点火プラグ
点火プラグ(てんかプラグ)は火花点火内燃機関において電気的に火花(スパーク)を発生させて混合気に点火する装置である。スパークプラグ(英: Spark plug)とも呼ばれる。
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解説 [編集]
内燃機関(エンジン)のうち、スパーク・イグニッション・エンジン(火花点火機関)と呼ばれるエンジンでは、シリンダーヘッド中に置かれ、電気放電によって点火させることにより、燃焼サイクルのきっかけを作る。点火プラグは、内燃機関以外でも、暖房器具などの燃焼器具類でも、混合気に点火するために使用される。この場合は、イグナイター (igniter)、フレーム・イグナイター (flame igniter) とも呼ばれる。エンジンでは、毎分数百から数千回の点火がおこなわれる一方、暖房装置などでは燃焼開始時の1回のみの動作となる。いずれも「プラグ」と略してよばれることがある。第二次世界大戦以前や戦後まもなくまではSpark plugの日本語直訳である点火栓という呼ばれ方がされていた時期もあった。
点火プラグにはプラグコードと呼ばれる絶縁されたワイヤーによって、外部の点火コイルかマグネトー回路に接続される中心電極があり、点火プラグのシェル側に設けられた接地電極(若しくは側方電極)がアースを形成することで点火装置として成立している。
内燃機関の内、ディーゼルエンジンはピストンで圧縮され高温高圧となった空気に直接燃料を噴射して燃焼を促す圧縮点火機関に属するため、点火プラグは用いられない。しかし、ディーゼルエンジンの場合でも冷間始動特性を改善するためにグロープラグを用いることがある。
作動の概要 [編集]
自動車やオートバイ用のレシプロエンジンでは、基本的に1シリンダーに1本の点火プラグがあり、イグニッションコイルで発生した高電圧により電極間で火花放電を起こし、圧縮された混合気に点火する。
点火プラグの中心電極は、プラグコードによってイグニッションコイルに接続される。中心電極と接地電極間の隙間はプラグギャップと呼ばれ、この隙間の間に存在する燃料と空気の混合気は絶縁体であるため、通常は電極間に電流が流れることはない。しかし、イグニッションコイルにより電極間に高電圧が印加されると、混合気が絶縁破壊され火花放電が起こる。
通常、点火プラグは電圧12,000-25,000V以上が掛かった際に適切にスパークするように作られている。しかし、排ガス規制対策が進んだ近年のエンジンに用いられる点火装置では、より高温でより長時間のスパークを発生させる為に、電極間に掛かる電圧が45,000Vに達するものも登場している。
電極間のスパーク部分は60,000ケルビンもの高熱になり混合気に着火する。これにより発生した小さな炎の玉が、次第にシリンダー全体に燃焼反応が伝播していく。この炎の玉のサイズはスパークギャップの幅と電極間の混合気の品質に完全に依存するため、
- スパークギャップがより広く(ギャップが広がると、点火装置自体もより強力な物が求められるようになるが)
- 燃料の霧化が良好で混合気の混合粒子が細かければ細かい程、
より強力なスパークと大きな炎の玉が発生し、シリンダー内により強力な爆発が発生することになる。
また、この炎の玉を中心に燃焼が伝播していくため、接地電極が燃焼室中央部を遮らないような向きに配置されることもより強力な燃焼を促すためには重要である。側方電極を一つだけ持つ一般的な点火プラグの場合、理想的には吸気バルブと排気バルブに対して側方電極が並行となり、吸排気の流れを妨げない事が望ましいため、モータースポーツで用いられる点火プラグは側方電極を排した沿面型プラグが用いられることも多い。
失火(ミスファイア) [編集]
点火の際には燃焼作用によって煤(カーボン)が発生するが、これが電極間に付着するとカーボンを伝って電気がリークしてしまい、火花を作れなくなる。この状態は、俗に「かぶる」と表現される。プラグには自身が高温になることで電極に付着するカーボンを燃やしてしまう自浄作用の機能が求められるが、反面、温度が高すぎると早期着火(プレイグニション)による不正燃焼やプラグ自身の焼損を招く。
