ロータリーエンジン

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2005年2月撮影ロータリーエンジンのローター、マツダミュージアム

ロータリーエンジン(英語ではWankel engine)は、ピストンの代わりにローター(回転子)を用いたオットーサイクルエンジンである。ドイツの技術者フェリクス・ヴァンケルが発明した。日本国内では度々REと略記される。

熱機関としての動作は、ピストンがローターに置き換わった事を除けば、通常のピストンエンジン(レシプロエンジン)と同等である。

なお、日本での「ヴェンケルエンジン」の呼称は、東洋工業(現・マツダ)が命名した「ロータリーエンジン」が一般的となっているが、英語でrotary engineというときは、エンジン本体がプロペラとともに回転する構造の航空機用レシプロエンジン(回転式エンジン)を指すことがほとんどであり、日本語でも航空用語としても用いる場合はそちらを意味することが多い。

しかしヴェンケルエンジン(本項のロータリーエンジン)が航空機に用いられている例もあり、文章や論文で用いたり、また表記されていたときには、混同しないよう注意が必要である。

化石燃料の次世代内燃エンジンとして期待される、燃料に水素を使ったものに関しては水素ロータリーエンジンも参照。

目次

[編集] 形状、動作

[編集] 概要

そのシリンダ(ローターハウジング)の側面は2ノードのペリトロコイド曲線というまゆ型である。ピストン相当のものはローターと呼ばれ、シリンダに内接する3葉の内包絡線という三角おむすびルーローの三角形)をしている。ローターは芯のずれた軸(エキセントリックシャフト、右図中心の白い部分で軸は回転中のB)に取り付けられ自由に回転するようになっている。その回転を制御するためエキセントリックシャフトの回りでサイドハウジングに固定され回らない歯車(茶色)の回りをローターの内歯がかみ合うようになっている。出力はエキセントリックシャフトがクランクとして動作することで取り出される。ローターの1回転で4サイクルの工程が3組進行し、エキセントリックシャフトは3回転する。

なお、エンジン内のローターは、その形状から三角おにぎりの愛称で呼ばれる事もある。

ちなみに、ロータリーエンジンはエンジンのシステム上ではピストンバルブ式の2ストロークエンジンに近い仕様で、エンジン特性も4ストロークエンジンよりも2ストロークエンジンに近いものとなっている(詳細は下記の項目を参照)。

[編集] ポート(吸・排気口)形状

一般的なものから挙げる。

サイドポート
サイドハウジング(右上図断面部)にポートが設置される。最も一般的で、低回転向きである。RX-8に搭載されるRENESISでは、吸排気共にサイドポートとなるが燃焼ガスの流動方向(=ローターがガスを押し出す方向)と排気口の方向が異なるため、熱だまりによるススが発生しやすい。
ペリフェラルポート
ローターハウジング辺面に設置される(右上図の通り)。吸排気効率に優れ高回転向きであるが、ローターの頂点がポートを通過するとき、となり合う燃焼室とつながって吹き抜けを起こす(レシプロエンジンでのオーバーラップ)性質があり、結果として排出ガス値や燃費の悪化を招く。吸気ポートでは主にレーシングエンジンに採用され、RX-7(FD3S)までの市販車では排気ポートのみに採用された。
また、吸排気共にペリフェラルポートにすると排気音が超爆音になってしまうこともあり、騒音規制に適合させることが難しい。そのため競技専用車に用いられる事が多い。
ブリッジポート
サイドポートの一種であるが、レース用エンジンの開発やチューニングなどで、出力の向上を目的としてポート径を拡大していくと、ついにはローター頂点であるアペックスシールの通過位置にポートがかかるようになる。その場合、アペックスシールの破損や脱落を防ぐ目的で、シールの通過位置のみにサイドハウジング内壁を残す手法を採る。残された部分がポートに橋をかけたように見えるのでブリッジポートと呼ばれる。サイドポート排気の場合もローターの頂点がポート上を通過するようになるので、オーバーラップ(吹き抜け)が発生する。
クロスポート / コンビネーションポート
サイドポートかブリッジポートとペリフェラルポートを組み合わせる。コスモスポーツのレーシング仕様エンジンで採用され、低回転でサイドポートのみ、高回転ではペリフェラルポートのみが動作するシーケンシャル方式になっている。この場合両者の長所を生かせるものとなる。
オギジュアリーポート
ブリッジポートとペリフェラルポートの中間。ブリッジポートの細長いポートを、さらにローターハウジングまで広げたもの。ブリッジポートよりさらに高回転高出力型になる。RX-8の250psモデルに搭載されているロータリーエンジンが純正採用している3番目の吸気ポートもこれに近いもので「オグジュアリーポート」と呼ばれる。

