ロータリーエンジン

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ロータリーエンジン(Rotary engine)とは、一般的なレシプロエンジンのような往復動機構による容積変化ではなく、回転動機構による容積変化を利用し、そのまま回転動力を出力する原動機である。

ドイツの技術者フェリクス・ヴァンケルの発明による、三角形の回転子(ローター)を用いるオットーサイクルエンジンが実用化されている。ヴァンケル型ロータリーエンジンとレシプロエンジンとでは構造は大きく異なるが、熱機関としては同等に機能する。本項ではこのヴァンケルエンジン(Wankel engine)について述べる。

ロータリーエンジンのローター
マツダミュージアム、2005年2月撮影)

概要[編集]

1957年に試作機が最初に動作したヴァンケルエンジン(ロータリーエンジン)は、レシプロエンジンとは基本的に大きく異なる構造を持っている。エンジン本体に往復運動部はなく、回転運動のみで動作している。またロータリーエンジンの吸気および排気のポートは、ハウジングの内面に設けられた孔がローター自体により開閉される。このため一般的な4ストロークレシプロエンジンのような、吸排気バルブやこれを開閉するカムシャフトなどの動弁系は必要ない。

ロータリーエンジンとして上記の「ヴァンケルエンジン」のみを指す場合も多く、また「回転ピストン型エンジン」、時には「ピストンレスエンジン」と呼ばれることもある。自動車用としては、ヴァンケルエンジンを指して「ロータリーエンジン」(「RE」と略記)と呼ぶことが一般的である。航空機用として「ロータリーエンジン」と呼ぶときは、星型エンジン本体(シリンダー側)がプロペラとともに回転する構造の回転式レシプロエンジンを意味する場合と、本項のヴァンケルエンジンを意味する場合とがある。

構造も動作も異なるため、レシプロエンジンとは排気量による単純比較はできない。日本における自動車税課税時の排気量区分は「単室容積×ローター数×1.5」として換算される[1][2]。カーレースにおいては、レースの種類によって排気量の換算方法が異なり、F1などのように使用を認められない場合もある。

構造[編集]

マツダ13B型ロータリーエンジン
サイドハウジングは取り外され、まゆ形のローターハウジング、三角おむすび形のローター、その中に通されたエキセントリックシャフトなどが見える

構成[編集]

ロータリーエンジン本体の構成部品の概略を下記にしめす[3]。燃料供給系・吸排気系・潤滑系・冷却系・電気系などは、一部構造は異なるがレシプロエンジンと同様に別途設けられる。なお相当部品名は、レシプロエンジンに対するものである。

ローター
ピストンコネクティングロッドに相当するもので、ローターハウジングのトロコイド曲線に内接する3葉の内包絡線で構成された、三角おむすびの形(ルーローの三角形)をしたもの。中心にはローターベアリングを介してエキセントリックシャフトがはめられる丸い穴部があり、その縁にはサイドハウジングのギヤ部とかみ合う内歯の歯型(インターナルギヤ)が設けられている。
シール
ピストンリングに相当し、ローターに取り付けられている。ピストンリングは通常2-3本で円筒面に対し気密を保つが、ロータリーエンジンのシール類は数も多く、平面に対して長い範囲で気密を保たなければならない。
アペックスシール
ローターの各頂点に取り付けられ、隣接する作動室との気密を保つ。ペリフェラルポートの場合は、吸排気バルブにも相当する。
サイドシール
ローターの側面とサイドハウジングとの間の気密を保つ。
コーナーシール
アペックスシールとサイドシールとのつなぎ目で気密を保つ。
オイルシール
ピストンリングの中でもオイルリングに相当し、作動室への潤滑油の余分な流入を防ぐ。
エキセントリックシャフト
クランクシャフトに相当するもので、それと同様にエンジンからの出力軸となる。ローターの取り付く位置のみ芯がずれて太くなっている偏心軸である。右下の動作図ではローター中央の白い部分がこの偏心部で、サイドハウジングに通される回転軸は図中のBの位置となる。
ハウジング
シリンダーシリンダーヘッドに相当し、点火プラグの取り付け部や吸排気ポートが設けられている。
ローターハウジング
内側面が2ノードのペリトロコイド曲線というまゆ型であり、この内部でローターやエキセントリックシャフトの偏心部が回転する。ローターおよびサイドハウジングとともに燃焼室を構成する。吸排気ポート側と向かい合うくびれ部分(右下図では右側中央)に点火プラグが取り付けられるが、縦長の燃焼室となるために多くはツインプラグとされ、市販以外では3プラグの採用例もある。
サイドハウジング
ローターハウジングの側面(右下図の手前および奥の面)をふさぐものである。エキセントリックシャフトの回転軸が通る部分があり、ローターに接する面のその部分の周囲には、外歯のステーショナリギヤ(右下図の茶色のもの)が突起状に固定され、これがローターの内歯とかみ合う。
ロータリーエンジンの動作
吸気→圧縮→膨張→排気のオットーサイクルが3組同時進行している

動作[編集]

エキセントリックシャフトの偏心部がローターの穴に通されていて、この両者間では自由に回転できるようになっている。ローターが自転1回転の間に3回公転してエキセントリックシャフトを3回転させるように、またローターの各頂点がローターハウジングのトロコイド面をなぞるように、ローターの内歯とサイドハウジングの外歯とのかみ合い(歯数比は3:2)によって制御されている。ローターとローターハウジングの間の作動室容積は、ローターの1回の自転の間に拡大と縮小を2回づつ生じる。この間に4ストロークエンジンがクランクシャフト2回転で行うのと同様の工程(オットーサイクル)を1サイクル実行するが、このサイクルがローターの3辺の上で位相をずらしてそれぞれ進行している。すなわちエキセントリックシャフトの1回転ごとに1回の燃焼・膨張行程がある。出力は、ローターの自転運動ではなく公転運動(偏心回転運動)を、エキセントリックシャフトがクランクとして働いて取り出す。

吸排気ポート[編集]

