自動車排出ガス規制

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自動車排出ガス規制(じどうしゃはいしゅつガスきせい)とは、自動車内燃機関から排出される一酸化炭素窒素酸化物炭化水素類・黒煙等の大気汚染物質の上限を定めた規制の総称である。

大気汚染防止法自動車NOx・PM法、都道府県条例などが含まれる。近年は、特にディーゼルエンジンから排出される粒子状物質 (PM) や硫黄酸化物窒素酸化物 (NOx) の規制が厳しくなる傾向にある。自動車排ガス規制自動車排気ガス規制とも呼ばれるが、ここでは法律用語における記載にならって自動車排出ガス規制とする。

規制手法[編集]

現在、日本国内で行われている自動車排出ガス規制の手法は、単体規制、車種規制、運行規制と呼ばれる3種に大別される。

単体規制[編集]

一定の走行条件下で測定された排気ガス濃度が基準を満たしていない車両の新車登録をさせないことにより、基準を満たす排ガス性能を持つ車両のみを製造・輸入・販売させる規制手法である。新車登録時のみに適用され、中古車および使用過程車には適用されない。狭義の自動車排出ガス規制はこの手法による規制を指す。道路運送車両法[1]及び、自動車排出ガスの量の許容限度[2]に基づく道路運送車両の保安基準[3]による規制がこれにあたる。米国のマスキー法もこの手法をとる。

単体規制における排出ガス濃度基準の詳細は、以下の外部リンクを参照。

車種規制[編集]

一定の走行条件下で測定された排気ガス濃度が基準を満たしていない車両の新規登録、移転登録及び継続登録をさせないことにより、基準を満たさない車両を排除する規制手法である。中古車及び使用過程車も対象となるため、単体規制よりも新車代替が促進される。自動車NOx・PM法による規制がこれにあたる。

運行規制[編集]

車種、用途、燃料種、排ガス性能その他について要件を定めて車両の運行を制限し、排ガス性能の劣る車両の流入阻止や渋滞緩和を図り沿道の大気汚染を防止する規制手法である。埼玉県千葉県東京都神奈川県大阪府兵庫県等の各地方自治体のディーゼル車規制条例によるディーゼル規制や尾瀬乗鞍スカイライン上高地などで自然保護のために行われるマイカー規制がこれにあたる。

識別記号[編集]

各規制ごとに識別記号があり、車両型式(かたしき)の前にハイフン (-) を伴って付与される。詳細は以下の外部リンクを参照。

ディーゼル車の長短期規制[編集]

年次毎の排ガス規制[編集]

昭和48年以前の経過[編集]

日本における排出ガス規制は、1963年(昭和38年)に運輸省船舶技術研究所内に日本初の排気ガス測定装置を設置し、省内にて自動車排出ガス規制のための研究が開始された事[4]に端を発する。具体的な規制は1966年(昭和41年)にガソリンを燃料とする普通自動車及び小型自動車の一酸化炭素濃度規制により開始された。これはアイドリング、加速、定速、減速の4つの走行状態(4モード)で台上測定を行い、CO濃度が3%以下[5]となる事を普通自動車及び小型自動車の新車に対して義務付けたものであり、当初は運輸省の行政指導という体裁[4]であったが、1968年(昭和43年)には大気汚染防止法が成立した事で法的な根拠も確立され、同年の保安基準にて正式なものとなった。1969年(昭和44年)からは保安基準改正により段階的にCO濃度2.5%以下に規制が強化された[4]

同時に、使用過程車に対しては1967年(昭和42年)より整備事業者に対して排気ガス対策点検整備要領が交付され、エアクリーナーの状態、キャブレターからの燃料漏れなど16項目[5]の点検整備を励行する事が行政指導された。1970年(昭和45年)からは使用過程車に対するCO濃度試験も開始され、アイドリング検査でCO濃度が5.5%以下(1972年(昭和47年)からは4.5%以下)になる事が求められるようになった[6]。当時、このような排出ガス規制を本格的に行っていた国は大気浄化法のアメリカと日本のみであるとされた。

