無段変速機
無段変速機(むだんへんそくき)、または連続可変トランスミッション(れんぞくかへんトランスミッション、Continuously Variable Transmission、CVT)とは、歯車以外の機構を用い変速比を連続的に変化させる動力伝達機構(トランスミッション)である。多くはオートバイや自動車用を指すが、それらに限らず工作機械の軸回転速度を変える機構や発電機の出力を変える機構[1]などにも広く使われている。
この項では自動車用摩擦式無段変速機を中心に述べ、摩擦によらない無段変速機についても触れる。
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自動車用途の概要 [編集]
動力の伝達に歯車を用いないため一般に大きなトルクの伝達が難しいとされ、古くはオートバイ(なかでもスクーター)などの小排気量エンジンと組み合わされ普及した。自動車用では受容トルクの問題から小型車向けの方式と見られてきたが、金属ベルトの改良により1990年代後半以降は排気量2000cc超の中型・大型車にも採用されるようになってきた。しかし、現在[いつ?]のところ採用例は日本車が大半で、日本国外では一部の車種でしか採用されていない。
21世紀初頭時点で自動車用として実用化されているCVTはベルト式CVTとチェーン式CVT、トロイダルCVTの3種類に大別できる。ベルト式CVTは比較的低トルクエンジンで軽量な車種に、トロイダルCVTは高トルクエンジンの重量車用に開発された経緯がある。
構造上、変速機そのもので逆回転を作り出すことが不可能なため、後進を行うときは遊星歯車を組み合わせて逆回転を作り出して行う。
長所 [編集]
- 構造が簡易で構成部品点数が少なく済み、コストダウンと軽量化が可能
- 変速比の連続可変が可能であり、エンジン効率の良い回転域のみで運転できる。変速比の変化が大きい停止・発進を繰り返す運転に適している
- 有段変速機に存在する「変速ショック」がない
短所 [編集]
- プーリーとベルトの摩擦力によって動力が伝達されるため、受容トルクが低い。そのため、大トルクを発生する大排気量車やターボ車、4WD車には採用が少ない[2]。ただし2010年にフルモデルチェンジしたエルグランドで280馬力に達する3.5l車に採用されるなど、技術向上により大パワー車にも徐々に採用されつつある。
- ベルトとプーリーのスリップによる伝達ロス、油圧機構のロスなどにより、伝達効率が低い。即ち、ベルトとプーリーの摩擦熱はオイルによって冷却している。しかしオイルを用いれば滑る。その滑りを抑えるために高圧をかける。高圧をかけるためオイルポンプを駆動し動力が消費された上、摩擦熱が発生する。この熱を冷やすためにオイルを用いる。つまり、歯車のような噛み合いによらず摩擦力で駆動力伝達を図らねばならないという点がCVT最大の欠点であり矛盾点と言える。現状[いつ?]ではこれらの伝達ロスはエンジン回転数の制御による効率化によって相殺するというかたちをとっている。そのためあまり変速を行わない高速巡航時には伝達ロスは顕著になる。例として日産マイクラK13型の場合、欧州複合モード燃費において、MT:65.7MPG(17.35km/L), CVT:56.5MPG(14.9km/L)[3]となる。日本のJC08モードと比較し、欧州複合モードは一定負荷の連続運転が多く、歯車機構の効率の差が燃費に影響しやすい。
- 歯車式有段変速機に比べ歴史が浅く、耐久性・信頼性が確立されていない。そのため過酷な使用も想定される商用車に関しては採用例[4]が少ない。
- エンジン音、あるいはタコメーターの表示と車軸回転数(つまり車速)が比例しないため歯車式有段変速機と異なる走行感覚[5]を運転者が不快に感じることがある。
- 特に小排気量車の場合、加速時やアクセルオフからの再加速の反応では歯車式有段変速機に劣る。また過度に反応速度を早めると、速度維持が難しくなるジレンマもある。
- モード燃費を改善するための、極端な最適化が行われている場合がある。例としてホンダフィットGE6型の場合、10.15モード走行時にMT:21.0km/L CVT:24.5km/L であり、CVTのほうが17%燃費がよい。しかしJC08モードでは、MT:19.2km/L CVT:20.6km/L となり、CVTの燃費改善率は7.3%に縮小している[6]。
