ミニカー (車両)

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ミニカーとは、道路交通法令において総排気量50cc以下又は定格出力0.6kW以下の原動機を有する普通自動車をいう。ただし、道路運送車両法においては自動車でなく原動機付自転車の扱いとなる。

欧米では似たような小型の車両が「Microcar」と呼ばれることがあるが、日本の「ミニカー」と必ずしも同じ定義ではない。また玩具ミニチュアカーを日本では「ミニカー」と略すことが多いため、これと区別するために愛称として「マイクロカー」と呼ぶメーカーはあるが、日本の法令で上記のように規定された車両はあくまでも「ミニカー」であり、マイクロカーではない。

概要[編集]

ミニカーは、道路交通法[1]及び同法施行令の規定に基く同法施行規則に、「総排気量〇・〇五〇リツトル以下又は定格出力〇・六〇キロワツト以下の原動機を有する普通自動車」と規定されており[2][3]、運転には普通自動車運転免許が必要である。同法施行令によって乗車人員は1人、積載量は30kg以下に制限されており[4]国家公安委員会告示により、高速自動車国道自動車専用道路を走行することもできない[5]が、同法上は「原動機付自転車」ではないから、二段階右折やヘルメット着用の義務はなく、法定速度は60km/hである[6]

しかし、この大きさの原動機が付いた車両は、道路運送車両法[7]上は同法施行規則によって原動機付自転車の扱いとなる[8]。従って、「道路運送車両の保安基準[9]」の中の「第三章 原動機付自転車の保安基準」が適用され、大きさは「長さ二・五メートル、幅一・三メートル、高さ二メートルを超えてはならない」が、同法上は「自動車」ではないから、シートベルトの設置義務や車検はなく、保管場所(車庫)の確保[10]も不要である。

かつては6~7PS程度の性能を有する2ストロークエンジンが搭載されていたが、現在は環境規制により4~5PS程度の4ストロークエンジンが中心となっている。エンジン出力に比して車体が重いため、最高速度・加速性能は低い水準に制約される。簡素な屋根のみの車両が多いが、繊維強化プラスチックなどで作られた軽量な密閉式キャビンを備えるものもある。しかし、車体が小さいため、ホイールベーストレッド、車輪サイズやサスペンションストロークが十分でない上、ボディ剛性も低いため、操縦安定性が劣り、車内の振動や騒音も大きい。エアコンは装着できず、ウインドシールドに電動ワイパーを備える程度に留まるため、夏季や雨天の走行には困難が伴う。

それでも、スクーターなどと共通した軽快さ・軽便さに加えて、密閉式キャビンを持つモデルには風雨に晒されないという大きな利点がある。さらには、駐車スペースが小型乗用車の半分以下であること、燃費が良いこと、ランニングコストも安いこと[11]などから、短距離の買い物の足として、また新聞・郵便の配達、ケータリング、あるいは趣味の車などとして使用されている。

沿革[編集]

1980年代前半から原付スクーターの駆動装置を流用するという方法で、4輪もしくは3輪のキャビンスクータータイプが製作されるようになり、当初は原動機付自転車運転免許で乗れたことから、その手軽さが支持されて一時的ブームが起こった。自動車の設計製造に関するノウハウを持たない中小零細メーカーも次々と参入したが、スクーター部品をそのまま利用しているため後進ギヤがなく、自力後進ができない車両や、後進時は電動機に切り替える構造の車両もあった。

光岡自動車 BUBU505-C

やがて後進ギヤを内蔵した差動装置を持ったものも作られるようになったが、スクーターの遠心式自動クラッチとの相性は極めて悪く、不用意に(つまりクラッチが完全に切れる前に)シフトレバーを操作すると、ギヤが破損しやすいという問題があった。走行中にギヤの噛合いが外れる不具合(いわゆるスッポ抜け)が解消困難な車両もあるなど、おしなべてメカニズムの完成度は低かったものの、原付免許で乗れたことが普及を後押しした。

しかし、法定速度30km/hという制約のため交通の障害になる上、運転技能不足による事故が多発したことを受けて1985年(昭和60年)2月15日に道路交通法施行規則が改正され、普通自動車として扱われることとなった。これにより普通自動車運転免許が必要となる[12]代わりに法定速度は60km/hとなったが、原動機出力の低いミニカーには到達しにくい速度であり、操縦安定性やブレーキの信頼性も、そのような高速走行に対して十分とはいえない車両が多かったのが実態である。サスペンション設計が稚拙なため、まっすぐ走ることさえままならない車両も存在したのである。多くはスクーターのワイヤー式ブレーキを流用していたのに対し、一部の車両は制動力を増すために油圧式ブレーキを採用していたが、全輪が1系統の配管となっていて、1か所でも油漏れが起きると、ブレーキが全く効かなくなるという、安全性を軽視した構造の車両もあった。ミニカーには車検がなく、ブレーキ系統の健全性を点検する機会もほとんどないので、これは極めて危険であると言わざるを得ない。

制度変更によって普通免許が必要になると、実技試験なしで乗れる簡便な交通手段としての魅力が失われて販売台数が激減、早々に撤退するメーカーもあって、市場は急速にしぼんでいった。しかしその後、環境的な観点や、車椅子シニアカー以上の機動力を望む障害者や高齢者の足として、交通手段の毛細血管的役割としての存在が見直されつつある。車椅子のまま搭乗して運転することができるミニカーも製造販売されている。