[編集] 構造上の利点と欠点

2005年2月撮影 マツダ初のロータリーエンジン、マツダミュージアム

極めてシンプルな構造のため、理論上は各部分の抵抗が少なく済み、レシプロエンジンに比べると以下のような特徴がある。

  1. 動弁系が不要
  2. 同出力のレシプロエンジンと比較すると、軽量かつコンパクト
  3. 同排気量のレシプロエンジンと比較すると、ハイパワー
  4. 振動、低騒音(機械騒音)
  5. ローターのフライホイール効果から、アクセルワークに対するレスポンス(ツキ)がやや悪く、特に回転落ちが遅い
  6. 極低回転域の燃焼安定性がやや悪い
  7. 排気ガスの成分として、窒素酸化物(NOx)が少ない。しかし未燃焼燃料の炭化水素(HC)が多い
  8. アンチノック性能が高い(水素燃料にも優位)
  9. 低オクタン燃料に強い(オイルショック時には、ガソリン:灯油 = 1:1で使用していたユーザーもいた)

特に4は往復運動回転運動に変換するのではなく、もともとが回転運動である本エンジンの構造に由来するものであり、当初は性能でもレシプロエンジンを大きく引き離して未来のエンジンと持て囃された。いわゆる、『モーターのようなフィールのエンジン』で、ロータリーエンジンの魅力のひとつである。

昭和48年(1973年)の排気ガス規制導入当初は、窒素酸化物を減らすための手段が見つかっていなかったため、マツダ以外の自動車メーカーも一斉にロータリーエンジンの実用化にむけて研究を行った。しかしながら、先に窒素酸化物の低減に有効な三元触媒が開発・実用化されたため、この優位性は消えてしまった。もっとも、マツダのREは当時サーマルリアクターで排気ガスを浄化しており燃費がさらに悪化するという事態に陥っていたため、マツダREにとっても三元触媒は燃費向上に大いに有利に働いた。

ところが、このエンジンの開発期における最大の問題点でありかつ解決されたかに思われた部分が、後に短所として再び浮き彫りになる。

  1. バルブ制御で吸排気を行うレシプロエンジンに比べ、吸排気をローターによるポート開閉と負圧に頼ったロータリーエンジンは、低速回転時では吸気の慣性に乏しく吸排気効率が上がらず、結果として燃費悪化・トルク不足をおこす。
  2. ローターとハウジングによって形成される燃焼室は、いびつな形のうえ広範囲を移動するため、ハウジング壁面を通して冷却水に熱を奪われやすく、熱効率面で不利。
  3. 熱効率が悪く、オイルや冷却水、排気ガスが高温になりやすい。そのため同出力のレプシロエンジンと比較して、大きなサイズの冷却装置が必要である。同様の理由でインジェクター・燃料ポンプ・燃料タンクも大型のものが必要で、エンジンとしては確かにコンパクトであるが、車体装備品一式としてみると、決して軽量でもコンパクトとも言い切れるものではなかった。

上記の理由から、効率面でレシプロエンジン勢に水をあけられる結果となった(特に低速回転時)。低速域でのトルク不足をターボチャージャー(シーケンシャルツインターボ)で補う事も行われ、出力向上は果たせたが、実用燃費はさらに悪化し、システムも肥大化・高額化・煩雑化した。

また燃費以外に、オイル消費や耐久性の面でもレシプロエンジンに比べて不利である。

  1. ローターのサイドとインターミディエイトプレートの接触面の潤滑のため、エンジンオイルをハウジング内へ注入している。ローターのサイドシールは、レシプロエンジンのピストンリングに比べオイルを掻き落とす量が少なく、そのためエンジンオイルは一定の割合で確実に減っていく。
  2. レシプロエンジンの寿命は、オイル管理などの日常のメンテナンスさえしっかりすればガソリンエンジンで15万km以上、ディーゼルエンジンで30万km以上耐えられるものが多い。それに対しロータリーエンジンはオイル管理に対する許容性が低く、マーケットでの平均寿命はレシプロエンジンに劣る(スポーツカーに多く搭載され、ハードな扱い方をされる事も一因である)。