摩擦式のCVT [編集]
古典的な無段変速機としては2枚の円盤を直角に組み合わせその円盤の摩擦力により駆動を伝えるフリクションドライブが存在し、20世紀初頭から定置工作機械や小型の自動車やガソリン機関車などに用いられた。構造は簡単であったが体積が大きく空転による動力損失が多いことから、第二次世界大戦以前に廃れた。
ベルト式CVT [編集]
ベルトと2つの可変径プーリーを組み合わせ無段階に変速を行う機構のCVTで、ベルトの材質や構造で区別される。
ゴムベルト式CVT [編集]
ゴム製ベルトの張力により駆動を伝える無段変速機は20世紀初頭から存在していたが、当初は伝達できるトルクが小さくゴムベルトの耐久性も不十分であったためスクーターなどの低出力のエンジンを搭載した車両に用いられるのみであった。スクーターの駆動方式では、現代[いつ?]に至るまでこの手法が主流を占めている。
スクーターではエンジン側プーリーに内蔵されたウエイトローラーなる錘が遠心力でその位置を変えることで回転数によりその径を変える機構となっている[7]。2007年現在ではウエイトローラーに代わってプーリー径を電子制御するマニュアルスイッチ付きCVTも現れており、より柔軟な変速が行える。擬似的に通常のマニュアル式変速機のように操作することもでき、これによりシフトチェンジ感を味わえたりエンジンブレーキを用いたりと言ったスポーティな運転が可能である[8]。
自動車でこの方式を本格的に採用した最初はオランダのDAF(のちのDAFトラックス)で、自社で開発したゴムベルト式無段変速システム「ヴァリオマチック」を遠心式クラッチと組み合わせ1958年に発売した小型車「DAF 600」に搭載した。
スチールベルト式CVT [編集]
その後1970年代に、DAF社出身のオランダ人「ヨーゼフ・ファン・ドールネ」(Joseph Josephus Hubert van Doorne、日本では「バン・ドールネ」や「バン・ドーネ」等と表記されることもある)が耐久性の高いスチールベルト式CVTを開発した。最初に採用したのは、DAFを買収したボルボがオランダ(旧・DAF)工場で生産した66である。
ファン・ドールネ式CVTは1980年代以降、フィアット、ローバーをはじめとした欧州メーカーや日本の富士重工業(スバル)のECVT(Electro Continuously Variable Transmission)や日産のNCVTに採用されて小型車に普及しCVTの代表的方式となった。
ファン・ドールネ式のCVTベルトは、強靱な特殊鋼数枚を重ね合わせて形成したスチールベルトにやはり金属製の「コマ」をびっしりと填め込んだものである。プーリーからの駆動力は隣り合ったコマからコマへの圧力として伝達され、スチールベルトは従属的な位置決めガイドとして動作する。ゴムベルト式CVTと決定的に違うのは、ベルトの張力ではなくコマを押すことによる押力により動力を伝えることである。
スチールベルト式CVTの登場によって受容トルクは向上したものの、当初はその信頼性や操作性においてやや難があった。しかしファン・ドールネの特許期限が切れて以降は他メーカーの独自技術開発が一気に進み、更なる大排気量・大トルクに対応できるようになり現在[いつ?]の主流となった。
日産・エクストロニックCVT [編集]
エクストロニックCVT(XTRONIC CVT)とは、日産自動車の中容量スチールベルト式CVTの商標である。プーリー比を変える油圧を車速や負荷に応じ微細に電子制御するもので、単純な油圧制御に比べCVTの欠点であるドライバビリティー(運転性)の悪さを払拭した。
このCVTにはトルクコンバーター式クラッチが組み込まれており坂道発進や車庫入れなどの微速走行が容易になっている。日産はこのシステムでトルクコンバータ式クラッチのCVTの普及に業界での先鞭をつけ、少排気量のモデルから比較的大排気量のモデルにもCVTを採用する実績を挙げている。「ABSの作動」を伴い「3速以上のギヤ比」で停止した場合3速に固定される。解除方法は、発進し時速20km位まで加速すると解除される。
