フライホイール

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フライホイール(4G63エンジン用)

フライホイール: flywheel)は、回転する機構の動きを安定化させる働きを持つ機械要素である。日本語では弾み車勢車(いずれもよみは「はずみぐるま」)という。

概要[編集]

フライホイールは重心に回転軸が通った慣性体で、慣性モーメントの大きさは組み込まれる機械に応じて設計される。機械の回転速度が急速に変化しようと作用した場合、その回転系の慣性モーメントが大きいほど必要なトルクは大きくなる。わずかなトルクの変動で大きな角加速度が発生して回転速度が短時間に大きく変化する機械の場合でも、フライホイールによって回転系の慣性モーメントを増やすことで回転速度の変化を緩やかにする。

あるいはフライホイールを回転させることで運動エネルギーを蓄えて、別の機械要素にトルクを与えるエネルギー源として利用する構成もある。

機構の回転を安定化させるほかにも機能を持たせる場合があり、形状は円盤ないし回転体を基本として、他の部品を固定して回転させる要素や歯車、手で操作する際に把持するための要素を持つものがある。

フライホイールの主な応用例[編集]

レコードプレーヤー
レコードプレーヤーのターンテーブルは安定した回転を要求され、大きな慣性モーメントを持つフライホイールとして働くよう設計される。
クランク
往復運動を回転運動に変換するクランクにおいては、最上端と最下端に死点が存在していて回転力が働かなくなる。フライホイールを使うことによって、死点においても滑らかに回転を続けられるようにする。
足踏み式ミシン
足踏み式ミシンのベルト式駆動機構の輪はフライホイールとして作用し、クランク角によってトルクが変化する足踏み機構を安定して駆動し、また、縫製する布の厚みや硬さによる負荷の変動を吸収するよう作用する。
エンジン
エンジンの部品として使う場合、4ストローク・エンジンでは吸入・圧縮・爆発・排気のサイクルに伴い発生する細かな出力変動を抑制する働きを持つ。また上述のクランクの死点の対策の意味もある。重いほうがエンジン回転の滑らかさは増すが吹け上がりは悪くなり、軽くするとエンジンの吹け上がりは改善するが坂道などで失速しやすくなる特徴がある。また、軽い方が回転にかかわる慣性が弱いため、エンジンブレーキの効きが強くなる。一般的には、スポーツ走行を主眼として開発された車のフライホイールの方が軽く作られている。素材は通常の場合鋳鉄が用いられるが、軽量化を図る際にはクロームモリブデン鋼を用いたものを使うことも多い。近年ではアルミニウム合金製のさらに軽量化されたものも登場してきた。
無停電電源装置
円盤を超高速回転させ電気エネルギーを回転の運動エネルギーとして貯蔵し、瞬間停電時には回転の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して、電源を供給するタイプの無停電電源装置がある。内蔵バッテリーを持たないので、バッテリー交換などのメンテナンスが不要となるメリットがある。アメリカではこのシステムを組み込んだターボトレインの研究が行われている。
玩具
その単純な構造から自走式の車玩具などの動力として利用される。電池を使わない点、ゼンマイを巻かなくてもいい点、動きっぱなしにならない点、壊れにくい点などのメリットがある。最近ではカブトボーグゾイドグラビティーゾイド)の動力源として使われている。フリクション玩具とも。
プレス機械
機械式のプレス機械において、モーターの回転運動エネルギーを蓄える目的で利用されている。プレス機械のスライドを上下運動させたい時のみクランク軸・コネクティングロッドとクラッチを介して繋がれる。
運動エネルギー回収システム(KERS)
走行する車両において、走行中のエネルギーを回収して再利用する。フライホイール方式の他、バッテリー方式がある。フライホイール方式は、重量を持つ円盤を駆動系の中に別途設け、減速時の勢いで空転させる事によって運動エネルギーを保存し、再び運動エネルギーとして用いる方法である。
フライホイール・バッテリー
フライホイール蓄電装置などとも呼ばれる。電力系統に接続して、電力を一時的に回転運動エネルギーに変換して蓄積することで、電力系統の安定化を図る。
リアクションホイール
フライホイールの一種で、人工衛星など宇宙機の角運動量を変化させるのに用いられる。