ただし、構成部品が圧倒的に少なく、特に組み付けと調整に多くの時間を要する動弁系を持たないことや、ジャーナルとキャップ間などのオイルクリアランスの管理箇所が少ないことで、オーバーホールの時間を大幅に短縮でき、レースユースには非常に適している。ローコストで高性能が得られることから、多くのプライベーターの支持を受け、1970年代以降の日本のモータースポーツ界を支えたが、1992年頃よりマツダがレースから完全撤退してしまい、マツダスピードも形骸化(後に解散)してしまった為、海外の現地資本によるワークス活動を除き、ロータリーでプロレベルのレース活動をすることは非常に困難になっている。実際RE雨宮がSuper GTで走らせている、20BのN/Aバージョン搭載FD3S RX-7のエンジンについては「解体屋で20Bを探してきてオーバーホールした物」を使っている。ローターハウジングなどはまだ手に入るものの、エキセントリックシャフトが手に入らないため、この方法で調達するしかないのである。

2005年2月撮影 レネシスロータリーエンジン、マツダミュージアム
マツダ13Bエンジンのキー(左)とローターアペックス(頂点)シール
写真は12万キロ走行後のもの

その簡単な構造により、十分な知識、部品およびツールさえあれば、個人でのエンジンの分解・組み立てさえも可能である。しかし構造が簡単であるがゆえに改良の余地は少なく、さらに長期間の信頼性・耐久性においても、成熟の域に達しているレシプロエンジンには及ばなかった。

オイルショックによる原油価格高騰の影響で、NSUと提携した各社はロータリーエンジンの将来性を見限って開発から撤退、NSUを合併したフォルクスワーゲンもロータリーエンジン車生産を中止した。マツダは唯一市場に踏み止まったものの、同社でも現在では一部のスポーツカー専用のエンジンとなっており(燃費などの経済性よりも、物理特性や走行性能を重視した車種に搭載されている)、汎用性の限界についてはマツダ自身も熟知している。

マツダの最新作RX-8のロータリエンジンでは、排気ポートをペリフェラルポートからサイドポートに変更して、従来からの燃費悪化要因のひとつであった排気と吸気のオーバーラップをなくして燃費向上を図っている。しかしながらレシプロエンジンの燃費向上も進展しており、依然として燃費はロータリーエンジンの最大の弱点であることは変わっていない。また排気ポートの変更によって、サイドシールの磨耗やススの付着といった新たな問題も発生している。

海外では、RX-7(FD3S)などのエンジンを大排気量V8エンジンに交換してしまうショップも存在する。現代のレシプロエンジンはアルミ合金の多用により軽量化され、そのような大排気量のエンジンであっても、わずか+10キロ程度の重量増しかない。[要出典]しかもロータリーより燃費がよく、耐久性もあり、低回転域のトルクにも勝り、50:50の重量配分を保ったまま、ロータリーエンジン搭載時より速いタイムを記録することができる。このことからもRX-7のような極端なパッケージング(低車高、低いボンネット高、50:50の重量配分)であっても、レシプロエンジンで十分代用でき、ロータリーエンジンである必然性が無くなっていることが判り、残る存在価値としては、純粋に趣味性の領域の問題になっている。

ロータリーエンジンの重量であるが、主に熱膨張などの関係でアルミ合金などの軽量素材の利用が難しく、RX-8に搭載されるマツダ13B-MSPであってもアルミ合金素材の利用は一部分に留まっており、そのほとんどが重い鉄製である。ただ、それでもエンジン単体の重量は123Kgに過ぎず、エンジン重量あたりの馬力効率で考えた場合はいまだにレシプロエンジンに比べ高いレベル(0.49kg/ps)を維持している。とはいえ、BMW5シリーズ用V8エンジンが4.0L、370PSで202Kg(0.55kg/ps)、スバルインプレッサのEJ20が2Lターボ、280PSで150Kg(0.54kg/ps)などとその差が縮まってきているのも事実であり、軽量素材の利用に対し積極的な研究が続けられている。また冷却機器や吸気排気システムなどのパッケージで見た場合、もはやレシプロと比較して軽量とは断言できない。

その一方で、レシプロエンジン車をロータリーエンジンに換装するカスタム手法も存在する。

N/AロータリーについてはRX-8登場後でも趣味の領域止まりとなってしまっている。ただし、レシプロのような特別なチューニング無しでトップエンドまで一気に上昇する回転フィールは、今なお、大きな魅力である。