エクストロニックCVTの商標に変わる前までは、ハイパーCVTの商標で呼ばれていた。なお日産には後述するエクストロイドCVTもあり、名称が似ているため混同されやすい。
副変速機付CVT [編集]
副変速機付CVTとは、日産とジヤトコが共同開発したCVTである[9][10]。このCVTは、CVTのセカンダリープーリー(出力側)に遊星歯車式の副変速機を設置している。この副変速機は前進2段の変速機能と前後進切替機能をもち、従来のスチールベルト式CVTではプライマリープーリー(入力側)と動力断続用のクラッチ機構との間に設置されていた前後進切替用遊星歯車の役割も有している。
基本的には発進時には前進ローギヤで作動し、速度が上がるとに前進ハイギヤに自動変速される。これにより従来のCVTに比べて変速比幅が拡大されて、発進加速と高速走行時の燃費の向上が図られている。また前進ハイギヤ走行時でも低速走行時や中速域での高負荷走行時には自動的に前進ローギヤへシフトダウンを行うため、CVTでありながら有段オートマチックトランスミッションと同様にキックダウンが発生するのが特徴である。
車両重量が重いワンボックスカーやSUV用として開発されたCVTであるが、当初は車両重量が軽いがエンジントルクが小さい軽自動車(スズキ・パレット/パレットSW)用として採用された。2012年10月現在、日産のルークス、マーチ、ジューク、ノート、スズキのソリオ、スプラッシュ、スイフト/スイフトスポーツ、MRワゴン、パレット/パレットSW、ワゴンR/ワゴンRスティングレー、アルトラパン、アルト/アルトエコ、マツダのキャロル、AZ-ワゴン/AZ-ワゴン・カスタムスタイル、フレアワゴン、フレア、三菱のデリカD:2、ミラージュに採用されている。
乾式複合ベルト式CVT [編集]
愛知機械工業株式会社が開発した乾式複合ベルトを使い、同社とスズキが共同開発した無段変速機。
ベルト素材はアラミド繊維の芯線を特殊耐熱エラストマーで挟み耐熱帆布でコーティングしたものである。コマはアルミニウム合金をアラミド繊維と炭素繊維で補強した特殊耐熱樹脂で包んだもの。樹脂素材に自己潤滑性があるため金属ベルトCVTのようなフルードは不要となっている。動力の接続には電磁クラッチが採用され、低速域ではベルト式変速ではなくギア駆動となっているのが特徴。
A-CVTとしてスズキとダイハツの軽自動車に採用され小排気量用CVTとして期待されたが、結局この2社以外での採用例はなくこのCVTを採用した両社とも現在[いつ?]はトルクコンバータを組み合わせたCVTを採用している。
チェーン式CVT [編集]
チェーンの張力によって2個の可変径プーリー間で動力を伝達するCVT。押力で作動するスチールベルト式に外観が似て見えるが、力学的には同じく張力で動力を伝達するゴムベルト式に近い。
スチールベルト式よりも、低速側・高速側の変速比における伝達効率が良い。またプーリー巻きかけ半径を小さく出来るため、プーリー径を小型化したり、同じ体積で変速比を拡大できる。欠点はピンとプーリーが点接触して動力を伝達するため、面で接触するスチールベルト式よりも更に騒音が大きくなりがちなことである。
自動車用としては富士重工業が「リニアトロニック」と呼ぶ、シェフラーグループのLuK製チェーンを使ったCVTを5代目レガシィ、エクシーガの一部グレード、4代目インプレッサ、4代目フォレスターに搭載している[11]。過去にアウディ・A4のFF車に採用されていたチェーン式CVT「Multitronic」も同じくLuk製チェーンを使用している。なお、いずれも許容最大トルクは400N・mとなっている[11]。
このほか、過去に大手自動変速機メーカーのボルグ・ワーナーがサイレント・チェーン式CVTを開発した。しかしスズキ・カルタス・コンバーチブルにSCVTという名称で搭載されたのみで、こちらは一般化せずに終わっている(クラッチ機構には、湿式多板クラッチを採用している)。
トロイダルCVT [編集]