また、未燃焼ガソリンなどの燃料が電極に付きリークしてしまうことを「プラグが濡れる」と呼ぶ。こちらも「かぶる」と表現されることもある。
熱価 [編集]
カーボンによる「失火」を防ぐためには、自浄作用に十分、かつ焼損を招かない範囲にプラグ自身の熱を保持し、または放熱する必要があり、その特性は「熱価」として表される。通常はメーカー毎に異なる熱価表に表示される数値や記号で熱価を指定する。冷却性能の高いものをコールドタイプ、その反対はホットタイプと分類することがある。前者を「熱価が高い」、後者を「熱価が低い」ともいう。しかしその分類基準は曖昧である。
点火プラグの構造 [編集]
点火プラグはシェル(側方電極を含む外殻部)、碍子(絶縁体)、および中心導体(中心電極及びターミナル)で構成される。点火プラグは燃焼室を貫く形で配置されるため、シリンダーで発生する圧縮圧力や熱が外部に漏れないような密閉構造を持ち、数万キロ以上の長期間の使用に耐える耐久性を持つことが求められている。
点火プラグを構成する部品 [編集]
ターミナル [編集]
点火プラグの後端にはターミナル(端子)が存在し、プラグコードやダイレクトイグニッションのプラグキャップが接続されることで、点火プラグは点火装置に接続される。プラグキャップ内部の端子の仕様により、ネジ式のターミナルと嵌め込み式のターミナルの2種類が存在するため、点火プラグによってはネジ式のターミナルに嵌め込み式キャップに対応するためのアダプターがねじ込まれ、必要に応じて両方の形式に対応出来るようになっている物も存在する。
碍子(絶縁体) [編集]
点火プラグの中心導体を覆う白い磁器で、高電圧を絶縁して中心導体から外部へ電圧がリークしないようにしている。また、二次的な機能として特に深いプラグホールを持つ近代的なエンジンの場合、より長い中心導体と碍子を持つプラグを用いることで、プラグキャップの接続をより容易にすることが可能となる。
リブ [編集]
点火プラグの碍子の多くには複数のリブが設けられている。これはターミナルからシェルまで間にある絶縁体の表面距離をリブの設置によって伸ばすことで、絶縁特性を改良して電気エネルギーが漏れることを防ぐ効果がある。リブが多ければ多い程電子はより長い距離を移動しなければならなくなるため、結果的にはリブの数が絶縁体の抵抗の多寡に直結することになる。
碍子にリブを全く持たない点火プラグも存在するが、全体から見ればごく稀である。
碍子脚部(絶縁体チップ) [編集]
碍子の先端部分(プラグのシェルから燃焼室に突き出す電極までの部分)は碍子脚部と呼ばれ、電気の絶縁を行うと同時に、燃焼室内の高温にも堪えなければならない。また、中心電極や側方電極が過熱し熔解するのを避けるために、碍子脚部はより良い熱伝導率を持って電極の熱をヘッドに逃がす必要がある。碍子脚部には通常の磁器ではなく焼結された酸化アルミニウムを主体としたセラミックスが使用されており、650℃以上の高熱と6万ボルトの高電圧に耐えるように設計されている。
碍子脚部の長さはプラグの熱価を決定する要因となる。短い碍子脚部を持つプラグは「冷え型」のプラグであり、火炎に晒される表面積が小さく、碍子脚部からヘッドまでの距離が短いため、電極の温度が上昇しにくくなる。逆に長い碍子脚部を持つプラグは「焼け型」のプラグとなる。
かつてのレシプロエンジンの航空機に用いられていた古い点火プラグでは、碍子脚部に圧縮加工された雲母を用いていた。1930年代の有鉛ガソリンの開発に伴い、プラグの自己洗浄作用にとって雲母に含まれる鉛成分が問題となったため、これを解決するべくドイツのシーメンスが酸化アルミニウム製の碍子脚部を開発した。[1]
シール [編集]
点火プラグは燃焼室にねじ込まれるため、圧縮圧力がプラグから漏れ出さないようにシールされる。シールは通常複層構造のろう付けによって施され、碍子とシェルを密封している。シールの良し悪しがエンジンの圧縮圧力の多寡や碍子脚部からの熱伝導の良し悪しをも左右するため、メーカーの技術力が問われる部分でもある。
シェル(メタルケース) [編集]
点火プラグの外周を覆う金属製のケースである。このシェルには側方電極とヘッドにねじ込まれるネジ部分が含まれているため、点火プラグを締めるトルクに耐え、碍子及び碍子脚部からの熱を効率的にヘッドへ逃がし、側方電極とヘッドを電気的に接続する必要がある。点火回路動作時に、この部分に触れると感電の恐れがある。