ロータリーエンジンの吸排気ポートは、その位置・形状により以下のように分類される。

基本となるポート
サイドポート
サイドハウジングに設置されたポート。ローターが回転しガスを吸排気する方向とポート口の方向が90度曲がっているため、抵抗が増えて効率に難があり、また排気ポートに採用した場合は、曲がり角となる排気ポート周辺に熱だまりが起こりすすが発生しやすい。その一方でポート位置・形状の自由度は高く、オーバーラップ(ひとつの作動室に吸気・排気の両ポートが同時に開いている時間)を小さく抑えることが可能なため、低回転での安定回転やトルクを確保しやすい。ただし外周寄りの位置でローター回転方向にポートを拡大(レシプロエンジンでのバルブカム作用角の拡大に相当)した場合には、ローターの頂点がポート上を通過するようになって隣接する作動室同士がつながってしまうこともある。吸気ポートとしては、マツダの大多数の市販車用エンジンに採用されている。「RENESIS」13B-MSPエンジンでは排気もサイドポートとして、ゼロオーバーラップを実現している。
ペリフェラルポート
ローターハウジングのトロコイド面に設置されたポート(右上図の通りの位置)。高回転での吸排気効率に優れた形式であるが、ローターの頂点がポートを通過するときに隣接する作動室とつながり、また吸排気ポートのオーバーラップを小さくできず、吸排気間の吹き抜けを起こしやすい。結果として排出ガス値や燃費の悪化を招く。上記13B-MSPを除くほとんどのエンジンで排気ポートに採用され、吸気ポートでは主に競技用エンジンに採用されるほか、NSUのエンジンなどにも採用例があった。
応用的なポート
クロスポート/コンビネーションポート
低回転用のプライマリー(サイドポート)と高回転用のセカンダリー(ペリフェラルポートの場合もある)の2つの吸気ポートを組み合わせたもの。高回転時に吸気系内の制御でセカンダリーポートを機能させることで、ポートタイミングの最適化とともにポート面積が拡大される。
ブリッジポート
吸気サイドポートの一種であり、競技用エンジンやチューニングなどで出力向上のためにサイドポートをハウジング外側へ拡大(レシプロエンジンでのバルブ径やリフトの増加に相当)した場合に、アペックスシールやサイドシールの破損や脱落を防ぐ目的でシールの通過位置のみにサイドハウジング内壁を残したものである。分割されたポートの間に残された部分がポートにかかる橋に見えるので、ブリッジポートと呼ばれる。
オギジュアリーポート
Auxiliary port、すなわち補助ポート。13B-MSP(6PI仕様)が採用した3番目の吸気サイドポートや、上記ブリッジポートで分割されたポートの一方などの呼称で、おもに高回転域での吸気量増大によってのさらなる出力向上を目的として、追加されたポートである。ブリッジポートの一方をローターハウジングのトロコイド面にまで広げ、なかばペリフェラルポートとした競技用エンジンも存在し、このようなポートをオギジュアリーポートとしている場合もある。

長所・短所[編集]

既存4ストロークレシプロエンジンとの比較で、以下のような長所・短所がある。これを見ても、高回転向きのエンジンであって、低回転において短所が集中していることがわかる。

  • 長所
    • 極めてシンプルな構造のため、理論上は各部分の抵抗が少ない。
    • 4ストロークレシプロエンジンがクランクシャフト2回転で1回燃焼するのに対し、ロータリーエンジンはエキセントリックシャフト1回転で1回燃焼するので、実質排気量は記載排気量の2倍となるものの、同総排気量の4ストロークエンジンと比較するとその分出力が高い。
    • 動弁系がないため機械損失が小さい。
    • エンジン回転数の上昇に伴うトルクの上昇が滑らか。
    • 低圧縮である事からノッキングをしにくく、燃料のオクタン価の影響が少ないためある程度粗悪な燃料にも耐える。
    • 振動、低騒音(機械騒音)。
    • 冷却装備を考慮しても軽量且つコンパクトであるため、スポーツカーを作る際ミッドシップレイアウトに頼らずとも軽量、コンパクト、低重心に仕上げることが可能である。
    • 排気ガスの成分として、窒素酸化物(NOx)が少ない。(燃焼温度がレシプロエンジンと比較して低いため)
  • 短所
    • 極低回転域のレスポンス、燃焼安定性が悪い。
    • 低回転時のトルクは同出力のレシプロエンジンと比べ劣る傾向にあり、町乗りなど主に低回転域で走る際には燃費及びトルク面での効率が悪い。
    • 排気騒音が大きく、排気温度も高く冷却装置も大掛かりなものが必要である。
    • 未燃焼燃料の炭化水素(HC)が多い。(完全燃焼していない)

特に上記長所のうちの「低振動、低騒音」は、往復運動回転運動に変換するのではなく、もともとが回転運動である本エンジンの構造に由来するものであり、当初は性能でもレシプロエンジンを大きく引き離して未来のエンジンともてはやされ、世界中の自動車メーカーが開発を行う大きな理由となった。

用途[編集]

自動車用[編集]

自動車用としてはNSUバンケルタイプが唯一実用化されている。その後NSUに続いて東洋工業が量産化に成功し、コスモスポーツに搭載した。他にもシトロエンなどが生産モデルに搭載しているが、1970年代以降も自動車用として量産を続けたのは資本主義圏内ではマツダ(詳細は後述)のみである。