EVコミューターの模索[編集]

普通免許が必要な割に、軽自動車や二輪の原動機付自転車から乗り換えるほどの利便性がないとして、一度は衰退したミニカーだが、電気自動車EV)に対する関心の高まりとともに、近距離の手軽な移動手段として再び注目されるようになってきた。動力性能の制約が多い電気自動車にとって、ミニカー規格の小さく軽い車体は扱いやすいことから、世界的にも中小を含め様々なメーカーがこの大きさの電動車を開発・販売している。しかし、現在の電気自動車は走行距離が短く、充電に長時間を要するので、実用面の制約が大きい。前夜充電を忘れてしまったら、丸一日何の役にも立たない可能性も出てくる。

また、2012年5月に現行のミニカーとは異なる「超小型車」規格導入への検討が公表された[13]。「導入意義」の中に高齢者の移動支援や子育て支援が掲げられており、すでに各社からEVの試作車が発表されている。しかし特長といえば、小さいことと原動機の出力がミニカーより多少大きいというだけのことであり、エアコンはなく、雨も満足に防げず、わずかな荷物しか積めず、走行距離は短く、衝突安全性も劣っている。軽自動車が長い歴史の中で培った利便性・安全性・快適性には遠く及ばない。自転車が安心して走れるレーンすら確保できない劣悪な道路事情の中で、交通弱者にとっても魅力ある実用的な交通手段として成立させるには、コスト面を含めて課題が山積している。

主なメーカー[編集]

  • タケオカ自動車工芸:エンジン車『アビー』、EV『ミリュー』、車椅子のまま乗れるEV「フレンドリーエコ」などを生産。
  • REVAインドのEVメーカー。日本では上記のタケオカが輸入販売。
  • トヨタ車体:旧アラコから引き継いだ『コムス』を生産。
  • ピアジオベスパブランドで三輪トラック『ベスパカー』を生産。
  • アクセス:中国製電動4輪車を日本の保安基準に合せて改造・販売。
  • 光岡自動車:『BUBUシリーズ』『Kシリーズ』など多くのミニカーを製作した先駆的メーカーであったが、K-4を最後に撤退した。
  • CQモーターズ:実車版チョロQ(Q-CAR)でミニカー市場に参入したが、短期間で撤退した。

注釈[編集]

  1. ^ 道路交通法
  2. ^ 道路交通法施行規則 第十九条別表第二
  3. ^ 1990年(平成2年)12月6日の総理府告示第48号で、原動機付自転車の定義が以下のように改定され、1991年(平成3年)1月1日に施行された。これに該当するものはミニカーとして扱われない。

    道路交通法施行規則(昭和三十五年総理府令第六十号)第一条の規定により、原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車のうち、道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第二条第一項第十号の総理府令で定める大きさが総排気量については〇・〇五〇リツトル、定格出力については〇・六〇キロワツトとされることとなる三輪以上のものを次の通り指定し、平成三年一月一日から施行する。なお、昭和六十年二月八日総理府告示第二号は、平成二年十二月三十一日限り廃止する。

    車室を備えず、かつ、輪距(二以上の輪距を有する車にあつては、その輪距のうち最大のもの)が〇・五〇メートル以下である三輪の車及び側面が構造上開放されている車室を備え、かつ、輪距が〇・五〇メートル以下である三輪の車

  4. ^ 道路交通法施行令 第22条
  5. ^ 交通の方法に関する教則 第7章
  6. ^ 道路交通法施行令 第11条
  7. ^ 道路運送車両法
  8. ^ 道路運送車両法施行規則 第1条
  9. ^ 道路運送車両の保安基準
  10. ^ 自動車の保管場所の確保等に関する法律 第2条;この法律における「自動車」とは、道路運送車両法における自動車のことであるから、ミニカーは対象外である。
  11. ^ 自動車取得税自動車重量税自動車税・車検・車庫は不要である。軽自動車税の課税基準は原付と小型二輪の中間程度になる。自賠責保険(強制保険)は原動機付自転車(125cc以下)と同額であり、任意保険も普通自動車あるいは軽自動車で契約済みの場合はファミリーバイク特約の付加で対人、対物事故については本契約と同内容の保障を受けられる。ただし損害保険会社によって契約内容が多少異なる場合もある。
  12. ^ 移行時に、1984年(昭和59年)9月10日の総理府令第46号に基づいてミニカー限定免許の試験が、運転免許試験場において6か月間だけ行われた。1985年2月13日以前の自動二輪免許でも不可である。
  13. ^ 環境対応車を活用したまちづくり国土交通省

関連項目[編集]

  • トライク - 50cc以下の車両がミニカーに該当する。
  • サイドカー - 50cc以下の車両の一部が該当。
  • 全地形対応車(ATV) - 屋根なしで、バイク同様のまたがり型で乗車する車両。いわゆるバギー。50cc以下の四輪車が該当。
  • ホンダ・ジャイロ - 原動機付自転車のカテゴリーに属する3輪スクーターであるが、ユーザーが法的要件を満たすよう後輪トレッド拡大改造を行い、ミニカーとして登録する例が見られる。多くの場合、非純正部品であるスペーサーを後輪周りに装着して左右車輪間距離を0.5m超とすることで要件をクリアしている。
  • w:Motorised quadricycle(英語)Light quadricycles (L6e)の一部が該当