アスベスト問題

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アスベスト問題(アスベストもんだい)は、石綿(アスベスト)による塵肺肺線維症肺癌、悪性中皮腫(ちゅうひしゅ)などの人体への健康被害問題のことを指す。

アスベストは、耐熱性絶縁性、保温性に優れ、断熱材、絶縁材、ブレーキライニング材などに古くから用いられ、「魔法の鉱物」と重宝されてきた。しかし、高濃度長期間暴露による健康被害リスクが明らかになったことで、アスベスト含有製品の生産や建設作業(アスベストの吹きつけ)に携わっていた従事作業者の健康被害が問題となった。

日本においては、アスベスト含有製品生産や建設作業に携わっていた作業者の健康被害に対する補償が行われてきたが、2005年にアスベスト含有製品を過去に生産していた工場近辺における住民の健康被害が明らかになったことで、医療費等の支給など救済措置のための法律が制定されることになった。

また、アスベスト製品がほぼ全廃された現在においても、吹きつけアスベスト、アスベストを含む断熱材などが用いられた建設物から、解体時にアスベストが飛散することについても問題とされることがある。

目次

概要 [編集]

アスベストが肺癌の原因となる可能性があることは1938年ドイツの新聞が公表した。ドイツはすぐに対応し、アスベスト工場への換気装置の導入、労働者に対する補償を義務づけた。しかし、戦時中の研究は第二次世界大戦後無視されていた[1]

空気中の大量のアスベストが人体に有害であることを指摘した論文はすでに1964年の時点で公開されている(水道水には通常、大量のアスベストが含まれているが無害であると言われている)。アスベストの製造物責任を世界で最初に追及されたのは、世界最大のアスベストメーカーであったアメリカジョンズ・マンビル社である。1973年に製造者責任が認定されると、類似の訴訟が多発し、1985年までに3万件に達した。マンビル社自体も1981年の段階で被害者への補償金額が3,500万ドルを超えた。更に同社だけで2万件近い訴訟の対象となり、最終的な賠償金の総額が20億ドルに達することが推定できた。このため、同社は1982年連邦倒産法第11章(日本の民事再生法に相当)を申請し倒産した。このような動きを受け、世界的にアスベストの使用が削減・禁止される方向にある。

日本では1975年9月に吹き付けアスベストの使用が禁止された。その後、労働安全衛生法において作業環境での濃度基準、大気汚染防止法特定粉じんとして工場・事業場からの排出発基準を定めるとともに、廃棄物の処理及び清掃に関する法律で、飛散性の石綿の廃棄物を一般の産業廃棄物よりも厳重な管理が必要となる特別管理産業廃棄物に指定し、アスベストによる飛散防止や健康被害の予防を図っている。なお、2004年までには、石綿を1%以上含む製品の出荷が原則禁止され、2005年には、関係労働者の健康障害防止対策の充実を図るため、石綿障害予防規則が施行された。

2005年にはアスベスト原料やアスベストを使用した資材を製造していたニチアスクボタで製造に携わっていた従業員やその家族など多くの人間が死亡していたことが報道された。クボタについては工場周辺の住民も被害を受けているとの報道もあった。[2]。その後も、造船建設運輸業(船会社鉄道会社)などにおける石綿作業者の健康被害が報じられ、2005年7月29日付けで厚生労働省から平成11年度から16年度までの間に、全国の労働基準監督署において石綿による肺癌や、中皮腫の労災認定を受けた労働者が所属していた事業場に関する一覧表が公表された(外部リンク参照)。

日本政府は2005年6月にクボタ旧神崎工場(兵庫県尼崎市)で周辺の一般住民に被害が及んだと言われたことを重視して新法成立を推進。参議院本会議は2006年2月3日、「石綿による健康被害の救済に関する法律」と被害防止のため石綿の除去を進める関連3法(改正法)を自民公明などの賛成多数で可決・成立した。[3]

建造物の中に含まれたアスベストは、将来解体されるときに排出されることになる。環境省では、建築物の解体によるアスベストの排出量が2020年から2040年頃にピークを迎えると予測している[4]。年間100万トン前後のアスベストが排出されると見込まれ、その対応を懸念する声もある。

アスベストによる健康上のリスク [編集]

アスベストはWHOの付属機関IARCにより発癌性がある(Group1)と勧告されている。アスベストは、肺線維症、肺癌の他、稀な腫瘍である悪性中皮腫の原因になるとされている。