中心電極 [編集]
中心電極はスパークからのRFノイズの放出を減少させるために、一般的にワイヤーとセラミックの直列抵抗を介してターミナルに接続される。中心電極は銅、ニッケル-鉄、クロム、またはプラチナやイリジウムなどのレアメタルを組み合わせて作られる。
1970年代末、ニッケル合金製中心電極を持つ従来の点火プラグの熱価が、新型の高速回転型エンジンに対処出来ない事態に直面した。高速回転の要求に対処する程プラグは冷え型とならざるをえず、低温始動時に電極のカーボンを焼き切る能力が不足して冷間始動特性が悪化することになった。これに対処するためにプラグを焼け型にすると、高速道路での長時間高速走行の際に中心電極が溶け落ちるトラブルが発生した。[2]
この問題に対してプラグメーカーはニッケル合金に代わって銅を主体とする中心電極を採用することで対処した。英国Floform社が開発した銅製の中心電極は熱伝導性がニッケル合金より優れていたため、電極の熱をより効率的にヘッドへ逃がすことが出来、焼け型プラグでもより広いヒートレンジを得ることが出来るようになった。
通常、中心電極は点火プラグで最も熱を持つ部分であるため、カソードとして電子を放出するように、正極として設計されている。正極は熱を持っている程電子を放射するのが容易となる(エジソン効果)ため、中心電極を正極とすることは電気的な法則上も理に適っているのである。さらに、電子は電界の強さが最大級の部分で放射されやすくなる。すなわち、電極表面の湾曲半径が最も小さい部分=最も細い部分ほど、火花が飛びやすくなる(コロナ放電)のである。しかし、電極の先端を細くすればする程、スパークの際の電子浸食が大きくなり、電極の耐久性も落ちていくことになるため、細い電極のプラグにはより耐久性の高い素材が求められるようにもなる。こうした理由により近年登場してきたのがイリジウムを用いたプラグである。
かつては点火プラグの手入れとして、ワイヤーブラシやサンドブラスト(プラグクリーナー)により電極を掃除し、場合によってはヤスリなどで電極の角を鋭く再加工する事などが行われていたが、近年では点火プラグは消耗品として取り替える事が一般的になったため、カーボン清掃以外の作業を行うことは珍しくなった。また、中心電極にレアメタル(イットリウム、イリジウム、プラチナ、タングステン、またはパラジウムなどの金属と、比較的平凡な銀か金を組み合わせた合金を使用する)が使用されるようになると、電極はより細く、より耐久性が高い物になり、交換周期も10万キロに1回など大幅に伸びることになった。なお、特殊な事例としてファイアストンが「放射能が電極間の混合気のイオン化をより促進する」という理論の元で、ポロニウム製の中心電極を持つプラグを販売していたことがある。[2]
接地電極(側方電極) [編集]
接地電極はニッケル鋼によって作られ、シェルの側面に溶接されている。接地電極は中心電極同様に非常に熱を持つ部分のため、熱伝導率の改善のためsに銅製のコアを内部に持つものも存在する。また、複数の接地電極を持つものもあり、スパークの特性やカーボン汚損に対する耐久性の改善に寄与している。
電極隙間(プラグギャップ) [編集]
点火プラグは、そのプラグを選定した技術者や整備士が電極隙間を簡単に調整出来るように、L字型の接地電極を持つことが多い。 通常、電極隙間は0.8mm-1.8mm前後の幅で選定されることが多く、新品のプラグであっても製造誤差などにより必ずしもギャップが全数一定に揃っているとは限らないことや、エンジンの種類によってはプラグの熱価などは全気筒同じであっても、気筒毎に異なる電極隙間を要求するものも存在するため、装着の前に電極隙間を測定して調整することは整備の必須項目でもある。
電極隙間は専用の隙間ゲージで測定を行う。隙間ゲージは厚みの異なる縁を持つ円盤状のものが多く、電極を押し広げて隙間を広げる工具としての役割も必要になるため、一般的なシクネスゲージの使用は余り推奨されないことが多い。
近年のダイレクトイグニッションや燃料噴射装置が組み合わされた近代的なエンジンでは、電極隙間は1.1mm以上の広い隙間を採用することが多い。これはキャブレターとコンタクトポイント式のディストリビューターに比べると遙かに広い隙間であり、時代が下る毎に点火装置の性能が向上していることを示している。