フリクションドライブを高度に発展させた形態である。入力側と出力側の2枚のディスクが平行に配置され、その間に複数のパワーローラー(コマのようなもの)が強い力で挟まれている。パワーローラーの傾斜角を変化させるとそれに応じて2枚のディスクの回転数の比も変化し、可変変速比が得られる。着想自体は古くから存在したが極めて高い圧力の下で摩擦と潤滑を両立させての精密作動が要求されるため、実用化は極めて困難であった。
日産がジャトコトランステクノロジー(ジャトコ)、日本精工(NSK) 、出光興産と共に開発、1999年に発表した「ハーフトロイダル式」とイギリスのトロトラック社が光洋精工と共に開発し2003年に発表した「フルトロイダル式」とがある。両者の違いは入・出力ディスクの形状とそれに挟まれたパワーローラーの接し方の違いであり、各ローラー間に強制スリップがほとんど発生しないほぼ「点」で接する球形パワーローラーのハーフトロイダル式が伝達効率が高く理想に近いとされる。対するフルトロイダル式は「線」で接する円盤形パワーローラーを用いており円盤の両端で半径に差ができるため、強制スリップの発生は避けられない。円盤の厚みを抑えることでジレンマを軽減してはいるがいまだ[いつ?]開発途上にあり、製品化はされていない。しかし、ハーフトロイダルCVTは有望視されながらコスト面から自動車用としては生産を終了している。自動車以外の用途では、固定翼哨戒機P-1に搭載される川崎重工製の一定周波数発電装置「T-IDG」に使用されている。
日産・エクストロイドCVT [編集]
NSKがローラーと軸受けの開発に成功し、出光興産が高圧下でのせん断力と潤滑・冷却力を兼ね備えた専用オイルを開発、ジヤトコがトランスミッションとして組み上げたトロイダルCVTは1999年に日産自動車が世界初のトロイダル式変速機を搭載する市販車としてY34型セドリック、グロリアに搭載、その後V35型スカイラインGT-8にも搭載される。日産ではこのCVTをエクストロイドCVTと呼んでいる。しかし日産以外のメーカーには供給されることはなく、当の日産においても、ATを搭載する車種との価格差が約50万円高となったこともあり2005年に生産が終了している。なおエクストロイドCVTの生産が終了した日産はメルセデス・ベンツに対し、エクストロイドCVTの技術を提供した。
摩擦式CVT以外の無段変速機 [編集]
ディーゼル・エレクトリック方式 [編集]
詳細は「ディーゼル・エレクトリック方式」を参照
鉄道車両において、電動機が停止状態から強力な駆動トルクを発生させることを利用し、発電機と電動機の併用でトルクと回転数を制御するシステム。電気機関車や電車と同様、ほとんどの場合減速機は一段固定であり、いわゆる変速機に当たるものはない。
トルクコンバータを用いた液体式変速機が未熟だった時代、総括制御も可能なディーゼル機関車や気動車の変速システムとして各国で広く利用されたが、直流発電機の重量ゆえ、日本では線路規格に対して軸重が過大となり、DF50形以外では極小数の採用に留まっていた。
現在[いつ?]ではブラシレス交流発電機、可変電圧可変周波数制御、誘導電動機の組み合わせにより体積や重量も軽減され、なおかつ液体式変速機の様な多大な部品点数や、手間のかかる整備の必要も無く、日本国内でもメリット十分享受できるとして、DF200形にこのシステムが採用されている。
鉱山用の超大型ダンプカーなど、少数ながら自動車にも採用例がある。
電力・機械併用式無段階変速機 [編集]
プリウスシリーズを始めとするトヨタ自動車のハイブリッドカーに搭載されているトヨタ・ハイブリッド・システム(Toyota Hybrid System、THS)は一般にE-CVTまたはECVT(Electronically-controlled:CVT)と呼ばれ、トヨタの商標名は「エレクトロマチック」である。諸元表のトランスミッション欄には「電気式無段変速機」とのみ記載される。
変速は機械的には1段の遊星歯車のみであるが、変速比をサンギアの回転数を電気的に制御することで変化させている。
エンジンのクランクシャフトはプラネタリーギアのキャリアに、発電機(兼モーター、M2)はサンギアに、車輪はリングギアおよびモーター(兼発電機、M1)にそれぞれ接続されている。