  • 日産自動車も1970年代前半に開発途中であった。東京モーターショーにロータリーエンジンを搭載したサニーを参考出品し、2代目シルビアはロータリーエンジンを搭載することを前提に市販間近といわれていた。しかし、1973年に起きた第一次オイルショックに見舞われ、省エネルギー志向の社会情勢には燃費性能が良くないロータリーエンジンは相応しくないとの理由で、結局は市販には至らなかった。
  • トヨタ自動車では、純粋な技術研究としてロータリーエンジンを研究してはいるが、市販の計画は全くない。
  • ダイムラー・ベンツ(現ダイムラー)も1960年代からロータリーエンジンの研究を開始、ミッドシップに4ローターロータリーエンジンを搭載したC111をジュネーブ・モーターショーで発表したが耐久性の面で問題が生じ、ついに市販されることはなかった。
  • シボレーも1970年代に独自のロータリーエンジン開発計画が存在し、1973年にミッドシップに2ローター/4ローターを搭載するコルベットを発表したが、オイルショック直後だったため、市販されることはなかった。また、GMからロータリーエンジンの供給を受け、同社初のFFとなる予定であったシボレー・ベガ英語版の発表を計画していたが、結局は旧来のレシプロエンジンを使ったFRレイアウトへの変更を余儀なくされた。
  • 農業用トラクターなどで知られるジョンディアは、米軍部のマルチフューエルエンジン化構想に応えたロータリーエンジンを完成させ、海兵隊車両に採用された。
  • ロールス・ロイスが、低圧高圧二段構成のロータリーディーゼルエンジンR6を試作している。
  • ソビエト-ロシアの企業も2000年ごろまで幅広い車種でロータリーエンジン搭載車を量産していた。ソビエト連邦は国家政策の一環として国営のVAZに命じてロータリーエンジンの製作を行わせていた。ソ連の一般庶民には現在の基準から見れば比較的低性能なレシプロエンジンの車体しか販売されなかった為、安価に高出力を出せるロータリーエンジンはKGBを始めとする官公庁向けの車両や高級官僚・軍人向けに販売される高性能車両にはうってつけだったのである。ソ連製のロータリーエンジンはNSU系の1ローター辺り654ccのロータリーエンジンを参考にNSUやマツダへのライセンス契約を締結しない形で製造されたといわれ(道義的にはともかく違法ではない)、そのバリエーションはマツダ製のロータリーエンジンに劣らないもので、市販車両には1ローターから3ローターエンジンまでが存在し、試作エンジンには4ローターエンジンも存在した。市販車両では合計8車種に搭載され、エンジンの種類は試作も含めると20種類に達するという。最高出力も燃料供給装置の幾多の改良を経て、航空機向けに開発された2ローターの最終型VAZ-416ロシア語版は180馬力から206馬力、3ローターの最終型VAZ-426ロシア語版は270馬力、試作4ローターエンジンのVAZ-526ロシア語版は400馬力に達していたという。1974年から製造が開始され、ソ連が崩壊しロシア連邦となった後も2002年頃までロータリーエンジン車が販売されたとされているが、その総生産台数やエンジン設計の全容などの情報は、現在も存続するメーカー自体もあまり積極的に公表したがらない事情もあり、冷戦終結後の現在でも英語圏の西側諸国にはあまり伝わっていない。ただし、ロシアのエンスージアストの間ではチューニングカーのベース車両としてある程度の知名度はあるようで、NAチューンやターボ取り付けなどの改造が施されたVAZ製ロータリー車の走行映像がYoutubeなどに数多く投稿されている[4]

ロータリーエンジン搭載のスポーツカーは一部の人々には根強い支持があり、年に一度ロサンジェルス郊外のMazda R&Dで開催されるセブンストック英語版と呼ばれるロータリーカーユーザーのイベントには、全米から数千人規模のユーザーが集まる。

マツダ[編集]

マツダは市販車両で2ローターと3ローターを投入し、レースでは4ローターまでのエンジンを手掛けた。マツダがフォードの傘下に入り、2002年に当時唯一のロータリーエンジン搭載市販車RX-7を、排出ガス規制不適合により生産停止することが決定し、これでロータリーエンジンの歴史が途切れてしまうという懸念が愛好家や関係者に広がったが、マツダはロータリーエンジン搭載車の製作存続をフォードに強く主張し、それが認められ燃費を改善した4ドアスポーツカーであるRX-8を発売した。

より排気量の大きな16Xと呼ばれるプロトタイプエンジンを製作し、第40回東京モーターショーにこのエンジンを搭載したコンセプトカー「大気(たいき)」を展示した[5]が、それを搭載した車両は発売されていない。

1991年のHR-X以来、水素を燃料とする水素ロータリーエンジンを開発している[6]。2004年10月にはRX-8をベースにした車両が[7]、2008年にはプレマシー[8]をベースにした車両がナンバーを取得している。

2012年6月にRX-8を生産終了>[9]。市販車からロータリー車が消滅した。

レンジエクステンダー
RX-8の販売終了時に、マツダの社長より、レンジエクステンダーシステム(電気自動車の発電用)や水素ロータリーエンジンとして活用することを発表[10][11][12][9]。2013年12月に、デミオEVにレンジエクステンダーシステムを搭載した試作車を報道陣に公開した[13]
アウディ[編集]

ロータリーエンジンの元祖NSUを吸収合併したアウディは、2010年ジュネーブモーターショーにおいてコンセプトカー「アウディ・A1 e-tron」を発表した[14]。これは、ロータリーエンジンを発電機専用に使用したシリーズ・ハイブリッド(レンジエクステンダー付きEV)である。

オートバイ[編集]

ハーキュレス・W2000のDKW製1ローターエンジン
  • 1970年にドイツのDKWがハーキュレスW2000をドイツIFMAモーターサイクルショーで発表。1973年に限定生産、1974年に量産を開始し、1,800台程度を販売したとされる。W2000は世界初のロータリーエンジン搭載オートバイだった。エンジンはザックスが開発したものがベースとなっており、ザックスはロータリーエンジンの製造を取りやめたあと関連機材をノートンに売却している。
  • 1972年の第19回東京モーターショーヤマハがヤンマーディーゼル(現・ヤンマー)とのジョイントで開発したロータリーエンジンを搭載したプロトタイプRZ-201を出展するが、オイルショックの影響等により市販を断念し試作のみに終わる。排気量は330cc×2ローター。
  • 1975年-76年 スズキが単独でハウジングのメッキ技術を含む開発を行い、ロータリーエンジン搭載のRE-5を販売(輸出専用車)。レシプロエンジンに比べ、排気管周りの発熱は数段大きかった。オイルショックと重なり、少数の生産のみにとどまったが、約6,000台を生産した。米国からのバックオーダーは2万台であったという。型式はRE5Mが初期型で最終型はRE5A。M型はジョルジェット・ジウジアーロのデザインでつとに有名。当時、次期RE5の計画試作が始まっており、そのほか、汎用小型ロータリーエンジンもすでに試作を終えていた。
  • イギリスノートン1970年代にロータリーエンジンの開発に乗り出し、1981年警察インターポール2インターポールの名を持つが、用途はいわゆる白バイである)を手始めに、一般向けのクラシック、コマンダー、F1、F1スポーツ、競技用のRC588、RCW588、NRS588などの水冷2ローターエンジン搭載のオートバイを1992年まで生産していた。うちTT-F1に出場させたものはマツダの技術協力を得ている。2009年、ノートンの経営主体の変更により、ロータリーエンジン搭載マシンの開発も復活し、レース用のNRV-588とその公道版の開発が進められている。
  • オランダのバンビーンも水冷2ローターのOCR1000を少数ながら生産していた。

