直列3気筒

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直列3気筒(ちょくれつさんきとう)とは、レシプロエンジン等のシリンダー(気筒)配列の形式のひとつ。シリンダーが3つ直列に並んでいる。略して直3とも記載することもある。オートバイでは横置きの場合に並列3気筒と呼ばれることもある。

解説[編集]

1970年代以降、小型エンジンのレイアウトとして普及している。日本における軽自動車(総排気量660ccまで)に採用例が多く、小型車にも広がりつつある。直列4気筒で最後まで残っていたダイハツ・コペンが2012年8月を以って生産終了となり、これ以後生産される軽自動車はすべて直列3気筒となった。世界的にはもっぱら600cc~1,200cc程度までの小型車用小排気量エンジンに用いられる。

古典的な事例やトラクター用などを別とすれば、第二次世界大戦後の自動車用でもっとも排気量が大きかった直3エンジンはアルファ・ロメオ1984年33に搭載した1.8L(1,779cc)のディーゼルエンジンである。

同一総排気量の直列4気筒エンジンと比較すると、1気筒当たりの排気量が大きく、冷却・機械損失が小さいため高トルク・低燃費が得られるが、直列4気筒とは異なる振動特性(一次振動・二次振動はバランスしているが、偶力振動は生じる)や爆発回数が少ないための騒音やトルク変動が問題となる。
同一総排気量の直列2気筒エンジンとの比較では、トルク変動が小さく低振動・低騒音という長所をもつが、1気筒当たりの排気量が小さく、冷却・機械損失が大きくなりトルクや燃費が劣る傾向にある。

これらの為、出力の小さい小排気量車では、損失と振動、出力特性のバランスが取れる3気筒エンジンはベストとされる。オートバイ用を除けば1300cc以上のエンジンではあまり用いられない。

ほとんどの直列3気筒エンジンのクランクピンは回転バランスが取れる120度間隔で配置されている。しかし、完全バランスの直列6気筒エンジンとは異なり、対称の位置で逆方向に動くピストンがないため、両端のシリンダー内を上下する往復運動系がエンジンを揺らすことになる(偶力振動)。この偶力振動を抑制するため、バランスシャフトを逆位相で回転させることがあるが、その駆動には出力の一部を充てることになる。

イタリアのen:Laverda社の一部エンジンでは、クランクピン位置が120度間隔でないものがある。これらのエンジンでは、外側のピストンが360°クランクの直列2気筒エンジンのように共に上下し、中央の1気筒のクランクピンは外側に対し180度の位置にある。このエンジンでは、まず1番気筒が点火し、さらに180度回転後に2番気筒が点火、再び180度回転後に3番気筒が点火する。残り360度回転する間は燃焼行程のシリンダーが存在しないため、動力の供給がない。

オートバイ用ではイギリストライアンフが、多くの直列3気筒搭載車をラインアップしている。日本のメーカーでは、スズキスズキ・GT750、GT550、GT380)とカワサキカワサキ・マッハカワサキ・KHシリーズ)が2サイクルエンジンを、またヤマハ4サイクル750ccヤマハ・GX750)を生産・採用していた時期もあった。

2ストロークエンジンの場合には直列3気筒は中央シリンダーの排熱及びシリンダー内の吸排気ポート配置の面で課題が大きく、ホンダはV型3気筒、スズキ・カワサキ・ヤマハの3社はスクエア4気筒にそれぞれ移行していった経緯がある。

歴史[編集]

元々は19世紀末期、ガソリンエンジンが発明されて間もない時期に、2気筒以上の多気筒化試行の過程で生まれたレイアウトの一つである。20世紀初頭のガソリン自動車黎明期には最初期のロールス・ロイス(15HP サイドバルブ3リッター)やリー・フランシスなどのメーカーで少数の採用例があったが、4ストロークエンジン用の直列レイアウトとしては振動面での問題が多く、振動問題の少ない4気筒とより簡易な2気筒との間で、早くに廃れた。

2ストロークエンジン[編集]