1970年(昭和45年)、運輸技術審議会自動車部会において「自動車排出ガス対策基本計画」が策定され、昭和48年・50年の二段階での排出ガスの低減目標を設定。この時点では東京都内の排出ガス総量を昭和50年において昭和38年相当量とし、昭和55年において昭和36年相当量とすることを目標とするという事を主旨としていた[7]。同時に、同年5月に東京都新宿区牛込柳町にて発覚した牛込柳町鉛中毒事件への対策の為、段階的に有鉛ガソリン無鉛化する方針も決定された[注釈 1]

そして1973年(昭和48年)、新車及び使用過程車に対する排ガス試験項目が炭化水素及び窒素酸化物にも拡大される形で昭和48年排出ガス規制が成立[8]。同時に、1970年大気浄化法改正法(マスキー法)を直接の下敷きにする形で、同法が目標としていた1975年式以降のCO / HC及び1976年式以降のNOxは、それぞれ1970年式以前のCO / HC及び1971年式のNOxの少なくとも1/10以下に低減するという環境基準を、日本の排出ガス規制においても正式に適用する事が決定(昭和50年及び51年規制)されたのである[8]

昭和48年以後[編集]

  • 使用過程車 - 昭和48年規制以前の所謂未対策車。昭和48年規制後は、昭和43年(1968年)以前に登録された車種を対象に、暫定措置として点火時期を数度遅らせる調整(遅角)し点火時期調整ステッカー(正方形)の貼付を行うことが広く実施された。なお、この点火時期調整を経ても昭和48年規制の基準に適合出来ない4サイクルガソリンエンジン車に対しては、アイドルHC特殊ステッカー(楕円形)の貼付が行われた。現在でも「現時点での排出ガス規制の施行以前に登録された車輌」は法令上は全て使用過程車として扱われる事になる。
  • 昭和48年排出ガス規制 - 1973年施行。識別記号なし[注釈 2]。この年から出荷される車種には恒久措置としてディストリビューターに負圧式進角装置もしくは触媒コンバータの取り付けのいずれかが義務付けられた。排出基準は車両総重量2500kgを境にこれより軽量なものを軽量車、重いものを重量車として区分し、多くの小型自動車軽自動車は軽量車として区分された。また、2ストロークと4ストロークの排出基準が別に設定された[9]。なお、使用過程車においても昭和43年から49年度末に登録された車種に対しては、触媒か負圧式進角装置の後付けで排出ガス対策済(点火時期制御方式の排出ガス減少装置)ステッカー(丸形)貼付が認められた点が、後年の排ガス規制との決定的な違いである。
  • 昭和49年排出ガス規制 - 1974年施行。識別記号なし。ディーゼルエンジン車に対する初の規制。NOxを49年使用過程車比80%[10]
  • 昭和50年排出ガス規制 - 1975年施行。識別記号A(定員10人以下の乗用車)またはH(それ以外)。CO、HCを中心に大幅強化が行われたいわゆる日本版マスキー法。適合した車輌に対しては排出ガス対策済ステッカー(丸形、横ストライプ入り)が貼付された。
  • 昭和51年排出ガス規制 - 1976年施行。識別記号B(主に等価慣性重量1トン以下)またはC(それ以外)。NOxの大幅強化が行われた日本版マスキー法第二弾。適合した車輌に対しては排出ガス対策済ステッカー(丸形、横ストライプ、二重輪郭のクローバーマーク)が貼付された。本来はこの年度の規制でマスキー法の規定値を完全達成する予定であったが、74年に数度実施された環境庁及び衆議院での聴聞の席上、トヨタ自動車を筆頭とする国産9メーカーが連名で、「現時点の技術水準では昭和51年実施予定のマスキー法正規規定値への適合は(耐久性を度外視する手法以外では)困難であり、昭和50年規制値を2年間継続する事で技術開発の猶予期間を与えて欲しい」旨を答申。これを承けた中央公害対策審議会は、マスキー法正規規定値を2年延長した1978年より完全実施する旨を発表、昭和51年規制はNOxをメーカー答申を考慮した値に強化するに留まる暫定的なものとなった[11]
    • 昭和50年暫定規制 - 2ストロークの軽自動車の為に51年規制内に別枠で設けられた規制値[12]。1976年4月1日より1977年9月30日までに製造される2ストローク車には暫定措置として若干緩い規制値が適用された。なお、軽貨物車向け2ストローク機関については、50年と51年以降で規制値に変化がない為、識別記号は50年のHが継続して使用された。
  • 昭和52年排出ガス規制 - 1977年施行。識別記号なし。ディーゼルエンジン車に対する二度目の規制。NOxは49年使用過程車比68%[10]
