トライク

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トライク: Trike)は、3つの車輪が車両中心線に対して左右対称な二等辺三角形に配置されたオートバイである。三輪バイクと呼ばれることもある。前二輪-後一輪のトライクは逆トライクリバーストライクとも呼ばれる。ただし、オートバイの後部が荷台になっている貨物運搬用のものは日本では一般にはトライクと呼ばれず、伝統的にオート三輪という通称で呼ばれている乗り物に含まれる。また、日本では「リカンベントトライク」のように一部の三輪自転車を指す場合もある。一方、語源である英語の"Trike"は三輪の車両全般を指し、英語圏では幼児用乗用玩具の三輪車や、ハンググライダーの翼とプロペラをつけた超軽量動力機も"trike"と呼ばれている。原動機を持つものを人力のものと区別して呼ぶ場合には"motor-trike"と呼ぶ場合もある。

概要[編集]

"trike"は"Tricycle"の略語で、語源はラテン語で「3」を意味する接頭辞の"tri"と「輪」を意味する"cyclus"に由来する[1]

市販の完成車として最古級のトライク。ド・ディオン・ブートン・トライシクル
ハーレーダビッドソンがサービスカーとして製造した車両
リアエンジン・リアドライブ(RR)自動車の原動機・駆動装置を流用し、オートバイ様の前輪懸架・操舵装置と組み合わせたトライク
中国の三輪車(北京市瑠璃廠)この車両は車室を有するため、日本ではトライクとはされず三輪自動車登録になる

試作車・実験車規模のものを除き、市販車として世に出た最初のトライクは、1895年フランスド・ディオン・ブートンによる、ド・ディオン・ブートン・トライシクル(フランス語: De Dion-Bouton tricycle)とされる。ド・ディオン・ブートンは、後に二輪のオートバイや4輪の自動車も手がけているが、それよりも先にトライシクル(トライク)を発売したのは、当初同社が開発していたガソリンエンジンとその補機の小型化が十分でなく、また出力も高くはなかったため、それらを搭載するスペースを確保し、なおかつ低出力の原動機でも動かすことができる軽量な車体とする上で、3輪のトライクとすることが有利であったと考えられる。この製品は商業的に成功を収め、これを模倣した類似製品が、各国で多数製作された。ド・ディオン・ブートン・トライシクルの模倣車はアメリカにおいても製造され、E・R・トーマス・モーター、(英語: E.R. Thomas Motor Company)などが手掛けている。その後、小型高出力な原動機を備えた軽快なオートバイや、本格的な自動車の発達により、トライシクルは一時下火となる。

今日の日本で一般に「トライク」と呼ばれているオートバイベースのトライクは、第2次世界大戦後にアメリカから紹介されたものが原型となっている。その元祖とも呼べる車両は、ハーレーダビッドソンが1932年から1972年まで製造していた ハーレーダビッドソン・サービカー英語: Harley-Davidson Servi-Car)である。1932年式サイドバルブ750ccのR型をベースに差動装置付きの後輪二輪を装備。1名乗車を基本とし、後軸上の空間を丸ごと荷台とするデザインは、戦後に日本で流行したオート三輪にも通じるものであるが、オート3輪が敗戦後の復興を支える貴重な輸送手段として次第に大型化・重装備化を重ねて本格的な貨物自動車に近付いて行ったのとは異なり、ハーレーダビッドソン・サービカーは当初、自動車整備業者の車両回送業務のために企画され、その後もあくまでも、小口配送、移動販売、警察の巡回・警ら、広い敷地を持つ施設内での連絡やメンテナンスなどの業務に用いられる、軽便で手軽な足としての存在であった。このように、当初は地味な実用品(utility motorcycle)であった戦後アメリカのトライクであるが、1960年代後期から1970年代にかけて、これらをカスタマイズし、風変わりで個性的な乗り物として親しむ文化が確立した。これには当時のヒッピー運動の影響が指摘される。こうした動きに触発された人々によって、アメリカ式のトライクが日本に持ち込まれ、特定のイメージが定着した。

ハーレーダビッドソン・サービカーは製造が打ち切られて久しく、現在は入手困難であるので、今日のトライクは、既存の二輪車の後輪部分を改造したものが基本となる。逆に、自動車の動力ユニットを用い、前半をオートバイに似た1輪構造にしたタイプもある。構造はシャフトドライブや、独立懸架を用いるなど自動車の技術を応用したものが多い。近年は日本国内でも業者による改造が盛んになってきた。