[編集] 水素ロータリーエンジン

1990年代以降には水素ロータリーエンジンがマツダによって研究開発されている。水素燃料は再生可能エネルギーの一種であり、また燃料電池用の燃料としてのインフラ整備が課題に挙がっている。その水素燃料を容易に転用できる内燃機関のひとつとして、ロータリーエンジンは有望である。これは吸気室と燃焼室が分離しているため吸入工程で異常着火(バックファイアー)が発生しないという構造上の特徴があるためで、現時点では燃料電池車などと比べてはるかに現実的な解法である。水素は燃焼速度が速く燃焼室形状が問題になりにくいという相性の良さもある。また、水素以外でもガス燃料であればロータリーエンジンの方が有利であるとされる。ただし水素を燃料として使用した場合はガソリンと比較して大幅な出力低下をきたす事(13Bロータリーエンジンの場合は僅か110馬力)、インフラの整備にめどが立たないこと、水素吸蔵合金を使用すれば車が重くなり、高圧水素タンクを使用すれば衝突時の爆発の危険があること、そのどちらにおいても航続距離が短距離に留まる事など、水素を燃料としても根本的なシール性の問題や熱効率の悪さというロータリーの欠点は引き続き存在する、などの多くの欠点があるのも事実である。

[編集] マツダによるロータリーエンジンの実用化

昭和34年(1959年)、西ドイツ(当時)のNSUフェリクス・ヴァンケルと共にロータリーエンジンを試験開発したと発表した。国内では、昭和40年(1965年)の乗用車輸入自由化に向け、通商産業省主導による自動車業界再編が噂されていた。後発メーカーである東洋工業はその波に飲み込まれ、統合・合併の危機が迫っていた。「技術は永遠に革新である」をモットーとする当時の松田恒次社長は事態打開を目指し、昭和35年(1960年)にNSUと技術提携の仮調印を行った。契約に際してNSUから提示された条件は以下のようなものだった。

  1. 10年で契約金は2億8000万円(当時の従業員8000人分の給与に相当)
  2. 東洋工業が取得した特許は無条件でNSUに提供
  3. ロータリーエンジン搭載車販売については、1台ごとにNSUへのロイヤリティーが発生

あまりにも一方的な内容であった。 しかもNSUから送られてきた試作エンジンは、とんでもない欠陥を残したままの未完成品ともいうべきものだった。アイドリング時の激しい振動、おびただしい白煙、オイルの過大な消費、さらにチャターマークローターハウジング内壁に波状磨耗を起こす致命的なトラブル)によって40時間でエンジンが停止。ロータリーエンジンは試験開発には成功したものの、とても実用化できるレベルのものではなかったのである。

こうして東洋工業は次世代エンジンとされたロータリーエンジンの開発・実用化という社運を賭けた挑戦を行うこととなった。山本健一を筆頭とするロータリーエンジン研究部(平均年齢25歳。のちにロータリー47士と称される。)がその任にあたった。

しかし開発は困難を極めた。業界内ではロータリーエンジンに対する様々な批判・悪評が飛び交い、それは社内にすら広がった。それでも途方もない時間、労力、資金、そして情熱を費やして開発は続けられた。アペックス・シールへのクロス・ホロー加工、ゴムのオイルシール、アルミニウムカーバイド炭素アルミニウムの化合物)を材料とするアペックス・シール、ローターハウジング内面への硬質クロームメッキなどの新技術によって、連続稼動時間は200時間、400時間と増していった。

昭和38年(1963年)には第10回全日本自動車ショーに400×1ローター・400×2ローターの試作エンジンを展示。翌昭和39年(1964年)にはコスモスポーツプロトタイプを展示した。この時、当時の松田社長が自らコスモスポーツのハンドルを握って広島から到着、帰路には各販売会社、メインバンクの住友銀行池田勇人首相などを訪問したというエピソードも残っている。

昭和40年(1965年)、昭和41年(1966年)と続けて展示され、その間、試作車による10万kmに及ぶ連続耐久テストを含む、総距離300万kmにも達する走行テストが行われた。テストは各地のディーラーに委託されたコスモスポーツ60台により、1年の期間を費やして実施された。

昭和42年(1967年)5月30日、コスモスポーツは満を持してついに発売となった。昭和36年(1961年)1月のロータリーエンジン試作1号機から、6年の歳月が流れていた。

1985年までに、ロータリーエンジンの研究に携わっていた各メーカーが開発した特許件数は

これに対してマツダの開発した特許は1302件にのぼる。

(この間の詳細な経緯についてはNHKプロジェクトX〜挑戦者たち〜』を参照されたい)

