バンパー

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バンパー(bumper)とは、衝撃や振動を和らげる緩衝装置のこと。素材自体の弾力性やバネなどを利用して衝撃を吸収・緩和する。機械部品や運送用機器などに取り付けられる。

自動車のバンパー[編集]

乗用車の場合は基本的にボディの前後に取り付けられる。素材はポリプロピレンFRPカーボンファイバーなど多様な素材が用いられ、金属系の素材はメッキ、樹脂系の素材は塗装により表面を加工されていることが多い。ボディを軽度の衝突から守るというのが本来の目的であったため1980年代頃まではボディから容易に取り外しが可能な金属製の棒状の形状をした物が一般的であったが、スタイリングや空気抵抗の低減を意識したデザインが激増し、1990年代にはほとんどが樹脂製となりボディと同色に塗装され、ライト類が埋め込まれ「衝突から守る」という目的にそぐわない形状が一般的となった。無塗装の金属製タイプは強固で多少の衝突なら傷が付く程度で変形しなかったり、変形したとしても容易に板金修理が可能であったが、樹脂製のタイプは軽度の衝突でも割れたり、塗装が剥がれたりして容易に修理ができず、修理の際は丸ごと交換することが多い。修理や交換等で廃棄された樹脂バンパーのリサイクルが試みられ、実用化に至っている。

日本国内と海外におけるバンパーの扱いの違い[編集]

走行中や駐車場内での軽度の接触事故等でついた(つけた)バンパーの傷については、日本国内では他のボディ部位と同様に補修、補償の対象とすることが多いが、海外ではボディを守るという元来の目的の通り、傷ついて当たり前のものとして放置される傾向がある。ただし、これはあくまで一般論であり、高級車やスポーツカー等においてはこのかぎりではない。

「ヨーロッパでは『バンパーはぶつけてよいもの』という認識」と語られることがある。これについて、イタリア在住の自動車評論家である大矢アキオは「地域による」としている。具体的には、「パリミラノフィレンツェのような大都市の混雑した地域では、縦列駐車の際に他車のバンパーに当てて止める光景を見かける」「しかし、パリの郊外部や地方都市など、スペースに余裕がある地区へ出るにつれて、バンパーを当てる習慣は見られなくなっていく」とのことである[1]

5マイルバンパー[編集]

1974年モデルイヤーとなる1973年後半から、アメリカ車北米向け仕様車において大型のバンパーが装着される始める。これは通称「5マイルバンパー」と呼ばれ、その名の通り時速5マイル(約8km/h)以下で衝突した際、バンパーが衝撃を吸収し、復元することを求めた北米の安全基準に基づいて作られたものである。

これは「衝突時に、バンパーそのものや尾灯ラジエーター操舵装置足回り燃料タンク排気系などに大きな損傷が及ばないように」というものであったが、実際は低速度の接触によるバンパーの修理、交換に対する保険金の支払額の多さに辟易としていた保険会社が、「衝突安全性を高める」という建前を元にこの様な安全基準の施行を求めたものであった。

金属製バンパーはそれ自体を強固で変形しにくいものとし、その後普及したポリウレタンポリプロピレンなどの樹脂カバーを用いるものは、高強度のリインフォースメント(内部補強材)と衝撃吸収材を持ち、どちらのバンパーもが伸縮するストラットで支持されている。同時に、高さの範囲も決められており、これに合致しないもの(位置が低いものや細いもの)は、バーや小ぶりのバンパーの追加が行われた(ダブルバンパー化)。

著しく意匠が違う例。欧州向けA20/30系トヨタ・セリカクーペ 北米向け以下全て右の画像が5マイルバンパー装備車
著しく意匠が違う例。
欧州向け
A20/30系トヨタ・セリカクーペ

北米向け
以下全て右の画像が5マイルバンパー装備車

登場当初、特にモデルライフ途中で装備されたものは、大きく突き出したバンパーのみが目立ち、従来のバンパー取り付け部の凹みを埋める部品や伸縮部を隠すラバー類、行き場を失って移設された方向指示器やマーカーランプなどによる「取ってつけた感」が甚だしく、スタイルが著しくスポイルされる結果となった。さらにそれ自体の重量も大きく、同時に進行していた自動車排出ガス規制によるエンジン出力の低下と相まって、性能の低下は免れなかった。前後のオーバーハングに追加されたこの重量物は、特に、軽量さを武器に運動性の高さを訴求して来たスポーツカーにとっては致命的であった。


このように、性能と外観に大きな影響を及ぼし、不評を買うことも多い5マイルバンパーであるが、車種によってはこれをうまく処理して成功した例もある。

1971年式901型 911Tポルシェ・911(写真はオーバーライダーの付いた北米向け) 1986年式930型 911SC
1971年式901型 911T
ポルシェ・911
(写真はオーバーライダーの付いた北米向け)
1986年式930型 911SC

ポルシェ・911、2代目にあたる930型で356C以来のクラシカルな細身のバンパーを、ボディー同色の大型ウレタンバンパーに変更し、陳腐化を払拭して拡販を成し遂げ、モデルライフを1989年まで引き伸ばすことに成功した。これ以降のポルシェは、北米向け以外を含む全生産車が5マイルバンパーとなり、930型も「ビッグバンパー」、あるいは「Gシリーズ」という通称で呼ばれ、一定の愛好家が存在する。