発電機M2の電気的負荷を変化させサンギアの回転数を制御することで見かけの変速比が変化する原理である(したがって変速比は諸元表に記載されない)。このため発電機、エンジン、モーターの回転数は共線図上では直線で表される。
走行の際は下記のように制御する。
- エンジン始動時(車両停止時)
- モーターM1が停止しており、発電機M2がモーターとして働きエンジンを始動させる。点火タイミングやVVT-i(可変バルブタイミング)の協調制御およびエンジン出力軸のダンパーでエンジン始動の振動を吸収する。
- 発進時(温関時)
- モーターM1の駆動力のみで発進する。エンジンが停止しているので発電機M2は逆回転するが、その回転数を発電機の電気負荷を調整することで調節し目的の変速比を得る。冷関時は所定の水温になるまでエンジンも稼働させる。
- 通常走行時
- 発電機M2の電気負荷を重くすることでサンギアの回転数を小さくし、遊星歯車機構によりエンジン出力を伝達して走行する。発電機M2の出力は電池の充電およびモーターM1に伝えられる。THSでは所定の変速比を得るためにはエンジン出力の一部が必ず発電機M2およびモーターM1を経由する必要があり、これが「パラレル/シリーズ型」と分類される理由である。緩加速や惰行のように大きなエンジン出力を要しないときはエンジンを停止し、モーターM1の出力のみで走行する。
- 加速時
- 発電機M2の回転数を高くすることで遊星歯車機構により車速に対してエンジン回転数が高くなり大きな出力を得ることができる。エンジンの出力だけでなく、バッテリーからの電力もモーターM1に加えることで、短時間であればエンジン出力を超える加速が即座に得られる。
- 減速時・制動時
- モーターM1が発電機として作動して、バッテリーに充電して運動エネルギーの回生を行っている。
- 後退時
- 専用の出力軸の反転装置を持っていないので、バッテリーや発電機M2による電力でモーターM1を逆回転させて後退する。後退時は純粋のシリーズ型ハイブリッドとなる。
- バッテリー充電時
- 車速に関係なく、遊星歯車機構を使いエンジン出力を発電機M2に伝えることで発電した電力を走行やバッテリー充電に使い分ける。
2代目プリウス(NHW20型)までに搭載されていた原型「THS」および「THS-II」では変速機のリングギアに直接モーターが接続されていたため、モーターM1に強いトルクが要求された。
その後のハリアー・クルーガー、3代目プリウス(ZVW30型)・アクアなどはモーターM1の回転を遊星歯車機構によって減速してリングギアに伝えている(後2者:リダクション機構付THS-II)。また四輪駆動仕様では後輪のデフにモーターを接続し、電気的に後輪駆動を実現している(E-Four)。
最高速度が高いクラウン・レクサスGS・LSでは出力軸に遊星歯車による2段変速機を組込み変速比を拡大している。
「THS-II」以降を搭載したハイブリッド専用車のシフトレバーは電子制御式になっており、ステアリング脇に小さなシフトレバー[12]を設置している(アクアや9代目カムリのシフトレバーは通常のゲート式フロアシフト)。
なお、THSでもエスティマハイブリッド(2代目ベース)・アルファードハイブリッド(初代)などに搭載されていた「THS-C」[13]ではベルト式CVTを、またクラウン・マイルドハイブリッドではトルコン式ATを使用していた。
静油圧式無段変速機 [編集]
静油圧式無段変速機、または単にHST(Hydraulic Static Transmission)とも呼ばれ、エンジンで油圧ポンプを駆動して発生させた油圧を油圧モーターで再び回転力に変換する方式。油圧ポンプのピストンの作動ストロークをそのピストンに接する斜板の角度を変化させることによって、作動油の流量を連続的に増減させて速度の調節を行う。
操作レバーで斜板の角度を操作することによって正転、停止、逆転まで無段変速で制御することが出来る上、斜板を中立にするとピストンのストロークが停止し、その状態では出力軸から入力軸にタイヤなどからの回転力が逆方向に伝達されずにブレーキをかけたのと同じ効果を生むなど変速機としての操作性は高い。しかしベルト式CVTに比較すると伝達効率が悪く、手荒に操作すると加減速のショックが大きい他、油圧作動油が内部の潤滑と冷却も同時に担うために常に一定以上のエンジン回転数を保たなければならないという欠点がある。また、HSTを備えた農耕用トラクタでは牽引作業には向かないとされている。