2ストロークエンジンの分野では、直列3気筒はクランク位相と一致した完全等間隔点火が可能で、少なめの気筒数に比してスムースな回転が得られる、振動面での問題が生じにくいレイアウトという長所がある。

第二次世界大戦直後には、2ストロークエンジン技術で世界をリードしていた西ドイツDKWが、「(回転が最もスムースなエンジンレイアウトである)4ストローク6気筒に比肩する」スムースさを喧伝し、乗用車エンジンに採用した。当時のDKWには「3=6」という名称の3気筒エンジン車も存在していたほどであった。

DKWを範として、東ドイツでの同一祖型の派生型であるヴァルトブルクスウェーデンサーブも900ccクラスの小型乗用車(サーブ・93)に採用、日本でもDKWに倣って鈴木自動車工業(現・スズキ)の(LC10型エンジン)や、三菱重工業(現・三菱自動車工業)コルト800で採用した例があるが、ほとんどが1960年代後期以降の2ストロークエンジンそのものに対する排気ガス規制強化で廃れた。

3気筒2ストローク車として遅くまで存続したのは、2ストローク車への需要があったスズキ軽自動車のごく一部(LJ50型)と、排気ガス規制のない計画経済体制の東ドイツで、技術革新の恩恵や市場競争の影響を受けなかったヴァルトブルクであったが、前者は代替4ストロークエンジンの出現により、後者は設計・排ガス対策の旧弊化を放置させていた国家体制自体の終焉によって消えている。

4ストロークエンジン[編集]

4ストロークエンジンでは、用途上、振動問題を相当に度外視できる農業用トラクターなどの動力として、エンジンのモジュラー化などの見地から3気筒ガソリンエンジン・ディーゼルエンジンが用いられる事例があったものの、一般の自動車用としては長く廃れていた。

乗用車用エンジンとしての一般へのリバイバルは、1976年にダイハツ工業(以下ダイハツ)が同社の小型乗用車「シャレード」用として、バランス・シャフトを装備した1,000ccのSOHCエンジン(CB型エンジン)を開発し、実用水準に到達させてからである。ダイハツはシャレード用に、ガソリンエンジンの設計をベースにした1,000cc3気筒ディーゼルエンジン(ターボモデルも存在)も開発(CL型エンジン)、市販した。

その後、1978年にスズキが軽自動車用550ccエンジン(4代目フロンテに先行搭載)として、バランサーを持たない低コストな直列3気筒4ストロークエンジン(F5A型エンジン)を開発、市販開始した。この程度の小排気量であれば、より大きなクラスの自動車に比べて4ストローク3気筒の欠点である振動が問題になりにくく、バランスシャフトを省いて振動が増えたとしても、従前の軽自動車の主流レイアウトである直列2気筒4ストロークエンジンよりはまだしもスムースであると判断されたからである。

以後、既存の2気筒エンジンに1気筒を追加、もしくは既存の4気筒エンジンから1気筒を減らすという低コスト開発手法で、廉価型の小型車用エンジンとして市場投入する手法が1980年代に常道化、日本の軽自動車や1,000cc-1,200cc級小型車、ヨーロッパ製小型車の700cc-1,000cc級最廉価グレードのエンジンとして用いられるようになった。

この過程では廉価車向けエンジンという割り切りから、コストダウンとバランスシャフトを駆動する出力ロス低減のためにバランサーの装備自体が廃れ、直列3気筒見直しのきっかけを作ったダイハツや三菱自動車工業などもバランサーレスの3気筒1,000ccエンジン(例・前者がEJ型エンジン、および1KR-FE型エンジン等、後者が3A90型エンジン等)を作るようになっている。エンジンマウントの改良・加工精度の向上による振動抑制努力と同時に、ある程度の振動以上にコストダウンを優先したメーカー側の妥協が、バランサーレス4ストローク3気筒普及の背景にあると言える。

2010年代以降は、直列3気筒エンジン車に自動アイドリングストップ機構を与えて停車時にエンジン自体を止めてしまうことで、低回転でのアイドリング中の不整振動問題を根本解消する手法が急速に広まりつつあり、小排気量車での直列3気筒採用を更に拡大させている。

関連項目[編集]