アスベストは合成繊維ではなく、天然由来の繊維である。アスベストは日本を含め世界中で産出される鉱物から生産でき、特にカナダクリソタイル)、南アフリカクロシドライト)が有名である。

危険性 [編集]

500本/リットルの環境で50年間、アスベスト工場で労働することにより肺がんリスクが2倍になるとされる[5]。また、非喫煙者アスベスト暴露で肺がんのリスク5倍、喫煙者アスベスト非暴露ならリスク11倍であるが、喫煙者アスベスト暴露でリスク54倍と喫煙による相乗作用も指摘されている[6]

スタントン・ポット仮説 [編集]

人間の肺の肺胞は気管支の先端にあり、直径が 200~300μmの風船状をしている。気管支から肺胞への入口が直径数十μmと小さく、肺胞の中に入ったアスベスト繊維が自然に出ることが難しい。肺胞に入った繊維状の物のうち、生物由来の有機物である、綿、羊毛、紙などは、肺胞の中にいる白血球の一種マクロファージ(アメーバ状をした食細胞)によって分解される。しかし、アスベスト(とくに青石綿と茶石綿)はマクロファージによって分解出来ず異物として認識され、鉱物繊維の周囲を取り囲んだマクロファージが死滅する。スタントンやポットらによって、ラットの腹部に様々な繊維を入れて発癌性を調べられた。発ガン性は、繊維状粒子の形状、体内残留性、物質の表面活性の3つが大きく影響しているとわかった。スタントン達の研究論文[7]によると、ファイバーの直径が0.25μmより細く長さが8μmより長い繊維状粒子の発ガン性が強いという成果が発表されている。これを「スタントン・ポット仮説」と言う。北米大陸では、「スタントン仮説」と言う場合もある。アスベスト繊維などの異物に対する作用に伴って生じる物質は同時に障害作用も合わせて持っており、癌や中皮腫を発生させている原因と考えられている。

空気中濃度 [編集]

アスベストは浮遊粉塵であると同時に繊維物質であるので、単位は本(f)で表される。

空気中のアスベスト濃度の調査方法は、空気を一定時間機械で吸い込み、フィルターを通して、フィルターにたまったアスベストの繊維を顕微鏡を使い、人の目で本数をえる。各企業、各自治体では、小学校の屋上、吹きつけアスベストを使った部屋などの空気中のアスベスト検査を検査会社等に委託して、検査している。

法定基準 [編集]

大気汚染防止法に基づく工場付近の石綿粉じん管理濃度 [編集]

  • 10本/リットル=1万本/立方メートル=0.01本/立方センチメートル

1989年に行われた大気汚染防止法の改正で、大気中アスベスト敷地境界基準は10本/1リットル以下を遵守することと定められた。この数値は、世界保健機関 (WHO) が1986年に出した「環境保健クライテリア53」の中で、都市部の一般大気中の濃度が1リットル中1 - 10本で健康へのリスクが著しく低いとしたことから決められた[8]。また、アメリカが米国アスベスト対策法で定める数字と同じである。

労働安全衛生法に基づく工場内石綿粉じん管理濃度 [編集]

  • 15万本/立方メートル=0.15本/立方センチメートル=150本/リットル

平成16年(2004年)10月1日厚生労働省告示第369号による。

通常の環境におけるアスベストの存在量 [編集]

通常の居住空間自然界ではどの程度のアスベストが存在しているかについての調査結果の例を示す。

  • 大気中のアスベスト:0.19~2.83本/L(平均:0.63本/L)(佐藤ら 1988)[要出典]

日本の一般住宅では上記の濃度であればアスベストは(8畳の部屋で約10万本)含まれている[要出典]。一般大気中にはアスベストが少量(約0.1-10本/リットル=100~1万本/立方メートル)存在するとされる[要出典]

水道水中には多量のアスベストが含まれている[9]が危険性はないとされている。大阪市など多くの自治体では水道水中のアスベスト数についての公表はしていない。これは、アスベスト繊維が大きすぎるので体内に吸収せず、危険性はないためとしている[要出典]。WHOでも水道水中のアスベストに問題は無いとしている[10]

アスベストによる労働災害の例 [編集]

