アクリルアミド

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アクリルアミド
アクリルアミド
識別情報
CAS登録番号 79-06-1
KEGG C01659
特性
化学式 C3H5NO
モル質量 71.08
外観 無臭結晶
密度 1.122 (30 ℃), 固体
融点

84.5

沸点

125 (/25 mmHg)

特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

アクリルアミド (acrylamide) はアクリル酸を母体とするアミドの一種である。英語の発音からアクリルアマイドと呼ばれることもある。 示性式は CH2=CHCONH2分子量 71.08、CAS登録番号は [79-06-1]。

概要[編集]

融点は 84.5℃、常温では無臭白色結晶で、水、アルコール等に可溶である。熱や光に不安定であり、重合しやすいため、市販の試薬や工業薬品には安定剤(重合禁止剤)としてヒドロキノンBHTなどが添加される。

アクリルアミドは毒物及び劇物取締法上の劇物に指定されており、神経毒性・肝毒性を有し、皮膚からも吸収されるため、取扱いには注意を必要とする。

変異原性(発癌性)が認められ、PRTR法の第一種指定物質となっている。

また、労働安全衛生法によって、純品及び0.1%以上を含有する混合物には、含有量や危険性を表示し、MSDSなどに危険性や対応方法を告知することが義務づけられている。

製造[編集]

アクリルアミドは、アクリロニトリル (CH2=CHCN) の加水分解により工業的に合成されている。銅触媒、酸触媒を利用した製造法が実用化されている。

現在は、アクリロニトリルを微生物が出す酵素で水和する、バイオ法での製造が効率の点で優れるため、主流となっている。バイオ法による製造は、1973年フランスのガルズィー(P. Galzy)らがブレビバクテリウムBrevibacterium)が産生するニトリルヒドラーゼ(Nitrile hydratase)によって、アクリロニトリルを水和しアクリルアミドを生成することを発見したことに始まる。1985年には日本の日東化学工業株式会社(現三菱レイヨン株式会社)がロドコッカス属Rhodococcus)の細菌を用いて世界初の実用化装置を稼働させた。[1]現在、ロドコッカス属を使う方法が主流であるが、他にもシュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)を用いる方法なども使われたことがある。

用途[編集]

ポリアクリルアミドの製造原料、染料合成樹脂架橋剤の合成原料など。工業的には水分をほとんど含まない結晶粉末か、50%までの水溶液として流通している。

食品に含まれるアクリルアミド[編集]

  • WHOの下部組織IARCはアクリルアミドは発癌性が強く疑われると評価している(IARC発がん性リスク一覧参照)
  • 2002年スウェーデン政府がイモ類を高温で焼いた、あるいは揚げた食品中にアクリルアミドが含有されていることを発表した。その後の研究で量の多少はあるが焼いたり揚げたりした食品にはアクリルアミドが含有されていることが明らかとなった。このアクリルアミドはアスパラギン類のメイラード反応(下図)によって生成していると推定されている。現在この食品中のアクリルアミドのリスク評価が国際的に進められている。
メイラード反応
  • 2005年には、FAOとWHOからなる合同委員会が「食品中のアクリルアミドは健康に害を与える恐れがあり、含有量を減らすべき」という勧告を発した。
  • 2007年、オランダのマーストリヒト大学のジャネケ・ホゲルボルスト (Janneke G. Hogervorst) 氏らが「アクリルアミドの摂取は特に非喫煙者の女性において子宮内膜がんと卵巣がんの危険性を高める」という疫学調査結果を Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention 誌 11 月号に発表した。※マーストリヒト大学プレスリリース
  • 2008年、オランダのマーストリヒト大学の研究チームが「アクリルアミドの摂りすぎは腎臓がんのリスクを高める」という研究を American Journal of Clinical Nutrition 誌5月号に発表した
  • 2014年10月、日本内閣府食品安全委員会化学物質・汚染物質専門調査会は、アクリルアミドのリスク評価について、国内外の動物実験の結果から、「遺伝毒性をもつ発がん物質」とする評価案を示した。[2]

アクリルアミドを含むとされる食品[編集]

同じ製品でも使用原料や加工条件の違いなどにより、アクリルアミドの含有量には大きな個体差があり、含有量を的確に表現できないとされる。また以下の食品に含まれる油分などの過剰摂取の方が高リスクかつ発がんとの関係がはっきりしているうえ、伝統的に摂取され続けてきた食品も多く、どの程度人体への悪影響があるのかも不明な点が多い。

ポリアクリルアミド[編集]

アクリルアミドは、熔融すると激しく重合反応を起こし、高分子化合物であるポリアクリルアミド (polyacrylamide) となる。ポリアクリルアミド自体には、アクリルアミドのような毒性は認められないとされるが、製造過程において微量の未重合のアクリルアミドモノマーがポリマー内に残留する可能性があるため、取り扱いには、手袋、保護眼鏡を着用することが望ましい。

ポリアクリルアミドは水溶性合成樹脂の一種として、主に原油三次回収助剤、廃水処理用の凝集剤製紙用の乾燥紙力増強剤濾水剤として用いられる他、繊維助剤洗濯糊接着剤(合成糊)、塗料などにも広く用いられる。かつてはゲル化させた素材が豊胸手術などの形成外科美容外科の手術にも用いられた[3]。 また、水溶液中で重合させたポリアクリルアミドゲル電気泳動 (PAGE) 等に用いられる。

出典[編集]

  1. ^ http://www.mrc.co.jp/rd/research/challenge.html 三菱レイヨン R&D|研究内容・実績|私たちの誇る革新技術 (2012年1月25日閲覧)
  2. ^ http://mainichi.jp/select/news/20141004k0000m040128000c.html アクリルアミド:スナック含有物質に発がん性…食品安全委 (2014年10月4日閲覧)
  3. ^ “安価な整形には要注意! 17歳少女がプチ整形 → 失敗して顔が変化 → 20代でおばあさんのような顔に”. ロケットニュース (ソシオコーポレーション). (2013年10月5日). http://topics.jp.msn.com/wadai/rocketnews24/column.aspx?articleid=2105496 2013年10月26日閲覧。 

外部リンク[編集]