一般的にはギヤによる副変速機を別に備えて作業に適する回転速度を得るが、使用速度域が狭い場合は副変速機を省略することもできる。油圧ポンプと油圧モーターを一体としてコンパクトに設計することが出来る他に、それぞれを油圧ホースで接続して離れた場所に設置することも可能であり、設計自由度が大きくスペース効率にも優れる。また静油圧式無段変速機が伝達出来る動力の大きさは、内部での油圧に制限され、過大なトルクが加わるとリリーフバルブで油圧をバイパスすることによって変速機の破損を防いでいる。
静油圧式無段変速機はメルセデスベンツ・ウニモグUX100に使われているほか無限軌道式を含む建設機械、ラフテレーンクレーン、除雪車など、農業機械ではほぼ全てのコンバイン、芝刈り用途などの牽引力をそれほど要求されないトラクター、乗用田植機など、もともと作業用に油圧装置を備えていて低速な車両に採用例が多い。また乗用型の芝刈り機や歩行型の除雪機など、小型の機械にも一般的に採用されるようになった。
走行用変速機ではないが、鉄道車両では、ディーゼル機関車や気動車、客室冷暖房と厨房調理機器などのサービス電源用発電機に内燃機関を備える電源車のラジエターファンに静油圧駆動を用いているものが多い。
油圧機械式無段変速機 [編集]
油圧機械式無段変速機はHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)とも呼ばれ、駆動する動力の全てを一旦油圧に変換するHSTとは異なり、遊星歯車とHSTを組み合わせて構成されている。例えばサンギアを入力軸、プラネタリギヤを出力軸とし、リングギヤの回転をHSTで無段階にコントロールすることによって自在に減速比を制御することができ、HSTの無段変速のメリットを生かしつつも変速機全体での伝達効率を高めている。
ホンダでは、1962年には機械式のHMTを採用した革新的なスクーター、ジュノオで量産化。この原理を用い、二輪車用に小型・高圧化したものを開発、HFTと名づけ自社のモトクロッサー・RC250MAに採用し参戦2年目にあたる1991年にモトクロス全日本選手権でシリーズチャンピオンを獲得している。2001年にはATVと呼ばれる4輪バギーで、honda maticという商標のこのCVT機構をアメリカで量産車に採用。さらに、世界初のロックアップ機構を備えて商標をHFT(Human-Friendly Transmission)とし、2008年3月7日発売のDN-01に搭載した。
農業機械においてはヤンマーがトラクターと乗用田植機の一部にHMTを採用しており、日本国外ではマッセイ・ファーガソン社のトラクタのトランスミッションにDyna-VTという名称で搭載されている。
特殊な用途として、陸上自衛隊の10式戦車に採用されている。エンジンを出力の大きい回転数付近で使用できる為、現有戦車に比べてエンジンが小型になったにもかかわらず運動性は向上しているとされる。
自動車用途におけるその他の事項 [編集]
- スポーツ志向の自動車には電子制御プログラムにより擬似的に変速比を数段[14]に固定することでマニュアルトランスミッションのように手動変速を可能とした例もあり、エンジンブレーキなどに活用できる。
- 一部の車種では、急な下り坂などでアクセルを戻しても速度が上昇する際、ある速度(日本では法定速度となる時速60kmなど)を境に減速比を調節し、自動的にエンジンブレーキを強めて速度を維持する制御が為される。
- 1990年代初期にF1マシンに無段変速機を搭載することが一部のチームで検討され、実際に試験走行が行われた[15]。結果、通常のトランスミッションを持つマシンよりもサーキット1周回に付き数秒は速くなったという。その際のCVTは市販車用として開発中のものが使われた。耐久性に関してはF1用としても予選、本戦併せて数時間ならば大丈夫であると予想されていた。CVTの耐久性よりも、常にエンジンが最高出力付近で使われる(使える)ためにエンジンの耐久性の方が心配されたという。結局はF1レギュレーションで規制され、実戦には投入されなかった。
