料噴射などの制御技術など変速機以外の技術向上によって、総合面での効率上の優位が小さくなっている。
    • 一例としてトヨタ・カローラフィールダーの1500cc・2WDモデルの燃費は、CVTで19.6km/L[9]、5速MTで17.6km/L(いずれもJC08モード[10]。無論、CVTの方が10kg~20kg程重い。ただし、日本でカタログに記載される燃費の測定では、MT車は全車共通の変速パターンを用いなければならないのに対し、AT車、およびCVT車はそれぞれDレンジで行うため、AT車、およびCVT車のみその車に最適な変速パターンを用いることができるという測定条件の大きな違いがある[11][12]
  • かつてはスポーツカーには必ずと言っていいほどMTが搭載されていたが、性能を追求した結果、日産・GT-Rスカイライン時代と異なりDCTのみになったり、スポーツカーの代名詞的存在のフェラーリランボルギーニもMTを廃止する意向である。特に前述した高性能なスポーツカーほどそれが顕著である[13]。またF1をはじめとしたレース車両でも、MTのクラッチ操作を自動化したセミATが主流になっている。
  • クラッチペダルを踏んで変速・エンジン始動を行うという仕様上、クルーズコントロールエンジンスターターなどの装備が使用できない。ただしクルーズコントロールを普及させたといわれるホンダ・アコードの場合初搭載した頃はMT車(無論5速などトップギヤにしておく)でも装備されていた。エンジンスターターに関しては自己責任においてクラッチスタートシステムの無効化や自力で配線を研究すれば取り付けられる場合もあるが非常に危険な行為であることに変わりはない。
  • 複数の人物で車両を共有する場合、AT限定免許を考えMT車は導入しない場合が多い。レンタカーやカーシェアリングではそれが顕著である。
  • そもそもメーカーラインナップの減少で選択肢が狭まり、MT車を選びたくても選べない。そのため以下のような状況が発生している。

マニュアルモード付きAT[編集]

AT車のカタログに「マニュアルモード付き」などのように記載さていれる場合、通常のモードでは自動で行われる変速を、ドライバーの任意で選択できるスイッチを設けたATを示している。CVTの場合は、自動制御では変速比を無段階で連続的に変化させているが、マニュアルモードではCVTの変速範囲の中で段階的に設定された変速比をスイッチで選択できるように制御する。マニュアルモード付きCVTの中には、変速比を完全に固定するのでなく[独自研究?]、緩やかに変化させるものもある。いずれも変速比を任意で選べるだけであり、MTのようなクラッチ操作は不可能かつ不要である。英語圏では、マニュアルモード付きのトルクコンバータ式ATは「Manumatic」と呼ばれる。

クロスミッション[編集]

一部の競技向けに使用される車両では、ギア比の差を小さくして(クロスレシオ)全般的に低くしたクロスレシオのトランスミッションが用いられ、俗に「クロスミッション」と呼ばれている。一般的に発進加速や、低回転域のトルクによる加速性能を重視する競技で有効であり、反面最高速度域は一般的なギア比より低くなりがちとなるため、長距離巡航には向かない。

なお、通常の5速MTを6速に設計変更する場合、従来の5速ギアの歯数のみを6速に準用して、1-5速のギア比を詰めて実質的なクロスミッション化が行われる場合[14]もある。

クラッチ[編集]

トランスミッションを使っているすべての乗り物は、停車や変速のために、エンジンとトランスミッションを切り離すためのカップリング装置が用いられる。MTではクラッチがこの役割を担う。自動車ではクラッチは通常、ペダルによって操作される。オートバイではハンドルの左側に付いたレバーがこの役割を担う。

クラッチペダルが完全に踏み込まれているとき、クラッチは完全に外れ、エンジンのトルクがトランスミッションないし駆動輪へ伝達されなくなる。この状態で、ギアを選択したり自動車を止めることができる。一方、クラッチペダルが完全に放されたときクラッチは完全に接続し、エンジンのトルクがトランスミッションを経て駆動輪に伝達される。この状態ではクラッチは滑らず、ほぼ動力の損失無く車輪に伝達される。これらの両極端の中間は半クラッチと呼ばれ、クラッチペダルの踏み加減に応じて、クラッチが滑りつつトルクを伝達する。例えば自動車を発進させるときは、エンジンが回転を保てる最低限の回転数(いわゆるアイドリング)に応じた車速に引き上げるまで、半クラッチの利用が不可欠である。また変速において、ギアを選択したあとクラッチをつなぐ際に半クラッチを介することによって、エンジンとトランスミッションの回転差によって生じるショックを和らげることができる。半クラッチ開始におけるトルク伝達を滑らかにするために、クラッチ板にはクラッチダンパーというばねが組み込まれている。これはクラッチジャダーというトルク変動の軽減に効果がある。なお半クラッチの際、トルクは摩擦によって伝達されるので、動力が部分的に熱として捨てられる。長時間半クラッチを続けると、過熱によってクラッチ板を傷める可能性がある。