航空機[編集]

シュライハー ASH 26 用のパワープラント。
左上から反時計回りに、プロペラハブ、ベルトガイド付きのマストラジエーター、バンケルロータリーエンジン、マフラーカバー。

大手グライダー製造メーカーであるドイツアレキサンダー・シュライハー社は、自力で離陸できる動力格納式のモーターグライダーである、オープンクラスアレキサンダー・シュライハー ASH 25英語版、18mクラスアレキサンダー・シュライハー ASH 26英語版や、2004年に初飛行したベストセラー練習機アレキサンダー・シュライハー ASK 21を基にしたASK21 Mi に、従来の空冷2サイクルエンジンではなくシングルローターのヴァンケルロータリーエンジンを搭載している。これは、もともとノートンのオートバイ用であったものを、オーストリアダイアモンド・エアクラフト英語版グループのダイアモンドエンジン社が改良、発展させたものである。小型高出力なので採用されている。

Moller社ではポール・モラー英語版がFreedom Motorsのロータリーエンジンを使用したスカイカーを製作している。最新型のMoller M400は4人乗りで最高時速350マイル(約560km/h)、2ローターエンジンが四隅に計8個のロータリーエンジンを搭載している。機体をハリアー戦闘機のように垂直方向への離陸が可能である(VTOL)。飛行機やヘリコプターなどとはあくまで一線を画しており、スカイカーはあくまで自動車のように、コンピューター制御で庶民の誰もが運転できるような手軽な交通手段としての普及を目指している。現在は競売価格で4億円程度と高額だが、大量生産が始まれば、近い未来には10万ドル以内(1,000万円程度)での販売を視野に入れている。一人乗りのMoller M200Gは円盤型である。

シコルスキーでは、無人実験機・サイファーの動力にバンケルロータリーエンジンを用いている。

補助動力装置 ( APU ) に採用例があるが、これはオクタン価の低い燃料でも稼動する特性を生かした好例である。またホームビルト機でも、マツダのロータリーエンジンを搭載する例がある。

模型飛行機
ヘリコプターをはじめとした模型飛行機用の超小型ロータリーエンジンが市販されている。現在入手可能なものでは、日東工作所から工程体積11.97ccのモデルNR-12H』、NR-12P、OSエンジンブランドで有名な小川精機が、工程体積4.97ccのモデル49-PI TypeIIを製造販売中である。Max18,000rpm 1.1馬力。初期はサイドポート吸気であったが現在はペリフェラルポート吸気に変更されている。

船舶[編集]

モーターボート
マツダの自動車用エンジンをベースとしたエンジンがモーターボートで使用されている。2011年にタイソン・ガーヴィンによって、パワーボート用として4ローターエンジンを3つ並列に配置した総排気量15,724ccの12ローターエンジンが開発されている[15]
船舶用船外機
1975年にヤンマーディーゼルが船舶用船外機として、1ローターのRM28と2ローターのRM58を発売した。

汎用動力[編集]

チェーンソー
チェーンソー用としては、1970年代にヤンマーディーゼル(現・ヤンマー)が開発した経緯がある。当時の林業労働者に、チェーンソーによる振動により極度の血行不良が発生するなどの労働災害(白蝋病)が頻発したため、振動の少ないチェーンソー用のエンジンの開発が急務とされていた。行き着いた先がロータリーエンジンである。開発は進み搭載するメドは立ったが、持ち運びが不便なほど大型であったこと、トルクが薄かったことから次第に敬遠され、普及するに至らなかった。

コジェネレーションシステム[編集]

分散型の熱電供給システムであるコジェネレーションシステムの動力源として、コンパクトで低騒音、低振動という特徴からロータリーエンジンが注目されている。

2002年に広島ガス、2003年に中国電力マツダの自動車用ロータリーエンジンを組み込んだシステムを試作、LPガスを燃料として実証試験を行っている。

元マツダの技術者である室木巧は、層状給気燃焼方式を採用したロータリーエンジン(DISC-RE)でコージェネレーションシステムの研究をしているが、自著で自動車に使うには研究が足りないと記している。

超小型発電機[編集]

カリフォルニア大学バークレー校のMEMSのロータリーエンジン研究室はローター径1mm以下、容積0.1cc未満のバンケルロータリー型発電機を開発している。ローターに組み込まれた磁石で発電するが、現在は外部からの圧縮空気で動いている段階。目標は100mWを供給する内燃機関の開発という。

マツダのロータリーエンジン[編集]

開発史[編集]

マツダ初のロータリーエンジン
(マツダミュージアム、2005年2月撮影)

昭和34年(1959年)、西ドイツ(当時)のNSUフェリクス・ヴァンケルと共にロータリーエンジンを試験開発したと発表した。日本では、昭和40年(1965年)の乗用車輸入自由化に向け、通商産業省主導による自動車業界再編が噂されていた。後発メーカーである東洋工業はその波に飲み込まれ、統合・合併の危機が迫っていた。「技術は永遠に革新である」をモットーとする当時の松田恒次社長は事態打開を目指し、昭和35年(1960年)にNSUと技術提携の仮調印を行った。契約に際してNSUから提示された条件は以下のようなものだった。

  1. 10年で契約金は2億8,000万円(当時の従業員8,000人分の給与に相当)
  2. 東洋工業が取得した特許は無条件でNSUに提供
  3. ロータリーエンジン搭載車販売については、1台ごとにNSUへのロイヤリティーが発生

あまりにも一方的な内容であった。 しかもNSUから送られてきた試作エンジンは、とんでもない欠陥を残したままの未完成品ともいうべきものだった。アイドリング時の激しい振動、オイルの過大な消費、それによるおびただしい白煙、さらにチャターマークローターハウジング内壁に波状磨耗を起こす致命的なトラブル)によって40時間程でエンジンが停止。ロータリーエンジンは試験開発には成功したものの、とても実用化できるレベルのものではなかったのである。