  • 2008年7月31日奈良県労働委員会は、耐火材メーカー・ニチアスが、同社の元従業員やその遺族らがアスベスト被害救済を求めて結成した労働組合2007年4月に申し入れていた団体交渉を拒否したことについて、不当労働行為と認定、同社に対し団体交渉に応じるよう命じた[12]
    • この問題に関して、元従業員や遺族ら6人が同社に対し、2010年10月に、総額約1億1,600万円の損害賠償の支払いを求める訴訟を、奈良岐阜札幌の3地裁に一斉に起こしている[13]。また、この訴訟に関連して、奈良地裁へ訴訟を起こした3人の元従業員について、奈良地裁は2013年1月31日付でニチアスに対し、王子工場で石綿による健康被害を受けた可能性のある時期や、これらの元従業員の作業内容などを記した文書を提出するよう命じる決定をした[14]
  • 中国地方自治体において、建築現場に出向き、建築指導・検査などに携わっていた職員が、公務中に吸い込んだアスベストが原因で、中皮腫を発症した事例が、2009年に判明している。この職員は、労災と認定されたが、出向中の公務員の石綿被害としては初の事例と見られている[15]
  • 地方公務員災害補償基金審査会の2010年3月29日付裁決で、体育担当の教員が学校の体育館でアスベスト被害にあい死亡したと認定した。これは学校での被害認定として全国初の事例である。[16]
  • 神戸大学の元文学部長の名誉教授の男性が、助手時代の1964年5月から同年9月にかけて、研究の一環として神戸市内のケミカルシューズ工場を訪問し聞き取り調査を実施したが、その約30年後の1995年9月腹膜炎の疑いがあるとして検査入院し、翌10月に死亡。当時、当該の工場に於いて、アスベストが混入した原材料が多数使われており、中皮腫などを引き起こしやすいことが明らかになったとして、文部科学省は公務災害と認定した。文系の教職員が、石綿被害で公務災害の認定を受けるのは初のケースとなる[17]
  • ニチアス王寺工場において1969年から2年2ヵ月間に亘りアスベストの運搬業務に携わっていた日本通運の男性社員が、退職後の2002年に中皮腫と診断され、2005年に死亡した。両社は、この男性に対し、防塵マスクの支給をせず、アスベスト飛散の抑制措置も実施していなかった。男性の遺族は労災補償はされたものの、日本通運は、この男性が既に退職しているためとして慶弔見舞金の支給を拒否したため、遺族が両者を相手取り訴訟を提起。2011年3月30日大阪地裁は、両社に対し慰謝料など計2,620万円の支払いを命じる判決を言い渡した[18]
  • 東急車輛製造大阪製作所(大阪府堺市、現在は閉鎖)で、元社員の男性3人が、1960年代以降に7~30年間、塗装や配管などの業務に従事していたが、3人の男性の作業場では、隣接して車両からアスベストを取り出す作業が行われていて、そこから生じた粉塵を吸い込み、退職後に中皮腫を発症し死亡した。3人の遺族は、「会社が安全配慮を怠ったため」などと主張し、2011年4月4日に、同社を相手取り約1億円の損害賠償の支払いを求め、大阪地方裁判所に提訴した[19]
  • 神戸港で約20年間にわたり、アスベストを含んだ貨物の荷役作業に従事してきた男性が、その後2004年に肺癌を患い、2006年及び2010年に神戸東労働基準監督署に労災を申請したが、いずれも「石綿小体や胸膜プラークが認められない」として退けられた。しかし、その後2011年1月に、手術で除去した肺組織から、労災認定基準を大幅に上回る石綿小体が検出され、最初に診察した医師が、検査を十分に行っていなかったことが明らかになった。これを受け労働者災害補償保険審査官が再調査を指示し、同監督署は同年に一転して労災認定した[20]
  • 北九州市在住の左官工の69歳の男性は、50年近くに亘りモルタルを取り扱う職種に従事していたが、その間、アスベストを含む含有剤を吸い続けていた。男性は2009年11月肺癌と診断され摘出手術を受け、北九州西労働基準監督署に労災申請したが、胸膜プラークの症状が認められないとして却下された。男性はこれを不服として、改めて福岡労働局に申請し、2011年9月に同労働局は、一転して労災認定した[21]
  • 1954年から1983年にかけて、日本通運の倉庫とクボタ神崎工場との間を行き来してきた日通社員5人が、石綿による中皮腫や肺癌を発症し、退職後の2000年から2007年にかけて死亡。遺族らは、日通とクボタに対し損害賠償を求める訴訟を神戸地裁に提起。2012年6月28日に同地裁尼崎支部は、日通について「安全配慮義務があった」などとして、同社に対し1億3,700万円の支払いを命じた。石綿輸送に従事してきたトラック運転手に対し、石綿での労災が認定されたのはこの訴訟が初のケース[23]
  • 阪神・淡路大震災瓦礫処理に携わった兵庫県明石市の男性職員が、その後2012年6月に中皮腫と診断された。この職員は同年8月に、地方公務員災害補償基金兵庫県支部に対し、中皮腫を発症したのは瓦礫中に含まれるアスベストが原因であるとして、公務災害認定を請求した。震災で生じたアスベストに関連しての公務災害申請は初のこととなる[24]
  • 阪神・淡路大震災で被災した建築物の復旧作業に約2ヵ月間従事した兵庫県宝塚市在住の当時65歳の男性が、2010年1月から健康状態が悪化して中皮腫と診断され、同年10月に死亡した。この男性に対し、西宮労働基準監督署が労災認定した。東日本大震災の被災地でも同様な事例が相次ぐ可能性が指摘されている[25]
  • 1981年から約5年間に亘り産婦人科医院で勤務していた女性准看護師は、医師看護師などが用いる手術手袋の洗浄などにあたっていたが、その際に用いていたタルクに石綿が含まれており、これが原因で中皮腫を発症したとして、労災補償請求を行った。2012年7月山口労働基準監督署は、石綿による労災と認定した。医療現場での作業に従事する看護師や准看護師が労災認定されるのは初のこととなる[26]
  • 1955年から2007年にかけて、クラレの工場で勤務中に石綿を吸引し肺癌にかかり死亡した、同社の下請会社・山陽断熱の元従業員の遺族や生存中の元従業員ら計16人が、2009年に山陽断熱並びに発注元のクラレの両社に対し、安全対策を怠ったためとして、岡山地裁に訴訟を起こした。2013年4月16日に同地裁は、山陽断熱側の責任を認め計約1億3,200万円の支払いを命じたが、クラレの責任は認めない判決を言い渡した[27]
  • 他にも、各地で、建設現場などでアスベストを吸い込み中皮腫などを発症した患者やその遺族らが、各地で国や建材メーカーなどを相手取り訴訟を起こしている[28]

