ドライブ・バイ・ワイヤ

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日産・HR15DEエンジンの電子制御スロットル

ドライブ・バイ・ワイヤ (drive-by-wire)は、自動車におけるアクセルペダルスロットルバルブをつなぐ方式の一つ。スロットルの駆動方式のみを指して電子制御スロットル(電制スロットル、電スロ)と呼ばれることもある。

従来の機械式制御に置き換わり、機械と電気を融合させ、スロットルの開度を物理的なケーブルではなく、電線内(電線=ワイヤ)を通る電気信号で制御するシステムのことである。元は航空機の操舵システムであるフライ・バイ・ワイヤの転用である。

ドライブ・バイ・ワイヤの特徴と仕組み[編集]

  • ドライブ・バイ・ワイヤのシステムは、簡略化すると次のとおりである(ガソリンエンジン車の場合)。
アクセルを踏む → センサがアクセルの踏み込み量を感知 → エンジンコントロールユニットの命令に従い、サーボモータがスロットルを開く。
  • また、ケーブルを用いた従来式の仕組みは以下である。
アクセルを踏む → アクセルによって踏まれた量=ケーブルが引かれた量だけ、スロットルバルブが開く。

ドライブ・バイ・ワイヤでは運転者によるアクセルペダル操作に電子制御を介入させ、エンジン回転数を制御する。アクセルペダルの踏み込み量=スロットル開度とする制御が単純であるが、実際には非線形制御が行われており、アクセルの踏み込み量と踏み込み速度を勘案した多様な制御がなされている。例として、アクセルペダルが急激に全開にされた場合、急激にスロットルを全開にするのではなく、スロットル開度を負荷及び回転数に応じた必要最小限に抑え、無用な燃料噴射を行わないようにする。またアクセルペダルが全閉になった場合、いきなりスロットルを全閉にするのではなく、ゆるやかにスロットルを閉じる(ダンパー機構)等である。

運転者の意志によってアクセルレスポンスを調整できる機構を持つものもあり、スロットルをゆるやかに開ける制御とすることで燃費の向上を図り、また急激に開ける制御とすることでスポーティーに走らせることができるとされる。これは、特に近年求められる省燃費性、及び排ガス浄化性能の向上の為である。

長所[編集]

基本的にはローエミッション化と低燃費化に寄与する部分が大きい。

セミATCVTを採用する車両は、変速機の制御とスロットル制御を協調させる事で、現時点の速度に対するスロットル開度を常時監視し、大きく踏み込まれれば低いギアに落として加速(キックダウン)し、踏み込みが一定以上浅くなれば高いギア段に上げてエンジン回転数を抑え、省燃費運転を行いやすくしている。

近年では標準的となっているカム位相連続変化型の可変バルブタイミング機構を採用したエンジンでは負荷に合わせて吸気弁を遅閉じさせることで吸気量を制限し、スロットルを大きく開くことでポンピングロス低減や遅閉じミラーサイクルとする事などが可能となるが、これらの制御を行うには可変バルブタイミング機構とスロットルの協調が必要となるためドライブ・バイ・ワイヤは必須となっている。 同様にEGRにおいてもスロットルを協調させることでより大量、精密な導入が可能となるためEGRを積極的に利用するには必要な機構といえる。 そのほか従来のケーブル式スロットルではアイドル制御に必要であったISCVを省けるなどスロットル周りを簡素が出来るメリットもある。

つまり、アクセルペダルが従来のようなエンジン回転数を調整する機構ではなく、主に速度を調整させる機構とし、その中身をブラックボックス化する事で、運転者の入力とは無関係にコンピュータがエンジン回転数を上下させることが可能な点に於いて、ドライブ・バイ・ワイヤはこれらの機構に適している。

また、ドライブ・バイ・ワイヤを採用することで、アクセルケーブルの物理的劣化、操作の応答性の悪化などの問題が解消される。さらにドライブ・バイ・ワイヤのシステム自体は、たとえば踏力をあまり発生させられない障害者などでも、調整によりスロットルの開度を健常者と同様に扱えるようにできる、負荷に応じた必要な量の燃料噴射しか行わないなど、車の運転を容易にする技術・環境対応技術の一部である。

よって下記の問題点はあるものの、今後自動車への採用率は上がっていくと思われる。

短所[編集]

一方、電子回路の故障時の挙動や、(実際に体感できるかどうかは別として)単純に機械的に繋がっていないことによるダイレクト感の喪失を懸念する意見も少数だがある。前述の非線形制御が行われていることと、運転者の意志としてアクセルペダルを踏み込むことと、サーボモータがスロットルを開く動作までのタイムラグが少なからずあることは、特にガソリンエンジンのMT車においては顕著であるとされ、競技車両においてはその点が嫌われる場合もある(下記)。AT車の場合は運転者が意図しないギア段に変速することと関連している。

ただ、過去(キャブレターからインジェクションに移行した際やNAに対するターボエンジンの特性)にも、新しい技術として登場から暫くは既存のフィーリングと比較して異質であるという批判がなされたことがあり、この技術も同様に改善が進んでいく可能性はある。

モータースポーツとDBW[編集]

モータースポーツにおいては競技や車両の性質、ドライバーの好みなどが絡み合ってDBWは賛否両論である。

ドリ車におけるDBW否定論[編集]

ドリフト走行向けのチューニングを行う一部の業界などではドライブ・バイ・ワイヤは敬遠されている。ダイレクト感(いわゆるレスポンス)を重視するこの手のドライバーにとって心理的に好まれないためである。ただし、これにはDBW方式自体の問題と言うより制御ソフトウェアの問題である場合もある。(そのクルマ(ターゲットユーザー)のキャラクターに合わせ、わざとレスポンスを鈍くするなど。)
特にドリ車の場合FRであることが求められる故にベース車にマークⅡBros.などのDセグメント車が多く使われており、そこからクルマと(実際の)ユーザーのキャラのミスマッチが顕在化する。
ただ、マークⅡ以外に「流通量の多いFR車でチューニングメニューも豊富」な選択肢は非常に少ないだけに、必然的にDBWへの対処も行われている。中には「スロットルワイヤーを引き直すなどしてDBWを廃止する」場合もあるが、「レスポンス重視のDBW制御ソフトを搭載する(コンピューター書換、サブコンピューター搭載など)」場合もある。

F1での利用[編集]

上記のようにチューニング界隈では嫌われ者のDBWだが、F1においてはDBWが積極的に採用されている。これは、F1のエンジン特性によるものである。 F1のエンジンは回転上限近くの狭い範囲でしかパワーが出ないようなピーク特性を持っており、物理的ケーブルによるシステムではアクセルがオン・オフのスイッチ的にしか働かなくなる。電子制御システムでは、アクセルの開度に応じてパワーが変化するように自在にマップを設定できるので、盛んに用いられている。1992年のF1第3戦ブラジルGPよりマクラーレンチームが実戦投入したMP4/7Aにて初めて採用された。

また、エンターテイメントとしてルノーチームなどはこのシステムを応用し、エンジンを使って楽曲の演奏を行ったことがある。

関連項目[編集]