こうして東洋工業は次世代エンジンとされたロータリーエンジンの開発・実用化という社運を賭けた挑戦を行うこととなった。山本健一を筆頭とするロータリーエンジン研究部(平均年齢25歳。のちにロータリー四十七士と称される。)がその任にあたった。

しかし開発は困難を極めた。業界内ではロータリーエンジンに対する様々な批判・悪評が飛び交い、それは社内にも広がった。それでも途方もない時間、労力、資金、そして情熱を費やして開発は続けられた。大きな問題は3つあった。

ロータリーエンジンの特徴的な劣化状態である、メインハウジングのチャターマーク。黎明期には悪魔の爪痕と呼ばれ、開発者から恐れられた。
マツダ13Bエンジンのキー(左)とローターアペックス(頂点)シール
写真は12万キロ走行後のもの
チャターマーク
ローターハウジング内壁が異常磨耗する問題はアペックスシールの共振が原因であることが判った。一方アペックスシールとローターハウジングは、レシプロエンジンのピストンスピードよりも速い速度で接触するので強度や耐摩耗性も求められた。牛骨までがテストされたが好ましいアペックスシールの開発は困難を極めた。アペックスシールにクロス状に穴を開けて中空構造にした(クロス・ホロー加工)ところ、共振が分散されてチャターマークが発生しないことが判明したが市販化には適さなかった。カーボン(黒鉛)では強度が足りなかった。松田恒次社長(当時)は日本カーボンのパイロリテックグラファイト(PG)が通常黒鉛の10倍の引張り強さがある事を知り、日本カーボンに提供を申し込んだがパイロリテックグラファイトには劈開性があったために適さなかった。最終的に日本カーボンと共同開発でアルミ合金のカーボン複合素材を新開発して使用することになった[16]。ローターハウジング内面には硬質クロームメッキを施して耐磨耗性を向上させた。
白煙
白煙はエンジンの燃焼室の気密性が悪いために、燃焼室にオイルが入り込んで発生していた。金属製のシールを2重に施しても白煙は解決できなかった。耐熱性の点で難しいだろうと考えられたゴム製のオイルシールを試してみたところ、目的を達成できた。エンジン内部は考えられているほど高温ではなく、ゴム製のシールでも問題なかった。
低速トルク
NSUから送られてきた試作エンジンは吸気・排気ともペリフェラルポートであった。ペリフェラルポートは高回転・高出力には向いているがオーバーラップが非常に大きく、騒音・燃費・低速トルク・エンジン寿命の点では不利であった。サイドハウジングに吸気ポートを設けたサイドポートエンジンとすることで、これらの問題点を若干改善できた。

昭和38年(1963年)には第10回全日本自動車ショーに400×1ローター・400×2ローターの試作エンジンを展示。翌昭和39年(1964年)にはコスモスポーツのプロトタイプを展示した。この時、当時の松田社長が自らコスモスポーツのハンドルを握って広島から到着、帰路には各販売会社、メインバンクの住友銀行池田勇人首相などを訪問したというエピソードも残っている。昭和40年(1965年)、昭和41年(1966年)と続けて展示され、その間、試作車による10万kmに及ぶ連続耐久テストを含む、総距離300万kmにも達する走行テストが行われた。テストは各地のディーラーに委託されたコスモスポーツ60台により、1年の期間を費やして実施された。昭和42年(1967年)5月30日、コスモスポーツは満を持してついに発売となった。昭和36年(1961年)1月のロータリーエンジン試作1号機から、6年の歳月が流れていた。

1985年までに、ロータリーエンジンの研究に携わっていた各メーカーが開発した特許件数は

これに対してマツダの開発した特許は1302件にのぼる[17]

ところが、このエンジンの開発期における最大の問題点であり、かつ解決されたかに思われた部分が、後に短所として再び浮き彫りになる。

  1. バルブ制御で吸排気を行うレシプロエンジンに比べ、吸排気をローターによるポート開閉と負圧に頼ったロータリーエンジンは、極低速回転時では吸気の慣性に乏しく吸排気効率が上がらず、結果として燃費悪化・トルク不足をおこす。
  2. アペックス、サイド、コーナーと複数のガスシールの突合せで作動室を仕切っている関係上シール同士の接触部からの圧縮抜けが発生しやすく、シールおよびシール溝がすすやオイルスラッジで汚れると特に悪化する為、レシプロに比べこまめなメンテナンスが必要になる。
  3. エンジン内部や各シール(アペックスシール部、サイドシール部、ローターのサイドとインターミディエイトプレートの接触面)の潤滑のため、エンジンオイルをハウジング内へ注入している。そのためエンジンオイルは走行条件(主に高負荷領域の使用頻度)によっての差はあるものの、レシプロエンジンと比較すると減りが早い。そのため、エンジンオイル量低下時の警告機能がほとんどの車種で標準装備されている。
  4. レシプロエンジン、ディーゼルエンジンに比べ必要なメンテナンス頻度が高く、メンテナンスなしでの耐久性は非常に劣る。しかしながら、必要なメンテナンスを行っていれば、信頼性という点においてレシプロエンジンと比較しても遜色はない。

オイルショックによる原油価格高騰の影響で、NSUと提携した各社はロータリーエンジンの将来性を見限って開発から撤退、本家NSUもロータリーエンジン車生産を中止した。マツダは唯一市場に踏み止まった。RX-8のロータリエンジンでは、排気ポートをペリフェラルポートからサイドポートに変更して、従来からの燃費悪化要因のひとつであった吸排気のオーバーラップをなくして燃費向上を図っている。しかし、レシプロエンジンの燃費も向上しており、依然として燃費はロータリーエンジンの最大の弱点であることは変わっていない。また、排気ポートの変更によって、サイドシールの磨耗やススの付着といった新たな問題も発生した。

昭和48年(1973年)の排気ガス規制導入当初は、NOxを減らすための効果的な手段が見つかっていなかったが、マツダはREの低いNOx濃度を濃い空燃比(燃調)でさらに低減させ、それに伴う不完全燃焼により増加する排気ガス中のHCおよび一酸化炭素(CO)をサーマルリアクターにて再燃焼させて浄化しており、濃い燃調により実燃費がさらに悪化するという事態に陥っていた。のちにNOx、HC、COを同時に低減可能な三元触媒が開発・実用化され、サーマルリアクターを触媒に置き換えることで燃調を薄くできたため、燃費を向上させた。