1990年代までの全地形対応車 (ATV) は三輪のトライクタイプが一般的で、本田技研工業ではATC (ALL TERRAIN CYCLES) という通称で販売していた。しかし転倒例が多く、アメリカでは訴訟に発展したことから、日本のオートバイメーカーによる生産は全て4輪に切り替えられ、トライクタイプのATVは急速に衰退した。

特徴[編集]

長所[編集]

2輪のオートバイと比較すると、停車中やごく低速でも自立するため、停車中にスタンドや運転者の足で車体を支える必要がなく、低速走行が容易である。停車時に足で支える必要性を廃したことで、屋根やドアなどの運転者を覆う構造を備えることができ、また、二輪のオートバイを運転することが困難な身体障害者が手軽に乗れる乗り物としても注目されている。2輪のオートバイより積載能力と安定性が優れているのと同時に、4輪の自動車よりも小回りが利くことから、マラソン駅伝競走のテレビ中継用カメラの搬送にに用いられる場合や、電動のものが空港や大規模駅舎内における旅客や従業員の移動に使用される場合がある。

日本では普通自動車免許で運転でき、自動二輪車免許を必要としない(下記の特定二輪車に該当する場合を除く)。

短所[編集]

旋回時の遠心力を受けた際に4輪車と比較して安定性の限界が低く、特に前一輪後二輪のものは、旋回中にブレーキを働かせて減速しようとした場合、遠心力と制動による慣性力の合成によって転倒しやすい性質がある。

2輪のオートバイよりも車体が重く、電力や燃料といった運用に要するエネルギー消費量が多い。また、車幅が広いため狭い場所を通行できない。

日本の法規における扱い[編集]

3輪であってもトライクとは見なされない例(リライアント・ロビン)
3輪であってもトライクとは見なされない例(モーガン・3ホイーラー)

日本の法規でトライクとされるものは、乗員が車室(ボディ)で覆われず、運転席がまたがり式座席でバーハンドルを備えた車両である。ただし、荷台を有する貨物用の車両は小型三輪自動車(6ナンバー登録)として扱われ、トライクとはされない。現行の交通法規(道路交通法ならびに道路運送車両法)が制定された当時は「トライク」という乗り物を想定しておらず、後に外国からの圧力によって扱いを変更した。その際もトライクという独立した区分を新設することなく、既存の枠組みへの帰属を変更することで対処した。そのため、道路交通法と道路運送車両法とで扱いが異なる。

  • 道路運送車両法
    • 総排気量が250 cc を超えるものは、二輪の小型自動車として取り扱われ、車検証の車体の形状欄は「側車付オートバイ」となり、車検が必要である。管轄は運輸支局
    • 125 cc 超250 cc 以下のものは、「側車付軽二輪」として扱われ、車検は不要である。軽自動車協会の管轄となる[2]
    • 50 cc 以下のものは、車体要件を満たしていれば原動機付自転車としての扱いとなり(ホンダ・ジャイロなど)、満たさなければミニカー扱いとなる。管轄は市町村
  • 道路交通法
    • 一般道での法定最高速度は60 km/h。(道路運送車両法で第一種原動機付自転車として取り扱われたものは法定最高速度は30 km/h。)
    • 高速道路での法定最高速度は80 km/h。(125cc以下のものは高速道路を走行できない。)
    • 普通自動車に準ずるものとして扱われ、運転免許は普通自動車免許以上が必要。二輪免許では運転不可(やむを得ない理由があるときは二輪免許のみでも差し支えない[要出典]。道路運送車両法で第一種原動機付自転車として取り扱われたものは原付免許以上で運転できる。)。
    • ヘルメットの着用義務はない。(道路運送車両法で第一種原動機付自転車として取り扱われたものは着用義務がある。
  • 2010年9月1日から、3個の車輪を有する自動車に適用する保安基準(細目告示第2条の2関係)により、以下の項目を満たす車両は特定二輪車として二輪免許が必要となる。
    • 3個の車輪を備えるもの
    • 車輪が車両中心線に対して左右対称の位置に備えられているもの
    • 同一線上の車軸における車輪の接地部中心の間隔(トレッド)が460 mm 未満であるもの
    • 車輪および車体の一部、または全部を傾斜して旋回する構造を有するもの
  • その他
    • 高速道路など有料道路の料金は道路運送車両法によるため、オートバイ扱いで軽料金となる。