  • 昭和53年排出ガス規制 - 1978年施行。識別記号E(定員10人以下の乗用車)。昭和48年より始まった日本版マスキー法導入の集大成であり、NOx排出基準は48年4月以前使用過程車比8%[10]まで縮減。マスキー法の目標値を完全達成し、当時世界で最も厳しい規制と言われた[13][注釈 3]。2ストロークと4ストロークの区分もなくなった。この後平成12年までさほど大きな基準値の変化はなく、平成12年規制まで一般乗用車や軽乗用車の代表的な規制であった。平成3年以降は試験モードが10・15モードに移行。
  • 昭和54年排出ガス規制 - ガソリン・LPG貨物車(軽貨物車を含む)(J) 及びディーゼル車 (K) に対する規制。
  • 昭和56年排出ガス規制 - 1981年施行。識別記号L。定員10人以下以外かつ2.5t以下の貨物車に対する規制。
  • 昭和57年排出ガス規制 - 1982年施行。識別記号M(ガソリン)またはN(直接噴射式以外のディーゼル)。主に貨物車(軽貨物車を含む)に対する規制。
  • 昭和58年排出ガス規制
  • 昭和61年排出ガス規制 / 昭和62年排出ガス規制 - 1986年から1987年に掛けて施行。識別記号Q。主にディーゼル車に対する規制。
  • 昭和63年排出ガス規制 - 1988年施行。識別記号R(ガソリン)またはS(ディーゼル)。主に貨物車(軽貨物車を除く)に対する規制だが、排出基準が53年規制並みに強化。平成3年以降は試験法が10・15モードとなる。
  • 平成元年排出ガス規制 - 1989年施行。識別記号T(ガソリン)、U(ディーゼル)。主に大型貨物車に対する規制。平成3年以降は試験法が10・15モードとなる。
  • 平成2年排出ガス規制 - 1990年施行。識別記号Vほか。54年、57年に次ぐ軽貨物車の規制強化で、平成10年代までの軽貨物車の代表的な規制であった。平成3年以降は試験法が10・15モードとなる。
  • 平成4年排出ガス規制 - 1992年施行。識別記号Yほか。主にディーゼル貨物車に対する規制。
  • 平成5年排出ガス規制 - 1993年施行。識別記号KAほか。主にディーゼル貨物車に対する規制。
  • 平成6年排出ガス規制 - 1994年施行。識別記号KC。主にディーゼル貨物車に対する短期規制。
  • 平成7年排出ガス規制 - 1995年施行。識別記号GB。主に大型ガソリン自動車に対する規制。
  • 平成9年排出ガス規制 - 1997年施行。識別記号HA。初のハイブリッド車に対する規制でもある。
  • 平成10年排出ガス規制 - 1998年施行。識別記号KK。主にディーゼル貨物車に対する長期規制。同時に、オートバイにおいても125cc超250cc以下の普通自動二輪車(二輪の軽自動車/軽二輪)及び第一種原動機付自転車(50cc以下)に対する規制も先行して開始された。
  • 平成11年排出ガス規制 - 1999年施行。識別記号KL。主にディーゼル貨物車に対する長期規制。同時に、250ccを超える普通自動二輪車(二輪の小型自動車/小型二輪)及び第二種原動機付自転車(125cc以下)に対する規制も開始され、オートバイが完全に排ガス規制の枠内に組み込まれた。
  • 平成12年排出ガス規制 - 2000年施行。昭和53年規制から大幅に規制が強化され、今日の一般乗用車の代表的な規制である。この後の規制はこの平成12年規制をベースに何%低減できたかで論じられることが多い。
  • 平成15年排出ガス規制 - 2003年施行。主にディーゼル貨物車に対する新短期規制であり、初めて粒子状物質への併用対策が求められた。また、ディーゼル特殊自動車に対する規制もこの年次から開始(産業機械に対する第1次規制)された。
  • 平成16年排出ガス規制 - 2004年施行。主にディーゼル貨物車に対する新短期規制
  • 平成17年排出ガス規制
  • 平成18年排出ガス規制 - 2006年施行。軽二輪車、第一種原付の試験モードが冷機モードへと変更される。ディーゼル特殊自動車も130 - 560kW級を中心に規制強化。
  • 平成19年排出ガス規制 - 2007年施行。小型二輪車、第二種原付の試験モードが冷機モードへと変更される。ディーゼル特殊自動車も一部の規制強化が行われ、ガソリン・LPG特殊自動車も正式に排ガス規制の枠内に組み込まれた。(産業機械に対する第2次規制)
  • 平成20年排出ガス規制 - 2008年施行。ディーゼル特殊自動車の37 - 56kW及び56 - 75kW級が規制強化。
  • 平成21年排出ガス規制
  • 平成22年排出ガス規制
  • 平成23年排出ガス規制 - 2011年施行。ディーゼル特殊自動車の130 - 560kW級が規制強化。(産業機械に対する第3次規制)
  • 平成24年排出ガス規制 - 2012年施行。全てのオートバイの試験モードが世界統一二輪車排出ガス試験手順 (WMTC) に変更される。
  • 平成25年排出ガス規制 - 2013年施行予定。ディーゼル特殊自動車の37 - 56kW及び19 - 37kW級が規制強化される予定。

