インテークマニホールド

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インテークマニホールド: intake manifold、略称:インマニ)は内燃機関の燃焼室に混合気を導入するための多岐管(manifold)である。

目次

[編集] レシプロエンジン

インテークマニホールドは、吸入行程で燃焼室内に生じる負圧により混合気を吸い込む経路となる。

インテークマニホールドの主要な機能は混合気を各気筒に均等に分配することであり、エンジンの燃焼効率と性能を最適化する上で重要な要素である。キャブレタースロットルバルブ、インジェクターなどはインテークマニホールドに固定されている場合が多く、これらを交換する際には取付部分の形状や口径が合うようにインテークマニホールドも同時に交換される場合がある。2ストロークエンジンにおいてはインテークチャンバーリードバルブも固定される。過給器付きエンジンにおいてはインテークマニホールドにサージタンクとしての機能を加えられている場合がある。

ガソリンエンジンにおいては、インテークマニホールド内に生じる負圧(バキューム)を利用してブレーキブースターや排ガス対策装置、ディストリビューターなどの動力源とされる。

インテークマニホールドはかつては鋳鉄アルミ合金で製造されることがほとんどであったが、近年ではプラスチック製のインテークマニホールドを用いる車種も増えてきている。

[編集] 吸気乱流

インテークマニホールドの内部はある程度表面が粗く作られている。また、分岐部分も一見すると流体力学上は非効率とも思えるような構造を採っている場合がある。これは吸入空気がインテークマニホールド内で層流となることを防ぎ、乱流を意図的に作り出すための構造である。

吸入空気の流速を速めたいだけであれば、インテークマニホールド内部を鏡面に仕上げ、分岐も流体力学上最適化されたカーブを描いた方が効率的である。しかし、キャブレターインジェクターがインテークマニホールド内に燃料を噴射するとき、吸入空気が強い層流となる箇所においては吸入空気とマニホールド内壁の摩擦により静電気が発生し、霧化された燃料は静電気に引き寄せられて再び液体となってしまう。

この様な事態が発生すると、液体化が発生した吸気管の気筒のみ空燃比が狂うこととなるため、流体力学上の効率をある程度犠牲にしてでも表面を粗として層流が起こりにくい構造を採っているのである。強い吸気乱流の発生は、霧化をより促進させ燃焼効率の改善にも繋がる。そのためシリンダーヘッドの吸気ポートもかつては敢えて荒く仕上げられることが多かった。

しかし近年では、より高い燃焼効率や燃費を実現するために、流体力学上の高効率化と霧化の促進という相反する要素を実現するための様々な工夫が考案されている。その工夫の一つがポート噴射式インジェクターであり、シリンダーヘッドの吸気ポート直前にインジェクターを置くことで、その手前のインテークマニホールドは出来るだけ効率良い構造とする事が可能になる。また、キャブレター仕様向けの車外マニホールドにおいては、マニホールドの形状そのものは効率的な構造としながらも、内部表面にゴルフボールに似たディンプル加工を施すことで、効率向上と乱流発生を両立している場合がある。

可変バルブ機構や補助吸気バルブの導入で、燃焼室内に強制的にスワール乱流を引き起こすことも行われている。前者の先駆例がトヨタT-VISであり、後者の例が三菱・MCI-JETバルブである。

[編集] ヒート・ライザー

ヒート・ライザー(Heat Riser)とは、まだ上記のような乱流層流の関係が解明されていなかった頃の非常に古いターンフロー式シリンダーヘッドで主に用いられた機構で、エキゾーストマニホールドの排気熱をインテークマニホールドに伝えて、強制的に気化を促進させるための機構である。排気ガスをインテークマニホールド内(直接吸入させる訳ではなく、単に暖める為に用いる)に通すことで、層流によって液体化した燃料を強制的に気化させようとしたのである。

供給される排気ガスはエキゾーストマニホールドに設けられたヒートライザーバルブと呼ばれるバイメタル式のバルブで流出量が制御されていたが、高回転域での熱害が酷かったために乱流層流の関係が明らかになった現在では全く用いられていない。

[編集] ヘルムホルツ共鳴と体積効率

かつて2バレルや4バレルキャブレター仕様の高性能エンジンは、ランナー構造のインテークマニホールドでバレルと吸気ポートを直接繋ぐ構造を採っていた。写真のフェラーリV12エンジンでは2バレル6連装キャブをランナー構造で1バレル1気筒供給としている

インテークマニホールドの内部構造はエンジンの体積効率を決定する重要な要素である。前述の通り乱流を引き起こすためにある程度効率を犠牲にした設計が成されることも多いのだが、余りにも極端な曲がりや内径変化などは吸気圧力損失を引き起こす原因ともなる。高性能なインテークマニホールドは(層流の発生をある程度覚悟の上で=低回転時の燃焼効率を犠牲にしてでも)高回転時の高い吸入効率の実現のために滑らかな内部表面と流体力学上最適な効率の構造を持っている。