熟練したモトクロスやオフロードオートバイの乗り手は、コーナー中に下げざるを得なかったエンジン回転数を、瞬時に最高の出力を得られる回転数付近へ上げるために、コーナーを出るときにクラッチを瞬時に「叩く」あるいは「煽る」ことがある。これと同様の操作は、自動車でドリフト走行のきっかけに用いる運転者もおり、「クラッチ蹴り」と呼ばれる。いずれもクラッチに過大な負荷を強いる操作であると同時に、一般における走行では使用すべきではない(特に1~3速の変速でクラッチをつなぐ際に急激にクラッチをつなぐといきなり動力が伝わり、結果急発進してしまう為、一般走行ではクラッチはゆっくり繋ぐ事が求められる)。

ちなみにAT車では、エンジンとトランスミッションの切り離しにトルクコンバータが使われる場合が多かったが、近年はそれを用いないものも増えている。

クラッチスタートシステム[編集]

停車時に1速や後退にギアを入れて駐停車したことを忘れたまま、クラッチを完全に踏まずに始動させてしまったり、始動前からエアコンのスイッチをONにしているなどして車両を大きく衝動させてしまい、物損事故や人身事故を招くという事例も発生している。また、高齢世代や寒冷地では始動直後のエンストを防ぐため、アクセルも同時に踏みながらエンジンを始動させる人も少なくない。普通はギアをニュートラルにして始動するためアクセルを踏んでも問題はないが、ギアを入れたまま始動すればアクセルを踏まなくても大きく衝動を起こす危険がある。そのため、日本国内において1999年7月以降より新車で販売されているMT車には、クラッチを踏まないとエンジンがかからないクラッチスタートシステムの採用が義務付けられている。それ以前の車には採用されていないものが多い。

MT車独特の操作方法[編集]

現在日本国内で販売されているMT搭載車種[編集]

参考までに、2014年7月現在日本国内で新車で販売されているSUV、およびコンプリートカーを含む一般乗用車(トラック等の商用車を除く)の例である。メーカーのみ表記されている場合は、そのメーカーの全ての車種でMTが選択可能。 ★印の車種のMT車は全グレードで6速を採用、☆印の車種のMT車は特定のグレードで6速を採用しているもので、何も記されていないものは全グレード5速以下のものである。現在のところ軽自動車では6速MTを採用している車種はない。

脚注・出典[編集]

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  1. ^ コトバンクにてデジタル大辞泉ならびに大辞林第三版の引用
  2. ^ a b c d e 大車林-自動車情報辞典. 三栄書房. (2003). ISBN 4879046787. 
  3. ^ http://www.carnationcanada.com/blog/blog/manual-transmission-past/
  4. ^ 2010年新車販売台数MT比率(ベストカープラス6月18日増刊号の記事)
  5. ^ http://web.peugeot.co.jp/web_magazine/backnum_0504/tips/index.html
  6. ^ 警察庁2013年運転免許統計 https://www.npa.go.jp/toukei/menkyo/index.htm
  7. ^ 押しがけは、車を押すか下り坂でニュートラルで転がすなどして、速度が上がったら適当なギアに入れてクラッチを繋ぐ。引きがけは他の車に牽引してもらい、速度が上がったら適当なギアに入れてクラッチをつなぐことによってセルモーターを使わずにエンジンを始動する。
  8. ^ 2代目の2007年10月-2009年11月モデル[1]。2009年11月の一部改良によりCVT車とMT車は同一価格になった[2]
  9. ^ ただし、メーカーオプションで設定されているアイドリングストップ機構「Toyota Stop&Start System」装着車は21.2km/Lとなる。
  10. ^ メーカーサイト - 環境仕様
  11. ^ 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示【2009.07.30】別添42(軽・中量車排出ガスの測定方法)
  12. ^ ギア比に関してAT車は高速走行時エンジンの回転数を低くなるよう有利に設定されている例もあり一概には判断が出来ないが、同一ギア比であればMTの方が動力伝達機構部の特性上燃費の部分では有利ではある
  13. ^ http://jp.autoblog.com/2010/03/31/lamborghinis-future-includes-less-weight/
  14. ^ それとは逆に、1-5速ギアの歯数を準用して、6速のみさらにハイギアード化することで、最高速度を向上させる手法も存在する。
  15. ^ ビジネスパッケージを含む。
  16. ^ ビジネスパッケージを含む。
  17. ^ エアロツアラーを含む。

関連項目[編集]