エンジンブレーキ

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エンジンブレーキ(機関ブレーキ)とは、エンジンを搭載した車両の走行中にアクセルペダルを離すことによって発生する制動作用である。エンジンの回転抵抗によって駆動輪が制動される。一般のブレーキとは異なり、ブレーキという名称がついているが、エンジンの回転抵抗を制動に利用するブレーキの事であり、「エンジンブレーキ」という独立した制動装置や操作装置があるわけではない。ただし厳密にいえば、ギアの変速によってエンジンブレーキの強弱を調整することはできる。

目次

概要 [編集]

エンジン回転の抵抗はポンピングロスが大半を占め、排気量に比例してポンピングロスも増大する。 最も強くポンピングロスが強くなるのは、スロットルの開度がごく小さく、エンジンがアイドリング状態にある時であるが、実際はポンピングロスが弱くなる高回転の方が回転数の分、ポンピングロスにエンジン回転数が乗じられ、エンジンブレーキが強く作用する。そして、減速比が高いほどエンジンの回転抵抗がより大きく増幅されて車輪に伝わるため、トランスミッションで低いギアが選択されているほどエンジンブレーキは強く作用する。ただしターボ等を用いて小排気量で高出力のエンジンを搭載している場合は、小排気量かつ圧縮比が低く、ポンピングロスが弱いため、出力に比べてエンジンブレーキが弱くなる。ただし出力に比べてエンジンブレーキが弱いというだけであり、ターボ機構自体がエンジンブレーキの作用を弱めることはない。

一般的にスロットルバルブによる出力調整を行わないディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンと比較してエンジンブレーキの作用を得にくい。特に、ディーゼルエンジン車の中でも大型の貨物自動車は、車重による慣性力が大きく、エンジンブレーキが効きにくい。そのために排気ブレーキリターダといったエンジンブレーキ以外の補助ブレーキを装備している場合が多い。

電子制御式燃料噴射装置を有するエンジンを搭載している車両の場合、スロットル開度が全閉のときは、燃料噴射をカット(停止)するプログラムが組まれていることがある[1]。このため、減速時や下り坂でスロットルが全閉していて、エンジンブレーキが作用している時は、実質燃料消費がなく、燃料節約につながる。

船舶は、エンジンブレーキが作用しても、スクリュー回転が減速するだけで効果がない。

プロペラ航空機は、船舶と同じくプロペラ回転が減速するだけで効果がない。ジェット航空機は、逆噴射制動をエンジンによる制動と捉えた場合は、エンジンブレーキ作用があることになるが、一般的に認知はされていない。


乗用車のエンジンブレーキ [編集]

乗用車の場合、長い距離の下り勾配が続く山道、峠等で、フットブレーキのみを使って速度を調節すると、過度の使用で発する摩擦熱によるブレーキパット・ドラムの加熱による摩擦係数の低下が発生(フェード現象)したり、ブレーキ液の沸騰による気化により、ブレーキパイプの途中に気体が発生し、油圧がブレーキに伝わらなくなる(ペーパーロック現象)が発生して、フットブレーキが効かなくなる恐れがあるため、勾配に応じたトランスミッションの低いギアにチェンジして、エンジンブレーキをより強く作用させて、フットブレーキ装置の過熱を防ぐ必要がある[2]

マニュアルトランスミッション(MT)の自動車は、エンジンとトランスミッションが機械的に直結しているため、後述のオートマチックミッションに比べ、エンジンブレーキの作用が強い。ただし、急速にクラッチを接続したり、速度に対して低すぎるギアを選択すると、急激にエンジンブレーキが作用して路面の摩擦係数との関係で、タイヤがスリップする場合がある。未舗装路や積雪路、氷結路でのシフトダウンは路面の摩擦係数が低いので、特にスリップする可能性が高い。オートバイの場合、駆動輪がスリップするほどエンジンブレーキを急激かつ強力に作用させると、後輪の人的制御が不可能になり、転倒に至る場合がある。そのため、近年のオートバイではバックトルクリミッターなど急激なエンジンブレーキの作用を抑制する装置がついているものもある。

オートマチックトランスミッション(AT)は、液体であるオートマチックフルード(オイル)を介した変速機であるため、オイルにバックトルクが吸収されギアに伝達されるエンジンブレーキの作用が弱くなる。エンジンブレーキを作用させる際は2レンジやLレンジ、MTモードで低いギアなどを選択する。MTとは異なり、オーバーレブを防ぐため、オーバーレブにならない速度に落ちるまで、シフトダウンしないように電子的または機械的に制御される。しかし、その場合、セレクトレバーの操作から遅れてエンジンブレーキが作用するため、運転者の意図しないタイミングで制動が作用することがある。現在ではDレンジでスロットルを全閉にしても加速するなど、下り坂を走っていることを感知すると、自動的にシフトダウンしエンジンブレーキがかかるように学習機能を備えているものもある。

鉄道車両のエンジンブレーキ [編集]

気動車ディーゼル機関車のうち、自動車のマニュアルトランスミッションと同様の構造である「機械式変速機」を持つものや、「液体式変速機」を持つものでも直結段ではバックトルクが伝わるため、理論上はエンジンブレーキが使えることになる。しかし鉄道車両の場合、車両や列車の重量が自動車に比べて大きく、かつ線路動輪間の摩擦係数が低いという特徴を持つため、効果的な減速が行えないことと、動輪の滑走を防ぐため、長らくエンジンブレーキが常用されることはなく、連続する下り勾配でも「制輪子」による制動が行なわれてきた。

制輪子以外の制動方式として、ハイドロリックダイナミックブレーキトルクコンバータを利用するコンバータブレーキもあるが、これらもエンジンへのバックトルクの入力を回避するためである。

その後の内燃動車の技術革新により、現在は排気ブレーキと併用するエンジンブレーキが用いられるようになっている。総括間接制御が前提の日本の気動車やディーゼル機関車の場合、燃料噴射ポンプを制御するマスコンハンドルが中立アイドリング)で、ブレーキハンドルが常用減速域にある場合、変速機がつながってエンジンブレーキがかかる。

なお、気動車・ディーセル機関車で、動力伝達方式が電気式の場合は駆動系とエンジンが直接繋がっていないため、エンジンブレーキは利用できず、モーターを駆動系からの力で動かして発電する、発電ブレーキ回生ブレーキを用いるのが通常である。

また電車は、エンジン自体が存在せず、エンジンブレーキは当然使用できない。前述の通り、エンジン代わりの機関であるモーターを、車軸から得る力で回転させ、発電機として作用させ車輪に対する制動抵抗作用を発生させる。

関連項目 [編集]

脚注 [編集]

  1. ^ 排気ガス触媒の温度やエアコン動作の有無等、運転条件によって停止領域は異なる。
  2. ^ エンジンブレーキに関する教育が、日本の自動車免許取得の教習過程に組み込まれている。