フォグランプ

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角型フォグランプの例

フォグランプ英語: fog lamp)とは、ヘッドランプとは別に、白または黄色い光を発生する補助ランプで、主にフロントバンパーの左右両脇などに取り付けられる[1]フォグライトあるいは霧灯ともいう。なお、鉄道車両のフォグランプについてもここで述べる。

分類[編集]

フォグランプ[編集]

バスのフォグランプ装着例
日産ディーゼル・UA460
フォグランプ一体型ヘッドランプの例
トヨタ・カリーナED

フォグランプは、濃霧の発生などにより視界が制限される場合に、投ぜられた光の運転手への反射を抑えながら視認性を確保し、同時に他の交通からの被視認性を向上させる目的で装備される、白または淡黄色の補助灯である。前方を照らす前照灯とは役割が異なり、広い範囲の視認性を向上させるため、左右への照射角を前照灯よりも広い配光としたレンズを備えているのが特徴である(前照灯がおおむね70度前後であるのに対し、フォグランプはおおむね100度以上)。

一方、前方の霧に強い光が当たらないよう、上下の照射角は前照灯よりも狭く設計されている。この理由は、霧に反射した光の明るさが運転者の瞳孔を絞り、暗い部分を見えにくくすることを防ぐためである。つまりフォグランプの配光は近く広く照らすため、遠方には届かない。

このような配光パターンを持つことから、直近の路肩や道路標示、車線分離帯などを照らす補助前照灯として用いられる場合もある。ヘッドランプの位置が乗用車に較べて高く、旋回時に運転席が大きく左右に振られるバスキャブオーバートラックでは、天候にかかわらずフォグランプを点灯している例が多く見られる。

日本では法規によって設置が義務付けられていないため、車種やグレードによって装備の有無がある。SUVRVでは、使用頻度や必要性に加え、見栄えを考慮して装備される場合も多い。灯体の形や光源には数種類がある。機能よりも外観上のアクセントとして装備されることもある。1980年代には、フォグランプをヘッドランプの内側に一体化して組み込んだメルセデス・ベンツをはじめとするデザインが高級車を中心に流行した。かつては純正でも後付けが主流であったが、近年では樹脂バンパーに純正のフォグランプを組込むのが主流である。

の性質上、波長の短い青色光はの粒に散乱して遮られてしまうのに対し、波長の長い赤色光はそれを通りぬけてより遠くまで届くが、赤色の灯火は尾灯パトランプ(警光灯)などに限定され、一般車は前面には赤灯を設置できない。そのため、赤色光に次ぐ霧中透過性を持つ中間の波長の黄色光が良いとされ、霧に反射して運転者の視界の妨げになる波長を含まない単色光がより良いとされてきた。かつての主流は黄色灯で、1980年代には前照灯も黄色のものが流行した。[2]しかし、単色光は運転者に錯覚を起こさせ、距離感がつかみにくい現象や特定の色が認識しにくい現象が知られるようになり、遠方には黄色の光を投射して手前は白色の光で照射するように色分けされた電球も流行するようになった。最近では白色の割合が増加し、前照灯と共に、HID式の物や、特に長波長の可視光を遮るコーティングを施して色温度を高くした蒼白い光を放つ電球が流行している。

EUでは2011年2月以降、乗用車のデイライトが義務化しており日中でもフォグランプ等を点灯させなければならない。日本では気象による点灯についての法的基準は特になく、「夜間やトンネル内等、前照灯が必要な場合は原則ハイビームで走行し、先行車や対向車がいる場合はハイビームを消してロービームにするか、フォグランプで走ること」とされている。

リアフォグランプ[編集]

濃霧や、その他先行車の尾灯を目視出来ないほどの気象条件により視界が制限される場合において、後方からの被視認性を向上させる目的で設置される赤色の灯火をリアフォグランプ(後部霧灯)と呼ぶ。通常のテールランプよりも非常に明るく、制動灯と同等の明るさとなる。そのため、晴天や雨天など先行車の尾灯を十分に確認できる程度の気象条件下で使用した場合、後続車のドライバーを眩惑させる原因となる。フロントフォグランプとは異なり、視界の確保を目的とする灯火ではない。

上記の通り悪天候下での被視認性向上という限られた目的であるため、保安基準としてヘッドランプもしくはフロントフォグランプの点灯がリアフォグランプを点灯させるための前提条件となる。 また、スイッチは点灯の都度入れ直す必要があり、スイッチ操作無しに常時点灯させることはできない。

ヨーロッパでは1975年から、すべての新型車への装備が義務化されていたが日本では当初許可されず、日本の輸入障壁との批判(外圧)を受けて規制が撤廃された。オプションながら、日本国内で販売される日本車で初めてリアフォグランプが設定されたのは、1989年に日産自動車から発売された180SXとされる。これ以降、日本車でもオプション設定や寒冷地仕様車でリアフォグランプが装備されるようになっていった。現在では一部車種に標準装備となっている。

1灯または2灯が取り付けられ、2灯の場合は左右対称に取り付けられる。1灯の場合は車体中央か、道路のセンターライン寄りに取り付けることが保安基準で定められていて、左側通行向けの車両では右寄りに、右側通行向けでは左寄りに設置される[3]。加えて、ブレーキランプ(制動灯)の光源とリアフォグランプの光源とを10cm以上離すことが規定されている[4][5]

車種によっては、テールランプと一体に装備したり、片側や中央に独立した1灯のランプとして装備される場合もある。ヨーロッパ車では、片側をリアフォグランプ、対角側をバックアップランプ(後退灯)の非対称配置として、機能を満たしつつコストや設置スペースを抑える手法を採るものが多い。