かつてキャブレター時代の高性能インテークマニホールドはランナー(runners)と呼ばれる構造を採用することが多かった。ランナーとは多連バレルキャブレターの場合は各バレルと吸気ポート個別に接続するため、そしてステージドキャブレターやスーパーチャージャー仕様の場合にはスロットルバルブ後方かスーパーチャージャー出口に設けられたプレナム室(en:Plenum_chamber、ターボエンジンのサージタンクに相当)から吸気ポートに個別分配するための構造である。すなわち、キャブレターと接合する面から既に分岐した構造を持っているということでもある。

ランナー構造の目的は、吸入空気のヘルムホルツ共鳴(en:Helmholtz resonance)の特性を利用することである。吸気バルブが開くとき、混合気はかなりの高速(時には音速を超える)で燃焼室内へと入っていく。そして吸気バルブが閉じられる時、まだ燃焼室内に入っていない混合気は勢いを保ったまま高速でバルブにぶつかり、吸気ポート内に高圧な混合気スポットが出来る。そしてインテークマニホールド(ランナー構造)内の比較的低圧な混合気とぶつかって次第に混合気スポットの圧力は下がっていく。このとき、圧力が均等化していく過程で混合気には振動が発生し、吸気バルブの開閉の度に繰り返されることで、最後にはヘルムホルツ共鳴と呼ばれる共鳴音となる。[1]

ランナー構造の断面積が小さければ小さいほど、共鳴による圧力変化の度合いはより高くなる。ヘルムホルツ共鳴のこうした効果はベンチュリの一種として作用する。ピストンが吸入行程に入るとランナー構造内の混合気圧力が減少する。そしてこの低圧の混合気は吸気バルブが閉じた際に吸気ポート内で発生した高圧部分と衝突して圧力が均一化され、大きな共鳴を発生させる。この共鳴により発生したパルスはランナー構造を通って吸気口側へ伝達していき、吸入口で大気と衝突して一部は大きな吸気音として分散し、一部は再び吸気ポートまで跳ね返されていき、燃焼室に入る吸入空気の加速を補助することになる。

このヘルムホルツ共鳴による効果の全出力を利用するためには、吸気系統全体の長さを正しく調節しなければならない。さもなければパルスは吸気に悪影響を及ぼすことになる。吸気系統が極端に短い場合にはパルスはただ大気中に喧しい吸気音を撒き散らすのみとなるし、極端に長すぎる場合にはパルスはただの吸気抵抗として吸気効率を低下させるだけになってしまう。

パルス効果が最大限に発揮される吸気系統の長さは、エンジンの回転数と吸気速度に完全に依存するため、伝統的なキャブレターとランナー構造のインテークマニホールドではパルス効果が利用出来る回転域にはおのずと制約が生じた。吸気口に長さの異なるファンネルを取り付けることで、ある程度の調節は可能であったが、これにも技術的な限界があった。

そのためにかつては下記のようなインテークマニホールド側の様々なアプローチで共鳴効果の最大限の利用が試みられた。

いくつかのエンジンではインテークマニホールドの吸入抵抗を最小とするためにランナー構造を直線とする事が試みられた。 しかし、ほとんどのエンジンではランナー構造は曲線のレイアウトを取らざるを得ない上、各シリンダーに最適なランナー構造の長さを個別に実現しなければならない関係上、非常に複雑な曲線を持ったインテークマニホールドが多くなった。複雑な曲線のインテークマニホールドはエンジンのコンパクト化のためにはマイナスであるが、いくつかの可変長式インテークマニホールドには欠かせない構造であり、ステージドキャブレターにおいてもプレナム室の容量を減少させることを許容する効果もある。プレナム室は一つのキャブレターで全てのシリンダーに均等な圧力で混合気を供給するために設けられているが、吸気ポート内部で発生したヘルムホルツ共鳴がプレナム室内で乱反射して定在波化(吸気脈動)し、他のシリンダーの吸気を妨げることもあるために、そのエンジンの仕様の許される範囲で出来る限り小さな容量とすることが求められる。理想的なプレナム室とランナーの位置関係は、プレナム室の取入口と全ての気筒に繋がるランナーの入り口の距離が全て一定であることであるが、ターボエンジンのサージタンクの場合はインテークパイプの配管の都合上、こうした構造が採れない場合も多い。

[編集] 180度インテークマニホールド

元々はキャブレター仕様のV型8気筒エンジンや飛行機用エンジン、プレナム室を持つキャブレターのために開発されたもので、インテークマニホールドのランナー入口への共鳴パルス反射がそのシリンダーの点火時期から180度の位置で発生するように設計されている。こうしたインテークマニホールドは他の気筒への吸気干渉を最小限に留める効果がある。現在では2バレルまたは4バレルの2ステージキャブレター向けにこのようなインテークマニホールドが使用されることが多い。

[編集] 現在

現代の高度な電子制御技術は可変バルブ機構バルブトロニックを始めとした電子的に制御されたバルブタイミングや、エンジン回転域に応じて吸入口の長さを可変させるインテークマニホールドを実現した。