関連した規制[編集]

海外での規制[編集]

北米[編集]

アメリカ合衆国カナダ(カナダ環境省英語版)がそれぞれ独自の規制を定めている。

米国内においては1963年に成立した大気浄化法を根拠規定として、連邦政府が定める規制と各州が独自に定める規制が存在し、中でもカリフォルニア州が周年の排ガス検査の義務付け(カリフォルニア州スモッグチェック制度英語版)を含めた特に厳しい規制を課している事で知られている。その他の49州は特に州による規制値の制定が無い限りは、1968年に成立し原則として1994年以降義務付けとなったアメリカ合衆国環境保護庁(EPA)の定める米連邦排出ガス規制英語版に依る。米国では1996年以降ECUの通信規格のOBD-II規格への完全移行を達成、概ねこの世代を境に規制基準値の強化が行われている。

カリフォルニア州の規制はカリフォルニア州大気資源局英語版(CARB)により定められており、州知事命令(Executive Order、EO)により、具体的な適用車種やモデルイヤーの範囲、規制値などが決定される。カリフォルニア州はその地形や交通事情などの事由から、全米50州でも特に大気汚染が深刻であったとされ、第二次世界大戦中の1943年には早くも光化学スモッグの発生が記録されている[14]。このスモッグは1952年に自動車から排出されるHC及びNOxが原因である事が特定され、1962年には米国初の排ガス規制である「クランクケース・エミッション規制」が州法で規定、同州内で販売される車両へのPCVバルブ装着が義務付けられた。1965年からは独自に排気ガスへの規制も始まり[15]、1967年にCARBが創立されて以降は、米国のみならず世界的にも非常に先進的な規制政策が実施された。その為、自動車メーカーはカリフォルニア州で販売される車種には新型の排ガス対策機器の搭載や触媒の連装化、エンジン自体の特殊な改修を盛り込んだカリフォルニア州仕様を設定しなければならない程であった。現在でも米国内の排ガス対策機器の補修部品(特に触媒)においては、カリフォルニア州向けの専用品がラインナップされており、同州州知事命令のどの世代(EO Number)に適合しているかを示す表記が行われる事が多い。前述の1994年全米規制値のモデルともなった1993年時点のCARB規制値では、日本の53年規制に匹敵する基準が課され、1990年以降段階的に制定されている各種の低公害車(LEV)仕様においては、日欧の規制値を上回る厳しい値が制定される事も珍しくなくなっている。