併用するクラッチ機構の変遷 [編集]
初期のベルト式CVT車両には、発進・停止時の動力断続に遠心式や電磁式の自動クラッチが使われていた。これによりトルクコンバータ式におけるクリープ現象のデメリットを排除できるという特徴が生じた。しかし流体継手やトルクコンバータを使用しない代償としてクリープ現象のメリットも失われ、これらの自動クラッチにはマニュアルトランスミッション車の運転技術である「半クラッチ」に相当する機能・機構を必要とした。
この機構は、繊細なアクセル操作を行なわなければ発進時にぎくしゃくして円滑さに欠ける車両挙動を示した。富士重工業ではより滑らかな作動を求め三菱電機との共同開発で密閉容器内の鉄粉の流動性を磁力でコントロールする電子制御式電磁クラッチを考案したが、それでもこの問題の解決には至らなかった。富士重工の初期の電磁クラッチ式CVT車では過負荷状態で電磁クラッチを破損させる事態が頻出し、クレーム扱いの保証修理を多発させてもいる。本田技研工業は変速機の出力側に湿式多板クラッチを配置し、これを電子制御することで疑似クリープ現象を得るというシステムを開発したが独自技術で広く普及するまでには至らなかった。
自動クラッチ式は普及せず、1990年代後半以降は発進・停止時の動力断続をロックアップ付のトルクコンバータに委ねる手法が主流になった。トルクコンバータを採用することでクリープ現象を得ることができ、おなじくトルクコンバータを採用する他のオートマチックトランスミッション車に運転感覚が近づいた。クリープ現象を得ることに着目すれば流体継手でも事足りるがトルクコンバータに比してクリープ現象が弱く、先行して広く普及したトルクコンバータ搭載のオートマチックトランスミッション車に運転感覚を近づけるため、流体継手を採用する車種は少ない。
脚注 [編集]
- ^ [1][リンク切れ]
- ^ webCG「4WD車にはなぜCVTが設定されない?」
- ^ Nissan vehicle emissions
- ^ スバル・サンバー(5代目のみ)ランサーカーゴ(2WD車のみ)など
- ^ 勾配などの負荷変動に対する速度維持が難しい点、アクセルオフ時の一瞬の空走(惰行)、低速時の「しゃくり」など
- ^ Honda│クルマ│フィット│スペック
- ^ 『よくわかる最新バイクの基本と仕組み』p.264「8-6 スクーターのクラッチとミッション」、『2007 オールスクーター購入カタログ』pp.117-118
- ^ 『2007 オールスクーター購入カタログ』p.14, p.118
- ^ 日産とジヤトコ、次世代の無段変速機を共同開発 日産自動車株式会社ニュースリリース、2009年7月22日
- ^ 日産とジヤトコ、次世代の無段変速機を共同開発 ジヤトコ株式会社ニュースリリース、2009年7月22日
- ^ a b 日経Automotive Technology 2009年9月号p.29より
- ^ レバーに表示された矢印の方向に動かせば「R」(右上)「N」(右)「D」(右下)「B」(下。ただし「D」以外で「B」に入れてもブザーが鳴り切り替え不可)が切り替わり、手を放すと元の位置に戻る。「P」は押しボタン。
- ^ エスティマハイブリッド(3代目ベース)・アルファード(2代目)/ヴェルファイアハイブリッドは「THS-II」を採用している。
- ^ 市販車では6段から8段がみられる
- ^ 実験時の映像 YouTubeより
参考文献 [編集]
- 齋藤浩(製作プロデューサー)、上野賢一(編集長)、2008、『2007 オールスクーター購入カタログ』、モーターマガジン社
- 青木タカオ、2010、『図解入門 よくわかる 最新バイクの基本と仕組み』、秀和システム ISBN 978-4-7980-2234-5
関連項目 [編集]
- トランスミッション
- マニュアルトランスミッション
- オートマチックトランスミッション
- セミオートマチックトランスミッション
- デュアルクラッチトランスミッション
- IVT
- Sマチック - ホンダの電子制御式CVT
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