このような電子的に制御された機器で行われる「ヘルムホルツ共鳴の調律」の結果、いくつかの自然吸気エンジンは吸気系統全体の体積の100%を超える効率で常時動作できるようになった。圧縮行程に入る直前のシリンダー内の混合気圧は大気圧よりも高い状態となり、自然吸気エンジンでありながら過給器と同様の効果を発揮させることが可能となったのである。これは電気的に制御されたインテークマニホールド、最適化されたエキゾーストマニホールドのデザイン、排気バルブの開口タイミングを電気的に制御する可変バルブ機構などの複雑な組み合わせにより初めて実現されるところとなった。

[編集] 可変長式インテークマニホールド

可変長式インテークマニホールド(Variable Length Intake Manifold) (VLIM)とは、内燃機関のインテークマニホールドに用いられる技術であり、主に4つの技術から成り立っている。第一に、異なる長さを持つ2本のランナー構造が採用される。第二に、プレナム室直後に設けられたバタフライバルブかスライドバルブによって、長さが短く直線状に作られたセカンダリランナー経路を閉じることが出来る。これによりエンジン回転数に応じてプライマリとセカンダリのランナー構造を切り換えることが可能となる。

このような構造の可変長式インテークマニホールドは多気筒エンジンの場合、同時点火されるシリンダーの数に応じてプレナム室を分けることが可能となる。このような分離型プレナム室はメインの大きなプレナム室にY字状の分岐パイプで繋がれる小さなサブプレナム室で構成され、エンジン回転数に応じてどちらを使用するか選択することが可能である。低速域は小さなサブプレナム室を、高速域ではメインプレナムを使用することで、パワーとトルクを回転数に応じて最適化し、より良い燃費を提供することが可能となる。

1999年式マツダ・ロードスターのBP-4WエンジンのVLIM。4気筒のうち同時点火される2気筒分の2系統のランナー構造を有している。

可変長式インテークマニホールドは主に下記の二つの効果を用いて吸気効率を高めている。

  • ベンチュリ効果 - 低回転域では吸入空気の気流速度を上げるために、細いプライマリランナーを通って燃焼室内に入っていく。高回転域になり吸入負荷が増大すると、太いセカンダリランナー側を開いてより吸入空気量を増やすことが出来る。DOHC4バルブ以上のエンジンの場合、一部の吸気バルブを作動させない状態とすることで、さらに低回転時の気流速度を上げる場合も多い。代表的なものはトヨタのT-VISである。
  • 与圧効果 - 吸入空気の経路を調整出来るVLIMは、低速回転時にヘルムホルツ共鳴を利用して低圧の過給器を取り付けているのと同様の与圧を吸入空気に与えることが可能である。しかし、この効果はランナー構造の長さによって直接影響を及ぼされる僅かなエンジン回転数の範囲だけで起こるため、ランナー構造を2系統とすることによって複数の回転域で与圧を与えることが可能となる。吸入空気速度が速い時に吸入空気に与えられる圧力は、ランナー取り入れ口の空気速度の二乗に比例するため、低速回転側のプライマリランナーの径を狭くするか、より長さを長くすることによって吸入空気速度と圧力を可変させている。

今日では多くの自動車メーカーがこの機構と共通した構造のインテークマニホールドを採用している。この技術のための別の一般的な用語として、可変共鳴吸気システム(Variable Resonance Induction System)(VRIS)という名前も用いられる。

なおモータースポーツなどでは、可動部分が多くなることでの信頼性の低下を避けること、より吸入空気量を増やすこと、或いは大径スロットルに交換することなどの目的で、純正のVLIMを取り外して大型の固定式インテークマニホールドに交換することも多い。しかし、一般走行用途で安易にこのようなパーツを使用した場合、高回転域のパワーと引き替えに低回転域でのドライバビリティや燃費などが大きく損なわれる可能性が高い

旧車などの経年変化が大きくなった車両では、可変式の機構が長年動作しなかったことによるバタフライバルブの固着などのトラブルも起こるため、普段の走行中に時折可変機構が動作する回転域までエンジンを意図的に回して、可変機構を定期的に作動させてやることが望ましい。特に近年の車両はATCVTの制御が最適化された結果、Dレンジに入れたままでは通常の街乗り程度ではVLIMが作動する回転数まで回転が上がらないこともあるため、注意が必要である。

[編集] ジェットエンジン

ラムジェットエンジン系のエンジンは他のジェットエンジンと違い圧縮機を持たず、インテークマニホールドが高速な吸気を減速し、圧力に変換する圧力回復だけで吸気を圧縮する。ラムジェットエンジン以外でも超音速飛行が可能な機体に搭載されるジェットエンジンにも圧力回復機構となるインテークマニホールドを備える。圧縮機のレイアウト、またそれらの切り替えにより複数のタイプのエンジンがある。

[編集] 脚注

  1. ^ この共鳴は音速を超える極めて高速な速度域で起こるため、もしも共鳴対策を何も施さずにインテークマニホールドとキャブレターのみを接続してエンジンを動かした場合、非常に大きな吸気音が発生することになる。

[編集] 関連項目

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