カリフォルニア州以外では、テキサス州テキサス鉄道委員会英語版(RRC)がLPGエンジンのみを対象に独自の規制値を定めている。これは同州のガス田パイプライン[要曖昧さ回避]開発などのエネルギー産業に対する規制と密接に絡むものである。

なお、米連邦内では石油危機を契機に1978年から企業別燃費基準(CAFE)が世界に先駆けて制定された。1975年前後の各社の排ガス対策はキャブレターの予熱等の霧化効率向上(CO、HC抑制)、希薄燃焼バルブオーバーラップの増大等で燃焼室温度を下げるエンジンの改良(NOx抑制)、EGRやサーマルリアクターなどの後処理装置の追加などが主流で、高価で信頼性がまだ不十分[注釈 4]であった還元酸化などの二元触媒や三元触媒は、採用に二の足を踏むメーカーも存在した。しかし触媒以前の従来型の排ガス対策、特にエンジンの改良は排ガス性能向上と燃費がトレードオフの関係になりやすかった為、CAFEの制定以降は従来型の排ガス対策では浄化性能と燃費基準の両立が次第に難しくなり、各メーカーは構造面や方向性における転換を迫られる事となった。その後、三元触媒の製造技術の向上により排気効率や耐久性が確保され、必ずしも定期交換を要さなくなった事から、80年代初頭より三元触媒にO2センサーを組み合わせ、空燃比測定による燃調のフィードバック制御を電気的に行う事で、浄化性能と出力性能、高燃費の全ての要素を満足する三元触媒方式が今日まで続く世界的なデファクトスタンダードとなった[16]

欧州[編集]

旧西ドイツ時代の1985年から独自の規制値(西独排出ガス規制ドイツ語版)を定めていたドイツのような事例もあるが、今日のヨーロッパ諸国は原則としてはヨーロッパ連合(EU)が定めるEU圏内統一排出ガス規制英語版に依り、それぞれの国内法にて規制値を制定している。

EUの規制値はその世代により「ユーロx(数字)」の表記で区分が行われ、日本に於いては2ストローク機関搭載のオートバイも規制対象となったユーロ3でにわかに注目が集まった。現在はEU圏内ではユーロ6が適用されており、中国を始めとする新興国発展途上国の多くも、ユーロ2やユーロ3等の世代の古い規格を準用している場合が多い。

排ガス対策機器[編集]

マスキー法関連[編集]

昭和48年規制関連[編集]

  • 点火装置 - ディストリビューターの改良やCDIなどの強力な点火装置の採用も排ガス対策に貢献した。
  • 点火プラグ - 点火装置の改良により、火花ギャップは大きく広がることになった。
  • PCVバルブ - 1960年代初頭に北米で光化学スモッグ対策のために導入。日本では昭和45年9月からブローバイガス還元装置としてPCVバルブまたはシールド式クランクケースブリーザーの装着が義務付けられる[18]
  • チャコールキャニスター - 1971年に北米で初採用
  • ダッシュポット - キャブレター車において、スロットルの急激な戻りによるHC増加を抑制するダンパー[要曖昧さ回避][19]
  • 排ガス減少装置 - BCDDとも呼ばれる。エンジンブレーキ時に適量混合気や空気を追加投入する事でHCを抑制するバイパス機構[20]
  • 2ストロークオイル - オイルの品質改良も2ストローク機関の排ガス対策には重要な要素であった。
    • スズキ・SRIS - Suzuki Recycle Injection System。1972年よりオートバイGT380GT750で採用された機構で、1973年よりL50型にも採用された。アイドリング時にクランクケース下部に滞留した未燃焼オイルを加速の際に隣のシリンダーへ送り込み再燃焼させる事で、排気ガスへの未燃焼オイルの混入を軽減し、2ストローク特有の白い排気煙の減少を図った機構。後のLJ50型はこの機構に3気筒の排気干渉を利用した[21]チャンバーを組み合わせる事で、昭和50年暫定規制及び51年以降の正規規制値をもクリアし、1988年に至るまで2ストロークの命脈を保った[22]

それ以降の規制関連[編集]