[編集] 自動車用

自動車用としてはNSUバンケルタイプが唯一実用化されている。 その後NSUに続いて東洋工業(現・マツダ)が量産化に成功し、コスモスポーツに搭載した。他にもシトロエンなどが生産モデルに搭載しているが、1970年代以降も量産を続けたのはマツダのみである。

日産自動車も1970年代前半に開発途中であったが、東京モーターショーにロータリーエンジンを搭載したサニーを参考出品し、2代目シルビアはロータリーエンジンを搭載する事を前提に市販間近といわれていた。しかし、1973年に起きた第一次オイルショックに見舞われ、省エネルギー志向の社会情勢には燃費性能が良くないロータリーエンジンは相応しくないとの理由で、結局は市販には至らなかった。

2005年2月撮影 ユーノスコスモ用3ローターエンジン(市販車世界初のシーケンシャルツインターボ搭載)、マツダミュージアム

トヨタでは、純粋な技術研究としてロータリーエンジンを研究してはいるが、市販の計画は全く無い。

ダイムラー・ベンツ(現ダイムラー)も1960年代からロータリーエンジンの研究を開始、ミッドシップに4ローターロータリーエンジンを搭載したC111をジュネーブ・モーターショーで発表したが耐久性の面で問題が生じ、ついに市販されることはなかった。

シボレーも1973年にミッドシップに2ローター/4ローターを搭載するコルベットを発表したが、オイルショック直後だったため、市販されることはなかった。また、GMからロータリーエンジンの供給を受け、同社初のFFとなる予定であったシボレーベガを旧来のレシプロエンジンを使ったFRレイアウトへの変更を余儀なくされた。

農業用トラクターなどで知られるジョンディアー ( Deere & Company ) は、米軍部のマルチフューエルエンジン化構想に応えたロータリーエンジンを完成させ、海兵隊車両に採用された。

日本における自動車税課税時の排気量区分は「単室容積×ローター数×1.5」として換算される(この1.5を俗に「ロータリー係数」と言うが、正式名称ではない)。そのため、例えばRX-7のエンジンは1308ccだが、書類上は1308×1.5=1962ccとして計算されるため、1.5L以上2.0L未満の車と同じ額が課税される。

カーレースにおいては、レースの種類によって排気量の換算方法が異なる(F1などのように、使用を認められない場合もある)。

[編集] マツダ

マツダがフォードの傘下に入り、2002年に当時唯一のロータリーエンジン搭載市販車RX-7の排出ガス規制不適合により生産停止が決定され、これでロータリーエンジンの歴史が途切れてしまうという懸念が愛好家や関係者に広がったが、マツダはロータリーエンジン搭載車の製作存続をフォードに強く主張し、それが認められRX-8を発表した。

[編集] 今後

2007年3月22日、マツダウェブサイト内のニュースリリースにおいて、「サスティナブル”Zoom-Zoom”宣言」を発表し、2010年代初頭に性能を大幅に改善させた新型ロータリーエンジンを市場導入する計画があることを明らかにした。[1]。 また同年10月2日のニュースリリースでは第40回東京モーターショーに次世代 RENESIS (ロータリーエンジン16X)、およびこのエンジンを搭載したコンセプトカー「大気(たいき)」を展示すると発表している[2]

ロータリーエンジン搭載のスポーツカーは一部の人々には根強い支持があり、年に一度ロサンジェルス郊外のMazda R&Dで開催される「セブンストックSevenstock)」と呼ばれるロータリーカーユーザーのイベントには、全米から数千人規模のユーザーが集まる。

[編集] 自動車以外の用途

[編集] オートバイ

ノートン・インターポール2 試作車
バンビーン・OCR1000

1975年 ヤマハ発動機ヤンマーと共同開発によるロータリーエンジン搭載のRZ201を試作するも量産に至らず。

1975年-76年 スズキが単独でハウジングのメッキ技術を含む開発を行い、ロータリーエンジン搭載のRE-5を販売(輸出専用車)。レシプロエンジンに比べ、排気管周りの発熱は数段大きかった。オイルショックと重なり、少数の生産のみにとどまったが、約6000台を生産した。米国からのバックオーダーは2万台であったという。型式はRE5Mが初期型で最終型はRE5A。M型はジョルジェット・ジウジアーロのデザインでつとに有名。当時、次期RE5の計画試作が始まっており、そのほか、汎用小型ロータリーエンジンもすでに試作を終えていた。