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- 狭いギャップのリスク: スパークが小さくなり、失火やカブりを起こす可能性がある。
- 狭いギャップの利点: 高速回転でもより確実に火花が飛ばせる。弱い点火装置でも確実に火花が飛ぶ。
- 広いギャップのリスク: 極度の高速回転では火花が飛ばず、失火を起こす可能性がある。また、より強力な点火装置も必要となる。
- 広いギャップの利点: スパークがより大きくなり、完全燃焼に繋がる。
点火プラグが老朽化すると、中心電極と接地電極は浸食されて電極隙間はより広くなる傾向となる。従って、整備士によってはより長い使用期間でも確実に点火性能が維持出来るように、新品のプラグでも指定隙間よりやや狭めに隙間を調整する場合がある。
基本デザインの変化 [編集]
点火プラグの長い歴史の中で、点火プラグの基本的なデザインはより良い点火、より長い耐久性のどちらか或いは両方を実現させるために変化してきた。その一例を以下に示す。
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- 接地電極の数を2つから最大4つまで増やす。
- 接地電極を無くし、沿面型を採用する。
- 中心電極の先にV字型の溝を設ける。
- 接地電極の先にU字型の溝を設ける。
- 接地電極の背面にスリットを設ける。[3]
表面放電型(沿面型)点火プラグ [編集]
通常の接地電極付き点火プラグが使用されるピストンエンジンの燃焼室は、原則としてピストンの動作範囲からは常に外れており、それ故にある程度までの接地電極と中心電極の燃焼室内への突き出しを許容している。
しかし、ロータリーエンジンの燃焼室の場合、ローターの角(アペックスシール)が常にハウジングに接触して回り続けているため、点火プラグの先端が僅かでも燃焼室に突き出ているとアペックスシールを傷つけるか、最悪の場合ローターを破壊してしまうことになる。そして、点火プラグがローターを避けて凹んだ形状を選択すると不完全燃焼に直結してしまう。
そのため、全く新しい形状である「表面放電型(沿面型)」と呼ばれる形状の物がロータリーエンジン用に開発され、チャンピオンとボッシュによって製造された。沿面型プラグは、短く太い中心電極が僅かに突出しているのみの殆ど平坦に近い中心電極面を持ち、プラグのシェル全体が接地電極として作用する。
このタイプの利点はアペックスシールを傷つけず、側方電極を持たないためスパークにより生ずる炎の球体が混合気に伝播しやすくなる。さらに、スパークギャップの調整がほぼ全く不要という利点もある。ただし、側方電極を持たないためにスパークの経路は360度常に異なる方向に飛ぶことになる。
側方電極が脱落してエンジン内部を傷つけることがないため、ピストンエンジンでもレース仕様エンジンなどではこの形式の物を用いることもある。
シリンダーヘッドへのシール [編集]
殆どの点火プラグは、シリンダーヘッドへのシールのために、金属製の中空ワッシャーを用いる。このワッシャーはヘッドとプラグの間で変形してシール作用を行うため、プラグを取り外して再使用する際には、過度なトルクを掛けないように注意する必要があった。[3]
しかし、かつてのフォードエンジンはワッシャーの再利用による密封性の低下を嫌い、このワッシャーを排したテーパー接触面を持つ点火プラグを採用していた時期があった。これらテーパー型プラグを脱着するために必要なトルクは通常のワッシャー型プラグよりも大きく、必然的に強すぎるトルクでプラグやプラグホールを破損する整備ミスを誘発することにも繋がった。
後にフォードは、フォード・フィエスタやフォード・Kaなどにおいて、上記と同様にワッシャーを持たない新しいシーリングシステムを採用した。このシーリングはテーパー型に比べてプラグ脱着に必要なトルクは減少したが、必要に応じて増し締めが行えない欠点はテーパー型と代わることがなかった。フォードは後に、整備士達が正しい手順で整備を行うように何度かen:Technical_Service_Bulletinと呼ばれる注意広報を発行する必要に迫られることとなった。