  • 三元触媒/酸化触媒/還元触媒 - 三元触媒として機能するためには、排気中の酸素濃度(O2センサーで測定)に対する空燃比のフィードバック制御が必須である。酸化触媒を経て登場した三元触媒は、後にほぼ全てのメーカーに採用された。
    • スズキ・TC-53 - ハニカム構造の酸化触媒を二重に配置(Twin Catalyst)し、エアポンプで二次空気も供給する事で、2ストローク機関に置ける排ガス浄化を強化。これによりスズキは軽乗用車向けのT4A型とT5A型で昭和53年規制をクリアした[22]
  • 排気再循環 (EGR)
    • NAPS - 日産の排ガス対策技術の総称。当初は酸化触媒を採用。
  • ツインプラグ
    • 日産・Z型エンジン (NAPS-Z) / 日産・CAエンジン (NAPS-X) - 大量のEGR化でも安定した燃焼を行う目的で、燃焼室に2本の点火プラグを配置するツインプラグによる急速燃焼技術を採用。
    • スズキ・EPIC - 排気孔点火浄化装置(Exhaust Port Ignition Cleaner)の意。2ストローク機関に置ける排ガス浄化を強化する為に、燃焼室と排気ポートに1本ずつの点火プラグを配置し、未燃焼ガス(HC)を再燃焼。併せてエアポンプでCOも浄化する仕組みである。1970年には既に特許を取得していた機構[23]であり、LC10W型英語版は更に前述のSRISも組み合わせられた[22]ものが、アメリカ合衆国環境保護庁のマスキー法試験に挑んだ記録が残っている。これによると、1973年に未対策のLC10型(フロンテGX)での試験では75モデルイヤー規制値に適合しなかったが[24]、翌1974年にEPIC機構搭載の試作型フロンテは日本の50年正規規制値よりも遙かに低い値で合格している[25]。しかし、この装置が必要となる1977年の50年正規規制値発効当時には既にLC10/10W型は550ccへの移行により姿を消しており、後継のT5A及びLJ50はいずれもEPICとは異なる機構で規制への適合を図った事から、市販車両への採用は行われなかったようである。
  • DPF - ディーゼルエンジンの排気ガスから粒子状物質を捕集するフィルター。
  • エンジンコントロールユニット(ECU) - エアフロメーターとO2センサーによる空燃比制御も排ガス規制に貢献した。
    • OBD - ECUの自己診断機能の統一規格。各社まちまちであった通信規格の統合により、当局による排ガス基準値チェック体制の強化に貢献した。
  • 電子制御燃料噴射装置(EFI/EGI) - ガソリンエンジンでは精密な空燃比制御が必要になるにつれ普及し、キャブレターと置き換わっていった。噴射する位置により、シングルポイント(SPI)、マルチポイント(MPI)、筒内直噴(DI)に大別される。
  • 電子制御式キャブレター(ECC) - EFIに比較して安価であり、万一ECUが故障してもフィードバック制御が無くなるのみで走行自体は一応可能である点が、初期のEFIと比較して長所とされた[16]
    • いすゞ・I-CAS - Izusu Clean Air System。GMより供与された酸化触媒技術が主体。1975年式117クーペでは、70年に登場した日本初のEGIであるECGIに酸化触媒、EGR、二次空気導入装置を組み合わせたシステムを採用した。
  • 希薄燃焼
  • 排気デバイス