イギリスノートン1970年代にロータリーエンジンの開発に乗り出し、1981年警察用インターポール2(インターポールの名を持つが、用途はいわゆる白バイである)を手始めに、一般向けのクラシック、コマンダー、F1、F1スポーツ、競技用のRC588、RCW588、NRS588などの水冷2ローターエンジン搭載のオートバイを1992年まで生産していた。うちTT-F1に出場させたものはマツダの技術協力を得ている。

オランダのバンビーンも水冷2ローターのOCR1000を少数ながら生産していた。

[編集] 汎用動力

[編集] チェーンソー

チェーンソー用としては、1970年代にヤンマー(当時:ヤンマーディーゼル)が開発した経緯がある。

当時の林業労働者に、チェーンソーによる振動により極度の血行不良が発生するなどの労働災害(白蝋病)が頻発したため、振動の少ないチェーンソー用のエンジンの開発が急務とされていた。行き着いた先がロータリーエンジンである。

開発は進み搭載するメドは立ったが、持ち運びが不便なほど大型であったこと、トルクが薄かったことから次第に敬遠され、普及するに至らなかった。

[編集] スノーモビル

[編集] 水上オートバイ

[編集] 航空機

シュライハー ASH 26 用のパワープラント。
左上から反時計回りに、プロペラハブ、ベルトガイド付きのマストラジエター、バンケルロータリーエンジン、マフラーカバー。

大手グライダー製造メーカーであるドイツのアレキサンダー シュライハー社(Alexander Schleicher)は、自力で離陸できる動力格納式のモーターグライダーである、オープンクラスASH25 Mi、18mクラスASH 26 Eや、2004年に初飛行したベストセラー練習機ASK21を基にしたASK21 Mi に、従来の空冷2サイクルエンジンではなくシングルローターのヴァンケルロータリーエンジンを搭載している。これは、もともとノートンのオートバイ用であったものを、オーストリアダイアモンド・エアクラフト・インダストリーグループのダイアモンドエンジン社が改良、発展させたものである。小型高出力なので採用されている。

Moller社ではポール・モラー(Paul Moller)氏がFreedom Motorsのロータリーエンジンを使用したスカイカーを製作している。 最新型のMoller M400は4人乗りで最高時速350マイル(約560km)、2ローターエンジンが四隅に計8個のロータリーエンジンを搭載している。機体をハリアー戦闘機のように垂直方向への離陸が可能である(VTOL)。飛行機やヘリコプターなどとはあくまで一線を画しており、スカイカーはあくまで自動車のように、コンピューター制御で庶民の誰もが運転できるような手軽な交通手段としての普及を目指している。現在は競売価格で4億円程度と高額だが、大量生産が始まれば、近い未来には10万ドル以内(1000万円程度)での販売を視野に入れている。 一人乗りのMoller M200Gは円盤型で、さながらUFOの様にみえる。

シコルスキーでは、無人実験機・サイファーの動力にバンケルロータリーエンジンを用いている。

ホームビルト機ではマツダのロータリーエンジンを搭載する例がある。

また、補助動力装置 ( APU ) に採用例があるが、これは、オクタン価の低い燃料でも稼動する特性を生かした好例である。



[編集] 模型飛行機

ヘリコプターをはじめとした模型飛行機用の超小型ロータリーエンジンが市販されている。 現在入手可能なものでは、日東工作所から工程体積11.97ccのモデル『NR-12H』、『NR-12P』、OSエンジンブランドで有名な小川精機株式会社が、工程体積4.97ccのモデル『49-PI TypeII』を製造販売中である。Max18000rpm 1.1馬力。初期はサイドポート吸気であったが現在はペリフェラルポート吸気に変更されている。ディープなマニアの間ではRCカーに搭載することが密かなブームとなっている。

[編集] コジェネレーションシステム

分散型の熱電供給システムであるコジェネレーションシステムの動力源として、コンパクトで低騒音、低振動という特徴からロータリーエンジンが注目されている。

2002年に広島ガス、2003年に中国電力マツダの自動車用ロータリーエンジンを組み込んだシステムを試作、LPガスを燃料として実証試験を行っている。

元マツダの技術者である室木巧は、層状給気燃焼方式(DISC-RE)を採用したロータリーエンジンでコージェネレーションシステムの研究をしているが、自著では自動車に使うには研究が足りないと記している。

[編集] 超小型発電機

カリフォルニア大学バークレー校のマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)のロータリーエンジン研究室は ローター径1mm以下、容積0.1cc未満のバンケルロータリー型発電機を開発している。ローターに組み込まれた磁石で発電するが、現在は外部からの圧縮空気で動いている段階。目標は100ミリワットを供給する内燃機関の開発という。