法改正の経緯[編集]

当初、50 ccを超える三輪自動車(側車付を除く)は車検や、登録のために印鑑証明の添付、車庫証明が必要であった。やがてトライクの法的位置付けが海外メーカーなどから非関税障壁として問題視されるようになり、OTO(市場開放問題苦情処理体制)への提訴がきっかけで、1999年(平成11年)に運輸省(現国土交通省)から「50 cc 超のトライクは道路運送車両法上では側車付二輪車とし、道路交通法上では普通自動車とみなす」という見解が出された。これにより同年7月16日以降、二輪の小型自動車および二輪の軽自動車に分類されたため、印鑑証明や車庫証明が不要になり、ナンバープレートと自賠責は二輪車に、自動車税は軽自動車税の市町村税に、運転免許は普通自動車免許以上が必要であると明確化された。

現在7ナンバーで運行中のものにあっては申請がない限り従前の取り扱いが適用される。従前の取り扱いでは登録制度が適用されるため、移転登録の際は印鑑登録証明書や車庫証明の添付が必要になる。申請があった場合は二輪への変更が可能であるが、一旦「一時抹消登録」をすることが必要で、二輪としての新規検査となる。

諸経費の差異は次のようなものが挙げられる。

  • 自動車税
    • 三輪登録・6.000円/年(都道府県税) → 二輪の小型自動車届出・4.000円/年(市町村税)
  • 自動車重量税
    • 三輪登録・5.000円/年(車輌重量0.5t以下) → 二輪の小型自動車届出・2.200円/年(小型二輪)
  • 自賠責保険
    • 三輪登録・22.470円/24か月 → 二輪の小型自動車届出・13.400円/24か月

日本の交通法規において二輪車とみなされるトライク[編集]

2008年10月、一部のトライクに対し自動二輪車の保安基準を適用する旨の基準改正が公示された。

道路運送車両の保安基準等の一部改正について 平成20年10月15日 (PDF)

国土交通省では、自動車の安全・環境基準の拡充・強化を進めるとともに、自動車の安全・環境性能の確保に関する国際的な整合性を図るため、平成10年に「国連の車両等の型式認定相互承認協定」に加入し、これに基づく規則(協定規則)について段階的に採用を進めているところです。(中略)また、近年開発された前二輪・後一輪を有する一定の要件を満たす自動車について、基準の適用を整理し、二輪自動車の基準を適用することとしました。

3個の車輪を有する自動車に適用する保安基準(細目告示第2条の2関係) (PDF)

【改正概要】

3個の車輪を有する自動車又は原動機付自転車であって、左右の車輪の間隔が460mm未満であるなどの一定の構造を有するものは、二輪車の保安基準を適用します。一定の構造として次の要件を規定します。

  • 3個の車輪を備えるもの
  • 車輪が車両中心線に対して左右対称の位置に備えられているもの
  • 同一線上の車軸における車輪の接地部中心の間隔が460mm未満であるもの
  • 車輪及び車体の一部又は全部を傾斜して旋回する構造を有するもの

【適用時期】

施行日より適用します。

2009年9月1日免許区分改正の一部三輪自動車 構造図説

この改正により基準が適用される車両は、車検における保安基準が自動二輪車と同一になり、車両の常時点灯などが必要となる。なお現時点での適用車にはヤマハ・トリシティピアッジオ・MP3などがある。また輪距の狭い旧モデルのホンダ・ジャイロなどを改造した場合にも適用される。ただし 460mm より輪距の広い車両は適用されない。

2009年3月27日、警視庁から法改正意見公募案件が公示され、上述の保安基準に該当する車両における免許区分を自動二輪車免許へ区分を変更する法案の意見を募集した[3]。当初は2009年6月1日施行の予定であったが、警察庁に多数の意見が寄せられたことから、それらを踏まえた上で改めて再検討されることになったため、施行は延期となった[4]