機種[編集]

レネシスロータリーエンジン
(マツダミュージアム、2005年2月撮影)

マツダは「1970年代、車の主流はロータリーエンジンへ」というキャッチコピーを出すほど意気込んでいた為、新型の登場はその頃が多い。しかし、13A以外の物は新開発と言う訳ではなく、10Aをベースにローターやハウジングの厚みを増して排気量を上げたものである。そのためローターの三角形部分からの見た目や基本寸法は変わりない。

10A 491×2
世界初の2ローターロータリーエンジンとしてコスモスポーツに搭載された。また、ファミリアにもディチューン版が搭載されている。
  • 1967年 コスモスポーツに搭載
  • 1968年 ファミリアに搭載
  • 1971年 サバンナに搭載
  • 1973年 生産中止(排ガス規制対策のため12Aに集約)
12A 573×2
6PI仕様が12A-6PI、ターボ仕様が12A-T。RX-7(SA22C)等、当時のマツダ車に多数採用された。サーマルリアクター方式による再燃焼システムの改善を行い、40%もの燃費改善を果たした。その後、排ガス処理をサーマルリアクターから希薄燃焼と触媒による排ガス処理システムを採用して更に燃費改善を実施。
  • 1970年 カペラに搭載
  • 1972年 サバンナとルーチェに搭載、ルーチェAPでサーマルリアクターのREAPS2販売開始。
  • 1973年 1975年規制適合のREAPS3販売開始
  • 1974年 燃費20%改善のREAPS4に切替
  • 1975年 1976年規制適合で燃費40%改善のREAPS5に切替
  • 1978年 サバンナRX-7に搭載、1978年規制適合
  • 1979年 サーマルリアクター方式から希薄燃焼+触媒の排ガス処理システムへ全面切替
  • 1981年 6PIへの全面切替に伴い生産中止
12A-6PI 573×2
現在の13B-MSPにも採用されている6PIを初めて採用。希薄燃焼と触媒による排ガス処理システムを採用してパワーと燃費の両立を図った。
  • 1981年 ルーチェ/コスモに搭載
  • 1982年 サバンナRX-7に搭載
  • 1985年 生産中止
12A-T 573×2
12A-6PIの後に登場したターボ付。EGIをREで初めて採用ものであるが6PIは採用されていない。排ガス処理システムは、希薄燃焼と触媒を採用。
  • 1982年 ルーチェ/コスモに搭載
  • 1983年 サバンナRX-7に搭載
  • 1984年 ターボをインパクトターボに変更
  • 1985年 生産中止
13A 655×2
ロータ幅は10Aと同じで偏心量を増やしてある。エンジン縦置きFFのルーチェにのみ搭載された。
13B 654×2
ルーチェや2代目コスモで採用。自然吸気エンジン。サーマルリアクター方式による再燃焼システムの改善を行い、40%もの燃費改善を果たした。その後、排ガス処理をサーマルリアクターから希薄燃焼と触媒による排ガス処理システムを採用して更に燃費改善を実施。
  • 1973年 1975年規制適合のREAPS3でルーチェに搭載
  • 1974年 燃費20%改善のREAPS4に切替
  • 1975年 1976年規制適合で燃費40%改善のREAPS5に切替
  • 1978年 コスモに搭載、1978年規制適合
  • 1979年 サーマルリアクター方式から希薄燃焼+触媒の排ガス処理システムへ全面切替
  • 1981年 生産中止
13B-SI 654×2
ルーチェや2代目コスモに搭載されたスーパーインジェクション仕様。希薄燃焼+触媒による排ガス処理システムを採用。
  • 1983年 ルーチェ/コスモに搭載
  • 1985年 日本国内販売中止。日本国外向けは、生産継続
  • 2002年 生産中止
13B-T 654×2
サバンナRX-7(FC3S)などに搭載されたターボ仕様。
  • 1985年 サバンナRX-7に搭載
  • 1985年 ルーチェに搭載
  • 1992年 生産中止
13B-REW 654×2
アンフィニRX-7(FD3S)やユーノスコスモに搭載された、シーケンシャルツインターボを採用。
  • 1990年 ユーノスコスモに搭載
  • 1991年 アンフィニRX-7に搭載
  • 2002年 生産中止
13B-MSP 654×2
吸排気共にサイドポートを採用した自然吸気エンジン。RX-8にのみ搭載されている。
13G 654×3
レース用3ローターエンジン。757に搭載された。市販版が20Bとなる。
20B-REW 654×3
20Bはユーノスコスモのみの採用であるため、20B-REWのみ。日本車初となるシーケンシャルツインターボを採用。
  • 1990年 ユーノスコスモに搭載
  • 1995年 生産中止
また、RX-7(FD3S)でSUPER GTに参戦しているRE雨宮はこの20Bを自然吸気化、ペリフェラルポート化して搭載している。厳密にいえば単純に自然吸気化したものではない。
13J 654×4
レース用4ローターエンジン。757Eに搭載された。
13J改 654×4
レース用4ローターエンジン。767に搭載された。
13J改改 654×4
レース用4ローターエンジン。2段切替の可変吸気システム搭載。767Bに搭載された。
R26B 654×4
ルマンで総合優勝した787Bに搭載された。3本の点火プラグや、リアルタイム可変吸気システムを備える。
3A 360×1
軽自動車の排気量が360ccだった頃に開発途中だった1ローターのエンジン。マツダミュージアムに展示されている。
15A 737×2
開発初期に作られた試作機。
16X 800×2
2007年東京モーターショーで世界初公開されたエンジン。マツダ自身が次世代RENESISと呼ぶ完全なる新開発のエンジンで、直噴化して燃費を向上させ、排気量を12A、13Bのように厚みを増して上げたものではなくトロコイド形状から見直し排気量を上げることでレシプロエンジンで言うロングストローク化を果たしている。また、アルミ製のサイドハウジングを採用している。
R20B 654×3
コンセプトモデル風籟に搭載された3ローターの自然吸気エンジン。E100(100%エタノール)で450PSを発揮する。

水素ロータリーエンジン[編集]