家族及び周辺住民の健康被害への対応(石綿救済法) [編集]

アスベストによる健康被害は労働者だけではなく、その家族やアスベスト関連事業所周辺の住民にも被害が及んでいた疑いも持たれ、近隣住民の被害、政府の規制遅れが大きな問題となっていた。2005年8月26日、政府は関係閣僚会議を開き、アスベスト健康被害者救済の特別立法制定を正式に決定した[29]

小池百合子環境相は「完全な科学的な根拠が無くても今後は予防的に対処する」としている[要出典]

この石綿による健康被害の救済に関する法律(石綿救済法)は、2006年(平成18年)2月10日に公布、3月27日に施行された。これにより、アスベストによる健康被害を受けた患者や死亡者に対して医療費や弔慰金などを支給される。給付額は政令により定められ、死亡した被害者の遺族には特別弔慰金280万円と葬祭料約20万円の計約300万円、治療中の被害者には医療費の自己負担分と月額約10万円の療養費の給付などが可能となった。

しかし生前に認定の申請が行われていなければ、救済支給はされないことなど、全ての被害者を救済するものになっていない。対象疾病の範囲が狭く、主に青石綿の吸引で起こる中皮腫と肺癌を救済の対象にしているものの、石綿肺やびまん性胸膜肥厚については2010年7月1日になってようやく著しい呼吸機能障害を伴うものにかぎり対象となった。他、診察した医師により検査結果が異なる場合も多々あり、石綿による健康被害であることを主治医が否定した場合などには、労災認定を受けられなくなるケースもある[20]

アスベスト被害が心配な人のレントゲン無料検査 [編集]

大阪市尼崎市などはアスベストを吸った心配のある人にはレントゲン写真を無料で撮る検診サービスを実施している(肺の組織を採ってアスベストの確認をするわけではない)。

工場等で大量のアスベスト等の粉塵が舞う中での長期間の作業は健康上良くないのは、レントゲン検査で影が映ることから、以前から知られている。昔の労働者は貧しく仕方が無いと諦めるのが一般的であったが、今では人々の生活が向上し寿命が延び、健康に関心が集まり、アスベストは大きな社会問題になっている。

建築物の解体に伴い発生するアスベストの危険性 [編集]

アスベストが原因で亡くなった方の大半はアスベスト製造工場の粉塵の中で長期間労働した人である。アスベストの製造が禁止された現在の日本ではこの問題は無くなったと言われている。残された大きな問題は、建造物の中に大量にアスベストが含まれ、将来解体するときアスベスト粉塵を長期間吸う労働者に健康被害の発生する懸念である。