[編集] 非内燃機関

[編集] 特殊用途

もっとも奇抜な使用法はシートベルト巻き上げ機だろう[3]。いくつかのメルセデスベンツでは使用されている[4]。これらの自動車では衝撃を感知すると電気的に小型のガス発生器に点火されて作動して減圧されたガスが小型のヴァンケルロータリーエンジンに供給されてシートベルトを巻き上げる[5]

[編集] 空気圧縮機

外部からの動力で働くバンケルロータリー構造の圧縮機である。レシプロ式に比べ振動、騒音が低いことが特徴。

[編集] 過給器

バンケルロータリー構造を内燃機関用スーパーチャージャーに応用したもの。実験は行われたが、十分な加給効果を得るためには、ロータリーエンジンの2倍ほどの大きさのハウジングが必要となるため、実用化はされていない。

[編集] ロータリーエンジンの型式

[編集] マツダ

マツダは「70年代、車の主流はロータリーエンジンへ」というキャッチコピーを出すほど、意気込んでいたため、新型の登場はその頃が多い。しかし、13A以外のものは新開発というわけではなく、10Aをベースにローターやハウジングの厚みを増して排気量を上げたものである。そのためローターの三角形部分からの見た目は変わりない。レシプロでは考えられないが、RX-8のエンジンのベースは40年前のものである。また、型式名は合計の排気量を簡略化したものであるが、切り上げ、切り捨てをするの基準などが曖昧である。
また、構造が積み木に近いため、エキセントリックシャフトさえワンオフで制作できれば1ローターの6.5B(13Bハウジングを使った1ローター)や、24A(スクートスポーツがデモカーに搭載している、12Aハウジングを使った4ローター)など、様々な物を制作可能である。