1990年代以降には水素ロータリーエンジンがマツダによって研究開発されている。水素燃料は再生可能エネルギーの一種であり、また燃料電池用の燃料としてのインフラ整備が課題に挙がっている。その水素燃料を容易に転用できる内燃機関のひとつとして、ロータリーエンジンは有望である。これはレシプロエンジンとの比較で、吸気室と燃焼室が分離している上に高温となる吸排気バルブもないため、吸入工程で異常着火(バックファイアー)が発生しないこと、また大径となる水素インジェクターを、燃焼にさらされずにすむ吸気室上部の広大な場所に設置できること、という構造上の利点があり、さらには水素は燃焼速度が速く、縦長の燃焼室形状という欠点が問題になりにくいという相性の良さもあるためである[18]。現時点では高純度の水素を必要とする燃料電池車などと比べても、はるかに現実的な解法である。また燃焼時のススが少ないためLPGCNGなどのガス燃料であれば、水素以外でもロータリーエンジンの方がレシプロエンジンよりも有利であるとされる。

ただし、LPGやCNGはともかく水素においてはインフラの整備にめどが立たないこと、水素の場合において、水素吸蔵合金を使用すれば車が重くなり、高圧水素タンクを使用すれば衝突時の爆発の危険があること、そのどちらにおいても航続距離が短距離に留まることなど、ロータリエンジンに限らず、水素を自動車用エネルギー源として使用する上で解決すべき課題はまだ多い。

ロータリーエンジン搭載車[編集]

世界初の2ローターロータリーエンジン車・マツダコスモスポーツ
Ro80のロータリーエンジン。史上初の2ローターエンジンでもあり、マツダ10Aのベースともなった。
メルセデス・ベンツ C111
GSビロトールとロータリーエンジン
バンビーン・OCR1000

日本[編集]

NSUの原設計をベースに、マツダにより開発・販売されたものが日本のみならず、世界でも最も著名である。2013年現在、市販されている車種は存在しないが、水素を燃料としたものの開発は継続されている。

ドイツ(西ドイツ)[編集]

ドイツはロータリー発祥の地ではあるが、市販に漕ぎ着けた車種は極僅かである。

フランス[編集]

ロシア(ソビエト連邦)[編集]

  • アフトヴァース(ラーダ)
    • ヴァース・2101シリーズ(VAZ 2101)
      • 21018 (2101にソ連初の70馬力1ローターエンジン「VAZ-311」を搭載)
      • 21019"アーカン" (2101にソ連初の120馬力2ローターエンジン「VAZ-411」を搭載)
    • ラーダ・リーヴァシリーズ(VAZ 2105)
      • 21059 (2105シリーズはソ連時代は毎年70万~100万台生産され、当時のソ連の自家用車の7割以上を占めていた旧ソ連の大衆車。21059は120馬力2ローターエンジンの「VAZ-411M」を搭載。後期型は140馬力2ローター「VAZ-413」へ換装)
      • 21079 (2107は2105の上級グレード。21079は120馬力2ローターエンジンの「VAZ-411-01」を搭載。後期型は140馬力2ローター「VAZ-4132」に換装)
    • ラーダ・サマーラシリーズ(VAZ 2108/2109/21099。共に2002年頃まで生産され、価格は56,300ルーブルであったという)
      • 2108-91 (3ドアハッチバック。2108に140馬力2ローターの「VAZ-415」を搭載。後期型は180馬力2ローター「VAZ-415i」に換装)
      • 2109-91 (5ドアハッチバック。2109に140馬力2ローターの「VAZ-415」を搭載。後期型は180馬力2ローター「VAZ-415i」に換装)
      • 21099-91 (4ドアセダン。2109に140馬力2ローターの「VAZ-415」を搭載。後期型は180馬力2ローター「VAZ-415i」に換装)
    • ラーダ・110シリーズ(VAZ 2110)
      • 2110-91 (4ドアセダン。2110に140馬力2ローターの「VAZ-415」を搭載。後期型は180馬力2ローター「VAZ-415i」に換装)
    • ラーダ・サマーラ2シリーズ(VAZ 2115)
      • 2115-91 (4ドアセダン。2115に140馬力2ローターの「VAZ-415」を搭載。後期型は180馬力2ローター「VAZ-415i」に換装)
    • VAZ 1111"オカ"(VAZ 1111は日本の軽自動車に相当するモデル。ロータリーエンジン車は45馬力1ローターの「VAZ-1182」を搭載)
  • GAZ - GAZはVAZよりロータリーエンジンの供給を受けてロータリーエンジン車を製造していた。
    • GAZ 24-10"ヴォルガ" (2ローター「VAZ-413」エンジン搭載のステーションワゴン)
    • GAZ 31028"ヴォルガ"(GAZ 3102シリーズのKGB及び警察用車両。220馬力3ローター「VAZ-431」エンジン搭載。生産期間は不明。一般販売向けには2ローター「VAZ-411-01」を搭載)
    • GAZ 14"チャイカ"(高級官僚及び共産党幹部専用のリムジン。220馬力3ローター「VAZ-431」エンジン搭載。生産期間は不明。)

オートバイ[編集]

  • ハーキュレス
    • W2000(世界初のRE搭載バイク)
  • スズキ
    • RE-5(日本初のRE搭載市販バイク、輸出専用車種)
  • バンビーン
    • OCR1000(米国のロックバンドブロンディのアルバムジャケットにもなった、伝説のロータリーエンジン搭載車)
  • ノートン
    • コマンダー(一時期、英国の警察車両としても採用されたバイク。パレードやVIP車両護衛など低速走行時の低振動性を認められたと言う)
    • F1(レース用バイクの公道版として1990年代初頭に販売された)
    • NRV-588/NRV-700(2006年にプロトタイプが完成したレース用バイク。公道版を市販する予定もある)

モータースポーツ[編集]

REは構成部品が圧倒的に少なく、特に組み付けと調整に多くの時間を要する動弁系を持たないことや、ジャーナルとキャップ間などのオイルクリアランスの管理箇所が少ないことで、オーバーホールの時間を大幅に短縮でき、レースユースには非常に適している。ローコストで高性能が得られることから、多くのプライベーターの支持を受け、1970年代以降の日本のモータースポーツ界を支えたが、1992年頃よりマツダがレースから完全撤退してしまい、マツダスピードも形骸化(後に解散)してしまった為、日本国外の現地資本によるワークス活動を除き、ロータリーでプロレベルのレース活動をすることは非常に困難になっている。