この件に関し、三輪スクーター輸入元に「三輪スクーターの運転免許改正案の修正について」の先行通知があり[5]、同年6月22日、警察庁から『「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案」等について』が正式に公布された[6]

  • 2009年9月1日施行
    • 乗車用ヘルメットの着用が必要となる。
    • 二輪免許を受けてから1年、または普通自動車免許で三輪スクーターの運転を始めてから1年を経過しない者は、二人乗りができなくなる(高速道路を運転する場合は3年)。
    • 2009年8月31日時点において普通自動車免許で乗っているユーザーのみ、経過措置として2010年8月31日まで普通自動車免許で運転可。また、試験場において特別試験が2010年8月31日までの期間限定で実施され、該当者のみ受験可能で合格すれば限定免許が交付される。
      • それ以外の者は、該当する二輪免許(大型二輪免許・普通二輪免許)が必要となる。
  • 2010年9月1日変更
    • すべての者において、該当する二輪免許(大型二輪免許・普通二輪免許・限定免許)が必要となる。

以上が適用される車両は、道路交通法施行規則において「特定二輪車」と総称されることになった[7]

なお、現時点では道路運送車両法の車両登録における区分変更(側車付二輪登録→二輪車登録)については公示されていない。

日本の交通法規においてトライクとみなされるサイドカー[編集]

輪距・車幅の広い(460 mm 以上)トライク・サイドカー等の免許区分図説

トライクは、運転席の構成がオートバイと類似した3輪の車両であるという点で、オートバイの側面に1輪を追加した車両であるサイドカーとの共通点があり、道路運送車両法では、どちらも側車付二輪自動車の一種とされる(排気量50 cc 以下または出力0.6kw以下のもは車両法において自動車とはされないため除く)。

一方、道路交通法においては(側車付)二輪車(要二輪免許・ヘルメットの着用義務有り)とされるのはサイドカーおよび上述の特例に当てはまるトライクのみであり、一般的なトライクは(3輪の)普通自動車(要普通免許以上・ヘルメットの着用義務無し)とされる。[独自研究?]

しかしサイドカーであっても、車体の構造によっては道路交通法においてトライク(普通自動車)とみなされ、自動二輪免許で乗れないものがある。サイドトライク・サイドトライカーとも呼ばれる。

  • 側車を分離したときオートバイとして単独で運転できない車両
  • 運転席側の側面が開放でない(ドアがある)車両
  • 走行軌跡が3本になる車両

をトライクとみなし、普通自動車免許が必要となる。[独自研究?]

具体的に、以下のものがトライク扱いになる。[独自研究?]

二輪駆動 (2WD) のサイドカー
二輪を駆動させるサイドカーは「フルタイム型」「パートタイム型」共にトライク扱い。ウラル型2WDサイドカー、ドニエプル2WD型サイドカー、BMW・R75ツェンダップ・KS750、九七式側車付自動二輪車(日本の軍用車太平洋戦争中の陸王ビンテージモデル。)、サイドバイク・ゼウスなど。
二輪操舵 (2WS) のサイドカー
本車の後輪を操舵できる場合はトライク扱い。サイドバイク・ゼウスなど。
一体型のサイドカー
設計時点から一体構造のフレームで、二輪のオートバイの構造をもたないためトライク扱い。サイドバイク・ゼウスなど。
  • 例外:この基準があてはまらない車種も存在する。クラウザー・ドマニはレーシングニーラーのサイドカーに性質が近く、バイクの操縦感覚がない四輪自動車免許のみの運転者が乗ると危険であるため、正式な二輪車認定車種になっている。
  • 標準的なサイドカーに一体型ボディーをかぶせたものでは、側面開放なら二輪免許扱いになる。外観が似ていても免許が異なり、無免許運転やノーヘル運転につながるため、注意が必要である。
光岡・ライクT3電動オート三輪であるが、排気量250 cc 以下の側車付軽二輪車として型式認定を取得している。

海外の法規による扱い[編集]

香港では排気量による区分がないため機動三輪車免許でサイドカーを含めすべての三輪車が運転できる。

中国では、排気量による区分がないため普通三輪摩托車免許でサイドカーを含めすべての三輪車が運転できる。

メーカー[編集]

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 雑誌『別冊 MOTOR CYCLIST』八重洲出版(連載記事より引用)

脚注[編集]

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外部リンク[編集]