脚注・注釈[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 第41条(自動車の装置)
  2. ^ 昭和四十九年一月環境庁告示第一号、根拠規定は大気汚染防止法第19条第1項。
  3. ^ 第31条第2項(ばい煙、悪臭のあるガス、有害なガス等の発散防止装置)、昭和二十六年七月運輸省令第六十七号。根拠規定は大気汚染防止法第19条第2項。
  4. ^ a b c 第1節 自動車による公害の現状と対策 - 2.自動車排出ガス - 昭和44年運輸白書
  5. ^ a b 第1節 自動車による公害の現状と対策 - 2.自動車排出ガス - 昭和43年運輸白書
  6. ^ 第1節 自動車による公害の現状と対策 - 2.自動車排出ガス - 昭和45年運輸白書
  7. ^ 第1節 自動車による公害の現状と対策 - 2.自動車排出ガス - 昭和46年運輸白書
  8. ^ a b 昭和48年版環境白書 - 公害の現況および公害の防止に関して講じた施策 - 第2章 大気汚染の現況と対策 - 第2節 自動車公害の現状と対策 - 3 自動車排出ガスの規制強化
  9. ^ 昭和49年版環境白書 - 公害の現況および公害の防止に関して講じた施策 - 第2章 大気汚染の現況と対策 - 第2節 大気汚染防止に関して講じた施策 - 4 自動車排出ガス対策の推進
  10. ^ a b c 愛知県環境調査センター - 澄んださわやかな青空をとりもどすために~自動車排出ガス規制の解説~
  11. ^ 第2部 第2章 第3節 - 第5項 1975年度規制への対応と1976年度規制の2年延期 - トヨタ自動車75年史
  12. ^ 国土交通省 昭和51年度運輸白書 - 第4節 自動車公害の現状と対策 - 1 自動車排出ガス
  13. ^ JAMAレポートNo.92 排出ガスの低減とJCAP (Japan Clean Air Program) - 一般社団法人日本自動車工業会
  14. ^ 『昭和47年度版 環境白書』119ページ
  15. ^ 第2部 第2章 第3節 - 第1項 排出ガス問題の発生 - トヨタ自動車75年史
  16. ^ a b 排出ガス対策を中心にしたスバルエンジンの開発 山岸曦一 - 社団法人自動車技術会
  17. ^ ヤナセニュース - ボルボの排ガス浄化装置は一石何鳥?」『月刊自家用車 1969年(昭和44年)6月号』、内外出版社、110頁
  18. ^ 昭和50年運輸白書
  19. ^ ダッシュポット修理(48年排ガス規制車)- セドリック/グロリア 230 ハンドブック
  20. ^ シングルキャブ調整 -3-2. BCDD(ブースト コントロール ディクレーション デバイス)- セドリック/グロリア 230 ハンドブック
  21. ^ SJ10型ジムニー55 販売店カタログ、1976年
  22. ^ a b c 小関和夫『スズキストーリー : 小さなクルマの大きな野望』三樹書房、2007年、ISBN 978-4-89522-503-8
  23. ^ スズキ軽自動車用4サイクルエンジンの開発を遅らせることになった「EPIC」 - 日本モーターサイクルレースの夜明け
  24. ^ 「TAEB7316 Emissions From a Suzuki Fronte GX Equipped With a Prototype 1975 Control Device」National Service Center for Environmental Publications (NSCEP)、1973
  25. ^ 「TAEB7432DWP Evaluation of Two Prototype Suzuki Fronte Vehicles」NSCEP、1974

注釈[編集]

  1. ^ 結果的に、昭和53年規制以降の三元触媒の普及にあたり、触媒の寿命を縮める要因の一つが除去される道筋が付けられた。
  2. ^ 但し、新車に関してはエンジンルーム内にエンジン型式、排気量及び装着されている装置、エンジン調整値などを表記した上で昭和48年排出ガス規制対策済車である事を示すコーションプレートやステッカーが貼付されている事で識別が行えた。
  3. ^ 規制値の厳しさのみならず、自動車検査登録制度(車検)により、定期的な排ガス試験が義務付けられている事、排ガス対策機器の取り外しが検査官により厳しく目視点検されていた事なども一因であった。
  4. ^ 1970年代当時は、触媒は耐久性の課題から定期交換を要するものとの認識や法整備がされており、交換コストを下げる為に排気管形状に合わせて成型固化されたモノリス式ではなく、粒状の触媒を排気管に詰め込み、触媒のみの定期交換を容易としたペレット[要曖昧さ回避]式を採用する事が多かった。しかし、ウールヘチマ状の多孔質とする、或いはハニカムレンコン様の孔を開ける等の手法が採れたモノリス式と異なり、ペレット式は浄化効率や排気抵抗の面で難があり、排気圧力の過大等の要因で排気管内のペレットの保持構造が破損した場合、排気口から車外にペレットが飛散する恐れがあった。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]