10A 491×2
世界初の2ローターロータリーエンジンとしてコスモスポーツに搭載された。また、ファミリアにもデチューン版が搭載されている。
  • 1967年 コスモスポーツに搭載
  • 1968年 ファミリアに搭載
  • 1971年 サバンナに搭載
  • 1973年 生産中止(排ガス規制対策のため12Aに集約)
12A 573×2
6PI仕様が12A-6PI、ターボ仕様が12A-T。RX-7(SA22C)等、当時のマツダ車に多数採用された。サーマルリアクター方式による再燃焼システムの改善を行い、40%もの燃費改善を果たした。その後 排ガス処理をサーマルリアクタから希薄燃焼+触媒による排ガス処理システムを採用して更に燃費改善を実施。
  • 1970年 カペラに搭載
  • 1972年 サバンナとルーチェに搭載、ルーチェAPでサーマルリアクタのREAPS2販売開始
  • 1973年 50年規制適合のREAPS3販売開始
  • 1974年 燃費20%改善のREAPS4に切替
  • 1975年 51年規制適合で燃費40%改善のREAPS5に切替
  • 1978年 サバンナRX7に搭載、53年規制適合
  • 1979年 サーマルリアクタ方式から希薄燃焼+触媒の排ガス処理システムへ全面切替
  • 1981年 6PIへの全面切替に伴い生産中止
12A-6PI 573×2
約30年後に復活する6PIを初めて採用したもの。希薄燃焼+触媒による排ガス処理システムを採用してパワーと燃費の両立を図った。
  • 1981年 ルーチェ/コスモに搭載
  • 1982年 サバンナRX7に搭載
  • 1985年 生産中止
12A-T 573×2
12A-6PIの後に登場したターボ付。EGIをREで初めて採用ものであるが6PIは採用されていない。排ガス処理システムは、希薄燃焼+触媒を採用。
  • 1982年 ルーチェ/コスモに搭載
  • 1983年 サバンナRX7に搭載
  • 1984年 ターボをインパクトターボに変更
  • 1985年 生産中止
13A 655×2
ロータ幅は10Aと同じで偏心量を増やしてある。エンジン縦置きFFのRX87のルーチェにのみ搭載された。
  • 1969年 ルーチェロータリクーペに搭載
  • 1970年 生産中止
13B 654×2
ルーチェや2代目コスモで採用。自然吸気エンジン。サーマルリアクター方式による再燃焼システムの改善を行い、40%もの燃費改善を果たした。その後 排ガス処理をサーマルリアクタから希薄燃焼+触媒による排ガス処理システムを採用して更に燃費改善を実施。
  • 1973年 50年規制適合のREAPS3でルーチェに搭載
  • 1974年 燃費20%改善のREAPS4に切替
  • 1975年 51年規制適合で燃費40%改善のREAPS5に切替
  • 1978年 コスモに搭載、53年規制適合
  • 1979年 サーマルリアクタ方式から希薄燃焼+触媒の排ガス処理システムへ全面切替
  • 1981年 生産中止
13B-SI 654×2
ルーチェや2代目コスモに搭載されたスーパーインジェクション仕様。希薄燃焼+触媒による排ガス処理システムを採用。
  • 1983年 ルーチェ/コスモに搭載
  • 1985年 国内販売中止。輸出向けは、生産継続
  • 2002年 生産中止
13B-T 654×2
RX-7(FC3S)等に搭載されたターボ仕様。
  • 1985年 RX7に搭載
  • 1985年 ルーチェに搭載
  • 1990年 生産中止
13B-REW 654×2
RX-7(FD3S)やユーノスコスモに搭載された、シーケンシャルツインターボを採用。
  • 1990年 RX7とユーノスコスモに搭載
  • 2002年 生産中止
13B-MSP 654×2
吸排気共にサイドポートを採用した自然吸気エンジン。RX-8にのみ搭載されている。
13G 654×3
レース用3ローターエンジン。757に搭載された。市販版が20Bとなる。
20B-REW 654×3
20Bはユーノスコスモのみの採用であるため、20B-REWのみ。日本車初となるシーケンシャルツインターボを採用。
  • 1990年 ユーノスコスモに搭載
  • 1995年 生産中止
またRX-7(FD3S)でSUPER GTに参戦しているRE雨宮はこの20Bを自然吸気化、ペリフェラルポート化して搭載している。(厳密に言えば単純に自然吸気化したものでは無い)
13J 654×4
レース用4ローターエンジン。757Eに搭載された。
13J改 654×4
レース用4ローターエンジン。767に搭載された。
13J改2 654×4
レース用4ローターエンジン。2段切替の可変吸気システム搭載。767Bに搭載された。
R26B 654×4
ルマンで総合優勝した787Bに搭載された。3本の点火プラグや、リアルタイム可変吸気システムを備える。
3A 360×1
軽自動車の排気量が360ccだった頃に開発途中だった1ローターのエンジン。マツダミュージアムに展示されている。
15A 737×2
開発初期に作られた試作機。
16X 800×2
2007年東京モーターショーで世界初公開されたエンジン。マツダ自身が次世代RENESISと呼ぶ完全なる新開発のエンジンで、直噴化して燃費を向上させ、排気量を12A、13Bのように厚みを増して上げたものではなく、トロコイド形状から見直し排気量を上げることで、レシプロエンジンで言うロングストローク化を果たしている。これにより、往年の欠点だった低回転域のトルクの改善が期待されるが、当然ロータリーらしい高い最大許容回転数は下がるであろう。また、アルミ製のサイドハウジングを採用。将来を見越して、水素燃料に最適化した設計になると思われる。
R20B 654×3
コンセプトモデル風籟に搭載された3ローターの自然吸気エンジン。E100(100%エタノール)で450psを発揮する。

なお、極少数ではあるがマツダスピードから3プラグサイドポートハウジングと、ペリ吸気ハウジングが発売されていた。両方とも今では流通量が少なく、コレクターズアイテムと言えるほどである。

[編集] ロータリーエンジン搭載車

世界初の2ロータリーエンジン車・マツダコスモスポーツ

 このクルマは、セミオートマチック・トランスミッション、インボード・ディスクブレーキなど先進的な技術を搭載したFF4ドアセダンである。モダンなスタイルと先進的な安全思想・ボディ構造など評価が高かったが、開発途上のロータリーエンジンが”仇”となってしまった悲運のクルマである。

[編集] 関連項目

[編集] 脚注

  1. ^ ニュースリリース『マツダ、技術開発の長期ビジョン「サステイナブル”Zoom-Zoom”宣言」を策定』
  2. ^ ニュースリリース『新型「マツダアテンザ」「マツダ大気(たいき)」を第40回東京モーターショーに出品』
  3. ^ TRW Wankel pre-tensioner system
  4. ^ Mercedes-Benz. "Occupant Safety Systems" 11-12. 2007-12-31 閲覧。
  5. ^ Charles E. Steffens, Jr. "Seat belt pretensioner". 2007-04-11 閲覧。

[編集] 外部リンク

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