’71モデルポンティアック・ファイヤーバード '74以降の70年代モデル
'74以降の70年代モデル

アメリカ生まれのポニーカーマッスルカーには、レーシーなイメージを持たせるため、バンパーレススタイルとしたものがあった。ジョン・Z・デロリアン時代のポンティアックブランドのGTOファイアーバードもそれで、新たな保安基準の前にデザインコンセプトの変更を余儀なくされたが、ファイアーバードはシボレー・カマロと共に「スラントノーズ」を提案し、新たな顧客を掴むことに成功した。

日本国内向けE90系カローラセダン 北米向け
日本国内向け
E90系カローラセダン
北米向け
日本国内向けランサー(5代目後期) 北米向けに準じたバンパーを採用する東南汽車・リオンセル。日本向けも教習車仕様がこれを採用。
日本国内向け
ランサー(5代目後期)
北米向けに準じたバンパーを採用する東南汽車・リオンセル。日本向けも教習車仕様がこれを採用。


1990年代の日本車も、北米向けや北米現地生産車には5マイルバンパーが装備されており、国内向けの同型車に比べてバンパー自体も大きくなっているため、接触や衝突の可能性が高い教習車にこれを流用しているメーカーもある。またもう一つの理由として、車体サイズが国内サイズでは教習車の最低基準を満たさないが故に5マイルバンパーを採用して対応するというものがある。(例:三菱教習車(≒ランサー))

一方、日本国内向けモデルでは外観が北米向けと同じであっても、5マイルバンパーとしては機能しないものがある。これらや日本国内専売モデルは一部の高級車や高額車を除いて伸縮式ストラットを持つものが殆ど無く、軽量化と低価格化のためにリインフォースメントが省略されているか、リインフォースメントという部品名であっても、板厚や面積の不足で、「ガワ」を支持するステー程度の役割しか果たさないものが多く、5マイルバンパーほどの衝撃吸収力は期待できない(後述)。

日本仕様車の現状[編集]

フロントバンパーについては、スペースの制約の厳しい軽自動車を除き、内部に金属骨格と緩衝材を配置しステー部をクラッシュボックスとする事で補修性に配慮した造りが主流になっている。しかしリアバンパーに関しては内部には骨格も緩衝材も配置せずバンパー外皮の樹脂の弾力だけで対処しているケースが多いのが現状である。なお、日本ブランドの車でも欧州からの輸入車トヨタ・アベンシス等)や輸出仕様車にはリヤバンパーにも金属骨格と緩衝材を配置している例が見られる。

日本仕様車の現状例

バンパーモール[編集]

バンパーを保護する目的で、バンパーモールという部品がカー用品店などで数多く販売されており、主に欧州車を中心として純正装備される例もある。近年は、単にバンパーを保護するだけでなく、車外装飾を目的として、美的にも優れたバンパーモールが市販されている。

ヒュンダイ・エラントラセダン(XD系後期)に見る、同一車種における仕向地別のバンパーモール有無例
なお、XDエラントラの場合は日本仕様車や韓国仕様車などにおいても5ドアハッチバック(日本名「エラントラ・ユーロ」)にはセダンと異なるキャラクターを表現する為かバンパーモールが装備されていた。

バンパーステッカー[編集]

リアバンパーに自分の宗教政治社会運動に対する意志や思想(アウェアネス・リボンなど)、あるいは好きな自動車部品メーカーやスポーツチームなどのステッカーを貼る人がいる。特に顕著な車社会アメリカにおいてよく見られる。

カンガルーバー[編集]

金属製の板やパイプを曲げて造られた丈夫なバンパー。グリルガード(Grill Guard)やオージーブルバー(Aussie Bull Bar)とも呼ばれる。オーストラリアカンガルー避けに開発されたが、1990年代頃から日本でもファッション性を高める理由で大型SUVを中心に標準装備されるようになった。ただし対人事故を起こした場合、人体に与えるダメージが大きいため、大型動物のいない都市部で無意味なカンガルーバーをつけることには批判もある[誰?]。これに準じ日本では2000年代から各自動車メーカーはオプション設定をすることをやめている。しかし、野生動物と車の衝突事故が日常茶飯事であるオーストラリア、アフリカ、北米等では2010年代現在でも各自動車メーカーが純正オプション品として設定おり、一定の装着率がある。人里離れた僻地や砂漠地帯などで大型動物と衝突し走行不能状態になった場合に乗員が命の危険に晒されることがあることと、そのような地域では狩猟を趣味や生業としている人も多く、そういう人々は安易にディアホイッスル(ディアワーニングとも。鹿避け笛)を車に装着できないなどの事情がある。

プッシュバンパー(Push Bumper)[編集]

アメリカのパトカーに見られる装備。バンパーの前に、さらに頑丈なバンパーを装着する。先述のカンガルーバーと似たような見た目をしているもの。アメリカでは、逃走する被疑者車両の後部側面を押して目標をスピンさせる「PITマニューバ」という技術が度々使用される。プッシュバンパーはPIT実施時に目標を押したり、またPIT及びスピンした車両をパトカーでブロックする時に車体を保護する役目がある。
またハイウェイ上で故障して立ち往生した車両を事故防止の為に最寄の出口まで押して移動させる事にも使われる。
形状はグリル正面だけを保護するオーバーライダー的なものから、グリルガードよろしくヘッドライトやウィンカーまで覆うものなど様々であり、緊急車両部品メーカーが市場に供給している。装着するか否かは各警察機関の判断なので、装着していない場合も珍しくない。

脚注[編集]