しかし、アスベストは建造物を解体しない限り危険性はないと言われる(普通、アスベストを含んだ建材粉砕しないと空気中には飛散しない)「尼崎市保健福祉局」「WHO」。アスベスト吹き付け工事直後や解体工事時には多量のアスベストが飛散する恐れがあり、一連のアスベスト騒動で心配になったからといって、性急に除去工事を行うことはリスクを増大させる恐れがある。学校病院等公共建造物ではアスベストの撤去作業を進めているが、解体作業者の安全性を考えると、アスベストを撤去した方が安全なのか、そのまま撤去しない方が安全なのか議論の分かれるところである。学校等の解体作業者が将来20~40年後中皮腫になる事についての懸念が持たれている。

また「アスベスト工事除去後に必ずしもアスベスト飛散量が減少していない」との報告があるように(入江ら 1989[要出典])、除去工事の方法やその効果も十分には検討されていない。環境学者の中では「室内や空調にアスベストを使用していても、大気中のアスベスト濃度とさほど変わらない基準値を超えない」という見解でほぼ一致している。

災害とアスベスト [編集]

災害で壊れた建物のアスベスト被害が確認されている。

アスベストの無害化技術 [編集]

有害なアスベストを無害化する研究が盛んに行われている。建築物の壁などに断熱材などとして吹きつけられた繊維状の飛散性アスベストについて、壁から剥離しない状態で赤外線によって短時間で加熱することで溶融無害化する技術について産業技術総合研究所が2008年に発表しており[30]、3年後の実用化を目指している。

水溶液に白石綿、青石綿、茶石綿などのアスベスト(石綿)を混合したものを、その混合液を含む容器の外部からの放射線照射により、混合液中に誘起される酸化還元反応を利用して、構造破壊にともなう非針状化・分解を促進して、アスベストの無害化する処理を行う技術について、日本原子力研究開発機構が発表している。( アスベスト処理方法及び処理装置、水素生成方法及び生成装置、重金属処理方法及び処理装置 )

アスベストの代替製品の安全性 [編集]

脱アスベストとして開発されたアスベスト代替製品についても、発癌性の危険を指摘する声がある。一般的なグラスウールロックウールについては、比較的安全性が高いといわれるものの、マイクログラスウールやセラミックファイバーチタン酸カリウムウィスカなどについては、発癌性が疑われている。鉱物性繊維は、その成分には関係なく、(1)繊維が細いこと、(2)肺胞内マクロファージの貪食作用に耐えるという2点に合致することで発癌性が発揮される[31]。アスベストは上記2点に合致するために高い発癌性を示すが、同様に他のアスベスト代替材料についても条件を見たす素材については規制すべきという声がある[32][33]

参考文献 [編集]

  • Owen WG. Diffuse mesothelioma and exposure to asbestos dust in the Merseyside area. 『British Medical Journal』1964 Jul 25;5403:214-8. - 中皮腫 (mesothelioma)とアスベストへの暴露の関係を調査した論文
  • 『アスベストショック クボタショックから2年』アットワークス、2007年、ISBN 9784939042331
  • 『アスベスト問題の過去と現在 石綿対策全国会議の20年』アットワークス、2007年、ISBN 9784939042348
  • 『アスベスト問題は終わっていない 労働者・市民シンポジウムの記録』アットワークス、2007年、ISBN 9784939042355
  • 『未来を奪う アジアのアスベスト使用』アットワークス、2007年、ISBN 9784939042362

脚注 [編集]