電極の突出し [編集]
点火プラグのネジの長さは、原則としてヘッドの厚さに合わせて正確に選択されなければならない。もしもネジ長さが長すぎることで過剰に電極先端が燃焼室に突き出している場合、ピストンとプラグが激突してエンジン破損を招くことになる。プラグのネジ山が燃焼室内に突き出ていると、高温の炎に晒されて碍子脚部の放熱を妨げるだけでなく、場合によってはプレイグニッションの原因になることもある。また、カーボンがプラグのネジ山に堆積して脱着が困難になるばかりでなく、アルミニウム合金製のヘッドの場合プラグホールのネジ山を破損する要因ともなる。
しかし、燃焼室内への電極の突き出し自体はプラグの性能を左右する重要な要素となる。燃焼室の中心への突き出しが大きくなる程、一般には混合気の点火性が向上する。ただし、バルブからのオイル下がりが若干発生しているような旧式のエンジンの場合は、長めの電極突き出しはカーボンの堆積を招きやすくなり、スパーク性能の低下に繋がりやすくなる。
点火プラグの熱価 [編集]
点火プラグにはエンジン内部の高温が直に接するため、電極部の温度は非常に高熱となる。点火プラグの電極と碍子脚部が過熱しすぎると、プラグが火花放電を起こす前に混合気が着火してしまうプレイグニッションを起こす危険性がある。プレイグニッションはノッキングに直結する現象で、エンジン破損に繋がる恐れが有る。逆に、点火プラグの電極温度が低すぎる場合、燃焼はくすぶりがちとなり、プラグ先端は不完全燃焼を起こした混合気のカーボンで汚れて火花が弱くなり、最終的にはエンストや再始動不能といったトラブルを招く。
こうした事態を防ぐため、点火プラグは碍子脚部の燃焼室内への露出量を調整することでプラグ本体が蓄える熱量をコントロールしており、碍子脚部の露出度合いによってその点火プラグが持つ熱価と呼ばれる要素が決定されている。プラグ熱価はエンジンの設計によって異なり、エンジンメーカーはそのエンジンに合わせて最適な熱価の物を使用するようにプラグ銘柄の指定を行っている。通常、碍子脚部の露出が大きい物程プラグ本体が熱を保ちやすい焼け型と呼ばれ、逆に露出が小さい物程プラグ本体が熱を保ちにくい冷え型と呼ばれる。
日本で一般的なNGKやデンソー製プラグの場合、熱価の表記は数字が大きい程冷え型となり、小さくなる程焼け型となるが、外国製のプラグメーカーの場合はこれとは逆に、数字が大きくなる程焼け型となる表記の物もあるため、点火プラグのメーカーを変更する場合は、クロスリファレンスを用いて熱価の誤選択を起こさないように注意を払う必要がある。
電子制御式の燃料噴射装置が一般化する前のキャブレター仕様のエンジンでは、そのエンジンの常用回転域に応じて2つ或いはそれ以上のプラグ熱価を指定することが一般的であった。例えば、一般的な街乗りではやや焼け型のプラグを使用し、高速道路を長時間走行する時には有鉛ガソリンの使用及び、標準指定より冷え型のプラグに交換して走行する必要があった。しかし、燃料噴射装置の電子制御が高度となった今日では、空燃比の監視によってエンジンの温度が高度にコントロールされるようになったため、この習慣はオートバイを除いてはほぼ廃れることになった。
ただし、モータースポーツの世界ではエンジンのセッティングに応じて適切なプラグ熱価を選択する事は今日でも行われている。非常に古い設計のレース用エンジンには、出荷段階で2セットの点火プラグが用意されていることも珍しくはない。このような仕様のエンジンの場合、暖機運転専用の焼け型点火プラグでまずエンジンを暖め、実際にコースインする際には全開走行用の極端に冷え型のプラグに交換して出走することになる。
最適な熱価の判定 [編集]
点火プラグの電極と碍子脚部は燃焼室の内部環境で大きな影響を受ける。電極と碍子脚部の焼け具合は燃焼室内部の燃焼環境を直接示す指標となるため、点火プラグを取り外した際には電極と碍子脚部の焼け具合を目視することで、その点火プラグがそのエンジンのセッティングに対して適切か否かの判断を下すことが可能となる。
点火プラグメーカーはこのようなプラグ判定表を必ず用意しているため、判定表と実際のプラグを照らし合わせて、極端におかしな焼け方をしている場合には直ちにプラグ熱価を変更するか、燃調セッティングの見直しを行わなければならない。