極少数ではあるがマツダスピードから3プラグサイドポートハウジングと、ペリ吸気ハウジングが発売されていた。

RE雨宮SUPER GTで走らせていたFD3Sに搭載されていたNAバージョンの20B型エンジンは、中古車であるユーノスコスモのエンジンである20Bを基にしたものである。

ワンオフ品[編集]

その簡単な構造により、十分な知識、部品およびツールさえあれば、個人でのエンジンの分解・組み立てさえも可能である。また、2ローター以上のロータリーエンジンは、左右と中央のハウジングに挟まれたローターが直列に配置された構造を採るため、レシプロエンジンのクランクシャフトに相当するエキセントリックシャフトの新造さえできれば、個人でも市販エンジンの部品を組み合わせて1ローターや4ローター以上のエンジンを製作する事も可能である。1ローターは日本のRE雨宮マツダ・シャンテの改造用に製作したものが著名であり、海外では2013年現在、自動車向けではニュージーランドのエンジンビルダーが試作した6ローター[19]が発表されている。

REは構造が積み木に近いため、エキセントリックシャフトさえワンオフで制作できれば1ローターの6.5B(13Bハウジングを使った1ローター)や、24A(スクートスポーツがデモカーに搭載している、12Aハウジングを使った4ローター。スクートスポーツやマジックは13Bハウジングを使用した4ローターも製造販売している。こちらは上記のレース用エンジンと同じR26Bという形式名が付けられている)など、様々な物を制作可能である。

同様の構造を持つもの[編集]

空気圧縮機[編集]

外部からの動力で働くバンケルロータリー構造の圧縮機である。レシプロ式に比べ振動、騒音が低いことが特徴。

過給機[編集]

バンケルロータリー構造を内燃機関用スーパーチャージャーに応用したもの。実験は行われたが、十分な過給効果を得るためには、ロータリーエンジンの2倍ほどの大きさのハウジングが必要となるため、実用化はされていない。

油圧モーター[編集]

油圧モーターの中で、油圧ショベル駆動輪などに用いられているものはバンケルロータリー構造のものが多い。

乗用車用シートベルト[編集]

奇抜なものとしてシートベルトプリテンショナーがある[20]。メルセデスベンツでいくつかの車種に使用されている[21]。これらの自動車では衝撃を感知すると電気的に小型のガス発生器に点火されて作動して減圧されたガスが小型のヴァンケルロータリーエンジンに供給されてシートベルトを巻き上げる[22]

ロータリー熱エンジン(RHE)[編集]

ランキンサイクルによって作動する外燃・外熱バンケルロータリーエンジン。各種プラント排熱を、機械エネルギーとして、また、発電機との組み合わせで電力として回収するために用いられる。

沸点の低いアンモニアエタノールを作動流体とすることで、従来利用されることのなかった(捨てられていた)、温度域が40℃ - 150℃程度の排熱からでも動力を取り出せる[23]

その他[編集]

1967年英国センチュリー21プロダクション製作のSF特撮人形劇キャプテン・スカーレット」に登場する追跡戦闘車(S.P.V. Spectrum Pursuit Vehicle)は、前後に8ローターのロータリー・エンジンを搭載という設定になっている。

脚注[編集]

  1. ^ 自動車税-京都府ホームページ
  2. ^ 例えばRX-7のエンジンは1308ccだが、書類上は654×2×1.5=1962ccとして計算されるため、1.5L以上2.0L未満の車と同じ額が課税される。また、この1.5を俗に「ロータリー係数」と言うが、正式名称ではない。
  3. ^ 『モーターファン・イラストレーテッド Vol.19 ロータリーエンジン ― 基礎知識とその未来 ―』P.030-P.031(三栄書房、ISBN 978-4-7796-0403-4)を参考とした。
  4. ^ lada wankel - YouTube
  5. ^ ニュースリリース『新型「マツダアテンザ」「マツダ大気(たいき)」を第40回東京モーターショーに出品』
  6. ^ 水素とロータリーエンジン - マツダ
  7. ^ マツダ(株)、RX-8水素ロータリーエンジン車の公道走行を開始 - マツダ 2004年10月27日
  8. ^ 『マツダ プレマシー ハイドロジェンREハイブリッド』の国土交通大臣認定を取得 - 2008年6月20日
  9. ^ a b マツダ、RX-8の生産を終了…最終モデルがラインオフ - レスポンス 2012年6月27日
  10. ^ 電気自動車の発電にRE活用 - 中国新聞 2012年6月6日
  11. ^ 電気自動車の発電にRE活用 - 47NEWS 2012年6月6日
  12. ^ 水素ロータリーエンジン発電 EVリースへ - 東京新聞 2012年6月6日
  13. ^ マツダ、EV航続距離延長にロータリーエンジン活用 - 日本経済新聞 2013年12月20日
  14. ^ [1]
  15. ^ 驚異の12ロータリー・エンジン。2400馬力。ただしボート用。- http://mazdafan.com
  16. ^ 6回目の未年との遭遇 日本カーボン会長・石川敏功(随想)1991.01.21 化学工業日報 1頁 写有(全1,892字)
  17. ^ 詳細な経緯についてはNHKプロジェクトX〜挑戦者たち〜』を参照
  18. ^ 『モーターファン・イラストレーテッド Vol.19 ロータリーエンジン ― 基礎知識とその未来 ―』P.036-P.039(三栄書房、ISBN 978-4-7796-0403-4)2008年時点の公道走行車両用水素エンジン同士での比較もされており、マツダ・13Bロータリー(2ローター1308cc)109ps/14.3kgmに対し、BMW・レシプロ(V型12気筒5972㏄)260ps/39.8kgm。排気量比で約1:4.6、出力比で約1:2.4である。
  19. ^ 【ビデオ】これが世界初の6ローターロータリーエンジン! - autoblog.com
  20. ^ TRW Wankel pre-tensioner system
  21. ^ Mercedes-Benz. “Occupant Safety Systems”. pp. 11-12. 2007年12月31日閲覧。
  22. ^ Charles E. Steffens, Jr. “Seat belt pretensioner”. 2007年4月11日閲覧。
  23. ^ ロータリー熱エンジン (RHE) - 株式会社 ダ・ビンチ

関連項目[編集]

外部リンク[編集]