  1. ^ 武田知弘『ナチスの発明』彩図社、2007年ISBN 4883925684
  2. ^ クボタの旧神崎工場が問題となったとき、クボタは「旧神崎工場に周辺住民に被害があったとは確認していない。しかし、アスベストが工場から飛散しなかったとも言い切れず、迷惑を掛けた可能性は否定できない」として、因果関係についての断定を避けた。一方で2006年8月24日に、救済金として旧神崎工場の半径1.5キロまでの13人への支払いを行った
  3. ^ 民主党日本共産党社会民主党は被害者の救済が不十分であるなどとして反対した。
  4. ^ 船坂 邦弘、鶴保、森『アスベスト問題の現状と課題』生活衛生、Vol. 50、p.333-337 (2006), JOI:JST.JSTAGE/seikatsueisei/50.333
  5. ^ 「平成18年2月、厚生労働省の検討会資料」
  6. ^ Hammond, E. Cuyler; Selikoff, Irving J.; Seidman, Herbert (1979). “ASBESTOS EXPOSURE, CIGARETTE SMOKING AND DEATH RATES”. Annals of the New York Academy of Sciences 330 (1 Health Hazard): 473–491. doi:10.1111/j.1749-6632.1979.tb18749.x. ISSN 0077-8923. 
  7. ^ M. F. Stanton, IARC Sci. Publ. 8, 289 (1973); M. F. Stanton et al, National Bureau of Standards Special Publication 506, 143 (1978); M. F. Stanton et al, J. Natl. Cancer Inst. 67, 965 (1981); F. Pott et al, Environmental Health Perspectives 9, 313 (1974); F. Pott, Zbl. Bakt. Hyg. B 184, 1 (1987); F. Pott et al, Exp. Pathol. 32, 129 (1987)
  8. ^ World Health Organization編 "Environmental Healthe Criteria" 53巻
  9. ^ 羽村市浄水場8.5万本/リットル。三鷹市浄水場12万本/リットル。東京都立衛生研究所、1987年-1988年調べ。
  10. ^ Asbestos in Drinking-water: Background document for development of WHO Guidelines for Drinking-water Quality (WHO/SDE/WSH/03.04/02)
  11. ^ アスベスト:石綿除去で発症 作業員2人、元請け会社を提訴--大阪地裁
  12. ^ アスベスト:ニチアス、石綿被害で団交命令 元従業員ら救済に道--奈良県労働委 毎日新聞 2008年7月31日
  13. ^ アスベスト:健康被害、ニチアスを提訴 元従業員ら、札幌など3地裁に 毎日新聞 2010年10月29日
  14. ^ 石綿被害:奈良地裁「職歴提出を」 ニチアスに命令 毎日新聞 2013年2月15日
  15. ^ 石綿被害:建築指導などで中皮腫の自治体職員に公務労災 毎日新聞 2009年11月23日
  16. ^ 石綿:中皮腫死の教員に労災認定 学校での被害認定は初 毎日新聞 2010年4月23日
  17. ^ 中皮腫:死亡の文系教員初の公務災害 調査時に石綿吸引 毎日新聞 2010年10月8日
  18. ^ 石綿健康被害:中皮腫で死亡、退職者の遺族勝訴…大阪地裁 毎日新聞 2011年3月31日
  19. ^ 損害賠償訴訟:石綿吸って死亡と元社員の遺族が提訴 毎日新聞 2011年4月5日
  20. ^ a b アスベスト:石綿労災一転、認定 未検査見逃し2度不支給--神戸東労基署” (日本語). 毎日新聞 (2011年6月20日). 2011年6月26日閲覧。
  21. ^ 「アスベストで肺がん」福岡労働局が逆転認定 読売新聞 2011年11月5日
  22. ^ アスベスト:石綿被害、退職者に団交権確定 最高裁初判断 毎日新聞 2011年11月16日
  23. ^ 石綿被害:運転手も認定 日通に賠償命令 地裁尼崎支部 毎日新聞 2012年6月28日
  24. ^ 公務災害認定:「がれきで中皮腫」請求…阪神大震災で処理 毎日新聞 2012年8月18日
  25. ^ 石綿労災:阪神大震災の復旧作業で中皮腫、労災認定 毎日新聞 2012年8月24日
  26. ^ 石綿:元准看護師の労災認定 「手袋の粉吸引」山口労基署 毎日新聞 2012年8月27日
  27. ^ 石綿訴訟:下請けに賠償命令 クラレ責任認めず 岡山地裁 毎日新聞 2013年4月16日
  28. ^ 国と建材メーカーを提訴 京都の建設労働者ら 産経新聞 2011年6月3日
  29. ^ 特集「拡散するアスベスト被害」 - 日経BPのページ
  30. ^ 産業技術総合研究所:赤外線を使ったアスベスト溶融無害化技術の開発
  31. ^ 荻原,「脱アスベストに見る代替材料の落とし穴」,『日経ニューマテリアル』,1992年3月9日号,pp.12-23
  32. ^ 森本泰夫「人造鉱物繊維の発がん性について--国際がん研究機関(IARC)の報告」、『産業医学ジャーナル』第25巻第3号、産業医学振興財団、2002年5月、 63-71頁、 NAID 40004309384
  33. ^ 中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター,『平成15年度 石綿代替品の有害性に係る文献調査報告書』,2004年

外部リンク [編集]

政府 [編集]