一般的に、碍子脚部の色が褐色若しくは薄いグレーの場合はそのエンジンは良好な燃焼状況を示しており、黒に近くなるほどエンジンがくすぶり気味であることを示している。逆に極端に碍子脚部の色が白く、多孔質のガラス様の外見を呈すようになっていた場合にはプラグ熱価が焼けすぎで有ることを示している。
ただし、エンジンがアイドリング状態の時と全速力で走行する時は点火プラグに対する影響が全く異なる物となるため、熱価判定を行う場合には高速且つ重い負荷をエンジンに与えた後、直ちにエンジンを停止してプラグを点検しなければ、正確な判定は行えない。海外では点火プラグの熱価判定を行うための補助器具(拡大鏡が取り付けられた懐中電燈のような道具)が販売されており、プラグ熱価判定に利用されている。
しかし、燃料噴射装置の電子制御が高度となった今日では、空燃比の監視によってエンジンの温度が高度にコントロールされるようになったため、この習慣はキャブレター仕様のオートバイやモータースポーツに車両を用いる場合を除いてはほぼ必要が無くなっている。
点火プラグの種類 [編集]
プラグのネジ径によって規格があるほか、ショートリーチ・ロングリーチの区分があり、電極の形状・材質にもいくつかの種類がある。
リーチ [編集]
- ショートリーチ
- ロングリーチ
電極形状・発火部形状 [編集]
- 平行電極
- 多極(2極・3極・4極)
- ハイブリッド3極
- 沿面
- セミ沿面
- 間欠
- 斜方
- DFE
電極材質 [編集]
本数 [編集]
レシプロエンジン [編集]
航空機用レシプロエンジンでは、失火によるエンジンストールを防止するために1シリンダに2本のスパークプラグがある。2本の点火プラグには別系統のマグネトーから電力が供給される。
航空用の場合は安全性向上が目的だが、自動車・二輪車でも燃焼効率を上げる目的などで同様の形態をとるものがある。
歴史 [編集]
1777年に、イタリアのアレッサンドロ・ボルタが、スパークによる燃料への着火を提唱。スイスのフランソワ・イザック・ドゥ・リヴァ (François Isaac de Rivaz) が1807年に、内燃機関用として提唱し、これがスパーク=イグニッション・エンジンの源となる。実際に製作したのは、フランスのジャン=ジョゼフ・エティエンヌ・ルノアールで、1876年のことだった。
商用の観点からは、ロバート・ボッシュ社の技術者ゴットロープ・ホノルト (Gottlob Honold) が1902年にマグネトー型点火システムの一部として高電圧スパークプラグを開発したことが、その後のスパーク=イグニッション・エンジンの発展を促した。
年表 [編集]
- 1777年:ボルタがスパークによる燃料への着火を提唱
- 1807年:ドゥ・リヴァが内燃機関用に提唱
- 1876年:ルノアールが発明
- 1885年:ルノアールがフランスで特許取得
- 1898年:ニコラ・テスラが米国で特許取得
- 1898年:リチャード・シムスが英国で特許取得
- 1902年:ホノルドがドイツで商用化に貢献
(ドイツでカール・ベンツも特許取得している)
メーカー [編集]
日本では日本特殊陶業 (NGK) とデンソーが有名である。かつては日立製作所も製造していたが、現在は撤退している。ほかに米国のチャンピオン、ACデルコ、ドイツのロバート・ボッシュ、チェコのブリスク、イギリスのロッジ、フランスのEYQUEMなどがある。
脚注 [編集]
- ^ Air Commodore F. R. Banks (1978). I Kept No Diary. Airlife. pp. 113. ISBN 0-9504543-9-7.
- ^ Floform statement on copper cored electrodes [1]
- ^ 通常、プラグを締め込む際には新品の場合はワッシャーがヘッドに接触してから1/2回転締め込み、再使用の場合は1/4回転締め込むなどの指定が成されている。何度も再使用する場合は予めこの指定トルクよりも少なめのトルクで締めておくこともあるが、厳密には余り推奨されない方法である。
関連項目 [編集]
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