明るさの基準はブレーキランプ(制動灯)と同等だが、長時間連続して点灯されるためランプ筐体は電球の発熱に対する耐性を持たせなくてはならない。したがってバックランプと同じ形状でデザインされたものでも、灯体の材質や構造などによりコストがかかっている場合が多い。光源として発熱の少ないLEDを利用する場合もあるが、現在の市場ではLEDのコストも白熱電球より高価であるし、降雪地の場合は発熱の少なさからリアフォグランプに付着した雪が溶けずに発光箇所が覆われてしまう場合もある。

ドライビングランプ[編集]

多数のドライビングランプとスポットランプを装備したラリーカーの例
ランチア・ラリー037

フォグランプと似て非なるもので「ドライビングランプ」や「スポットランプ」と称されるものもある。ドライビングランプはヘッドランプのハイビームに近い配光特性を持ったものであり、スポットランプはハイビームよりさらに遠く狭い範囲を照らすものである。ドライビングランプの中には上方への拡散を防ぐレンズカットを持つものもあるが、スポットランプはマルチリフレクターを用いていない灯体でもレンズカットが全くない。

両者とも夜間にヘッドランプの補助として用いるためのものであるが、いずれも対向車に強い眩惑を与えるものであり、公道上での使用は保安基準に沿った運用が求められる。なお、フォグランプ、ドライビングランプ、スポットランプとも、保安基準上は「前部霧灯」でひとくくりにされる。

市販車での採用例としてはフェラーリF355などがある。

アクセサリーランプ[編集]

霧灯としての機能を重視していないものはカタログ上で「アクセサリーランプ」または「アクセサリーライト」と表記されているものもあるが、外見では本来のフォグランプと区別がつきにくく、これも慣用的にはフォグランプと呼ばれる場合が多い。適用される保安基準も本来のフォグランプと同じである。

保安基準[編集]

フォグランプは道路運送車輌の保安基準第33条 (PDF) で前部霧灯(過去には補助前照灯と呼ばれていた)として、リアフォグランプは同 第37条の2 (PDF) で後部霧灯として規定され、それぞれの細目告示および細目告示別添によって技術基準が設けられている。フォグランプの概略は次のとおり。

  • 射光線は他の交通を妨げないものであること
  • 灯光の色は白色または淡黄色であり、その全てが同一であること
  • 照明部の上縁の高さが地上0.8m以下であって、すれ違い用前照灯の照明部の上縁を含む水平面以下、下縁の高さが地上0.25m以上となるように取り付けられていること
  • 照明部の最外縁は、自動車の最外側から400mm以内となるように取り付けられていること
  • 1個の場合は車両の中央に取り付けられ、2個の場合は車両中心面に対して対称の位置に同形状、同色のものを取り付けること(以前はこの規定はなかった。そのためマーチスーパーターボのようなスポーツ車では、片方を撤去して開いた穴をインテークとし、吸気ラジエーター等の冷却に使う例もあった。)
  • 3個以上が同時に点灯しないこと(2対以上のフォグランプを取り付ける例もあるが、公道上で点灯することができるのはいずれか1対だけである)
  • フォグランプの点灯操作状態を運転者席の運転者に表示する装置を備えること。

上述の保安基準は政府の規制緩和方針により法令改正さたもので、2006年1月1日以降に生産される自動車に適用される。2005年12月31日以前に生産された車では、現行規定と旧規定のどちらかに適合していればよい[6]

  • 光度は1万cd以下であること
  • 主光軸が前方40m以上照射するものは、前照灯を減光、又は下向きに変換した場合点灯しないこと

などの規定があったほか、取り付け位置についての規定も現行のものと若干異なっていた。

リアフォグランプの概略は以下のとおり。

  • 射光線は他の交通を妨げないものであること
  • 灯光は赤色であること
  • 照明部は2個以下であること
  • 2個の場合は左右対称に、1個の場合は車体中央もしくは右側に取り付けられていること
  • ヘッドランプ、もしくはフォグランプのいずれかと同時にのみ点灯でき、かつ単独で消灯できる構造であること(単独点灯は不可)
  • 照明部は上縁の高さが地上1m以下、下縁の高さが地上0.25m以上となるように取り付けられていること
  • ストップランプの照明部より100mm以上離れていること
  • 作動状態が運転者に表示できる装置を備えていること(インジケーターランプ等)

鉄道車両[編集]

鉄道車両のフォグランプ装着例
JR西日本321系電車

日本で運行されている鉄道車両では、JR西日本223系(0番台は除く)およびこの形式をベースとした225系(HID式)、227系(HID式)、221系体質改善車(HID式)、285系287系(HID式)、207系体質改善車(HID式)、321系521系(2013年製造の増備車はHID式)、キハ122系・キハ127系キハ189系JR四国5000系JR九州783系(改造による追加、先頭車化改造車は除く)、787系813系883系キハ185系(改造による追加)、名古屋鉄道1000系伊豆急行リゾート21などで使用されている。

脚注[編集]

  1. ^ 以前はフォグランプの光軸中心が前照灯のそれ以下であれば、フロントバンパーより上への取り付けも認められていた。
  2. ^ 黄色光に対する見解は国によって異なり、最も積極的に支持したフランスに対し、有意差なしと切り捨てたドイツのような国もあった
  3. ^ 国際連合欧州経済委員会法規(ECE R) 48 6.11.4.1.
  4. ^ ECE R48 6.11.9.
  5. ^ 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第3節 第129条3-6”. 国土交通省. 2011年7月17日閲覧。
  6. ^ 道路運送車両の保安基準第2章および第3章の規則の適用関係の整理のため必要な事項を定める告示 (PDF) より

関連項目[編集]

外部リンク[編集]